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webadm
投稿日時: 2006-12-15 12:47
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
しげる君の思いで
小学校に入学した時に同じクラスにとっても背の高い子がいた。

名前はしげる君。ご両親が共に学校の体育指導の先生でもあり、優れたスポーツ選手だった。

そうした両親の下に生まれた長男しげる君は恵まれた才能を受け継いでくれると誰もが期待していたに違いない。けれど希に見る大きな赤ちゃんのため難産の末脳に長時間血液が供給されない状態になり取り出された時には仮死状態だった。

しげる君は一命はとりとめたものの生まれながらにして障害児となってしまった。

そんなしげる君だけどすばらしいご両親に恵まれたおかげで温厚で素直な子として育てられた。

障害児であることからしげる君は格好の虐めのターゲットにもなった。しげる君の様相を例えると、その長身と顔立ちからまるでジャイアント馬場選手の小学生バージョンと言えばわかるだろうか。ひとつひとつのモーションがやけにスローペースなのである。そこがいじめっ子につけいれられる点でもあった。

そんないじめに対してしげる君は決してめげることは無かった。他のみんなに会える学校に来るのが毎日とても楽しみだったように見える。虐められても相手にせずただ黙って手の指をいじって耐えている。虐めが終わればすっかりその事は忘れているかのように見えた。

ある日あまりに虐めが酷いのを見て夢に出てきた事がある。なんで何も悪くないしげる君をみんな虐めるのだろうと涙したこともあった。学校が終わると一人で帰るしげる君を一緒に家まで送ってあげたこともあった。

後で知ったのだが障害を持つ子は自発的に自分の感情や気持ちを言葉に発したり態度で表すことができないらしい。そのため急病とかでも処置が遅れて若くして亡くなるケースが多いとか。しげる君の場合も確かにそうだった。いつだったか突然給食後に食べたものを嘔吐して保健室に運ばれた事があった、盲腸炎だったらしくその後すぐ手術入院となった。具合が悪いのを伝えられないのである。

小学校を卒業すると中学校でも同じクラスになった。けれども教育制度が変わったのか、2年生になった時にしげる君のような障害児はクラスから分離されて新に出来た特殊学級に併合され特別なカリキュラムの下で勉強することになった。その時特殊学級の生徒はしげる君と別の小学校から来た女の子と二人きりだった。それまで1年生の時の担当だった生徒にとても尊敬され人気のあった先生が特殊学級の担当になった。時々しげる君とは廊下や窓越しに姿を見る程度となった。

中学校を卒業すると私は遠くで寮生活をすることになって故郷を離れた。学校が休みの間だけ実家へ帰って、休みが終わる日に寮へ戻るということを繰り返していた。寮へ戻る電車に乗る朝に来るまで送ってもらう時に、前かがみになって一生懸命自転車をこいで追い抜いていく長身の男性が居るのが目に入った。しげる君だった。

中学を卒業してしげる君は就職して働いていたようだ。もう夏休みも冬休みも関係ない。その後も何度か同じ場面に出くわした。その都度しげる君が元気なのを見て安心していた。

その後学校を卒業して社会に出ると実家へ帰る機会も少なくなり、電車に乗る時間も朝では無くなったのでしげる君を見かける機会はなくなった。

それから20年が過ぎて初めての小学校の同窓会が行われた。故郷で懐かしい顔と再会した。その時に参加できなかった人の個人消息をそれぞれ聞かされた。しげる君のことも。

しげる君は自殺したらしい。それを聞いた皆は在りし日のしげる君を思い浮かべ黙祷した。

職場で虐めにでもあったのだろうか原因は謎である。小学校であった虐めにはびくともしなかったのに、成長して大人になっていろいろ事情が変わったのかもしれない。田舎は温厚な人ばかりではない、陰湿な人も多い。そんな中で自分の苦境を声にだせないしげる君のような人は転職とかも出来ずにつらい思いをしたに違いない。

虐め報道が多い昨今、しげる君のことを思い出して書かざるを得なかった。
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題名 投稿者 日時
 » しげる君の思いで webadm 2006-12-15 12:47

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