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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2024-1-30 18:55
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
多重極展開
ふう、引っ越しで前の家に置いてきてしまった問題集の新版を買い直して独学再開(;´Д`)

前回というか10年前は、この多重極展開の問題で挫折していた感があるけど、ここまでの投稿内容を読み返して流れを思い出したので再度取り組むことに。

多重極展開の証明問題がこの問題集では第一章に登場するのがきついよね。砂川重信著の理論電磁気学も再度買い直して読んだけど、初歩段階ではクーロンの法則とかマックスウェルの静電場の方程式とかを扱うのに止めて、多重極展開とかは本格的に静電場理論を扱う後の章で解説するのに止めているよね。

一定の範囲内(球内)にランダムに分布した電荷(プラスもマイナスも含む)が球外の点にもたらす電位は、点電荷を含むすべての多重電荷からなる電位の総和として導出できるという手品なんだよね。

多重極展開は、理論的には面白いけど、実用性という意味では薄いかな。なのでさらっと導出のあらすじだけプロットするのに止めるのが一般的な感じ。自分でゼロから導出するのは、数学の他の知識(冪級数展開)も必要になる。

まずもって前提知識が無いと路頭に迷うのは当然で、予めあんちょこ知識を得て道筋を頭に入れてから、自分で道程をなぞるのが良案。

電磁気学にしても物理学にしても既存の理論というのは先人の優れた着眼点と数学知識の合わせ技みたいなもので導かれたのを学ぶ良い題材が豊富。

導出のストラテジーとしては、

(1) 半径aの球内に電荷分布が収まっている際に球外の距離rの点Pでの電位を球の中心からの距離x'の関数である電荷分布関数ρを用いてクーロンの法則を用いた球積分で定義する
(2)上記のクーロンの法則で用いた球内の距離x'の点と球外の点Pの距離の逆数を冪級数展開する
(3)上記の冪級数展開式を双極子モーメント(p)を導入して書き換える
(4)上記の結果が、前問のn重極子による電位の式の総和の形になることから前問と同様に培Legendre関数を用いて書き換えることで単電子、双極子、4重極子、...とあらゆる多重極子の総和がもたらす電位の式が得られることを確認する

ふう、筋書きは良いが、これから式をまとめないと。



順番に進めていこう。



図とはちょっと違うけど、前問の時に出てきたLegendre関数のRodriguesの公式を使用して多重極子からなる電位の総和としてのrだけ離れた点Pでの電位の式を考える。



これだと道半ばで100点満点中50点しかもらえないので、φnがn重他極子の成す電位であることを示すには電気双極子モーメントの概念を導入して書き直す必要がある。

先のφnの式でn=1のケースを見てみることに。




ということで、pが電気双極子モーメントであることがわかる。nは球中心から球外の点P方向の単位ベクトル。

次ぎにもっと簡単なφnの式でn=0のケースを見てみることに。



ということで、球体内の電荷を総和した単電荷(q)の成す電位となることが示された。

ここまでだと100点満点中75点ぐらいなので、あとはこれがすべてのnに関してn重極子の成す電位を示すか証明すれば良いことになる。

('A`)マンドクセ

とりあえずn=2が四重極子の電位を成すか調べてみるテスト。




ということで四重極子モーメント(テンソル)を導入することで4重極子が成す電位であることを示すことができた。

これ以上の高階極子テンソルについて示すのは読者の課題としよう(´∀` )

テキストの詳解電磁気学演習、砂川重信著の理論電磁気学のいずれも2階の多重極子項までを確認するだけで終わっているので、これで良しとしよう。

やっと第一章2節に進める、やったよ(ノД`)ママン
webadm
投稿日時: 2014-12-22 4:09
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
Re: n重極子
途中まで続きを書いたのだが、記事の長さの制限を超えた時点で、超えた文のデータが失われてしまった。ここで続きを書くことにする。

この結果から、x_nは



ということになる。

また2つの仮定解は元々(仮定解は定数倍の不定性があるが重要ではなく、仮にどちらも定数を1としてしまえば)



であることから



ということになる。

Rodriguesはあらかじめ同じ次数mで階数nが正と負の場合で解が線形独立ではないということを知った上で上の思い切った導出を行っている。

これを裏付けるために、ここで先の多項式の除算が割り切れることに関して以下の様に示している



彼は知っていたのかどうか不明だが、これは今日知られているLegendre陪関数の以下の公式と同値であることは誰も触れていない。



かなり荒削りな方法だがなんとか答えの一歩手前までもってきた感じがする。

ここで彼は、n>mの場合については一価連続でない有理関数になることから除外している。

そしてようやく以下の結論を得る。



(2014/12/22)
Rodriguesの論文をなぞることができるようになったことだけでも1年近く粘った甲斐があった。微分や積分記号が出てきても驚かなくなったものの、やはり面倒な計算は敬遠しがちである。
特に微分方程式をp回微分するとかの計算は、さすがになぞっていないが、一生に一度ぐらいはやっても良い気がする。

Rodriguesの論文は誤記も多いし、19世紀初頭に書かれたものとは言え、数学的にも荒削りで、途中に出てくる積分とかが収束するかどうかの言明もされていない点で誰しも納得がいかないものであることは確か。反面、当時誰も言明しなかった(Ivoryは既にそのひとつ手前まで迫っていたが論文に書いたのはずっと後だった)Legendre陪微分方程式の一価連続な解の公式を見いだした。それはn=0と置けばLegendre微分方程式の一価連続な解の公式でもある。
Rodriguesはこの論文の後、二十年後にもうひとつの論文を書いているが、それは前の論文とは直接関連しないが、それなりに先駆的な内容を含んでいたらしい。ユダヤ系フランス移民族のために、名前を途中でフランス系に変えたり、時と場合によっては元の名前を使ったり複雑な境遇だった模様。それでも親がユダヤ系らしく金融業を営んでいたので、その後を継いだのか銀行家に転身してしまった。

一方Rodriguesがインスパイアされた論文を書いたJames Ivoryは、Sir James Ivoryと後に呼ばれるように、英国はスコットランド人の数学者で、晩年は数々の王立協会の勲章を授与され、英国国王からはKnightの栄冠を与えられている。さぞかし幸福な人生だったろうと想像するが実際は、それとはまったく逆で、Rodriguesが読んだ論文を書いて後に何を血迷ったか、当時高級下着の材料として需要が高まっていた亜麻糸の紡績事業を興し、すぐに破綻するもその後もRodriguesが論文を書くまでの間、諦めずに設備が差し押さえられるまで事務所を構えたまま教職と事業家の二足の草鞋を履いていた。

亜麻は長い丈の茎から丈夫な繊維がとれ、肌触りも良いので世界中で需要が高まったが、茎から取るので花から取る綿と違ってかなりの動力を必要とするので設備も大がかりのものだった。誰もが始められるので過当競争になってすぐにコストが見合わなくなったのではないだろうか。

破綻後に王立軍事学校の数学教授のポストを得て厚遇されるも、事業破綻の後遺症と、ポスト争いのプレッシャーに脅かされ、生来病弱な体を蝕み、精神を病んでしまった。今で言う総合失調症で、その後も全快することなく、様々な王立天文協会へ招聘を受けるも、協会側にそれを好まない一派が居ると主張して受け入れなかったとか。

教授職を辞職してからもロンドンに住まい、数学の研究に没頭したそうだ。その後「いまだかつてないほど不幸な数学者」という記事が書かれるほど不幸な数学者だというのはあまり知られていない。

彼の業績に十数年の空白期間があるのは、その遍歴を知れば納得する。ネットで検索すれば彼の経歴の書いたページには肩書きとして「Mathmatitian and Mill Manager」とあるのは、十数年間も二足の草鞋で紡績設備の管理者だったからである。

なんの話だったっけ?

ああ、Rodriguesの公式の導出仮定の話ね。

話を元に戻そう。

今日知られているRodriguesの公式と称するものは、実際にはRodriguesの導出したものの特殊な形でしかなく、彼はより一般的なLegendre陪微分方程式の解の公式を導出したのだった。

一般のテキストはショートカットのためにRodriguesの公式と称するものから出発するのが普通である。誰もRodriguesがやったようにLegendre陪微分方程式をストレートに解こうとすることはしない。実はRodrigues自身もストレートにはいかずジグザクな形で解に辿りついている。何故そこまで難しいのか。それは前に導出したLegendre陪微分方程式の冪級数解からRodriguesのような多項式の導関数としての解を導出するのが大変困難であることに直面することからも明らかである。ところが、その逆の過程を辿るのは驚くほど容易である。この非対称性はいったいどこからくるのか?

難しいからといってさっさと忘れてしまうのは良くない。片方から入るのは容易だが、逆は困難だというのはひとつのヒントになるかもしれない。これはあれだ、トラップドア関数のようなもので、新しい暗号技術が作れるかもしれない。暗号文はLegendre陪微分方程式の冪級数のような形で、そこから元の平文に相当する多項式の導関数という形を類推するのが困難だが、逆は容易だということ。新しい暗号化技術への応用は読者の課題としよう(´∀` )

もちろんLegendre多項式は多項式だけに、無限級数の三角関数と違って有限回数の計算で済むという利点があるし、異なる次数のLegendre多項式の間には漸化式が存在し、2つの隣接する次数の多項式から隣り合う別の多項式の値を割り出すことができる。これは計算機で計算する際の時間短縮に好都合である。なので、信号処理とかでもLegendre多項式は応用されている。それに関しては別途研究するつもり。

本題に戻ると、前に導出したLegendre陪微分方程式の解の多項式部分



上のue(t),uo(t)の形から同値の以下のRodriguesの表現を導くことは大変困難であるという事実



しかしその逆は演習問題程度に容易である事実。

これは暗号と言っても過言ではないだろう。

(2014/12/31)
容易であるとは言ってみたものの、実際にやってみないと断言できない。

Rodriguesの論文では、上の式でk=0とした特殊なケースとして、後にRodriguesの公式と呼ばれる元となった以下の導関数を定義している



まずはこれを級数展開してみることにしよう。



従って



ということになる。

k=0と置くと、正規化されていない点を除いては現在知られているLegendre多項式の級数展開表記と一致することは明らかである。

ふむ、n=0が最大次数に対応するので、先のLegendre倍関数の級数部とは流儀が逆だな。

そこで上の式で2s=m-k-2nと置き換えてみよう



これを更に0次の項の係数が1になるように定数Jを任意に選んで良いから



ということで同値であることが確かめられた。

m-kが奇数の場合も同様だが、確かめるのは読者の課題としよう(´∀` )

検索すると、この逆の過程も同じような階乗のトリックを使って導出しているスライドを見つけることができた。しかしどちらにせよ、最終的な形(Rodriguesの公式)を知った上で、上の過程の逆を辿ればやってできないことはないと言っているだけで、もって廻った方法と言うべきかもしれない。

Rodriguesがやったよりももっとエレガントな公式の導出方法を見つけるのは、余裕のある読者の課題としよう(´∀` )

さてこれで踏ん切りが付いたところでまとめに入ることにしよう。

さてこれはなんの問題だったっけ?

ああ、n重極子の電界分布の問題だった。

この時点で著者の解答を見てみたら、腰が抜けそうになった。
この問題が試験にでたら、そういう解き方が正解かもしれない。受験問題と同じ扱いにしてしまうと、Rodriguesの公式とかそれにまつわる歴史とかまったく触れずに終わってしまい、知識としては残らず残念なことになってしまうだろう。

まあ脇道にそれまくった結果、Rodriguesの論文を読んだり、Sir James Ivoryの生涯を知ることができたのは結果的に豊だった。

階乗についてもテクニックが身についたが、調べてみると驚くことに階乗の定義については手元のテキストではほとんど触れていない。一度に1ずつ変化するビックリマーク(!)すら書かれていないのだから、一度に2ずつ変換する二度ビックリマーク(!!)なども使われていても定義は無かったりする。これはもしかして尋常小学校で習うからですか、そうですか。



(続く)
webadm
投稿日時: 2014-8-21 10:22
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
Re: n重極子
前の記事の続き

いよいよ最後の方程式に取りかかることにしよう。



これを展開すると



難所は0階微分項が単純な定係数*変数係数*未知関数という形にはなっていない点である。

どうすんだこれ(´Д`;)

これがLegendre陪微分方程式(Associated Legendre Differential Equation)のひとつの表現であることは疑いないが、どの数学の参考書にも書いてあるような表現に直すことから始めることにしよう。

これは大抵の丁寧なテキストには書いてあるが、例によって変数変換を使用する。ちょうど良い微分演算子の計算練習問題。昨日の夕食前のテーブルの上で計算用紙を一枚だして計算し始めたらちょうど料理が出てくるまでに終わった。それまで何度か試みたことはあるが、うまくいかなかったのは内緒。



これらを元の方程式に代入すると



両辺をsinΘで割って整理すると



ということになる。

これで方程式がLegendre陪微分方程式であることが明らかに。

大抵のテキストではLegendre陪微分方程式を解くことはせずに、その基本解であるLegendre陪関数を示してショートカットしている。

もっとショートカットしたテキストでは、陪微分方程式は避けて、問題の方程式でk=0としたLegendre陪微分方程式の特殊なケースであるLegendre微分方程式の基本解(Legendre多項式)を議論するだけにとどめている。

いろいろネットで調べたところ、Legendre陪微分方程式の一般解は大抵の数学書に書かれているが、ほとんどは導出方法については触れていない。触れているものがわずかにあって、それも人によって細かいところが違っている。いろいろな解法があるが基本的には、Frobenius Methodをフルに用いることになり、少なくとも3ページぐらいの紙面を要する。単純なステップではできなくて、数段階のステップを精密に行う必要がある。

ここでも結果を先取りして話しを先に進めてもいいのだが、どうせなら自分で一生に一度ぐらいはやっておいても損はないだろう。

ひとつの記事の行数制限はあるものの、フォロー記事としてつなげばどうにかなるだろう。

(2014/9/13)
毎日の通勤電車内や帰宅途中のファミリーレストランでの遅い夕食(夜食とも言う)の時にこの問題を継続的に考えてきた。
既に現代ではLegendre陪微分方程式もLegendre微分方程式も解が良くしられていて、その解だけが結果として示しているだけのテキストがほとんどであるのは何度も述べた。
これはあれだ、昔も今も料理のテレビ番組で調理時間がかかるステップをショートカットするために、「こちらにあらかじめ出来上がったものを用意してあります」と結果だけ示して途中過程は省略して放送時間内に収めるというのと同じアイデアである。
それはそれで時間短縮のアイデアとしては良いのだが、実際に自分で同じ結果を得ようとするとテレビでは省略された長い過程が目の前に立ちはだかるわけで、同じ結果が得られるか不安になるわけである。
省略された過程の中に思わぬテクニックやこつが必須だったりすると、料理は失敗に終わり残念な結果が得られるだけである。
そんなことを考えながら、やはり過程は大事だと再認識したわけである。
なんの話だったっけ?ああLegendre陪微分方程式の解法ね。

いろいろ検索して調べると、いくつものアプローチがあるのはこれまでも述べた通り。具体的にどんなアプローチがあるかというと、真面目な方法とインチキな方法に大別できる。

真面目な方法:

解の形をある程度仮定して絞らないとさすがにやりきれない。最初の方法は仮定解を冪級数だけ考えるもの。実際のLegendre陪微分方程式の解はやや複雑な冪級数になるのでそれで済む程簡単ではない。二番目の方法はLegendreの結果に基づいてGaussが後出しでまとめ論みたいな感じで編み出した方法。Gaussは特殊から一般へと考えるのが好きだ。彼の結果を利用してもインチキとは言わないだろう。

(1)冪級数法(Frobenius Method)

解が冪級数となるような多くの線形微分方程式に未定係数列からなる冪級数を代入して、様々な条件(元の微分方程式を満たすこと、解の冪級数が収束すること)を精査して微分方程式を満たす未定係数を割り出し、仮定解に代入して解を導く。
冪級数を解とする線形微分方程式を体系的に研究しそれで学位を得たのがFrobinusであり、従来の方法を独自に発展させた今日Frobenius Methodと呼ばれるものを提案した。

(2)Gaussの超幾何微分方程式に帰着させる

Gaussはそれまで研究されてきた線形微分方程式の有名なものの多くが変数変換によっていくつかのパラメータ関数を係数とする共通の線形微分方程式(超幾何微分方程式)に帰着できることを見いだした。超幾何微分方程式の一般解の結果があれば、解くべき線形微分方程式を超幾何微分方程式の形に変数変換で書き換えて、そのパラメータを超幾何方程式の一般解に代入すれば解が得られることになる。超幾何微分方程式の解もまたパラメータを変数とする係数列からなる冪級数である。パラメータが取り得る範囲については冪級数法と同様に級数の収束条件から精査する必要がある。

インチキな方法:

既に答えを知った上で最短で問題の方程式から解を導く逆説的な方法がほとんど。つまり結果の先取りと逆転の発想からなる。最初に解だけ示すのはその最も極端なケース。他にも

(1) Legendre微分方程式の結果を利用する

Legendre陪微分方程式に真っ向から臨むのはあまりに険しい道のりだと分かっているので、Legendre微分方程式はLegendre陪微分方程式の特殊なケース(一部のパラメータを0としたケース)なので、先にその結果を示し(真面目な方法で導出をやる人も居る)、Legendre陪微分方程式の解にはあらかじめLegendre微分方程式の解が含まれるといった結果を先取りした仮定解を代入して解くもの(これも未定係数を決定するために冪級数が収束するパラメータが取り得る範囲を精査する必要が最低限必要)。

(2) Legendre陪微分方程式の結果を利用する

これは最も最短の例。ただし何も解いていない点で注意が必要。あらかじめ解の取り得るパラメータの範囲が定まっているのもお約束。好き勝手な値がとれるわけではない点に注意。流し読みするとその点はおろそかになりがちだ。真面目に解けば、t=cosθだから-1≦t≦1の範囲を取り、1-t^2=0となるt=±1は特異点であるから解は不定か自明な解の0しかないなど。何故そうなるかは真面目な方法で自分で解いてみないと分からないだろう。

(3) 多項式解だけを示す

無限級数解は球座標上で一価連続関数ではないので議論する必要はないから、物理的な意味のある一価連続関数としての有限次数の多項式解だけを紹介する方法。これはこの結果を利用して本来の物理的な議論への応用に展開する上で有用な方法である。後にも先にもそれ以外の解が必要になることはないのだからそれでいいという考え。Legendre倍関数でさえLegendre多項式と言い切ってしまうところが怖い。

真面目な方法、インチキな方法どちらも今まで誰もが数学の解析講義で敬遠していた級数の収束判定というテクニックが重要な鍵を握ることだけは明らかだと言っておこう。仮定解を代入するのも大変だけど、慣れれば通勤時間内にできる程度。ただし級数の収束判定については、かなり柔軟な視点が必要で、仮定解を微分方程式に代入して得られた結果の級数式を長時間睨む必要があった。
この種の級数の収束判定方法の議論はHeavisideの生きた19世紀の前半に活発に行われて数学者なら誰でも承知していないと潜りと言われかねない。冪級数の収束を論じないで怪しい冪級数展開に基づいたHeavisideの演算子法が数学者から酷評される憂き目にあったのもそうした数学界のピリピリし始めた時代と重なったからである。

インチキな方法は巷のテキストに載っているので割愛して、真面目な方法をひとつやってみることにしよう(前置きが長いぞ)。

仮定解

冪級数法を使うにせよ超幾何微分方程式に帰着させるにせよ、その結果得られる複雑な冪級数の係数を割り出すのはやりきれなくなる。
できるだけその部分を易しくするために、あらかじめ仮定解を実際の解に近い形にして代入する方法をとることにする。

Legendre陪微分方程式には(1-t^2)の項が存在する、分母の1-t^2を祓うために両辺に(1-t^2)を乗じてt=±1を代入すると



従ってk≠0の場合



でなければならないことになる。

この事から解の冪級数の項には(1-t^2)の冪が乗じられていることが予想される。
(1-t^2)の冪乗数はこの段階では未知なので、rとし冪級数u(t)の積の形の解だけを考えることにする



いきなり冪級数展開を代入すると未知係数の数が増えるのでやりきれない。
ひとまずrを先に片付けるために(各個撃破!)ひとまず冪級数部分を未知関数u(t)として代入してみることにする。





ということになる。

ここで最後の式の両辺に(1-t^2)^(1-r)を乗じても一般性は失われないので、特異点t=±1でu≠0となる場合を考えると



上記を満足する冪常数rと分離定数k^2の関係は



これでr=±k/2だということが分かった。kが正負どちらの値も取り得るとすると解の形は



と表すことができる。

丁寧なテキストでも、この辺りの事情は省略して上の仮定解をいきなり登場させるのが普通である。何故k/2なのかと疑問を持つことが大事だ。

mがどのような範囲の値を取り得るのかについては、次のステップの後で議論することにする。

k=0の場合、Legendre陪微分方程式はLegendre微分方程式になることから、u(t)はLegendre微分方程式の解であることがこの時点で明らかとなる。

冪級数の係数列

次にいよいよ上の仮定解を方程式に代入して級数の係数列を決定する段階に入る。

代入からやるとまた長く間違い易いので、あらかじめ前の結果のrにk/2を代入すると



ということになる。

u(t)の一階と二階の導関数はそれぞれ



これを先の方程式に代入すると



ということになる。

最後に総和をn=0で始まるように揃えるする流儀と、n=2に揃える流儀と二つある。どちらでもかまわない。どちらかの係数式のnをn=n+2で置き換えるか、n=n-2で置き換えるかの違いである。

最後に総和の係数項を因数分解するためにぐっと1時間睨んでも答えが出なかったので、係数項をnに関する方程式としてnに関してMaximaで解くことで因数分解の結果が得られた。体調が良ければ睨むだけで分かったかもしれない。

従って級数解が方程式を満たすためには、係数列が以下の条件を満足する必要がある。



従って係数列に関して以下の漸化式が得られたことになる。



この関係から、a0およびa1が0の場合は自明な解u(t)=0しか存在しないことになる。

a0=0でa1≠0の場合には奇数次のみ、a0≠0でa1=0の場合には偶数次のみの級数となることもわかる。

またn=m-k以降の次数では



という0の係数が現れることになる。

n=0の場合



これを順次繰り返していくと



なんとなく規則性があることがわかってくる。

問題の未知関数u(t)が奇数次のみと偶数次のみの2つの級数の和から成ると考えれば



ということになる。

なんじゃこりゃ(;´Д`)

これから分かることは、ue(t)はm-kが偶数値の場合、2n-2>m-k以降係数は0となり級数は有限項で打ち切られ多項式になるということ。
同様にuo(t)はm-kが奇数値の場合、m-kが奇数値の場合、2n-1>m-k以降係数が0となり多項式になるということ。

すると当然ながらm-kが整数値でない場合には、級数が打ち切られることはないわけで無限級数になることになる。そうすると級数の収束というのが問題になってくる。m-kが非整数な場合、級数が収束すればそうした解は存在するし、もし収束しなければ解は存在しないので考える必要はないということになる。

mもkも整数でない場合に無限級数となるが、収束するかどうか判定してみる必要がある。

隣り合った級数列の比率は



nを∞に極限移行した場合この比率の絶対値は



ということになる。

従って隣り合った項の比の絶対値は



問題の方程式ではt=cosθと変数変換してあるので、-1≦t≦1の範囲を取り得るが、t=±1は特異点でありその場合級数は発散するが、それを除けば級数は収束することになる。

さて、kに関しては既にΦの解を導出した際に整数である必要があることだけは分かっているが、mがどのような値を取り得るかは分かっていないし、mとkの間で何か関係についても調べる必要がある。

一般のLegendre陪微分方程式を考える場合には、tは任意の値(実数もしくは複素数)を取り得るので、m-kが正の整数でない限りその冪級数解が収束するのはt=±1を除く範囲に限られるということになる。

我々はt=cosθと変数変換を経てLegendre陪微分方程式を導いたので、任意のθに関して連続で球面上で周期性のある冪級数解でなければならない。従って-1≦t≦1の範囲で連続かつ有界な値をとる解である必要から、m-kが正の整数で、冪級数がm-kの値によって偶数もしくは奇数次のみの冪項から成る有限項の多項式となるということになる。

この辺りの場合分けはややこしいので文章だと漏れが生じやすい。ソフトウェア開発でもこうしたちょっと面倒な場合分けのプログラムを設計する際には人為的なバグが初期段階で入り込みやすいのはそのためである。

ソフトウェア開発ではこのため、昔からdecision tableを使うなどして厳密に考えられるあらゆるケースをマトリックス上に列挙した上で、すべてのケースを網羅するプログラム論理を設計するように推奨されている(それはJIS規格にも載っている)。

数学の世界では記号論理によってそれらの場合分けを簡明に記述する方法があるが、それを読んで解釈するのが人間なである限り、思い込みや誤った解釈で本来の記述が意図する範囲のすべてを伝わることは必ずしも保証されない。そういった事例は歴史的に枚挙に暇が無い。たとえ計算機プログラムによってそうした形式言語記述を解釈させるにせよ、その計算機プログラムを作るのは人間なので、誤りが組み込まれている可能性がある。

今日ではそうした誤りがあっても、数学者にせよ、ソフトウェア開発者にせよ、責任が問われるのは有限な範囲にとどまる。論文が間違っていたとしても、プログラムに致命的なバグがあったとしても、裁判にかけられたり罪を問われることはめったにないが、そうした誤りの混入をもたらした数学者やソフトウェア開発者は所属する組織内でなんらかの社会的制裁(処分やパワハラ)を受けたりことはある。彼らを雇用している組織が最終的な責任を問われることになる。
建築とかのハードウェアの場合には設計ミスがもたらす社会的な悪影響の重大性から設計者が国家資格を持つ必要があり、ミスを犯した場合の責任も設計者個人が負うことになる。このため建築技術は様々な形でコンピュータを活用して進化してきたとも言える。数学やソフトウェアが未熟なのは依然として個人の能力にのみ依り頼り、一方で個人の責任が曖昧にせざるを得ない点にあるのかもしれない。

なんの話だったっけ、ああ場合分けの話ね。

たいていのテキストではm-kが正の整数で級数が有限個で打ち切られる多項式のみを球座標でのLegendre陪微分方程式の解とする結論を文章で述べるにとどまっているが、果たしてそうなのかというとそれに関する確証を与えるには自分で整理するしかないということになる。

ここにm,kの2つのパラメータと変数tの取り得るすべての組み合わせについてdecision tableを使って再点検してみることにする。

(2014/9/21)
数式のレンダリングCGIを新しくmathtexを使うようにした。今までのmimetexでも別段困らなかったが、総和記号Σの中に数式が食い込むとか、積分記号の上下に境界値が配置されるとか気に入らない点はいくつかあったがそれに目をつぶれば記述はし易かったし問題なかった。
サーバーがDebianベースになったことから、Texliveが簡単に導入でき、Latexもインストールできるので、mathtexを試してみることに。
結果はmathtexはLatexをレンダリングに使用するのでamstexを使った精錬された数式レンダリング表示が得られる。
mimetexとmathtexで同じ数式をレンダリングして見比べてみると、明らかにmathtexが良い。
またmimetexは毎回数式をレンダリングするのに対して、mathtexはレンダリングした数式のイメージをファイルシステムにキャッシュするので、以降同じ数式をレンダリングする際にはそのキャッシュを再利用し毎回レンダリングすることはなく結果的にブラウザーでの表示がmimetexを使用するより軽負荷となり表示が速くなることが分かった。
しかし良い点ばかりではなく、mimetexとの互換性が失われたため、今までmimetexを使用して記述していた記事をmathtexに変えるには単にcgiパスを変更するだけではすまないという点。
実際のレンダリングがLatexを使用して行われるので、Laxtexのルールに従わなければならなくなったのと、mathtexが数式テキストをLatexのテキストに変換する際にバグがあるようで、数式以外を併記しようとすると面倒なエラーに遭遇したりする。
そういう良いではmimetexはLatexの悪い癖を隠してくれていたのだなと気づくことが多かった。mimetexだと見逃してくれた軽微な誤りもLatexではエラーとなりレンダリング出力が得られずLatexが導入されていないとかいう変梃なエラーをmathtexは出したりする。これの解決には、コマンドラインでかつデバッグモードでmathtexにエラーとなる記述を与えてLatexのログを調べる必要があった。Latexのはき出すエラーメッセージが解り難く世のLatexユーザーを悩ましているのではないかと同情する。
いくつかLatexで以前mimetexを使っていた数式をレンダリングしようとすると遭遇するエラーは、検索すると大抵Latexを使って数式を記述しようとする初心者が填まるところだったりする。そういう意味ではLatexは癖のあるプログラムなのかもしれない。20年ぐらい前にはUnix WorkstationでLatexを使って業務用のドキュメントとかレポートをコンパイルしていたけど平文をコンパイルする分にはそうした面倒を感じたことはなかったので、数式を扱う時の特有の問題なのかもしれない。数式を記述するときはマクロだらけだからね。

なんの話だったっけ、ああ、mとkの場合分けの話ね。

いろいろ検索してみると、厳密にすべての場合分けを丁寧に解説しているものは見当たらない。
大抵は球面座標から導出したLegendre陪微分方程式だから-1≦t≦1の範囲で多項式になるLegendre陪微分多項式だけに焦点をあててるし。
その場合でもmとkは正の整数だけに限って議論している。その方がその他の当面必要な枝葉や分岐に読者の注意を反らせることもないからだろう。
しかし一端疑問を持つと、どうしても知りたくなるのが人情で、虱潰しにやっていくと、これまで気付かずに通り過ぎてしまった枝分かれ道があるのに気付くことになる。
たとえば、既に議論したΦ(φ)やR(r)で出てきた分離定数が何故m(m+1)やk^2だったりするのかという話。これも線形代数的に言えば固有値の問題で、λとすればいいが、分離定数が2つ出てくるので、記号を変える必要がある。
そしてλが実はm(m+1)でしたという種明かしを説明すると長くなるし読者の集中力を低下させかねないので、ショートカットしてあらかじめ用意した結果を出して話しを先に進めるということになってしまった。
実はそのあたりを丁寧にやってもそんなに集中力をそぐことにはならないし、数学好きや計算好きな人には力試しにもなる。
19世紀の数学者がEluerを読めと口が酸っぱくなるほど言ったのは、そうした目から鱗的な数学的なテクニックがふんだんに使われているからである。Eulerの著書を読めばその事に自ずと気付くということになる。しかし、現代ではEulerの著書を読むということは数学を学ぶ人でさえ希だろう。本屋で売っているわけでもないので、大学の図書館とかにでも行かない限り読むことはできない。

(2014/9/22)
Legendre陪関数の級数(多項式)解がどうやら得られた感触があるが、厳密にmとkの取り得る範囲や組み合わせを検討する必要に迫られた。
この作業で一般的なLegendre陪微分方程式の解を論じるのでなく、球面調和関数だけに焦点を当てるのであれば知る必要のない枝葉をあらかじめ切ることができる。それらの枝葉にも関心はあるが、電磁気学理論ではそれらが登場することは無いと言えるので割愛することにする。
枝葉があることだけは明記することになるので、関心がある読者は研究するのは自由である。

手元にあるテキストでLegendre多項式を導出するところから、良く知られているLegendre多項式の様々な表現を導く過程は例外なく省かれている。この辺りもあらかじめ用意した途中結果だけを示してショートカットする手法が多用されている。
実はここのところがLegendre多項式やLegendre陪多項式で一番おもしろいところなんだと思う。
その他どのテキストにも書いてあるような直交性などの性質はつまらないし、分かってしまえば当たり前の結論でしかない。
ちょっと思いつかないような意外性のある結論がおもしろい。

(2014/10/20)
すでにこの問題に填まって2ヶ月が経とうとしている。面目ない。
パラメータの取り得る組み合わせを考えてもなかな整理がつかない。
検索してもそうした分類について触れている記事は見当たらない。
誰もやってないということなのか?
それ以外にもLegendre陪微分方程式というのは量子力学の初歩で当たり前のように出てくるというのを知っている。当然ながら結果の解だけ示して矢継ぎ早に量子力学の基礎を説明していくので、詳しく解の導出など触れているものは無い。幸いなことに電磁気学でも量子力学でもすべての解を知っている必要はなくて球対称な座標系だけを考えればよく、良く知られた解だけを知っていればよい。

Legendre陪微分方程式の解を導出する際に、どうしても同次微分方程式の解の宿命である、定数倍の不定性がある。上の導出ではa0とa1の係数が定まらないのだ。任意に決めてもいいのだが、計算機プログラムとかで一価関数としてLegendre倍関数を実装しようとするとこれでは困ることになる。

定数倍の任意性に関してnormalization(規格化とか正規化と呼ばれる)の必要性が出てくる。内積が1になるように係数を決定できればよいのだが、関数解析の立場でそれを定式化したのが20世紀前半の数学者Erhard Schmidtで、線形代数の観点で相似の理論を定式化したのがデンマークの数学者、Jørgen Pedersen Gram、今日ではGram-Schmidt Process(Gram-Schmidtの正規直交化法)と呼ばれているが、それ以前にLaplaceとCauchyが同じことを既に見いだしていたらしい。恐るべしLaplaceとCauchyの二大おじん。

正規化については後々触れるとして、組み合わせを整理しないと、やれやれ。

Legendre陪関数((1-t^2)^k/2の分数冪があるので厳密には多項式とは呼べない)の場合、冪級数の係数にm-kの項があるので、それが整数かそうでないかによって無限冪級数か有限冪級数になるかが決まる。

無限冪級数の場合は|t|=1で発散し、|t|<1で収束する。

m-kが整数でも、a0とa1の係数の組み合わせによっては、|t|=1で発散する無限級数となる場合がある。

たとえば、m-kが偶数でa0=0,a1≠0の場合、無限冪級数になり、|t|<1の範囲でのみ収束する。これは第二種のLegendre陪関数に分類される。
同様にm-kが奇数でa0≠0, a1=0の場合も、無限冪級数になり、これも第二種のLegendre陪関数に分類される。

第二種のLegendre陪関数をt=1/xと変数変換すると|x|≦1で発散し、|x|>1で収束する解が得られる。これも第二種のLegendre陪関数に分類される。第二種のLegendre陪関数については球面上で連続関数とならないため電磁気学や量子力学では登場しない。Legendre陪微分方程式だけを数学的に解いた場合のみ現れるということである。

二階の微分方程式の解は二卵性の双子の姉妹もしくは兄弟の解があって、それぞれ線形独立でどちらも同じ親(方程式)から生まれているけどまったく似てないと覚えておくと良いかもしれない。Legendre陪微分方程式の場合も、電磁気学や量子力学で扱われる第一種のLegendre陪関数(多項式)とは別に、多項式にはならない第二種のLegendre陪関数が存在する。Legendre陪微分方程式の一般解は第一種と第二種の陪関数の線形結合となる。

人の生涯は二階の微分方程式の一般解のようなもので、基本解には線形独立な幸福と不幸の二つがあって、一般解はその任意の線形結合となると覚えておくと良いかもしれない。幸福だけの解を望んでも姉妹解である不幸も必ず現れるので、幸福だけを選り好みしても仕方がないのである。不幸が続いても、いつかまた幸福がやってくるということもあるのである。

なんの話だったっけ、ああ解の分類ね。

ところでm-kが整数の場合、mとkが整数とは限らないケースもある。mとkが有理数の場合、その差が整数になる場合があるからだ。しかし、我々は既にmやkが変数分離した他の微分方程式の解が球面上で一価連続関数であるために整数でなければならないという要請があるためこのケースを考えなくて良いことになる。Legendre陪微分方程式だけを取り上げて解く場合にはそうした解も当然ながら存在するかどうか検討することが必要になってくる。数学的に一般的に考える場合には、最初から変数やパラメータを複素数空間に拡張して考えるのが良いのだが、電磁気学や量子力学ではさしずめその必要はないので安心して良い。

森さんが「現代の古典解析」筑摩書房で以下の様に書いてある意味は自分で調べて初めてその意味が解った。

引用:
ただし、これだけでは定数因子倍の不定性があるので、普通は積分などとの関連で因子を定める(定め方の流儀は、必ずしも一致していないようだ)。


と締めくくっているが、実際に調べるとそこで話題にしているLegendre関数(先のLegendre倍関数でk=0としたもの)には幾つもの異なった表現があり、まったく同じ表現でも正負の係数がついていたりついてなかったりするものが異なる分野で成立していてコンピュータプログラムを作る側にとっては頭の痛いことになっている。三角関数のように表現が一つで返す値がみな同じというわけではないのである。

森さんの本にも有名なLegendre関数のRodriguesの公式というが出てくる。



これは一定の正規化条件Pn(1)=1というのを満足する一連のLegendre多項式を一行で表している大変教える側にとって都合の良い解の公式でで必ずといって良いほどどのテキストにも登場する。この公式を見いだしたのはBenjamin Olinde Rodriguesという19世紀のフランス人数学者で、その公式を表した学位論文を書いた後、銀行家に転向しそれ以外の数学の功績は知られていない。早い時期の社会主義者で、鉄道建設などの社会資本の建設事業に融資したり、当時の労働問題や人種差別の撤廃や男女同権の未来を予測していた。若い頃は前途有望な数学者だったけど、他へ転身した人も歴史的には多い。社会運動に熱心な数学者も中には居る。

話を元に戻そう。

mとkが正の整数である場合には上のRodriguesの公式はうまくいくが、負の整数の場合はどうなるのかという疑問が沸くのは当然である。

球座標上で解が一価連続な関数であるためには、mとkが整数でなければならないという要請はあるが、負ではだめだということはない。

実はm=-(m'+1) (m'=0,1,2,3,...)をLegendre倍微分方程式代入するとmは常に負の整数だがLegendre倍微分方程式の形は変わらないことを簡単に確かめることができる。



つまりmが負の整数の場合、線形独立な解を持たないことになる。なのでmが正の整数だけ考えればmが負の整数の時の解も含まれるということになる。



kに関してはΘの解の形を解き明かす際に正負どちらでも取り得ることが解ったが、取り得る範囲はどうなるのだろうかという疑問が沸く。

先に導出した係数の漸化式にk=-k'(k'=0,1,2,3,...)を代入してみると



ということになる。

すなわち、m+k'が正の整数の場合、n=m+k'を最大次数とする有限項の多項式の解が存在することが判った。

これでもまだ、mとkの関係は十分明らかになっていない。m<|k|の場合はどうだろうか?



k,mが供に正の整数でk>mの場合、多項式解は存在せず無限級数解のみとなる。その場合の無限級数の収束半径は1なので、|t|<1で収束。

kが負の整数でmが正の整数の場合、kの絶対値がmよりも大きい場合には、n=(|k|-m)-1もしくはn=|k|+mを最大次数とする有限項の多項式のu(t)が存在することになる。|k|+mが偶数か奇数かによって、最大次数nが大小2つの偶数もしくは奇数の2つの異なるu(t)が解として存在することになる。最大次数が少ない方のu(t)の場合、(1-t^2)^(-k/2)の分母よりも次数が少なくない有理関数となり、球座標上で一価連続関数とはならない。

ふむ、どちらの結論も一般のテキストにも見当たらない。どっか間違えた可能性は否定できない。

一般のテキストでは、Rodriguesの公式を根拠に|k|≦|m|しか意味を持たないと書いてあるが、これはRodriguesの公式そのものがmとkが供に正の整数の場合の多項式の導関数表記になっているからだと思われる。負の階数の導関数については一般に定義されていないことに注意(それは微分の逆演算で積分だと考えるのは勝手だがそもそもそれはRodriguesの定義には含まれていないはず)。

テキストによってはk,mが供に正の整数で、k>mの場合にはRodriguesの公式により解は定数0になるとあるが、上の結果では無限級数解になるはず。どちらも方程式の解であることには間違いないが、果たしてどちらが正しい?

それにどうも一般のテキストではLegendre倍微分方程式の解を導出するのに、どれも口裏を合わせたように、Legendre倍微分方程式をk=0としたLegendre方程式をk回微分してとかいうもって廻った方法をつかってRodrigues公式をベースにした解に誘導しているのが気に入らない。どこか間違っているとすれば一般のテキストの方ではないだろうか(そんな大胆なことを言っていいのか?)。

なぜLegendre微分方程式より一般敵なLegendre倍微分方程式を素直に解かないのか、Legendre倍微分方程式の解の特殊なケースがLegendre多項式であることを示さないのか、それがどうしても気に入らない。

(2014/11/21)
ここで気付いたのが、Legendre倍微分方程式上ではkの負号にかかわらず方程式の形は同じなので解も同じと思っていたが実際には上の結果のように、kが正と負とでは非対称な解の集合を持つことになる。この対称性の乱れの原因はどこにあるのだろうか考えたら、仮定解が実はもう一つあることを思い出した。
(1-t^2)の冪が乗じてある仮定解があることを明らかにした際にその冪乗が±k/2であったが、正のk/2だけを扱って、球座標上で解が一価連続とならない-k/2の方は早々と切り捨ててしまっていた。実はそちらでもkが正か負の2つの解の集合があるはずなのだ。



ふむ、この結果を示している一般のテキストを見たことが無いのは確かだ。

u(t)の一階と二階の導関数はそれぞれ



これを先の方程式に代入すると



ということになる。

これから係数の漸化式は




ということになる。

これはm,kが正の整数でm≧kである限りにおいてu(t)はn=m+kを最大次数とする多項式となることを意味する。
kがmより大きい場合にはu(t)がn=k-m-1を最大次数とする多項式解が存在するので、(1-t^2)^(-k/2)の分母の次数よりもu(t)の次数が低くなることから球座標上で一価連続でない有理関数解が現れることになる。

とどのつまりkが正か負かによって、2つの仮定解を解析接続すればよいことになる。

わざわざRodriguesの公式などを持ち出さなくともkが正の場合にはΘ(t)=(1-t^2)^(k/2)u(t)をkが負の場合にはΘ(t)=(1-t-2)^(-k/s)u(t)を解の形式とすればよく、Θ(t)が球座標上で一価連続関数となるのは|k|≦|m|である場合に限ると言えるのである。

自分なりの結論が得られてよかった。

さて解の分類作業を続けよう。

(2014/11/24)
これまでの結果で、m,kの取り得る範囲は明らかになった。

Legendre倍微分方程式の解、Θ(t)が-1≦t≦1の定義域で一価連続な関数であるためには

・m,kは供に整数で|k|≦|m|でなければならない

ということになる。

また

・mが負の整数の場合は線形独立な解をもたない
・kが負の整数の場合は線形独立な解をもたない

ということも言える。

Rodriguesの公式に依らずあくまでLegendre倍微分方程式の解が球座標上で一価連続であるかどうかに基づいている点が一般のテキストと異なる点に注意。
どうしてRodriguesの公式を持ち出す必要があるのか私にはどうもわからない。

これでだいぶ枝葉がそぎ落とされたことになる。

実のところ、当初の命題に関する答えは、一般の慣例に従ってLegendre倍関数の次数をmではなくlに、位数をkではなくmに表記を変えることによって得られるのだが、その前にLegendre倍関数の定数倍の不定性をなんとかしないといけない。
少なくともPn(1)=1の正規化条件で正規化する必要がある。
そのためにはLegendre倍関数の位数を0とした特別な場合としてのLegendre関数(多項式)の正規化を考える必要がある。

(2014/12/10)
さていよいよ多項式解だけ考えればよい段階になったところで一安心して一ヶ月近く経ってしまった。
その間何もしていないとはいえ、ひとつの疑問の答えを探っていた。
それはRodriguesはどうやってLegendre方程式の多項式解が多項式の導関数であることにたどりついたかという点。つまりどうやって彼はRodriguesの公式の形にたどりついたかという興味からだった。
彼の論文など手に入らないと思っていたが、英語のWikipediaをみたら参考文献のリンクに彼の公式が登場する論文が収録されたフランスの論文集のGoogle Booksへのリンクが張ってあった。
早速見てみたところ、驚愕の事実が判明。今日あるRodriguesの公式はLegendre方程式の多項式の解の表現だが、論文ではそれとは違って球座標でのLaplace方程式から導出されたLegendre陪微分方程式の解の表現だったのだ。
意外にも至極まっとうなアプローチで誰もそれまで知り得なかった導関数としての解の形があることをある段階でひらめいたと思われるが、それを確かめるのは容易なことではなかったようだ。
論文の後半に球座標でのLaplace方程式を冪級数法ではあるがちょっと変わった変数変換を使って変数分離法を用いずにLegendre陪微分方程式をストレートに導出しているのが読み取れる。
既にこの段階でLaplace方程式の球座標での一般解は調和関数の任意の線形結合であることが明らかとなる。
問題はLegendre陪微分方程式の解がどのような形になるかである。
彼はいきなり前置きもなく解が以下の形をしていると仮定して方程式に代入している。





Rodriguesがこうやっているから、後生の人はみんなまねして同じようにこうしているわけだね。何故n/2なのかという議論は省かれている。
ただし元祖Rodriguesの場合には少し事情が違っていて、彼は仮定解がもうひとつあることを示している。



この場合、正と負の位数nを持つ未知関数xがどんな形になるか論文の焦点となる。

ここまでは今までやってきたことと一緒じゃん(´∀` )
苦労が報われた気がする。

しかしなんと次の展開でまたしても驚愕の事実が判明。

先の二つの仮定解ynを方程式に代入して得られた結果を、p回微分するという今日のテキストでも定番の方法が使われていた。なんだそれの元祖はRodriguesだったのね(;´Д`)

両仮定解ynをそれぞれLegendre陪微分方程式に代入すると



ということになる。これは前に導出済みのものと同値である(前に導出した式の両辺に(1-t^2)^(±k/2)を乗じれば同じ式であることが確かめられる)。

オリジナルのRodriguesの論文には誤植があり、最初の式の(1-μ^2)の()が抜けていたり、二番目の式の係数符号が違っていたりするが、それは直してある。

それぞれの両辺をμでp回微分すると



ということになる。

ここまでの結果についてはRodriguesは論文の中でM.IvoryとM.Legendreの二人の論文が注釈に引用として書いてある。ということは元祖はIvoryかLegendreか。

実際の計算はLeibnizの公式というのがあるのでそれを使うとよいらしい。確かめるのは読者の課題としよう(´∀` )

どっかで見覚えのある式に見えてきたが、ここで出てくる導関数項と仮定解が同値であることを示すのにRodriguesはかなり苦労をしている。

第一の式が成り立つには、n<mとしてp=m-nの場合



が必要十分条件である。

と切り出している。原論文ではdμの部分が誤植で抜けてしまっているが、上の式ではそれは直してある。

この段階でRodriguesは心の内にxnがたかだかm-n次の多項式であることを確信したに違いない。

ふむ、この時点ではn<mを前提としていてn=mは考慮されていないのね。

ここからRodriguesの苦労が始まり、だいぶ迷走した後に彼は歴史的なひとつの予想を得る。



おやこれは確かに今日知られているRodriguesの公式に良く似ているけど、違うぞ。今日では導関数部分の多項式は(μ^2-1)^mとかだし。
確かにJという定数倍の不定性があることを示しているので、それでも間違いではない。

驚きなのはRodriguesが示したのは今日知られるLegendre方程式の解の公式ではなく、より一般的なLegendre陪微分方程式の解の公式だったという点である。やっぱりそのアプローチでも間違ってはいなかったのだ。やったよママン(ノД`)

おそらく今日Rodriguesの公式として知られる定式化の形にしたのは、Heineだったと思われる。Helmiteはこの公式を見つけたのはRodriguesが最初だと明らかにした。Rodriguesよりも遅れてIvoryとJacobiがそれぞれ独立に見いだして論文に書いた、以来Ivory–Jacobiの公式として有名だったのをHelmiteがそれを覆し、Heineはそれを整理して今日知られているRodriguesの公式に整えたと思われる。
IvoryはRodriguesが引用しているぐらいなので、RodriguesはIvoryの初期の論文から多項式の導関数としてのLegendre方程式の解の存在に気付いたと思われる。実際にIvoryは初期の論文で示唆していたもののそれを論文にしたのはRodriguesの論文から10年以上後のことだった。

論文の後半は上記の予想が正しいことを検証することに費やされている。それまで出てきた方程式に順に予想解を代入して方程式を満たすことを確かめ、Rodriguesの公式から成る球面調和関数(spherical hermonics)の級数展開が球座標でのLaplace方程式の一般解であるという今日n重極子展開式を得て終わっている。やはりこの論文のハイライトは上記の予想に尽きる。

みんな苦労してきたのね。

Heineは彼が整理して定数倍の不定性を無くした形の導関数型の多項式解の表現を自分の公式とは呼ばすにRodriguesの公式と一貫して主張したことが今日につながっている。

これはHeviesideやhertzがベクトル形式に書き直したものを彼らの方程式とは呼ばずに一貫してMaxwellの方程式と呼ばれているのも同じ理由である。後生誰がどのように改良しても、最初に元ネタを提供した人が尊重されるということである。

さて、一ヶ月の間に他にも調べたことがある。Legendre関数は特殊関数のひとつであるが、それを最初に学ぶ機会は数学の解析であるので手元にある高木貞治の「解析概論」にも何か書いてないか久々に開いてみた。
以前一読した時には微分方程式論には触れてないし、特殊関数といってもΓ関数やB関数とか基本関数だけだった記憶があるが、実は違った。
参考文献や引用の類いがまったく無い今では珍しい数学書である「解析概論」だけど、公式の名前も一切記されてないけど、Rodriguesの公式が扱われているのを再発見した。
p119から数ページだが、Legendreの球関数という節が登場する。その最初のページで巷のテキストとは違った切り口からRodriguesの公式が導出され、それをLegendreの球関数と称している。
「解析概論」で高木貞治は元ネタがあるかどうかは別として、直交関数の問題から見事に1ページ足らずでRodriguesの公式を導出している。
Legendre関数はいろいろな数学の分野で登場する。直交関数論もそのひとつで、もうひとつは球関数もしくは調和解析、それ以外にも二階の微分方程式論、偏微分方程式論、ポテンシャル理論とか。それらの分野は離散していて一見するとつながりが無いように見えるが、実は同じものを見ているという代表例である。
高木貞治の示したRodriguesの公式の導出の技をちょっと垣間見て見よう。

彼は最初に部分積分の応用問題として、以下の積分方程式を満たす多項式Pn(x)を求める問題を取り上げている。



これは直交多項式の問題でもある。

関数の内積を上の式のように定義すると、内積が0になる(すなわち直交関数となる)関数が存在する条件ということになる。

問題のn階の多項式Pn(x)は2n次の任意の多項式F(x)の第n階の導関数であるから、




ということになる。

上記が成り立つためには以下が必要十分条件となる。



従って2n次の多項式F(x)は(x-a)(x-b)のn冪乗から成ることが予想される。



従って定数倍の不定性はあるものの



が条件を満たすことになる。

区間[a,b]を[-1,1]とした場合、



ということになる。これは今日知られるRodriguesの公式そのものである。

定数倍の不定性は、正規化することによって除くことができる。この点については高木は何も触れておらず、正規化した結果だけを示している点に注意。いずれにせよ見事である。
おそらく高木はRodriguesの論文も、Heineの論文もHelmiteの論文もとうの昔に目を通しているはずなので(高木の「代数学講義」にHelmite行列とか出てくる)、すべてお見通しなのである。
さすがに数学が血肉化した人だけあって、「解析概論」のどこにもRodriguesのロの字も出てこない、論文に誤記があるし証明の見通しも悪いので記憶に残る数学者ではなかったのかもしれない。
どちらかというと上の導出した式はIvory-Jacobiの形に近い気がする。そちらが元ネタなのかもしれない。
ただ同じ結果を得るために幾つものアプローチがあるのはこのことからも明らかで、だからそれができたからといってどういうことでもない。当たり前になってしまってからだと、アプローチが違っても、当たり前の結果とみられてしまう。ただそれだけのことである。手短に同じ結果を導出するとなると簡単で短い方法の方が良いというのはある。ただし別のアプローチで苦労して導出した人たちが居たことはそこから伺い知ることはできない。
そういう意味で高木貞治の「解析概論」は危険な本であると言える。

Rodriguesの論文の方が若々しくて荒削りだけどドラマがあっておもしろい。そういう論文は数学では珍しいのだが。人間の内面の情緒というかそういうものを感じる。

さてここまで来ると、この問題が実はRodriguesの仕事を追体験させるものであることが判明した。著者がそれを意図していたかどうかは別としてそれは歴史的にも裏付けられたことになる。

(2014/12/16)
先の高木貞治のRodriguesの公式の導出技を見て、その正規化の方法も同じ要領でできることに気付く。
だから正規化した結果だけ示し、行間は自分で考えて埋めなさいという数学書のお約束。



という準正規化条件の下にLeibnizの高階導関数の公式を用いると



ということになる。

一般のテキストでは定数Cを適当に選ぶととか根拠を曖昧(これも自分で考えろということだろうけど)にしたまま上の定数を導入していることが多い。方程式と解くことと正規化はシームレスにはつながらない離散的な視点なので仕方がないことだ。

上の導出でも面倒なので行間は省略してある。行間を埋めるのは読者の課題としよう(´∀` )

この結果を用いると、Legendre陪微分方程式の解も正規化した形で表すことができるようになる。
直接Legendre陪微分方程式の解を正規化しようとすると、(1-t^2)^k/2の項があるので、k≠0の場合はt=±1で関数値が0をとるため上の様な一定の準正規化条件を与えることができないためである。
k=0の場合はLegendre陪微分方程式の解はLegendre方程式の解と同値になるので正規化したLegendre多項式の表現がそのまま適用できることになる。

(2014/12/19)
RodriguesがIvoryの論文から思いついた、Legendre多項式の最大次数はたかだかn-m(nは次数、mは位数)だということは、前に導出したLegendre陪微分方程式の多項式解の係数の漸化式からも知ることができる。



n=m-k(mは次数、kが位数)の場合、多項式の最大次数はn=m-kとなることが明らか。

更に、k=0の場合にはLegendre陪微分方程式はLegendre微分方程式となるため、多項式の係数項は上の漸化式でk=0と置いた



となるから、Legendre多項式の最大次数はn=m(mは次数)ということになる。

残るは問題その多項式がどのように形になるかである。級数展開した形からそれを因子分解しようとしても見通しが悪い。なによりも定数倍の不定性が残っているので、それをなんとかしたとしても、やっぱり見通しが悪い。Rodriguesの公式から級数展開を得るのは容易なことだが、逆はそうはいかない。

Legendre多項式はその係数の漸化式から、nが偶数の場合偶関数、nが奇数の場合には奇関数となることが明らか。

考え中(-.-)

(2014/12/21)
再びRodriguesがどうやって最初に彼の解の予想にたどり着いたか興味があるので論文を読んでみた。

彼はLegendre倍微分方程式の一価連続な解の導関数部分に関する必要十分条件の式を二回積分することによって以下の関係式を導いている。








この辺りはよく演算子法で用いたテクニックと同じだ。

この結果から、彼は導関数の種として(1-μ^2)の冪乗が現れることの根拠を得たことになる。かなり強引であるが、おそらく彼は結果を先に予想して、それにたどり着く答えの一歩手前として上のテクニックを見つけ出したのだろう。

この後に彼は、微分回数pを0,1,...,m-n-1まで順次計算している、

p=0の場合





p=1の場合





p=m-n-1の場合





この結果から、xnは



ということになる。

ここで彼は、







で割り切れると言明している。

(1-μ^2)^mは2m次の多項式なので、それをm-n回微分すると最大次数が2m-(m-n)=m+nの多項式となるので、2n次の多項式(1-μ^2)^nで割ると、m-n次の多項式となるというわけである。

このことは後で出てくる。

Rodriguesの論文をなぞることになってしまっているが、誤記が多い論文だけに、後生の数学者は間違っているとは言わずに自分なりに解釈した正しい式に書き直していたのが判る。

同様にもう一つの仮定解であるx_nについても検証してみると

p=0の場合





p=1の場合





p=m+n-1の場合





(どうやらここで記事の長さの制限を超えそうなので、続きはフォロー記事に続く)

webadm
投稿日時: 2014-3-24 13:28
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
Re: n重極子
続きはこちらで

著者の付録(B.20)の式をとりあえず展開してみようとしたが元記事が行数制限に引っかかってしまったので、フォロー記事で継続。



ということになる。

つまり元々のLaplace方程式の解では、次数nが増えると、それより少ない次数の項も含むのに対して、著者が理論で示した式では特定の次数nの級数項しか含まない点が異なる。

更にいろいろ調べると、どうやらm>0しか扱っていないというのも変らしい。nは確かに非負整数でなければならないが、-n≦m≦nであるらしい。実際のところ負のmのパターンは正のmのパターンを回転させたり鏡で映したような形になるので正のmのパターンだけ見ればよいのかもしれないが、分子化学の世界では具体例として異性体というのが存在し薬学や生科学分野では無視できない。
学生の時の化学の実験でアスピリンを合成したことがあるのだが、「飲んだりしないように、不純物が含まれているので」と言われたことを良く憶えている。今にして思えば異性体のことだったのかもしれない。特に何もしなければ光学的な異性体がどれも同じ確率で合成されるので、同じ効能を持つものだけとは限らないのである。

かつて日本でサリドマイド事件というのがあり、それは睡眠薬の主成分を合成する際に生じる一方の異性体が有害な奇形を引き起こす催奇性を持つことによるものだった。当時は製薬分野でも異性体についてはほとんど研究されていなかったと思われる。工業的に効率良く製造することにだけ努力が払われていたような時代である。その後は化学合成の際には意図した性質を持つ異性体のみを合成する研究が必須になった。そのため分子化学を専攻する学生は優先してこのことを学ぶ必要に迫られている。
皮肉にもサリドマイド事件で発覚した異性体の催奇性がある種の難病の治療に効果が認められている。
特定の異性体のみを合成する不斉合成の先駆的な研究者の一人としてノーベル化学賞を受賞したのは、STAP細胞論文疑惑調査の中間報告会見で頭を下げた独立行政法人理化学研究所理事長の野依良治である。

多極子モーメントで検索すると、mは正負の値を取るように説明されている。

静電場の場合を考えると、n=0では単電子なので電界は球対称となり、向きを変えても鏡に映してもまったく違わない。

n=1の場合は双極子となるので、鏡に映すと方向によっては向きが変わったように見えるだけ。

n=2の四極子ではm=0の軸対称なパターンを除くと、m≠0のケースはいずれも正負それぞれの電界の2つの両腕が直交していて鏡像によって向きが変わったようなパターンを取る。いずれも回転させれば同形(等方体)である。

とここまでは特定のnに関する項だけを考えればよいというのが明らかだが、nが更に増えた場合にもそれは当てはまるのだろうか?

また三次元空間では変位ベクトルInは任意の斜交座標軸に平行にとることができるはずだが、解が次数nによって有限個に限定されるのは何故だろう?

r=∞で0となるLaplace方程式の解から命題の式に辿り付く間にはまだ伏兵が待ち構えているようである。

(2013/3/23)
多極子モーメントで検索していると、「電場勾配」なる見慣れない用語に出くわす。「電位勾配」の間違いかと思ったがどうやらそうではないらしい。東大の講義資料やあちこちの研究所の論文にも頻繁に現れる。更に「電場勾配」で検索すると、どうやらこれが量子力学や量子化学、核磁気共鳴の分野では一般的なElectric Field Grandient(EFG)のことだと解る。EFGは実際にはTensor量で初学者の理解できる範囲を超えたところにある。
n=2の四重極子の主軸を様々に変化させた場合に作り出す電位を導出するとどうしてもTensorという物理量が出てくる。普通はそこには触れずにさっと流す程度だろう。
Tensorをどうするかは考え中。

(2014/3/25)
本棚代わりの押し入れに積んであった古い「岩波 数学事典 第2版」を取り出してLgendreを索引から引いてみた。すると球関数という項目にとてもよくまとまった記述を見いだすことができた。切り口は少し違うが解り易く方向微分による二重極ポテンシャルの導出が例示され、その一般化として多重極ポテンシャルの式も示されている。これはだいたい合っていたようだ。
少ないページ数だがとても良くまとまっていて、自分で描いた任意の斜交座標軸を主軸にとった場合の二軸球関数というものがでてくる。それに続いて【Legendre関数の拡張】としてmが正の整数でない場合への拡張の方法が述べられている。mが不の整数の場合はもちろん、一般のmについても述べられていて。一般のm(複素数)の場合は超球関数という名前がついているらしい。初めて知った。そのほかにも命題の式に出てくる調和関数Yn(θ、φ)の項にもそれぞれ名前がついていることも知った。
なかなか良いところまで来てたじゃないか( ´∀`)

(2014/4/1)
どうやらあちこちのテキストを拾い読みしてみたところ、この種のLaplace方程式の極座標の解(球面調和関数)を解くのは一生に一度でいいから自分でやるのが流儀らしい。どの本もネタバレ禁止の方針をとっているのがおもしろい。それと各著者はそれぞれ独自に解いた経験からか、どれひとつとして記述が似てない。同じ結果に辿り付くのに、まるでアプローチが無限にあるような錯覚さえ憶える程。読んだ本を紹介すると、

「現代の古典解析」森毅 ちくま学芸文庫
森さんの本はどれもできの悪い学生が読んでも読める程度に敷居が低く、またどこから読んでも構わないところが良い。途中から読んで知らない用語や概念に出くわしたら、前の方に遡って読んでいけばよい。途中で笑いのネタもあるので笑うタイミング逸しないように。とはいえ理念を伝えることが目的なのでポイントは押さえてある。Laplace方程式の極座標形も平面極座標の易しい例だけどちゃんとLegendre関数やBessel関数が出てくるところまで示されている。何度も読んだはずだけど、そのことを思い出したのがこの問題に取り組んでからだったのは内緒。

「ベクトル解析」森毅 ちくま学芸文庫
電磁気学にはベクトル解析がつきもので、ベクトル解析だけ勉強すればいいと思うのは礼儀しらず。先の「現代の古典解析」にもご用とお急ぎの方向けのベクトル解析ダイジェストの章がある。こちらも理念と一般教養の充実という視点なので専門的な話には立ち入らない。それでもやっぱりLaplace変換の極座標形について出てくる。その手の演習問題があったら自分でやることと書いてある。
森さんは自宅で調理中に不慮の事故で大やけどを負い、病院で帰らぬ人となってしまった。きっと和服の着流しで裾がめくれていて、そこに火をかけていた調理器の取っ手かなんかを引っかけてしまったのかもしれない。自分でも調理中にめくれた和服の裾が鍋の柄にひっかって料理を台無しにした経験がある。あれが天ぷら鍋とかだったらと思うとぞっとした。森さんは沢山の著書を残してくれているし、懐かしいお声を思い出しながらまるでご本人が頭の中では話しているように読むのが楽しい。

「理論電磁気学」砂川重信 紀伊國屋書店
これは先日新宿のコクーンタワー地下の本屋で買い求めたもの。Laplace方程式の球面極座標形からLegendre陪方程式を導出しその解であるLegendre陪関数を導く過程の要点が解説されている貴重な資料。やはりちゃんと自分の肥やしにするにはLaplace方程式の球面極座標形を導出することを一生に一回は自分でやっておくべきという暗黙の了解がある。それをやるのに難しいテクニックが必要なわけではなく、面倒なだけなのだが。電気回路理論おもちゃ箱の時に微分方程式のオーソドックスな解法をいくつか学んだけれど、それらを使うのだ。

「独習独解 物理で使う数学 完全版」Roel Snieder著 井川俊介訳 共立出版
この本は数年前に本屋で見かけてよさそうなので買ってあったが、大抵のことは書いてあるが、既に知っていることが多いのであまり読まなかった。Legendre関数についてどんなことが書いてあるかと最近開いてみたら、Bessel関数とLegendre関数の類似性が興味深い観点から解説されていた。著者は二一世紀を迎える前にお亡くなりになっている。国内で電磁気学の本は沢山の著者が居るが、随所に他所では得られない示唆を与える歴史的なエピソードやはっとする視点からの解説があるのは数える程しかない。

さていよいよLaplace方程式の球面極座標形を導出するのをやってみる時が来たようだ。

(2014/4/1)
いざ始めようと思うと、へそ曲がりな性格が災いし普通の人が気にならないところが気になって仕方がなくなる。

最初に気になるのが直行座標系から球面座標系への座標変換として定番の以下の式



おいおいこれは球面座標から直交座標への変換だろうと突っ込みたくなる。

じゃ本当に球面座標から直交座標の変換式を書いてみろと言われるとこまってしまう



ここまでは良いが



ということになる。

どのテキストでもこのことは書いてないが、大変都合の悪い事実が明らかとなるからだと思われる。
x=0,y=0をとるz軸上ではψが不定となり直行座標から球面座標への写像が存在しない特異点となる。
どのテキストにも載っている、球面座標から直交座標への写像は単射であり特異点は存在しない。

なのでどうやら球面座標で考えた方がゆくゆく見通しが良さそうである。わざわざ袋小路にぶつかる脇道を示す必要はないのである。

(2014/5/1)

一ヶ月の間何も書かなかったが、何もやっていなかった訳では無い。通勤の電車内で森さんの「現代の古典解析」や「ベクトル解析」を何度も読み返し、以前は解らなかったところが解ったり、以前は疑問に思わなかったところが疑問が生じたりと少しずつ理解が進んでいることを確認した。何が書かれていて、何か書かれていないか、ややもすれば方向性が多方向に広がる可能性のある議論をうまく枝切りして剪定して方向を定める森さんの丹念な意図がやっと見えてきた。

数学の本に限らず電磁気学の本も基本的に脇道を道草することはしない。そこには人によっては本道よりも興味をそそられるテーマがあったりするのだが、そんな脇道にそれたら戻ってこれなくなるのは目に見えているのでばっさりと跡形もなく枝を切る。行儀の良い学生なら枝なの最初から無かったかのように疑問も生じずに前に進むことになる。

生来あまのじゃくなので、やってはだめだというとやりたくなるし、やりなさいと言われたことはやりたくなくなる性分なので、ここでは普通のテキストでは絶対やらない脇道に入ってみることにする。前に電気回路理論おもちゃ箱でもそうすることでHeavisideがかつて通った道と交差する体験が出来た。それは普通はどうでもいいことだけど、自分にとっては貴重な発見であった。

さて脇道とは何かというと、Laplace方程式は座標の直積空間であるCartesian座標系で最初に表記されるが、その解は極座標系もしくは球座標系で定式化されてCartesian座標系による定式化が示されることはない。

何故かというと見通しが良くないからというのが理由らしいが、はたしてそうなのか?自分の目で見てみないと納得がいかない。

最初に三次元のLaplace方程式を解くのは難儀なので、一次元から考えてみよう。二次元のLaplace方程式の解については森さんの本でも出てくるのだが、一次元というとどの本でも見かけない。何故だ?

自分でやってみるしかあるまい。



これが一次元のLaplace方程式ということになる。座標軸が一つしかないので偏微分方程式ではなく、二階の常微分方程式である。これも教科書ではまったく出てこない。解は自明なのか?どうやらそうらしい。

Heavisideの演算子法で解いてみると



これだと右辺が0なので両辺に逆演算子を乗じてもu=0になってしまう。

電気回路理論おもちゃ箱の最後で電信方程式を解く時に発見した方法を使う。それは二回積分して未定積分定数を出現させる方法である。



これをuについて解くと



ということになる。未定積分定数、K0,K1については境界条件を与えることで決まるが、どうみても基本解は一次の線形関数である。
一次関数なので、それを複数重ね合わせても一次関数であることには変わりない。

確かにこれは元の微分方程式を満足するので解であることには違いない。なるほどこれは自明であると言ってもよいだろう。議論の余地はない。

次にどの本にも出てくる二次元のLaplace方程式を同様に解いてみよう。



両辺を片方の座標軸に関して二重積分して未定積分定数を出現させると



これをuについて解くと



(2014/7/19)
電気回路理論おもちゃ箱で分布定数回路の過渡応答問題を解いた時にはうまくいったのだが、電信方程式は双曲型と放物型の混成だったからだろうか? Laplace方程式はそれとはまったく異なる楕円型である。

二次元空間の二階の偏微分方程式では上の様に演算子の冪級数が現れてどうしようもなくなる。

これ以上深入り止めよう。Heavisideもベクトル解析を使うようになってから演算子法を止めてしまったのもそうした理由があるからかもしれないということにしよう。

さて普通の教科書ではこの種のLaplace方程式の解を求める問題は静電場に関する最も高度な問題として華麗にスルーするか、結果だけ示して終わることが多い。

少しアプローチを変えてみることにする。

Heavisideの演算子法は分布定数回路の過渡現象問題を解くのに最も効果的だが、解くべき未知関数が常にHeaviside階段関数(単位ステップ関数)との積であることを前提としているので、そうではない解が存在する場合には解けないことになる。これは解の一意性がある問題ならなおさら。過渡現象の場合、必ずt<0では回路が静定していることを前提としている。t>0の挙動だけに関心があるからである。

ところが一般の微分方程式(偏微分方程式)ではそういった座標空間の特定の象限だけを問題にするものは限られている。大抵は未知関数は座標空間の複数の象限にまたがって存在する。

それとHeavisideの演算子法では微分演算子の指数が1より大きい冪乗を伴った演算子方程式に関しては変換公式が存在しない。これも未知関数が暗黙に単位ステップ関数との積で表されるという前提に基づいているため。このあたりはもうだれも研究していないので、なにか突破口がありそうだけど、入ったら戻ってこれない可能性が十分高い。

そこで偏微分方程式のテキストに書いてあるような初歩的な考察に立ち戻ることにしよう。

二次元空間のLaplace方程式について自明な解を考えてみよう。



以下の独立した2つの同次偏微分方程式の組は上のLaplace方程式を満たすことは自明。



これはHeaviside演算子法でも説けそうである



おろ、異なる2つの解が出てきてしまった。しかし良く考えれば、Aはyに関する一次関数で、Cはxに関する一次関数でも解の条件を満たすことに気づく。

一方uの式を他方のuの式の比例係数として代入すると



従って上の2つのuの式を加えても元の方程式を満たすので



が同次偏微分方程式を満たす自明な解ということになる。

実はこれはxに関する一次関数とyに関する一次関数を乗じた形をしていることに気づく。



これは重要な発見である。

係数および初期条件(u(0,0))が与えられれば自明な特解が導かれる。

Maximaでその一例をプロットしてみると



断面だけ見ると直線だけど、実は曲面だという。これは関数が双線形形式をしているためである。曲面上には極大極小点があるように見えるが、実はどの点を切断しても断面は一次直線であり、極大極小点は存在しない特徴を持つ。

昔々ビニールの下敷きというのがあって、それを左右で反対方向にひねったような形状をしている。もしくは南京玉簾(すだれ)のように一本一本は直線状の棒を並べてひもで結びつけると平面を形成して、やはり捻るとこんな感じになる。


実は自明な解には別のパターンがある。



という条件を満たす。

なんだ片方の項を右辺に移しただけじゃないかと笑うかもしれないが、未知関数uがX(x),Y(y)の2つの積で表される、かつ元のLaplace方程式の解であるものだけを考える。



先の自明な解のように関数の積で表されるものが解であることが確かめられているので、このケースでもそうした解が存在することが期待される。

この関数を条件式に代入すると



従って



という具合にうまいこと左辺はX(x)だけの関数に右辺はY(y)だけの関数となる。先の自明の解と異なるのは、k≠0の場合もあるという点である。k=0なら先の自明の解と同値である。

上の結果から、以下の2つの独立した非同次偏微分方程式が得られる



これをそれぞれHeavisideの演算子法で解くと





ということになる。

従って、未知関数uは



ということになる。

これを元のLaplace方程式に代入すれば解であることを確かめることができる。それは読者の課題としよう(´∀` )

係数K0,K1,C0,C1は境界条件を与えることによって決まる。

また異なる解の任意の線形結合も解であるので、



も解ということになる。Fourier級数みたいな感じだが、実は良く似た性質、直交性を持っている。それを確かめるのは読者の課題としよう(´∀` )

簡単な一例をプロットしてみると



どっかで見覚えのある波形が出てきた。電信方程式の解の時間軸に近い領域(しかし世界線の外で光速より早く伝わる波で実際の現象としては観測されない領域)に現れる波と一緒である。あれは確かBessel関数だったはず。しかし上の式からBessel関数だとは想像もつかない。これがCartesian座標系でLaplace方程式を解いた場合の見通しの悪さである。

Laplace方程式の解法について検索すると、kの取り得る範囲によってもっとバリエーションがあることがわかる。k<0の場合や、kが純虚数や複素数の場合など考えるのは読者の課題としよう(´∀` )

さて道草はこのくらいにして本流に戻ることにしよう。

Laplace方程式の極座標形式を考えることにする。

最初に意図を明確にする必要があるのでストラテジーをあらかじめ立てておく必要がある。

問題を解くには答えの一歩手前の予想が付けば早道なので、それは何かというと

・Cartesian座標系での二階偏微分演算子(∂^2/∂x^2,∂^2/∂y^2)を極座標系の偏微分演算子(∂/∂r,∂^2/∂r^2,∂/∂θ,∂^2/∂θ^2)と極座標r,θを使った形式に変換する

これを実現するためには、その前に

・Cartesian座標系の一階偏微分演算子(∂/∂x,∂/∂y)を極座標系の一階偏微分演算子(∂/∂r,∂/∂θ)と極座標r,θを使った形式に変換する

を解決する必要がある。これには座標変換とそれに関わる微分を使えばできそうである

ということで最低でも2段階のステップを踏む必要があることがわかる。

ではやってみよう


(1) Cartesian座標x,yのポテンシャル関数Uを極座標r,θで変数変換する



(2) ポテンシャル関数UのCartesian座標系での偏導関数を計算する



従ってCartesian座標系の一階の微分演算子は以下の様に極座標系の一階微分演算子と極座標の関数に変換されることになる



従って二階の偏微分演算子を計算すると





ということになる。

演算子(作用素)の計算には細心の注意を払う必要があった。作用する項が複数積になっている場合には、関数の積に対する微分の場合と同様。

従ってLaplace演算子に上の結果を代入すれば



ということになる。

なんだ簡単じゃないか(´∀` )

元のrに関する二階と一階の微分作用素の形は以下のBessel微分方程式の微分作用素の形をしている(これは森さんの本からの入れ知恵)。なのでその解のr方向成分にはBessel関数が現れることが想像に難くない。



さていよいよ本命の三次元を球座標系に変換してみよう(吐血)

その前に簡単な円柱座標系をやってみよう。というよりもそれは上の結果にz軸の項を足し加えただけなんだけど。



なんだそのまんまじゃないか(´∀` )

球座標に関する座標変換は以下の通り



従ってCartesian座標系の一階微分演算子は







ということになる。

従って二階微分演算子は







ということになる。

計算が面倒だった、転記ミスや誤りが紛れ込んで何度も検算をする必要があった。

従って3次元のLaplace演算子は



ということになる。

できたよママン(ノД`)

さていよいよクライマックスとしてこのLaplace方程式の解を求めることになる。

これまで二次元のCartesian座標系での解を求めたりしたが、三次元のCartesian座標系については割愛した。同様に二次元の極座標系でのLaplace方程式の解も割愛した。それらの解の導出手順について良くまめられたテキストが手元にある。「電磁気学基礎理論」熊谷信昭 著 オーム社である。"5.8 Laplace方程式の解" p157からそれらを見ることができる。

それを参考に球座標系でのLaplace方程式の解を導出してみることにする。

基本的には前に二次元のCartesian座標系のLaplace方程式の解を導いた時と同じであるが、3次元なので3段階となる。

最初に元となるLaplace方程式は



ここで二次元Cartesian座標系で発見したように解が以下の独立した単一変数関数の積のものだけを考える。



これをLaplace方程式に代入すると



ということになる。

これだと異なる変数の関数が各項に混ざりあっていて、変数分離されていないので、可能な限り変数分離型に各項がなるように分母や分子を払うと



ということになる。rに関する項を除いては2つの項が完全に変数分離型になっている。

従って自明な解の条件は



ということになる。kは0を含む任意の定数だけを考える。

従って上の条件式は以下の連立微分方程式を与える



第二の式に関しても変数r,θによらず常に成り立つためには以下の条件が成り立つ必要がある



最後の定数は任意の記号でよいが、伝統的にm(m+1)としてある。後でこの方が見通しが良いことがわかるので、結論を先取りする形で意図的にそうしているのである。

さて同様にこの関係式から残る2つの変数分離型の微分方程式が得られる答えの一歩手前まで来た



明確な意図なくしてこうした式は得られない。

さて後は3つの独立変数型の方程式をそれぞれ解くだけである。

最初の式はHevisideの演算子法で簡単に解ける



ということになる。

(2014/8/2)
大事なことをここで書き忘れていた。
Φは球面上で周期関数であるはずなので以下が成り立つためにkは整数でなければならないという条件が付く。



そして二番目の式はというと、どうすんだこれ(´Д`;)



と置き換えると、第二の式は



という具合に一階の微分演算子の項が消滅した。

更に両辺をrで割って、二階の微分演算子の係数を祓うと



ということになる。

テキストによっては最初から解が以下の形をしているとして結果を先取りしているものもある



最初からこうすれば、さっきの小技は必要なくなる。

それでもまだ0階の項に変数rの関数が残っているのでまだ安心できない。

これまでは微分作用素の係数はすべて定数の易しいものばかり扱ってきたが、ここに来て変数係数をとる一般的な形を解かなければならない点が難しい点である。

大抵のテキストでは面倒なので結果だけ示して終わっている。導出は読者の課題という格好だ。いろいろな方法があるし、どれも面倒なので結果だけ覚えておけば十分ということだろう。もちろん結論を先取りして議論をすることも可能であるが、どっか腰砕けの感じがしないでもない。

たとえば結果を先取りして解がr^nの形をしているとして、代入すれば



これをnに関して解くと



という結果が得られる。従って解は



ということになる。異なる解の線形結合もまた解であるので



この結果が得られただけでもご用とお急ぎの読者は小躍りするかもしれないが、誰が最初に解がr^nの形をしていることを見つけたのだろうかという疑問が最後まで残る。それがもし適当に思いついたということだったらやはり腰砕けに近い敗北感を味わうかもしれない。

(2014/8/2)
歴史的には冪級数を解とする一般の微分方程式について研究した19世紀のドイツの数学者Frobeniusの結果を用いたFrobenius Methodだと思われる。これはこれで電磁気学とかでは好都合なのだが、最初から解の形を制限している点に注意が必要である。多くのテキストがそのことを一言書いてあれば、正統な方法だと納得するのだがまったく明記されていない点が問題だろう。インターネットで検索すると出てくるごく一部のテキストだけはその点を明記してあった。

Frobeniusに先だって18世紀にEulerが変数係数を持つEuler微分方程式について研究しており、おおらかな数学の自由な発想で19世紀の数学者は常々後進に"Eulerを読め!、Eluerを読め!"と口が酸っぱくなるほど言って聞かせていたぐらい、数学者の理想がそこにあったからだろう。19世紀はMaxwellの電磁気学も登場しポテンシャル理論については数学、物理隔たりなく激しい議論が行われた古き熱い時代でもあった。今ちょうどそうした時代の人々と同じ土台にたっているわけである。

(2014/8/12)
このrに関する微分方程式は線形代数的には固有値方程式なのは明白で、固有値はm(m+1)/x^2と変数係数であるが、mが整数値の解しか存在しないとすれば、固有値の数は無限加算個あることになり、それぞれの固有値に対して解が存在することになる。

しかし手元の微分方程式のテキストをみても、どれも二階微分方程式になると、どれも定数係数だけに限って議論を進めている。なんですかそりは(´Д`;)

電磁気学のテキストでは解だけぽんと出して、元の微分方程式に代入すれば条件を満たすから解であるという開いた口がふさがらない解説で逃げ切っているものもある。まあそれでもまったくLaplace方程式を解くという問題に触れないテキストもあるので、まだ問題に触れているだけでもましなのだが。実はLaplace方程式を解かなくても電磁気学の大半は学ぶことができる。ただどうしても実際問題として電場や磁場を計算する時には否応なしにLaplace方程式に正面から向かい合う必要が出てくる。現実的な問題では境界条件が複雑なので、解析的に解くのは困難で数値計算に頼ることになる。それだけで飯が食っていける世界もある。学校ではそっちをむしろ教えているところもある。ただし厳密解は解析的に導かないと、それと計算で求めた結果と近いか遠いかは判断がつかない。

なんの話だったっけ。ああ、二階の同次線形微分方程式の解法ね。

昔いろいろ学んだ記憶があるけど、今再びそれらのテキストを開いてみると、上に書いた体たらくで、入門にはなるけど直接的には役に立たないということがわかった。

これは自分で解法を考えるしかなさそうである。

(2014/8/16)
たかが一般線形微分方程式、されど一般線形微分方程式。世の中に一般線形微分方程式と題打って公開されているテキストが多数あれど、どれも中身は定係数微分方程式という詐欺。表題に偽りありなのだ。それはどうでもよいとして。

実はMaximaのマニュアルを見ていたら、Maximaで問題の方程式が解けるらしいのでやってみた。



ほほう、どうやって解いているのだろうか興味深い。

いずれもlog(x)を指数とする指数関数が現れている。これはとどのつまり



ということである。

(1+sqrt(4*m*(m+1)+1))/2というのをmに関してプロットしてみると



興味深いことに、mが整数をとる時に式の値も整数である。



同様に(1-sqrt(4*m*(m+1)+1))/2についてもプロットすると





ということになる。

このMaximaの結果からm=-1,0は別の解になるのでmが0より大きい整数値をとる場合に限れば



ということで、先にfrobenius methodで導出した解と一致する。Maximaもなかなかどうしてやるじゃないか(´∀` )

(2014/8/18)
変数係数線形微分方程式で検索したら芝浦工業大学数理情報研究室の応用数学入門の中の変数係数線形微分方程式ページにずばり、問題の方程式の解法が解説されていた。

ストラテジーとしては変数係数微分方程式を変数変換によって定係数微分方程式に書き換えてしまうというもの。定係数微分方程式になれば解けたも同然。

問題の方程式は以下の形をしている。



これを変数xをパラメータtを変数とする連続関数に置換することで以下のような形に持っていけないだろうか?



そうすればQ(x)で両辺を割ってQ(x)が消えてパラメータtに関する定係数微分方程式になる。



こうなってしまえば答えの一歩手前まで来たのも同然、Heavisideの演算子法で以下の様に解ける



ということになる。上の解はm=-1/2の時は係数の分母が0となるため不定となり解ではなくなる。それでもm=1,2,3,...の正の整数値をとる場合にはv(t)は一価関数となることは指数関数の性質から明らかである。またm=0,-1の場合も、元の方程式の0階の項がなくなってしまうので、元の方程式の解であるとは言えない点にも注意が必要である。

ここで結果の先取りでt=log(x)とすると、Maximaの解と一致することは明らか。次にこの変換をどうやって意図的に見いだす方法を考えよう。

x=f(t)に変数変換した場合未知関数u(f(t))の二階微分は



ということになり。従って少なくとも問題のtからxへの変数変換は以下の条件を満たす必要がある。



xで1階微分すると1/xになり、二階微分すると-1/x^2になる関数はなーんだ? 
という謎々(謎々は実は連立方程式問題だったという事実)の答えは積分すれば明らかに自然対数



ということになる。

従ってその逆関数



が必要な変数変換ということになる。

できたじゃないか(´∀` )

これがわかった時の爽快感は格別だった。通勤電車の中でメモ用紙上で計算して確かめた時は長い便秘が解消したような気分。

やったよ(ノД`)ママン

まだ最後の方程式が残っている。これがラストボス級。

どうやら行数が尽きてしまったようなので続きはフォロー記事で。
webadm
投稿日時: 2014-2-10 19:02
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
n重極子
さていよいよ理論の時にサボったn重極子の電位の式の導出

n重極子による電位が以下の形になることを示せ。

p^(n)はn重極子モーメントで





Pn^mは陪Legendre関数でanm,bnmは変位の方向によって定まる定数である。

というもの。

どうすんだこれ(;´Д`)

数学的帰納法でやるしかないのか。

こんなの誰が考えたんだろ。

n=0の単極子(monopole)の場合の電位は



ということで成り立つ。

n=1の双極子(dipole)の場合の電位は



Legendreの陪関数がどうなるか検討もつかず。

n=2の四重極子には二種類あって、一次元直線上に双極子が距離ベクトルI1だけ隔てて置かれたものと、二次元平面状に双極子が距離ベクトルI1だけ隔てて並列に置かれたもの。

前者はI0とI1が同じ方向なので



後者はI0とI1が直交すると安定するので



ということになる。

n=3の八重極子は四重極子で立方体を構成したような感じで



n=4の一六重極子は座標軸が3つでは足らない(吐血)

I0,I1,I2,I3のうち2つは同じ座標軸方向とすると



ということになる。

この一六極子をプロットしてみると



おろ、一六本腕があるわけじゃないのね。座標軸を共用している分だけ四本消えちゃったのかな。

共用する座標軸をx軸にすると向きが変わる



お遊びはこれぐらいにしとかないと(;´Д`)

n=5の三二極子は(吐血吐血)



ということになる。



腕はそんなに増えなくて18本。そのうち二本はちょっと短め。座標軸の取り方の自由度はもっとあって、その他の組み合わせについては読者の課題としよう( ´∀`)

n=6の六四極子の場合(吐血吐血吐血)



ということになる。



さて腕はいったい何本あるのでしょうか、これも読者の課題としよう( ´∀`)

n=7の一二八極子に関してはもう血も吐けないので読者の課題としよう( ´∀`)

なんとなく成立するように予想されるが証明するとなるとこのやり方は筋が悪い気がする。

再考中...

グラフを描いていくと、nが多くなればなるほど全方位に腕が伸びていくのがわかる。これはこれで次の問題の多重極子展開を直感するという意味があるけど、今の問題には必要ない。

著者の解答をこっそり眺めると数学的な抽象化のテクニックを使っている。著者のアプローチをなぞるだけでもテクニックの研究にはなるが、理解に達したとは言えない。やはり辛抱して別解を模索すべきだろう。

(2014/3/8)

数学的帰納法を勉強し直す必要があった。数学的帰納法は実際には演繹法である。この問題の命題の一部についてそれを確かめていこう。





数学的帰納法を用いる場合に最初に明確な数学的な意図が無いと始まらない。それは上の命題が任意の自然数nに関して成り立つということを示すということである。この命題をどうやって思いついたかを示す必要はないわけである。それは思いついた人の極めて人間的な発案によるわけであり、定まった方法や手順があるわけではないということ。

さてここで上の命題を証明するのに、理論の時に描いた以下の図を引っ張り出すことにする。



この図の最も左端のn=0(単電荷)の場合の電位については自明で



が成り立つ。

次にn=1の時に成り立つか確認する必要がある。変位ベクトルIn-1は一般に任意の斜交座標系を取り得るので、以下の図で考える。



負のモーメント-p^(0)の単極子と正のモーメントp^(0)の単極子が変位ベクトルI0隔てて置かれている。

その中心点から距離ベクトルrだけ隔てた点に作り出す電位は



どうすんだこっから(;´Д`)

どうやらこれはdirectional derivative(方向微分)という概念を再発見したくさい。

そもそも一般的な斜交座標系に基づいた時点で危ない領域へ足を踏み込んだ予感がしたがそれは当たっていたようだ。

上の結果は、点Pに単位電荷(1C)を置いた時に単極子(モーメントが-p^(0))から単極子(モーメントがp^(0))の方向(電位が低い方から高い方へ向かうので負の値となる)への電位勾配に電気双極子のモーメント(p^(1))を乗じた形になっている。

題意で提示されている元々のn重多極子の電位の式に出てくる偏微分演算子が斜交座標系を想定すればそもそも通常(normal)の偏微分ではないことは確か。

そうだと判れば



ということになる。意外にも電気双極子の作り出す電位のエレガントな導出方法を見つけてしまったようだ。

変位ベクトルI0の大きさは重要ではなくその方向だけが意味を持つことになる。電気双極子の理論を学んだ時には点Pへの距離ベクトルrが電気双極子の変位ベクトルI0より十分大きいという視点だったが、ここでは逆に変位ベクトルI0を0に極限移行するという視点に立っている。逆転の発想である。

これで少し理解が深まった。

これを分子化学者の卵は初年度で理解しないといけないとなるとどんだけ敷居が高いんだ(;´Д`)

なお斜交座標系と方向微分は実は後々に登場することになるTensor解析につながっていく。

n=2の場合も同じ様にやってみると

モーメント-p^(1)の電気双極子とモーメントp^(1)の電気双極子が変位ベクトルI1だけ隔てて空間に置かれている時に、その中点からの距離ベクトルrだけ離れた点に作り出す電位は



ということになる。

n=2になると分母に8πε0が現れるのは、以下のモーメントの定義から





となるためである。

さてn=0,1,2で命題は成り立つことが判ったので、ここでいよいよ数学的帰納法のクライマックス

任意の自然数をmとしてn=mとした場合のn多重極子が中心からの距離ベクトルr離れた点に作り出す電位が以下であると仮定する



次にn=m+1のn重多極子の場合に成り立つことを示す。

モーメント-p^(m)の多重極子とモーメントp^(m)の多重極子が変位ベクトルImだけ隔てて置かれた場合に中心からの距離ベクトルr離れた点に作り出す電位は



ということになる。

従ってn=0,1,2で成り立ち、任意のn=m,m+1で成り立つので証明された。

(2014/3/20)
たまたま著者名で検索したら「理論電磁気学」砂川重信に上の証明に使ったのと同じ電気双極子の電位の導出方法が示されていることが判明。
それと手元にある「場の理論」ランダウ・リフシッツの後半に登場する不変電磁場の章で多極子モーメントを用いた電位導出のところで同じ切り口は異なるが同じアプローチが用いられているのを再発見。
まあ既に誰かが書いたのを読む前に自分で見つけたのだから良しとしよう。そうやって身についていくのね。本当は方向微分のところが厳密ではないけど、それを示すには多次元のTailor展開式を導く必要がある。大変なので書いてある本があっても二次元止まりで、それでもかなり面倒。普通に教わる偏微分は方向微分の特殊なケース(微分方向が直交座標軸と平行な場合)。そのとき数学的に近似のテクニックが使われていることにちゃんと触れている本は信用できる。今度本屋で見つけたら購入しておこう。

命題の半分はこれで証明できたが、残り半分の命題が残っている。まだ100点中50点というところだ。

陪Legendre関数がなんなんだかさっぱり判らないし。

考え中...

日本語だとLegendre陪関数とか随伴Legendre関数とか言われるものは、英語ではAssociated Legendre functionと称される。
元々はLegendre関数というものがあり、Associated Legendre functionはLegendre関数を含む形で定式化されるということが判った。それでAssociatedなのね。日本語で言えば、準Legendre関数みたいな感じ。

Legendre関数はLegendre微分方程式の解で、Associated Legendre functionはAssociated Legendre equationの解ということみたい。

なんだそうだったのね( ´∀`)

Legendre微分方程式は



Associated Legendre equationは



m=0の場合、Associated Legendre equationはLegendre微分方程式と同値だよね。

Legendreというフランス人数学者は一八世紀から一九世紀にかけて数論や解析学において先駆的な業績を多数残した数学者で、大事な芽は一九世紀を代表するGaussなど当時を代表する数学者によって大きく開花し彼らを一躍大数学者にしたてあげた縁の下の力持ち的な存在だった。老後は年金を没収されるとか不運な人生だった。先見性のあるテーマに関する研究成果を小出しに沢山発表したことが、後の数学者の格好の研究題材になたことは言うまでもない。Gaussもその恩恵を受けた一人だが、Legendreの最後を知ってかGaussは自分の研究成果を小出しにすることを一切せず日記だけ残して残りは墓場に持っていってしまった。

なんの話だったっけ、ああLegendre関数ね。

手元にある電磁気学のテキストでLegendre関数が現れる多重極子が作り出す電位の式の導出について触れているものは少ないが、ないことはない。

「電磁気学演習」砂川重信 物理テキストシリーズ(岩波書店)

に変位ベクトルを三次元のz軸と平行にとりz軸を中心に軸対称な平面極座標系の易しい場合について多重極子の作る電位の式にLegendre多項式が現れることをLegendre多項式の結果を用いて駆け足で紹介している。それでも数ページに渡る難解な部分である。解らなければ飛ばしても後の内容の理解に影響はない。

この本は姉妹本「電磁気学」もあって、前者の内容には頻繁に後者の内容を参考にせよという記述が現れるので、実は二冊で一冊ということになる。

書店で購入する際には両方を合わせて購入することをお勧めする。さすがにLegendre多項式の導出に関しては理論物理のテキストを参考せよとしか書いていない。

きっとそこまで立ち入ってしまうと大変なのだろう。

さて残り半分の命題の証明だが、著者の解答をちらりと覗き見ると、かなり面倒そうな手順の要点をかいつまんでさらりと導いているように見える。それをなぞるだけでもある程度の知識と訓練が必要に思える。

命題では三次元極座標のθとψを変数とする関数が出てくるので、少なくとも二次元平面極座標で済む話ではない。

既に証明した部分を三次元極座標表現に座標変換する必要がある、この種の変数変換はどの教科書にも一生に一度は自分でやっておくべきと必ず書いてある。昔は結果だけ暗記していたのだが、それだといつまでも苦手意識が残ったままで禍根を残すということだろう。

ちょっとあらかじめ覚悟が必要である

(2014/3/21)
手元の古書「A COURCE OF MODERN ANALYSIS」WHITTAKER & WATSON を見るとLegedre多項式はLegendreによって以下の二項展開で現れる係数としてLegendreによってもたらされたとある。

|2zh-h^2|<1とすると



と二項展開される。

ここでPx(z)は以下の様に定義される



従って一般に



ここでmは(1/2)nもしくは(1/2)(n-1)のいずれかの非負整数に限る。

証明は数学的帰納法で出来ると思われるので読者の課題としよう( ´∀`)

WHITTAKER & WATSON本では更にz=cosθと置き換えると



と展開されLegendre多項式は



と表すことができる。

θを実数に限れば



が常に成り立つので



となることをLegendreが示したとある。

これを見ると、多重極子の変位ベクトルInを常に直交座標系のz軸に平行にとった場合、z軸を中心に軸対称となるケースで問題の命題の後半の式が成り立つことがわかる。

n=2以上になると自由度が増して、異なる変位ベクトルは任意の直交軸や斜交座標軸に平行にとることができるためLegendre多項式では成り立たないことが明らか。

そこでLegendre陪関数の登場ということになるのだろうか。

再びWHITTAKER & WATSON本のLEGENDRE FUNCTIONの章を読み進めるとLegendre方程式の解として2つのLegendre関数(第一形式と第二形式)が登場し、終わりの方に様々な形のLegendre陪関数が登場する。

実はLegendre陪関数だけ調べてもこの問題の証明につなげるにはほど遠いことが解る。

WHITTAKER & WATSON本の"THE EQUATIONS OF MATHEMATICAL PHYSICS"の章に問題の命題の式と良く似た式を見つけることができる。
それは球面での境界条件を満たす極座標系でのLaplace方程式の解



である。

Laplace方程式については静電場の場合に後で必ず学ぶことになるが、それを分子化学専攻の人は優先して学ぶ必要があるだけのことのようだ。分子化学専攻の人はこれだけ知っていれば、それ以外の電磁気学の事はほとんど知らなくても良いらしい。

WHITTAKER & WATSON本では上の解を導く際に、Legendre関数の章で紹介されているFerrersのLegendre陪関数の定義を利用している。
Legendre方程式の解とLaplace方程式の解の二つの合わせ技でようやく答の一歩手前まで辿りつけるということが解った。

{}内の式はnが非負整数の場合のn次のsurface harmonicsと呼ばれる。それにr^nを乗じたものは、n次のsolid harmonics(もしくはspherical harmonic)と呼ばれる。

surface harmonicsで検索すると沢山ヒットし、英語版のWikipediaのspherical harmonicsのページに詳しい解説を見いだすことができる。

spherical harmonicsは19世紀にThomsonとTaitによって直交座標系において明らかにされ、Clebschと同時期にそれが座標変換によっても不変であることが見いだされたとある。
Taitは結び目理論においてTopologyの祖でも有る。

ここまでの独自の調査によって得られた公式と問題の命題の式とは微妙に違いがあることに気づいた。数学のテキストにはr^nを乗じた形のspherical harmonicsしか示されていないのだ。しかし問題の命題はr^(n-1)で割られているのだ。

こっそり著者の解答を見てみると、大筋では間違っていないが、Laplace方程式を解く際の境界条件が数学のテキストとは異なっているらしい。著者は解答だけでなく、その境界条件での解(B.20)の証明も付録「数学と公式」に付記していたのだった。

Laplace方程式を解く際の境界条件として、電位がr=∞で0になるケースを考える必要があったのだった。数学のテキストではr=0で0となるケースしか示していないのだった。

いやはや奥が深い。

このspherical harmonicsの議論は手元の「量子力学」ランダウ&リフシッツの最初の方にも出てきていて、やはり距離が∞で0となる解だけを扱っている。数学者と物理学者とでは嗜好がまったく異なるのね。

あとちょっとだけど新たな疑問が湧いてきた

付録(B.20)にあるLaplace方程式の解は



とあるが、これは微妙に著者の命題の式とは違っている。命題の式ではspherical harmonicsがmの次数による級数になっているが、付録ではnとmの二重級数になっている点が決定的に異なる。しかも1/r^(n+1)が級数の外に出ているし。

付録(B.20)に関する著者の付記した証明手順の最後にもやはり二重級数の式で1/r^(n+1)が級数の中にある。

どうすんだこれ(;´Д`)

これ以上はどうやらフォーラム記事の行数制限で書けないらしい。

続きはフォロー記事で。
webadm
投稿日時: 2014-2-10 17:27
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続:電気二重層
次は前問の続きみたいな問題

半径a,厚さtの円板の表裏に一様な面密度±σで帯電しているとき、円板の中心線上の板から正電側に距離zの点Pでの電位と電界を求めよ。

というもの。

これは前問で一部やってしまったのでどうしようか。

前問の結果を利用しよう。

電位は以下の通り



従って電界は



ということになる。

電気二重層が円板でかつ点Pが円板の中心線上にある場合、中心線に接する方向以外の電界はすべて相殺されて消失するので計算は超簡単になる。

点Pで方向によって非対称な電位勾配を生じるようなケースを考えると途端に計算が複雑になるので、これ以上他の形状を考える問題は見当たらない。実際に電気二重層が正方形だとか、円板の中心からわずかにずれた点を通る垂線上に点Pを置いて計算してみれば、どこに点Pを置いたとしても電界は非対称となり式が大変複雑になることがわかる。

今はそれでも形状さえ与えられれば計算機ソフトで電界分布を計算することも可能だが、計算機が無かった昔は導電性のある電解液に同じ形状の電極を沈めて電荷を帯びたように電圧を印加し、その周囲の電解液中に電圧分布を電圧測定プローブを置いて電位差を測定することで電位分布を測定していた。今では製造されなくなった真空管や陰極線管(CRT)などの電位分布もそうしたモデルを制作して電解液中に沈めて電位分布を測定しながら設計していた。CRTのように最近まで製造されていたものは、晩年は計算機で精密に計算が出来たので、高精細な大型TV用ブラウン管なども設計が可能になったと想像されるが、程なくして液晶ディスプレイに駆逐されてしまった感がある。液晶ディスプレイも同じように電界によって液晶の分子構造を捻って偏向度を可変する原理なので、こちらは後発な技術でありながら計算機を最大限に利用して最初から設計されていると思われる。
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投稿日時: 2014-2-9 2:31
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電気二重層
次は電気二重層の問題。

強さτの電気二重層によって、それを見込む立体角がωであるような点に生じる電位を求よ。

というもの。

さて電気二重層ってなんだっけ(;´Д`)

Helmholtzの名前は覚えている。電磁波を実験で発見したHelzはそのお弟子さんで、論文にも師匠のアイデアが生かされている。

電気双極子も電気二重層もHelmholtzの時代のアイデアだったけど、長いことそれが何故実験結果と良く一致するのか謎だったというのも憶えている。

しかし肝心な公式は忘れた(;´Д`)

立体角はかろうじて憶えている。閉じた曲面内の一点から曲面の内側を見込む立体角は4πであること。

円盤の中心から離れた点から見込む立体角は、中心から円盤の縁までの角度がθなら、ω=2π(1-cosθ)であることも憶えている。

電気二重層の強さτと、立体角と電位の関係はすっかり忘れてしもた(;´Д`)

最初から自分で考えたほうがよさそう。

こうした昔の人のアイデアを忘れてしまうのはユニークな概念や理論というのは独特の定義から成り立っているからに他ならない。その独特の定義を忘れ去ってしまうといくら良いアイデアでも理解することは困難となる。

まず電気二重層の強さを以下の様に定義する

厚さtの薄い膜の表と裏に互いに逆極性の電荷が電荷面密度σで分布している場合を電気二重層と呼び、その強さτを以下の様に定義する。



膜の表面の無限小平面dS当たりの電荷を点電荷と見なすとそれは表と裏で逆極性の電荷が距離tを隔てた電気双極子を構成すると考えることができる。この無限小電気双極子が電気二重層の中心から距離zだけ離れ接平面とθの方向にある点Pに作る無限小電位は、



ということになる。

そこで点Pから電気二重層面に垂線を下ろした点を中心として半径aの円盤を見込む場合、点Pに生じる電位は、円盤の中心から半径rの幅drの無限小円環の作り出す電位を積分することによって



ということになる。

電位が立体角ωと電気二重層の強さτで決まることになる。

著者は立体角ωの定義から無限小の立体角dωに基づいた無限小の電気二重層の作り出す電位を積分することによってより強い結果(二重層面の形によらない)として同じ結果を導いている。著者のアプローチの方がエレガントであることは確か。まあこれでも半分の点数はもらえるかもしれない。
webadm
投稿日時: 2014-2-5 6:43
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電気四重極子
次は電気四重極子の問題

一辺が2lの正方形ABCDの頂点に+q,-q,+q,-qの電荷があるとき(電気四重極子)。正方形の中心Oから辺とθの方向にr(≫l)だけ離れた点Pでの電位を求よ。



というもの。

電気四重極子は互いに逆向きの電気双極子が2lの距離隔てて置かれているもの。

アプローチとしては(1)正方形の4つの頂点の正と負の電荷が点Pに作り出す電位を重ね合わせる、(2)逆向きの2つの電気双極子がそれぞれ点Pに作り出す電位を重ね合わせる、が考えられる。

このケースでは複数の点電荷を一つの点電荷に置き換えるという手は使えない、なぜなら正と負の電荷分布の重心が一致してしまうため無極性となってしまうからだ。

(2)については読者の課題としよう( ´∀`)

計算が簡単な(1)でお茶を濁すことに。

頂点A,B,C,Dの電荷がそれぞれ点Pに作り出す電位は



ということになる。

電位0の等電位線がθ=0,π/2,π,3π/2の方向が伸びていることから、この平面状の電気四重極子が三次元電位図を描くと4つの腕を持つことは容易に想像できる。電位0の等電位線は平面に垂直な方向にもあり、それは電気四重極子の中心を通る。その立体電位図は理論の時にプロットしたものがある。

いやはやは、想像以上に計算が大変だった。
最後はMaximaで一気に計算したけどね( ´∀`)
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投稿日時: 2014-2-5 6:28
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電気双極子
次はようやく電気双極子の問題

2lだけの距離はなれた2点,A,Bにそれぞれ-q,+qの電荷があるとき、(1)ABの中点OからABとθの角をなし、rだけ離れた点での電位を求めよ。(2)r≫l(双極子)のときの電位と電界の近似値を求よ。

というもの。

理論の時に一度やったけど、ちょっとモデルの流儀が違う。2つの電荷を結ぶ線分の長さを2lにするかlにするかの違いだけど。



(1)は-qと+qの電荷がそれぞれ問題の点に作り出す電位を重ね合わせればよいので



ということになる。

r->r+の場合には電位は正に、r-<r+の場合には電位は負になる。r-=r+の場合には電位は0ということに。

(2)のr≫lの場合の電位は二項展開を用いて



ということになる。

2つの電荷の距離2lと電荷qの積を大きさに持つ電気双極子モーメントで表されることになる。

さて同じ点における電場は



ということになる。

P.S

一般二項定理はNewtonが定式化したものだが、近似を求める局面でいつも登場する。Newton自身は対数計算するのにこれを駆使したらしい。当時は計算機もなかったから、天文学とかで用いる大きな数値の演算には対数表でかけ算や割り算を足し算と引き算に変換して、結果を対数表で元に戻すという処理が不可欠だった。
webadm
投稿日時: 2014-1-26 1:37
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一般の体積電荷
次も体積電荷の問題だけど、図も描けない一般化された体積電荷に拡張する純粋に理学的な問題。

有限な範囲内の同符号の電荷分布から十分遠方の点に生じる電界は、電荷が一点に集まったとしたときの点電荷から生じる電界によって近似されることを示せ。

というもの。

こういうのは学校で試験に出やすいよね。まずもって問題文の意味が理解できない人は他のもっと答えられそうな問題を先にやったほうがいい。

問題文では電荷分布に関して以下の2つの前提しか与えていない大変緩やかなもの。

・電荷分布は有限な範囲内に制限される
・電荷はすべて同符号である

今までの問題というと具体的に図が描けるような特殊なケースがほとんどだったけど、ここまで条件を緩やかにすると一般性をかなり保てるようになる。言い換えれば抽象的色彩が強まったと言える。

こうした問題に臨むには数理には数理でしか戦えないので、純粋数学のテクニックを駆使する必要がある。

問題文ではそれ以前の問題で典型的だった、σのような分布密度とかいうのも定義されていない。数理的な問題を扱うときに最もやってはいけないのは、書いてないからといって読む側が勝手な定義を追加していってしまうことである。どうしても一般性の高い問題提示の場合には、問題に臨む側としてはもっといろいろ具体的な条件で考察範囲をどんどん絞り込んでいきたいところ。与えられていないからといって書かれていない制限事項を勝手に付け加えるべきではない。

たとえば分布密度に関してはなにも制限が与えられていないので、以前の問題のように電荷密度を一様であると仮定して考えるのはよろしくない。暗黙のうちに分布密度が空間の場所によって変わるという一般的なケースをすべて考察対象から除外してしまうことになる。それで少し具体的に見えてくるものがあるかもしれないが、それはすべての可能性のほんの一握りの特殊な例に過ぎない。

ここでは電荷分布は一定であるとは限らない(そういうふうに条件がつけられていない)のだから、空間座標を変数とするスカラーポテンシャル関数と定義しても一般性は失われない。

次に必要なのは、分布範囲が有限な範囲に限られるというのがかなり自由度が高すぎて積分もできない。しかし有限は範囲に収まるということは、どこからどこまでという境界が存在するということの言い換えであると考えてもよいだろう。それを体積電荷の境界(Boundary)としてBでもよいし体積(Volume)そのものでVと定義しても一般性は失われない。範囲が有限なのだから、電荷が存在する座標に上限と下限がそれぞれ存在しそれは有限(すなわち無限大よりは小さい)ということと同値である。

境界がひとつの閉域だけから成るという勝手に仮定するのも禁物である。範囲は有限だが、それらがみんなつながっていてひとかたまりである必要はまったくない。宇宙空間の様に互いに離ればなれにご近所同士というのもあり得る。範囲が有限だといってもどんどんと遠くに離れれば一点にしか見えなくなる。

まずもって電荷密度ρを3次元直行座標pの関数とし、有限な領域V内だけ電荷が分布しているとすると



と定義することができる。

ρは3次元の座標空間の元pを一次元空間(スカラー)に写す写像であると考えてもよい。

従って領域V内の無限小体積dV中に含まれる無限小電荷量dqは



ということになる。

従って領域V内に分布する総電荷量qは



ということになる。

一般的には領域内の電荷分布密度は一様ではないので、以前の計算問題のように、電荷密度が定数ではないから積分の外に出すことはできない。電荷密度が定数というのはこれの特殊なケースだということになる。

ちょうど電荷密度がσで一定という場合には、密度関数は以下の様に定義されることになる。



そうするとσが積分の外に出せて



ということになる。

これは領域Vの体積と電荷密度定数σの積ということになる。これは特殊なケースということで一端忘れよう。

次に点pにある無限小電荷dqが十分離れた点Pに作る無限小電位は



ということになる。

従って領域V全体に分布する電荷によって点Pに作られる電位は



ということになる。

従って領域Vに分布する電荷が点Pに作り出す電界は



ということになる。

こっからどうすんだこれ(´Д`;)

積分と微分の順序は一般的に交換できないと学校で教わったよね。一度教わるともう怖くて交換とかできないよね。でも何故交換できないかは詳しく教わってないよね(そんな時間なかったし)。

で良く見ると、上の被積分関数の中で分子のρ(p)は点Pの位置には依存せずに定義されているよね。そうすると点Pに依存するのは分母の距離だけ。なのでx,y,zに関する偏微分はξ、η、ζの積分と順序が交換できることに。



ということになる。

厳密に細心の注意を払うと、被積分関数はP=pに特異点があり、そこでは微分ができない。幸いにして、p=(ξ、η、ζ)が走る範囲は点Pから十分離れている領域V内だけなので被積分関数は領域V内で微分可能で連続であるから微分と積分の順序交換しても結果は変わらない。

さてこっからどうすんだ(´Д`;)

頭の中で考えるだけだとはっきりしないのでへたくそな図を添えると



ということになる。

どっか遠くに原点Oがあって、そこからの距離ベクトルPとpを考え、pは体積電荷が分布している領域Vを走るという想定。

点Pの近傍で遠方の体積電荷が与える電界が生じるのは明らかだが、体積電荷の総量が遠方の一点にあると近似できるためには、その一点がどこかに存在しないとならない。

P-pの平均値をとればなんとなく領域Vの中心になりそうだが、電荷分布の中心というのは体積電荷密度ρ関数に依存するので、体積の中心とは一般に一致しない。

座標の原点を点Pに移動してみると





ということになる。

体積電荷密度の偏導関数との畳み込み積分みたいな形式になる。
これは元の座標系で伴っていた特異点の問題が無いだけ易しいがこの問題に関してはその特異点が領域Vの範囲外なのであまりメリットがない。



原点Oから距離ベクトルRの点に領域V全体に分布する電荷の中心が存在すると仮定して、それが点Pから距離ベクトルRだけ離れているとすると、題意は以下の命題を証明することと同意である。



そういうことだったのね( ´∀`)

でもわがんね(´Д`;)

図で見ると点Pと領域Vが十分遠く離れていれば直感的に



なのは判るんだけどね。

直感だけでは証明にならないし。

やっとこさ分厚い微積分の本を調べて立体の重心の求め方を学んだ次第。著者の解答とはだいぶ違うぞ。



どうもどれも筋が悪そうな感じがするよね(´Д`;)

結局最後の図でR→0に極限移行(座標変換)すると良い感じに



点Pに生じる電界は二項展開により



ということになる。分母が|r|の5乗以上になる項は|r|が十分領域Vから離れているとすれば無視できるとして、残る第二の積分項は良くみると重心を求める式の分母に現れてきた積分項を含んでいる。

つまり座標の原点を電荷分布の重心とすれば、第二の積分項は原点と重心が一致するので消滅することになる。

従って



ということになる。

つまり電荷分布の中心に領域V内の電荷総量の点電荷が置かれたものと近似することができることになる。目的は達せられた。

証明に辿りつくための重要なステップが複数あるので途中で諦めかけたが、諦めなくてよかった。

因みに著者の解答の式に誤植があり第二積分項に体積電荷密度関数ρ'が欠如している点を注意しておく。

P.S

この種の一般化問題は古いテキストでは滅多に見かけない。おそらく20世紀に入ってから原子モデルや分子モデルが考え出された際に重要な概念として定着したものと思われる。どちらかというと有機化学や薬学とかでは必修の概念であるため最初の講義で登場させる必要があったと思われる。

問題文で気になるのは、分布している電荷が同符号と断っている点である。現実には正の電荷があればどこかに負の電荷が存在するはずなのだが、そうすると正と負のそれぞれの電荷分布を考えなければならなくなる。一般には正と負の電荷分布の中心は一致しない場合がほとんどで、最初に学んだ電気双極子が現れることになる。つまり歴史的には順序が逆で、分子化学の領域から電気双極子がどうしても現れてしまって、それが定式化されて先に教えられるようになったという感じがする。

分子化学では良く知られているように水(H2O)の分子は正と負の電荷分布が非対称である。なのでマイクロ波で揺さぶってやると高速で振動し熱を持つ。これが電子レンジの原理だったりする。これも電気双極子で考えると納得が行くことになる。その他にも同じように非対称な電荷分布を持つ分子が沢山存在して、その性質を理解するに電磁気学の理解が不可欠である。

P.S

よくよく考えると、座標変換したのは良いけれども元の体積電荷密度関数が新しい座標の関数ρ'(r')とでもしなければいけない気がするがちょっとインチキくさい。最初から電荷分布の重心を座標の原点として体積電荷密度関数もその座標系で定義すれば問題はない。少なくとも問題文では座標系の取りかたとかに関して何も制約を与えていないので最初からそうすればよかったのである。
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