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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2016-7-26 20:20
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
前の議論の最後を再掲して続きを、

それぞれの双対基底は定義から以下の関係が成り立つことが要請される、



また先の基底変換の関係から以下の関係が成り立つ、



この2つの関係式より



従ってやや強引だが、双対基底に関する以下の座標変換の関係式が得られる



これは行列表記の濫用だが、良く見るとこれは前出の反変ベクトル成分が受ける座標変換の関係式とまったく同じ形をしているのは注目すべき点である。



これで準備は整ったようだ。

(2016/7/30)

ふう、あじー(;´Д`)

夏風というか新手のウイルスに感染したらしく下痢と喉の炎症、鼻水が止まらない状況。

なるだけ横になっていたいけど、眠れないし、眠っても鬱になる夢でうなされるし(;´Д`)

昔カウンセラーから鬱っぽいいやな夢は思い出さないようにってアドバイスを受けたことが記憶に残っています。

それでも思いだすと、今の職場で進捗が悪くてなんとか少しでも進展を見いだして報告したら、「高い金もらっていながら、結果はそれだけか、品質保証のかけらもないな」的な批判かパワハラ的な言葉を投げつけられて一気に気が滅入って自信とやる気を喪失、頭が真っ白になったところで、その人が実際にはそこには居ない昔の会社の同期の顔だったので疑問が生じました、それに批判されている品質保証に関してとっくに別プロジェクトで対策ツールが出来てだいぶ前から使われているし、なんかおかしい?と気付いたところで目が覚めて、夢だったことが判明。

また危うく鬱症状再発の危険を逃れたのでした。

みんなも不快指数の高い日はメンタル的に弱くなるので気をつけようね。

さて話を元に戻そう。

手元のテキストではすべからく、ここからの展開はテンソルの言葉(添え字表示)を使って簡潔に結果だけ示しているが、ここでは例によって泥臭い計算を行うことにする。この方がちゃんと結果が導出できるし、確かめることもできる。



ここで先の基底変換の結果を代入すると



ということになる。(実際の計算は紙の上でやると転記ミスが絶えないので Maximaを使ったのはご容赦)

従って上の結果から基底変換行列式に関して再び以下の既知の関係式を得ることが出来る。



以前に一般の斜交座標系における基底ベクトルのスカラー三重積の関係から導いた結果と同じである。

ここで重要なのは、座標変換後の式に計量テンソルの時には無かった基底変換行列の行列式が出てくる点である。

正規直交系から一般の座標系への基底変換ではD=1、D'が基底変換行列の行列式と同値であるのと、更に正規直交系の間の直交変換ではD'=1となるため真相が隠れてしまっていた。

一般の斜交座標系の間の基底変換を考えることで、やっとそのことがあらわになるわけである。

さてこれで少なくともLevi-Civitaテンソルが計量テンソルとは違う座標変換を受けることが明らかになった。

最後にLevi-Civitaテンソルが一般の斜交座標系の間の基底変換でどのような変換を受けるか計算してみればいいことになる。

ここまでの結果をLevi-Civitaテンソルとテンソルの言葉(添え字記法)を使用して、慣れないEinsteinの総和記法を用いずに書き直すと、



ということになる。

従ってLevi-Civitaテンソルは以下の座標変換を受けることになる、



従ってLevi-Civitaテンソルは、真性テンソルではなく、重み1の相対テンソルまたは擬テンソル、もしくはテンソル密度に分類されることになる。

もともとε'ijkとεijkは同一の成分を持つので上の結果は結局ε'ijk=εijkでもあるわけで、真性テンソルの場合の成分の変換式と比較しやすいように上のようにわざわざ変換行列式を展開しているわけである。このあたりが一番納得がいかないかもしれないが、意図がハッキリすれば納得する。普通のテキストでは数式の意図は隠しているのでますます理解困難である。

重みのあるテンソルは狭義のテンソルの定義をLevi-Civitaテンソルのような擬テンソルも包含できるように拡張した概念だということが判る。

とうとうテンソル代数の最終章まで自分数学で辿りついたことになる。他にも枝葉的な議論(Levi-Civitaテンソルは計量テンソルによる添え字の上げ下げの関係にない等)があるが、それは読者の課題としよう(´∀` )

ここまでの議論は学校の講義とかではコマ数が足らないのと、それの応用は大学院でやることになっているので、この種の議論は大学院まで先延ばしするということになる。大学院に入ると何故か知っていることを前提に応用の議論が始まるのはお約束。

結局自分で納得するまで自分の手と頭を使って理解するしかないんだよね。

自分数学で大事なことはいかに有名な著者や優れていると評判のテキストでも、その内容でしっくりこないものがあったら、自分に正直に自分のやり方で同じ結果を導出できるかチャレンジすることである。

大御所が書いたものだから間違いはないだろうけど、どうやってそうした結論が出てくるのか導出方法までは書いてないことが大半なので、納得いかなければ自分で導出するのが一番である。

ということで、ここまで来てもまだテンソル代数の議論の範疇であり、まだベクトル解析やテンソル解析はこれからの議論である。

普通のテキストではここまでの議論の様に直線座標系でのベクトル代数やテンソル代数の話をして、すぐに曲線座標系での解析の議論に入る。

しかし以前に書いた通り、直線座標系と曲線座標系との間の座標変換は、直線座標系内での座標変換と違って線形ではないという事実はほとんど直接触れられていない。

ここに大きなギャップがあるので、まるで曲線座標系(もしくは特種な直交曲線座標系)でご破算で願いましてはと言って、最初から議論をやり直されているように写るのは当然である。

森さんの「ベクトル解析」のように、このギャップを埋めるために直線座標系での比例関係が、曲線座標系でも局所的に成り立つということを納得させるために、ほとんど大半のページ数を割いている。

数学的な観点だと、最初から議論を最も一般的な複素数での曲線座標系で始めるべきだということになる。確かにそうすれば途中の特種な座標系の結果も包含しているので、特種から一般へという手間はかからない。しかし最初のハードルが高すぎるので数学者でない限り無理だろう。

初学者はやはりGaussのやり方に習って、特種から一般への議論展開をするのがよさそうである。

学校では様々の教える立場と流儀の違いによって、ここでやったように直線座標系(正規直交系と一般の斜交座標系)でテンソル代数を議論するのと、テンソルとかを持ち出さないで直線座標系でも曲線座標系でも局所的な正規直交座標系でのみ議論するやり方がある。

前者のやり方は以前に参考書として紹介した岩堀長慶「ベクトル解析」に見られる。それ以外の薄い、お手軽なベクトル解析の入門書はいずれも後者のやり方になる。後者では基底ベクトルは全て単位ベクトルになるので、擬ベクトルとか擬テンソルとかの面倒な概念は持ち込む必要がなくなる。つまり観光バスにのって見所だけ短時間に見て回るということになるので見て回る者にとっては本当に隅々まで見たわけではない。

ということで、ここからはこれまでの議論を一般の斜交座標系からシームレスに直交曲線座標系への一般化にチャレンジすることになる。

いろいろなテキストを見る限りでは、ここまでの斜交座標系での議論で発見した数学的な対象が直交曲線座標系でも存在することが判っているので、うまくつながるのではないかと目論んでいる。

(2016/8/15)
元々の電磁気学をマスターするというモチベーションには変わりないが、だいぶ脇道街道をまっしぐらという感じが否めない。

ここらで、少し方向を電磁気学の方に向けないといけないだろう。

それと併せて、ここまでの成果を最大限に生かして、ベクトル解析へシームレスにつなげていくことにも挑戦しよう。

大抵のテキストは正規直交座標系でのベクトル代数のおさらいをした後に、直ぐにベクトルの微分を導入するか、ある媒介変数の関数としてベクトルを定義し直しているが、どれも議論のショートカットであることには変わりない。

何故微分なのかとか、なぜ新たな媒介変数の関数としてベクトルを定義し直さないといけないのかという意図に関しては一切触れていない。

それでは納得行かないままであるので、ここではそのギャップを埋めることを考えることにする。

今までベクトル代数で対象にしてきたのは、大きさも向きも延々に固定された動かないベクトルであった。

動かないままのベクトルで何が都合が悪いのだろうか?

そう考えると、動かないままのベクトルが動いているように見える状況があることに気付く。

それは相対性理論に関係するのだけど、ある座標系(正規直交座標系でなくても局所線形ならなんでも良い)上に動かないベクトルが存在するとする(それは電位勾配ベクトルでも良い)。

その座標系上の任意の位置からベクトルを観測すると、それは永遠に動かないので一定の方向と大きさを保っている。

ところが、それとは別の座標系があって、先の座標系に対して相対的に座標の原点が時間と供に移動しているとする。その移動する座標系の任意の点から先の座標系にある動かないはずのベクトルを観測すると、向きが時間と供に変化しているように見える。

従ってある座標系上の動かないはずのベクトルは、別の座標系からは動いているベクトルに見える。それは時間を媒介変数としたベクトル関数そのものである。

そう考えると、とりあえず相対的に移動している座標系は何であれ、そこから動いているように見えるベクトルに関して解析が可能になる。

これでお膳立ては出来た。

後で図を書いてアップロードすることにしよう。



以前に演習問題を解いた時にMaximaを使って描いた静電ポテンシャルの等高線図を流用することにした。

北米のMonument Valleyにあるような景観を表すポテンシャル関数φを座標系Σ上で描き、それとは別に速度vで平行移動するもうひとつの座標系Σ'を考えた場合、Σ'上でポテンシャル関数φを観測すると、時間と供にΣ'座標系上の関数値は変化することになる。

これはMonument Valley内で車を走らせながら、景色を眺めたのと一緒で、時間と供に風景が近づいては後ろへ過ぎ去って行くように見えるのと一緒である。

これはEinsteinの相対性理論以前では、こちらが移動すれば周りの物は一緒に移動していない限り、こちらが移動しているのを逆の向きの速度で近づいて通り過ぎて行くというGalilei相対で説明でき、それで終わってしまっていた。

ところがポテンシャルが静電場である場合にはそれだけでは済まなくなることは、FaradayやMaxwellの仕事によって明らかだった。

以前に疑問に思って書いたことがあるが、如何にして電磁気学はNewton力学の反証となったのかという点がここに来てハッキリしてくる。

座標系Σ上では静電場しか存在しないのだが、移動する座標系Σ'からその静電場を観測すると、空間の静電ポテンシャルが時間と供に変化するので、時間と供に変化する磁場が現れるということである。

この議論はいきなり変動する電磁場の議論へと飛びすぎているのだが、正統なアプローチであると思われる。

扱っているのは静電場だけなのだが、別の慣性系から見ると静電場が時間と供に変化し、それに伴ってFaradayの電磁誘導則に従って時間と供に変化する磁場が現れることになる。

逆に座標系Σ上に静磁場があって、それを慣性系Σ'から観測すると、空間の磁場が時間と供に変化するので、元々は存在しないはずの電場が現れることになる。

もし座標系Σ上に静電場と精磁場が存在した場合、慣性系Σ'からそれを観測した場合、単純にそのどちらもが速度vで近づいてくるというGalilei相対性だけで説明できるものだろうかという疑問が沸く。

この疑問にアプローチして後に特種相対性理論と呼ばれるものを打ち出したのがEinsteinである。

Einsteinの示した慣性系Σ'から座標系Σ上の電磁場を観測した場合に慣性系Σ'上での電磁場がどう表されるかという式は複雑で、元の電場と磁場の成分が入り交じった複雑な形になり、およそGalilei相対のように単純に同じ形では物理現象が表せないというパラドックスを示すことになった。

Newton力学が正しいと信じれば、座標系が違うと物理現象が異なった形で表さなければならなくなる電磁気学はどっか根本的に間違っているという主張を裏付けることになる。

それにNewton力学の作用反作用の法則も電磁場では成立しない可能性がある。

後の一般相対性理論によってNewton力学が一般相対性理論の近似であって、厳密には修正を受けるべきものであることが明らかになるわけであるが。

こうした点は話が飛んでややこしくなるので普通のテキストでは絶対に触れないところであるが、電磁気学を理解する上で重要な点でもあるし、電磁気学を学ぶ上での不屈なモチベーションにもなる。

最終的にはこの疑問を自らの手で解決することにして、さしずめ座標系Σと座標系Σ'の原点が異なっていて動かないという特種な条件の下で、座標系Σ上のベクトル場が座標系Σ'上でどう写るか考えることにしよう。

最初に思い当たるのが、もし座標系Σ上のベクトル場が均一のものであったなら(空間のどの点をとってもベクトルの向きと大きさが一定なら)、座標系Σ'の空間上のどの点でも同様にベクトルの向きと大きさが一定に見えるはずである。

実際に実験室内で上記の様な均一な電磁場を作ることは容易ではない(十分な距離を置いて離れた二枚の無限大の面電荷もしくは平行した無限長の線電荷の作る電場は局所的に均一であると見なすことが出来るかもしれないが、一般には均一ではない)。

ここでは仮に均一な電場が得られたと仮定して話を進めることにする。

2つの座標系ΣとΣ'が供に正規直交座標系である場合には、ベクトル場が均一であれば、その大きさは座標系が変わっても保たれる。唯一ベクトルの向きだけは、座標系の回転によって変換を受けると予想が付く。

それを計算で確かめてみることにしよう。




(続く)
webadm
投稿日時: 2016-4-6 12:47
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
前の記事の、一般の斜交座標系でのベクトル三重積がどうなるかについての議論の続き。

一般の斜交座標系での3つのベクトルu,v,wのベクトル三重積を計算してみよう。

くれぐれも特種な(皮肉なことに世の中で最も多用されている)正規直交座標系の話ではないことに注意!

既に前の記事で計算した2つのベクトルのベクトル積の結果を利用することにしよう。



最初に一般の斜交座標系でのベクトル積の結果(双対ベクトル同士のベクトル積には1/Dが係数として現れる)によりDが打ち消される。その後は正規直交座標系でのベクトル三重積の計算と同様に意図的に0を加えるテクニックを使った。

なんとベクトル三重積の公式は一般の斜交座標系でもそのまま成立することが確かめられてしまった。

こういうことだから、ベクトル積に関しては一般の斜交座標系での議論が不要なのね( ´∀`)

今ようやく理由が分かりましたよ>岩堀長慶先生

結果が予想できるだけに、演習問題や宿題にもならないよね。

こんな計算やっているのはここだけだから。

さて、ここで新たな発見がある。

通常ベクトル同士のベクトル積は天邪鬼ベクトルを生成するが、その天邪鬼ベクトルと通常ベクトルのベクトル積は果たして天邪鬼になるのか通常のベクトルになるのかという疑問。

これは上の結果を見れば明らかの通り、座標軸の反転に対して、通常のベクトルと同様にベクトル三重積は成分の符号が判定するので通常ベクトルと同じように振る舞うことがわかる。

つまり、こういう予想が成り立つ。

(1) 通常ベクトルの奇数回のベクトル積は天邪鬼ベクトル
(2) 通常ベクトルの偶数回のベクトル積は通常ベクトル

もしくは

(1) 偶数個の通常ベクトルのベクトル積は天邪鬼ベクトル
(2) 奇数個の通常ベクトルのベクトル積は通常ベクトル

なので天邪鬼ベクトルと天邪鬼ベクトルのベクトル積は天邪鬼ベクトルになる。一方で天邪鬼ベクトルと通常ベクトルのベクトル積は通常ベクトルということになる。ややこしい。

天邪鬼かそうでないかの違いはベクトルの大きさが面積とか体積のような積分量の次元をとるかそうでないかに関係しているように見える。

面積は果たして座標系に依らない不変な量と言えるのだろうかという疑問が出てくる。面積が座標の積分と考えると、それは座標系によって大きくもなり小さくもなる。例えば、敷地の面積は実際に測量したものと、敷地を一定の縮尺で描いた図面の上とでは違ってくる。そこには縮尺という別の係数を乗じることによって初めて双方は同値となる。これに関する議論は別の機会にしよう。

このあたりがもはや狭義のテンソルでは扱いきれなくなっている苦しい状況が察しられる。

これを証明するのはさしあたり読者の課題としよう( ´∀`)

さて、ベクトル代数でもうひとつ忘れてはいけないものがある。

それはスカラー三重積というもの。

ベクトル積と通常ベクトルの内積をとったもの。

というと簡単そうだけど、これも天邪鬼スカラーを産み出すやっかいものである。

スカラー三重積は、大きさが面積の次元を持つベクトル積と長さを次元にもつ通常ベクトルの内積であるから、体積の次元を持つスカラー量となる。ここでも体積は座標系に依らず不変な量だったろうかという疑問が沸く。

例えば質量はNewton力学では不変な物理量であるが、それは体積と密度の積と等価であると考えると、体積そのものは座標系によって変わるものであると考えられる。

そうすると質量が座標系によらず不変であるためには、密度も座標系に依って変わる必要がある。体積と密度とは座標系によって互いに逆の変換を受け互いの変化を相殺する関係にないといけないことになる。

先のベクトル積でも同じことが言える。

この議論については狭義のテンソル代数では扱えないので後回しにしよう。

先にスカラー三重積の基本からおさらいすることにしよう。

特種な正規直交座標系でのスカラー三重積を考えることにしよう。特種から一般へという筋道である。



ベクトル積が含まれるので、当然その黒幕である Edington のεもしくは、Levi-Civita 記号が含まれる。なので天邪鬼の遺伝子を持っている。座標軸の反転に対して、スカラー量なのに符号が反転するとはこれいかに。天邪鬼スカラーの正体がバレバレ。偽りのスカラーということで擬スカラー(pesudo scaler)と呼ばれる所以である。先のベクトル積も同様に擬ベクトル(pesudo vector)と呼ばれ天邪鬼遺伝子を持った兄弟姉妹である。擬とか付くとまがい物と思われるがちゃんと役に立つので、その点を評価して軸性スカラー(axial scaler)とか軸性ベクトル(axial vector)と擁護する人も居る。どちらにしてもしっかり区別して差別していることには変わらないのだけれどもね。

実は以前 Levi-Civita 記号を Levi-Civita テンソルとか呼んだことがあるけど、三階のテンソルのように扱えるけど、実は天邪鬼テンソルで、狭義のテンソル代数では扱えない代物である。擬テンソル(pesudo tensor)とは Levi-Civita 記号のためにあるようなものである。これに関する議論は後回しにしよう。

一般の斜交座標系ではスカラー三重積どう表されるのだろうか?

これまでの結果を利用して計算してみると



おや、一般の斜交座標系ではちょっと修正が必要なようだ。



Dというのは基底変換行列の行列式(右手系もしくは左手系内での変換に限定すれば計量テンソルの成分を正方行列で表した場合の行列式の平方根と同値)である。それがどうしても係数とで出てくるのは、一般の斜交座標系でのベクトル積でDが係数として出てくるためである。一般の斜交座標系での内積では自然ベクトルと双対ベクトルの内積を取る分には余計な係数は出てこない。なので、ベクトル積で伴う係数Dがそのまま残ることになる。詳しくは以前の一般の斜交座標系でのベクトル積の議論を参照願いたい。

この事実はLevi-Civita記号が狭義のテンソルとは決定的に性質が異なることを意味する。

さて困ったことに、今までテンソルとはなんぞやという議論をしてこなかった。実を言うと、テンソルに関する数学書でもテンソルの一意的な定義は回避されている。その代わりテンソルが満たすべき条件だけが明らかにされている。その中の中心的なものが、テンソルの成分の座標変換に関する性質である。

ここで普通のテンソルと、天邪鬼なテンソルの違いを明らかにするために、いよいよテンソルの本質に迫る必要がある。

(2016/5/1)
物理学や工学で遭遇するテンソルの種類はそんなに多くは無い。

なのでむしろそれを一つ一つ取り上げて議論する流儀もなくはない。

ただそれをやってしまうと、テンソルに関する視野が狭められてしまって、新たなテンソルを自分で再発見するという機会を失ってしまうことになる。

奇妙なことに物理学や工学で登場するテンソル的なもので真性のテンソルは少数派であり、残りは擬テンソルと呼ばれる天邪鬼派が大半を占める。

そこで真性テンソルの代表格である計量テンソル(基本テンソル)に関して、古典的な座標変換による成分の変化を議論してみることにする。

一般の斜交座標系での計量テンソルの成分は以下の様に定義されることを思い出そう。



また計量テンソルは以下の様にベクトルの成分の添え字の上げ下げ(自然ベクトルと双対ベクトルの間の成分の変換)を行う機能を持っていることも思い出そう。



逆も真なりで



上記の関係が基底変換によってどう変化するか調べてみよう。

基底変換に関して以下の関係を思い出す必要がある



自然基底が線形変換行列Sで変換を受ける場合、その双対基底はその逆行列Rの変換を受ける。

同様にベクトルの成分は、反変ベクトルであれば基底変換と逆の変化を受け、共変ベクトルであれば基底変換と同じ変換を受けることを思い出す必要がある。



さてこっからどうすんだ(´Д`;)

まだテンソルの言葉(添え字記法)に慣れていない場合には、線形代数に立ち戻って行列計算するのがよい。

先の計量テンソルの関係式のベクトル成分を上の変換後のベクトル成分の式に置き換えると



(2016/5/24)訂正

これが古典的なテンソルの定義である。

gをTとかに置き換えて一般のテンソルとしても成り立つ。

この座標変換は面倒なので、大抵の参考書には綺麗な結果しか示されていない。

Einsteinの総和記法を使用するために座標変換行列の成分の添え字を意図的に変えてみたが、最初からそうしている本もあるし、総和記号を残してそのままという流儀もある。

座標変換行列は上の定義からするとテンソルではない。これを確認するのは読者の課題としよう( ´∀`)

テンソルの言葉である添え字記法は、上の方法よりももっとストレートで簡単な秘法があるのだが、大抵はテキストでは種明かしされていない。

自分でやって再発見せよということらしいけど、もう一般相対性理論から100年以上経過しているのだし、勘弁してあげてもいいのではないかという気もする。

上の行列の積はそれぞれ線形変換されたテンソルとベクトルの縮合なので結果もテンソルになる(テンソルの商法則)ので、これを利用すれば以下の様に簡単に同じ結果を導くことができる。



これを覚えてしまうともういちいち展開してにらめっこする必要はなくなる。

暗記すればいいということではない。

なんだ簡単じゃないか( ´∀`)

計算式を展開すると紙面上に入らなくなるんだよね。

手元の参考書でも、驚いたことに式が入りきらなくて、通常の植字範囲外にはみ出した形で数式をなんとか流し込んでいる本もあった。

近年は電子写植なのでそういう例外もできないことはないけど、昔の活版印刷とかなら絶対無理だし、詳しい式の展開は割愛せざるを得なかったのはわかる。

最近の丁寧な参考書では、上の意味を線形空間の間での線形写像の連鎖という形で図解説明しているものがある。

それを再発見するのは読者の課題としよう( ´∀`)

ここでようやく古典的なテンソル定義に目を向けざるを得なかったのは、上の古典的なテンソル定義に反する擬テンソル(pseudo tensor)について決着を付ける必要が出てきたためであることを思い出そう。

さていよいよEdingtonのε、またの名をLevi-Civita記号の再登場ということに。

注意しないといけないのは、正規直交座標系で議論を開始しようとしてはいけない点である。

正規直交座標系は一般の座標系と違って、自然空間と双対空間がぴったり同一の空間になるので、そこでのベクトル積の結果は一般お座標系とは異なる結果となり、本質を見失うことになる。

正規直交座標系の特種性を顕在化させるためには、より一般的な座標系(例えば斜交座標系)で議論する必要がある。

自然空間上のベクトル積は双対空間上のベクトルを生成する。正規直交座標系では自然空間と双対空間は同一のものとして扱う特種性からこの事実が見失われる。

上記の事実を悪用すれば、正規直交座標系もしくは局所的に正規直交座標系が適用できる直交曲線座標系だけに話を限定すれば、面倒な議論を省いて正規直交系と同じ結果が使えることになる。

そういう流儀は講義時間を短縮し、必要な結果だけを説明することができるので優れてはいるが、それ以上の発展性は無いし、一般相対性理論とのシームレスなリンクを完全に切断するという代償を負うことになる。

教える側としては痛し痒しなのだが、講義時間が限定されている以上、その中に収まる範囲で結論をまとめないといけないという講師側や学校側の事情もわかる。

しかしそうした教育をやってきた責任は誰が取るのかと問いただしたい。

それは年月が経てば経つほど、事の重大さは大きくなるのである。

なんの話だったっけ? ああLevi-Civita記号成分の座標変換だった。

実のところこの議論に関して手元の参考書でそれぞれどこで触れているか調べるのに結構時間を要した。

物理や工学向けに書かれた本だと、極力この議論に触れなくて済む部分では一切触れず、どうしても触れないといけない部分で突然湧いて出てくる感じである。

数学書では厳密には狭義のテンソル代数の範疇ではないものの、物理学(特に電磁気学や一般相対性理論)で需要があるので仕方なく最後に触れるといった感じ。

それぞれの参考書で口火の切り方は著者によりまちまちだし、用語についてもその定義が著者によって異なるとあらかじめ注意してある本もある。

それらをなぞるのは疲れるので最初に要点だけまとめると

(1) 面積要素(およびその一般化された体積要素)がどのように座標変換を受けるか
(2) Revi-Civita記号は計量テンソルによる添え字の上げ下げを受けない(テンソルではない)

という話に尽きる。

Cartanの微分形式だと上記の結果はすっきりとした形で表されるが、テンソル代数とのギャップが大きいので混乱を招くことになる。Cartanの微分形式でどのように議論されているか確かめるのは読者の課題としよう( ´∀`)

(1)に関しては面積とか体積がベクトルの大きさになるような場合に関係してくる。

もちろん正規直交座標系では気にする必要はない。正規直交座標系の間の座標変換では面積要素や体積要素は不変であるから。

一般の座標系では変換後の座標での面積要素や体積要素はその座標変換による空間の歪み具合によって量が変わってくる。

一般の斜交座標系で例を挙げれば、正規直交座標系では面積要素は正方形、体積要素は立方体で変わらないが、一般の斜交座標系では、正規直交座標系での正方形が歪んで平行四辺形になる。体積要素も同様で正規直交座標系では立方体だったものが平行六面体となる。

一般の斜交座標系では基底ベクトルの大きさも正規直交系と違って正規化されているとは限らないので大きさは1とは限らない。したがって例え正方形が平べったい平行四辺形になったとしても、面積要素の量が小さくなるとは限らない。基底ベクトルの大きさが1より小さい場合には正規直交系の時よりも大きくなる。

こうした前置きをすると、なにやら関係が見えてくる。

(2016/5/8)
少し見えてきた感じがするが、連休中に手元の参考書でこれに関する議論や定式化がどのように行われているか調べてみたのだが、どれも著者によりまちまちで決まった形は無いようだった。

更に事態を悪化させる要因としては、正規直交基底を一般の斜交基底に変換した場合、2つの基底ベクトルが張る平行四辺形の面積の大きさは、選択した基底ベクトルのペアによって異なるということである。

正規直交座標系の場合には異なる基底ベクトルのどのペアを選んでもそれらが張る正方形の面積の大きさは1で変わらない。

そこで一般の斜交座標系での基底ベクトルを正規化して正規直交基底の場合と比較して考える必要がある。

なんだか話がややこしくなってきた。

(2016/5/24)
通勤途中でここまでの議論を何度も再考する中で、先の通常のテンソルの成分の座標変換則の導出に誤りがあったのに気付いたので訂正しておいた。

ちなみにこの議論は数学的にはテンソル密度とか、相対テンソルの議論となる。通常のテンソルを含めて、天邪鬼なテンソルも含めたより一般的なテンソルの概念の中で、それらが特種なテンソルの一種であるように見なすのであるが、これが難解でややこしい。

目下、平易な線形代数の計算でそれを確かめる方法を考え中。

(2016/5/28)
いろいろと、これまで購入した手元の参考書を改めて詳しく読んでみて判明したことは

・テンソル密度に関しては皆詳しく立ち入るのを回避している

ということである。

これまでも自分数学の立場から、基底変換行列の行列式は一貫してDとして記載し、巷のテキストにあるように安易に√gとかを用いなかったのは厳密に考えれば正しい選択だったというのが解った。

基底変換行列には座標軸の反転もあり得るので、その場合、変換行列の行列式は負の値となるからである。

座標軸の反転を扱う議論は限定されるが物理学でも無いわけではなく、その場合にはDを√gで代用することはできないという問題が発生する。

話を元にもどそう。

まともなテンソルと天邪鬼なテンソルを同じテンソルの仲間になるように古典的な狭義のテンソルの定義を拡張しなければならない。

テンソル密度とか相対テンソルとかいうのはそのために生まれた概念だというのが薄々解ってきた。

自分数学で再発見しておきながらどうやらこれまでも天邪鬼テンソルが登場する度に常々登場してきた基底変換行列の行列式Dが実はテンソル密度を理解する重要な鍵だったのに今ようやく気付いた。

灯台もと暗しとはこのことだった(;´Д`)

有向面積や有向体積、そしてそれらを任意次元に一般化した体積要素というのが一般の基底変換で不変な量とするために、テンソル密度を含めた形に古典的なテンソルの定義を書き直すことによってテンソルの概念に天邪鬼テンソルも仲間に入れるというアイデアだったわけである。

先に計算したまともなテンソルの代表格である計量テンソルの行列式を計算してみると



拡張されたテンソルの定義でば、計量テンソルの行列式は重み2のスカラー密度ということになる。

正規直交座標系では、D=1なので特に上の結果は知らなくても良いことになるので、面白い結果ではないがこれが重要である。

Dの冪数(重み)が偶数か奇数のいずれかであることが天邪鬼とそうでないテンソルを区別する鍵となる。

テキストによっては、従来のまともなテンソルを偶(even)テンソル、天邪鬼なテンソルを奇(odd)テンソルと称しているものがあるが、一般に認知された呼び方ではなく、その人なりの自分数学の知見からのものと思われるが、天邪鬼が奇というのは言い得て妙で笑える( ´∀`)

さて、先の余談で出てきた√gというのはどうだろう?

上の結果の平方根だから



ということになる。

つまり巷のテキストで登場する√gというのは実はDと同じものというのは間違いで、重み1のスカラー密度(つまりは擬スカラー)そのものだったということになる。

このことは座標変換が回転系(右手系内もしくは左手系内の変換)である限りではDの符号は変わらないが、そうでない場合(座標軸の反転を伴う場合)にはDの符号が変わることを意味する。

このDが以前にも余談で出てきた様に、ヤコブ行列式(Jacobian)Jと同値なものであるというのは巷のテキストでも触れられているものがあるが、その議論は後にテンソル解析へのシームレスな移行を考える時の楽しみとしてとっておくことにしよう。

なんとなく解ったようだけど、肝心のベクトル積で出てくる擬ベクトルはどんなんだという突っ込み。

引き続き擬ベクトルもしくは軸性ベクトル、その一般化である擬テンソルやテンソル密度について計算で明らかにすることにしよう。

(2016/6/7)
その後上のDとヤコビ行列式の関係を手元の複数の参考書でどのように議論されているか詳しく調べていたら、驚愕の事実が判明。

なんと参考書では上の結果の分母と分子が逆になった形で関係式が与えられているのである。急遽その理由を明らかにする必要があった。

あべこべになってしまった理由はやがて明らかになった。

・手元の参考書の座標変換行列の定義が違う

一部の参考書では正規直交基底での議論と、一般の曲線座標系での議論とで座標変換行列の定義を二種類使い分けしていることが判明。

また他の参考書では一貫して、基底変換行列の逆行列を座標変換行列として新たに定義して用いている。

どの参考書も共通するのは、一般の曲線座標系での座標変換行列は以下の様に定義することから出発しているという点である。



数学書の判りずらい点は何かと言えば、同じシンボル(例えば上の座標変換行列のA)が登場した場合、それまでに最も最後に現れた定義が適用されるという点である。つまり同じシンボルAが場所によって異なる定義で使用されるという点である。

このため必ずあるシンボルが式に含まれる場合には、ページをさかのぼって最初に現れるそのシンボルの定義を確認する必要がある。

言語にすれば、会話の中に出てくる用語が、その時々によって定義が変わるようなもので、大変煩わしい。

しかしながら使用できるシンボルの数が限られているので、使い回すためには、その都度定義しなおす必要があるのは確かである。

あと数学書で不便なのが、本のボリュームを最小限にするために、一度導出した式を後で使う際には、再度その式を示すのではなく、参照番号で示すというやり方。これもページをさかのぼって、その式がどこにあるか確認する必要がある。

現代のようにコンピュータでPDFやWord文書を閲覧する場合には、ハイパーリンクでシンボルの定義がかかれた節や参照する式の場所をリンクすることができ、ワンクリックでそのページに飛ぶことができるが、紙の時代にはそれは望めない話だった。

話を元に戻すと、基底変換を議論する時と、座標変換を議論する時とで、変換行列の定義を何故変更する必要があるかというと、それはヤコビ行列との同一視化を意図してのものだということが自ずと明らかになる。

参考書の著者はそうした意図は一切触れていないが、そうした意図があってのことであることは明らかである。

自然基底の変換行列に基づいてベクトルやテンソルの成分の座標変換の議論を行うと、成分は受動的な変換を受けるので基底変換行列の逆行列が座標変換行列となってしまう。

それはそれでいいのだが、その逆行列がヤコビ行列と同一視できることを示すのには都合が悪い。

なので基底変換行列の話は忘れて、成分の変換行列からスタートするのが都合が良いわけである。

幸いにしてここまでの議論ではヤコビ行列式との関係を式で示すことはしていなかったので、誤った式を書いてしまわずに済んだ。

基底変換行列の行列式がDと定義すると、それは成分の変換行列の逆行列の行列式になり、ヤコビ行列式の逆数になってしまう。

後に一般の曲線座標形へのシームレスな移行を議論するときに改めてこのことを思い出す必要がある。それまでは楽しみとしてとっておこう。

さて話を元にもどそう。

(2016/7/2)
もう一ヶ月近く経とうとしている。
ベクトル積が天邪鬼ベクトルであることを計算で示す時がきた。

最初に特殊だが正規直交系でおさらいしてみる。正規直交系だけで事足りることがほとんどであるが、そんな特殊中の特殊な座標系だけしか知らないと、もっと広い世界を知らずに終わってしまうのが問題だ。

通常のベクトルは正規直交基底(互いに直交し合う単位ベクトル)の線形結合で表すことができる。そこで2つのベクトルu,vのベクトル積は以下の様に表すことができる。



ということになる。

ベクトル積の成分はなれると暗記できるが、それまではベクトル積のe1の係数は123から1を抜いて元のベクトルの成分を偶順序と奇順序に並べ替えて総和をとると覚えておけば困らない。

ここまでは序の口で、ここから更に基底の条件を緩めて、直交条件と単位ベクトルである必要はなく、単に線形独立なベクトルにしたものが、同じ直線座標系である一般斜交座標系である。

直線座標系は均質な空間であるともいえる。ひとつ基底を選べば空間内のあらゆるベクトルがその基底の線形結合で表すことができる。つまり空間のどの点でも同じ基底が使えるということ。

ただし直交でもなく単位ベクトルでもなくなったことで、正規直交座標系のように単純ではなくなり、正規直交座標系では隠れて見えなかった性質が露わになる。

先ほどと同様に、今度は任意の斜交基底、f1,f2,f3を選んで、その線形結合で表される2つのベクトルu,vのベクトル積を計算してみよう。



ということになる。

これは以前導出したものの蒸し返しになるが、Dが斜交基底のスカラー三重積で、3つの斜交基底ベクトルで構成される並行6面体の有向体積を表す擬スカラーである。従って通常のベクトル同士のベクトル積は擬ベクトルということになる。

一般の斜交座標系では、正規直交系と違って自然基底と双対基底は大きさも向きも一般に一致しない。

スカラー三重積は座標軸の反転に対して符号が変化するので擬スカラー(天邪鬼スカラー)で、逆に座標軸反転に対して通常ベクトルは向きが変わるのに対して、擬ベクトルは向きが変わらないという天邪鬼な性質を持つ。

以前、ベクトル積にはEdingtonのεという3階の反対称テンソルが黒幕として潜んでいることを明らかにしたが、果たしてEdingtonのε(もしくはLevi-Civita記号)はテンソルと呼べるのだろうか?

という疑問が残っている。

その答えを見いだすにはやはりテンソルの言葉(添え字記法)を使う必要がある。

テンソルの言葉で上と同じことを表してみると



ずいぶんとすっきりする。

これであとは基底変換した場合にLevi-Civita記号がどのように受動変換を受けるか調べるという古典的な方法でそれが真性テンソルなのか擬テンソルなのかを判別すればいい。

(2016/7/8)

手元の参考書やネット検索で Levi-Civita記号に関する議論を調べてみても、真性テンソルではないことを証明するのに直接的な方法を使用していない。

実際に通勤途中に手元のメモ用紙で計算しても招かざる結果が出てしまって扱いに困ってしまう。

検索とかで見つけたもので一番多いのは、Levi-Civita記号が真性テンソルだと仮定した場合に、矛盾が生じることを利用するというアプローチだった。おそらく教える立場ではそれが一番効率が良いと思われる。

しかしここではそれをなぞることはしない。人に教える立場ではないのだから、立脚点が違う(理屈っぽいこと言うな)。

まずは一般の斜交基底の中から2組を選んで、2つの真性ベクトルのベクトル積をそれぞれの基底の元で考える。元の真性ベクトルは共通なので、そのベクトル積は同じベクトルになるはずである(その成分表記は基底変換によって変換を受けるが)。

片方の基底の組に関しては、既に前出なのでそれを流用してサボる

もう片方の基底の組に関しては前出の式に\primeだけ書き加えてサボる



当然、2組の自然基底は以下の線形写像関係にある



行列表記の濫用だけど、心配なら以前にも書いた通り、成分に展開して一度気の済むまで確かめればよい、



ベクトルの成分は基底と逆の変換を受けるので、それぞれの基底における同じベクトルの成分の間には以下の線形写像関係がある、



これを今更疑う読者は居ないと思うが、心配なら計算で気の済むまで確かめればよい、



この検算を行うことで、この前に計量テンソルの座標変換規則の議論をした時に間違いをしでかしていたのに気付いた。変換行列とベクトル成分との添え字対応がちょっと違うだけで結果を損なうものではないが(´Д`;)

検算は重要だよね。

さてこれらの下ごしらえをしてようやく Levi-Civita記号が真性テンソルかどうかどのような座標変換則に従うのか計算できることになる。

なるべく新しい道具(添え字記法とかテンソルの言葉)は使わず線形代数の行列計算だけで済むようにしているが、やってみると線形代数を何度か勉強しているはずが、ちっとも基本が身についていないことが判る。しかしそれによって線形代数というのが道具として劣っているということではなく、極めて優れているということをその都度理解することになる。

さて最初に遭遇する不都合な結果は、基底変換に関する双対基底の変換に関するものである



なんだこれは?

座標変換行列の成分の式の形から見て余因子のように見えるが、単純に座標変換行列の逆行列というわけではなさそう。

上の計算に間違いがなければ、更に双対基底との内積をとれば1になるはずである。



もし上の結果が正しいとすればDとD'の関係は以下の様でないといけないことになる



とどのつまり元の基底ベクトルから成る平行6面体の有向体積(スカラー三重積)と座標変換後の基底ベクトルから成る平行6面体の有向体積の比は座標変換行列の行列式の逆数に等しいということになる。

とんだ回り道に見えたが、重要な予想が得られたのは貴重だ。

こんな計算余所では見たことが無い。

さてその予想が正しいかどうか確かめる必要がありそうである。

帰宅中の通勤電車内で椅子に座れたので、メモ用紙を取り出して乗り換え駅に付く間に計算をしてみたら予想通りの結果が得られた( ´∀`)



なんだ簡単じゃないか( ´∀`)

実は良く見ると、これと同じ結果は既に以前スカラー三重積の議論で得られていたのに気付いた。その時はちょうどこれの逆数を得たのだった。

先ほどの謎の式は上の結果を用いると、



ということになる。

ここから類推して一般の斜交座標系での双対基底の座標変換に関して以下の関係が成り立つことが予想される、



良く見ると、これと同じ結果は正規直交基底から一般の斜交座標基底への変換に関する議論の中で得ていたのだった。証明は読者の課題としよう( ´∀`)

さてこれで答えの一歩手前まできたことになる。

(2016/7/26)

ここから直ぐに結論が導けると思ったが甘かった(;´Д`)

以前に基底変換の関係を導いた時は、正規直交系から一般の斜交座標系への基底変換だったので実は良く判っていなかった点があった。

ここに来て、一般の斜交座標系の間の基底変換の結果が必要になるので、それをまとめる必要がある。

実は先ほど既に2つの重要な結果を得ているので、それをまとめると。

斜交座標系の自然基底の組f1,f2,f3およびf'1,f'2,f'3の間に以下の線形写像関係があるとする、



それぞれの双対基底は定義から以下の関係が成り立つことが要請される、



また先の基底変換の関係から以下の関係が成り立つ、



そろそろ記事の行数制限を超えてしまうので、続きはフォロー記事で
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投稿日時: 2016-1-16 17:45
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Re: 自分の数学を持つことの勧め
さて前回の議論の後半に入ろう

・一般の斜交基底での内積と外積は直交基底と定義を変える必要があるか?
・一般の斜交基底での反変ベクトル間の外積はやはり反変ベクトルか、また共変ベクトル間の外積はやはり共変ベクトルか?

最初の設問の内積に関しては結論は一部はNoであり、一部はYesだった。つまり、ベクトルの成分を使用しない形式はそのまま一般の座標系でも成り立つが、ベクトルの成分を使用した形式は一般の座標系では異なる計量テンソルを伴う形で修正を受けることになる。

ベクトルの成分を用いなければ



で同じだが、ベクトルの成分を用いた形式は



という具合に、反変、混合、共変の3種類の形式で表されることになる。

また副次的に上の結果から、下に示すように2つのベクトルの間にある計量テンソルは隣接するベクトルに作用すると添え字を上げ下げする機能を持つことが判る。これは上の結果から演繹的に得られる性質のものであり、下の結果だけ単独に見いだしたり検証することは困難である。そのため物理学や微分幾何では頻繁にこの結果が当然のごとく利用されるがその導出については一切触れられていない。



元来内積というのは計量テンソルが先に以下の様に定義された上で、その計量テンソル(二階のテンソル)と2つのベクトル(1階のテンソル)とのテンソル積(4階のテンソル)から二重縮約によって0階のテンソル(内積)を対応させる多重線形写像であった。



正規直交基底では計量テンソルがいずれの場合でも単位行列となるのと双対基底が自然基底と同じと見なされるので反変と共変の区別はなくなり、計量テンソルはどの形式でも単位行列と同一視できるという特種な事情があったわけである。

というのが前回の議論だった。詳しい導出の経緯については前の記事を参照して欲しい。

さてまだ答えが出ていない外積に関して議論することにしよう。

外積についてもベクトルの成分を用いない形式は一般の基底でも変更を受けない。証明は読者の課題としよう(´∀` )

cross product - vector form

ベクトルの成分を用いた形式はどうだろう?

cross product - components form

もろ影響を受けそうな気がする。

どういう形で影響を受けるかは直感では予想すらできない。

以前に外積はエディントンのεを成分とする3階の交代テンソルと2つのベクトルとの二重縮約で出来ていることを明らかにした。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

これを使って、内積の時と同じように計算できそうである。

だが('A`)マンドクセ

しかも既に成分の式には2つのベクトル成分の間にあたかも計量テンソルであるかのようにエディントンのεを成分とする交代テンソルが鎮座している。これは後に擬計量テンソルと呼ばれるものであるが、似て非成るものの代表格である。

とりあえず反変ベクトル成分は基底変換と逆の変換を受けるから

contravariant vector components -- passive transform

(2016/7/14)訂正

contravariant vector components -- passive transform

(2016/7/14)訂正

これを代入すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

どうすんだこっから(;´Д`)

式をそのまま展開すると大変なことになりそうなので、成分別に計算することにしよう。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

なんですかこりは?

変換行列は元々正規直交基底から自然基底への線形変換行列だったから、自然基底の成分を並べたものである。Tijはfiのj成分ということになる。そう考えると、途中で出てくる交代行列は以下の様に以前学んだ交代積で表すことができる。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

ふむこれは正規直交基底の時と同じに見える。唯一違うのは基底が正規直交基底ではない点。

変換行列が恒等変換なら、正規直交基底と同じになるのでここまでは同じ。

とするとここまで以前二次元のベクトル積(有向面積)から三次元に拡張した際と同様に以下も成り立つと仮定すれば



おろ、上が成り立つとすると基底が自然基底ではなく双対基底になるのと成分に自然基底のスカラー三重積が乗じられる形になる。

交代テンソルとの縮約から導出した先の計算と違っている(;´Д`)

上の結果は海外のベクトル解析のテキストにも書かれていたし、「物理のかぎしっぽ」にも記載されているので間違いではなさそう。

どっか計算間違えたくさい...orz

いや食時の後良く考えたら理由が分かった。

最初のアプローチではベクトル積の基底が成分を変換する前の正規直交基底のままだったがそれがまずかった。

後のアプローチのように基底を双対基底に変えるのが正解だった。元のアプローチで同じ結果を得られるかどうか確認するためには、共変ベクトル成分を使えばよいはず。

共変ベクトルの成分は基底と同じ変換を受けるから

contravariant vector components -- passive transform


contravariant vector components -- passive transform

これを代入すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

成分毎に計算すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

やっとできたよ(ノД`)ママン

行列計算はMaximaを使ったけど、最近のバージョンのMaximaは以前より使い勝手が悪くてどうなってますか(--#) おかげで結果が期待したのと違うものが出てくるし。正解の予想が付いているので最初から入力をやり直したけどね。

ということで一般の共変ベクトルのベクトル積は



ということになる。

反変ベクトルの時とは逆に基底のスカラー三重積の逆数が係数となっている。相反系だから確かにそうでないといけない。

このアプローチで反変ベクトルのケースを計算してみるのは読者の課題としよう(´∀` )

手を動かすといろいろ発見があるよね。

さて一般の基底に関するベクトル積の場合、共変ベクトルのベクトル積は共変ベクトルなのだろうかそれとも反変ベクトルなのだろうか?

これは悩ましいところだ。もちろん最初のアプローチの様に変換前の正規直交基底のままにしてしまうと成分が複雑な変換を受けて大幅に修正しないといけなくなる。しかし基底を双対基底にすると、別のベクトル空間になってしまうが基底のスカラー三重積が係数として加わる点を除いては正規直交系の場合と同じ形式になる。正規直交系の場合は基底のスカラー三重積が1だったため表に出てこないだけだったと思えば同じだと言える。

なので本当は一般のベクトル積の形式は2通りあることになる。ひとつは基底を双対基底にして形式は保存するもの、もうひとつは正規直交基底のままで形式は保存されないもの。後者は今回発見したが、ほとんどのテキストでは触れられていないように見える。まあ複雑過ぎるので実用的ではないことは確か。永久に葬られていたものを墓場から掘り起こしてしまった感がある、(‐人‐)ナムナム

さて、残る疑問は、内積の場合には共変、混合、反変の組み合わせがあったが、ベクトル積の場合はどうなんだろう?

大抵のテキストでは、どちらも共変、反変でない限り意味が無いとしてばっさり切り捨ててあるか、まったく触れず完全スルーしている? 本当だろうか?

IQが低いのでそこんところがさっぱり納得いかないんですわ。

正規直交基底の時は反変も共変もないから、同じだったよね。それが一般性を失わない形で一般の基底でも定義できるんじゃないかと思うよね普通。それとも私だけか?また世界中を敵にまわしたか。

では早速計算してみよう

最後に計算した共変ベクトルの外積の式の後半をその前に計算した反変ベクトルの成分を使った表現に置き換えるだけでよい

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

同様に成分毎に計算すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

なんじゃこりは(´Д`;)

基底が正規直交基底のままなので、ますますひどいことになっているが、なんか不思議な規則性がある。

2つのベクトルの間に挟まれている2階のテンソルが、対称テンソルでも交代テンソルでもないのが謎だ。

これも同様に変換行列を恒等変換行列に置き換えると標準基底でのベクトル積と等価になるのでちゃんと一般基底の場合に拡張されただけの話で間違っているわけではない。

たぶんEinsteinの省略記法を使えば一行で表すことができると思うけど。それは読者の課題としよう( ´∀`)

みんな一般の基底では反変ベクトルと共変ベクトルのベクトル積は無意味だと言い放ってスルーしているけど、できないわけではないよね。

上の結果で変換行列が恒等変換の場合、ちゃんと正規直交基底の外積の式と等価になることは明らか。なのでこれも立派なベクトル積の成分表現の一般化になるわけだけど、正規直交基底だと複雑過ぎて利用価値がなさそう。

ただこの議論は実は次の議論で避けて通れない。

次に議論しなければならないのが一般のベクトル3重積である、3つのベクトルがすべて反変ベクトルにしても、共変ベクトルにしても、そのうち二つのベクトル積の結果は双対基底になるわけで、途中どうしても双対基底と自然基底のベクトル積が出てくる。

どうすんだごら(`Д´)

もうあれだよね、一般のベクトルではなくて、基底のベクトル積を考えた方がいいかな。

今まで手元で参考にしてきた有名な参考書を改めて読み返してみたところ、一般のベクトル三重積に関してはどれも言い合わせたように完璧スルーしていることが判明。ベクトル三重積も索引で調べると、最初の部分でベクトル代数のおさらいのところで標準基底に関してのみ当たり障りのないように触れたのを最後に、以降は議論されていないことが判った。

それじゃ知らなくてよかったのと同じじゃね(´Д`;)

確かに手元の共立「数学公式改訂増補」には良くまとまったベクトルとテンソルの記載があるが、一般の基底に関する内積に関しては計量テンソルを伴った記載があるが、ベクトル積はおろかベクトル三重積に関しても一般の基底での記載は無い。

これまた世界を敵に回したか。

(悪魔の囁き:先人が皆避けてきた道をお前に通れるわけがない)

ここまで来たからには今更引き返すつもりはないでちゅ。

(悪魔の囁き:賢い先人は皆うまいこと手を抜いてきたんだから、お前も手を抜けば)

やだ、手を動かすのは止めないでちゅ。

食時の後に考えたらまたひとつアイデアがひらめいた。

先ほどの共変ベクトルと反変ベクトルの間のベクトル積の基底がどうなるか謎だったが、計算した結果の式から変換行列の成分が3重積になっていることから、自然基底と双対基底のどちらにも直交する新たな基底ではないかと予想される。

それがどんな形になるのか計算しようとおもったが、('A`)マンドクセ

簡単なアプローチで確かめてみよう



ふむ、一般のベクトル積だけ知りたいんだけど、その前に一般の基底のベクトル三重積を計算しないといけないはめに陥った...orz

どうすんだこっから(´Д`;)

後ろを振り向いても誰も居ないし、前にも歩んだ人はなさそう。検索したけどこれっぽちもヒントになるような記事や図書は発見できず。もう探す時間をかけるだけ無駄なので自分でなんとか突破口を見つけるしかないよね。

斜交基底同士のベクトル積は考えてみるとおもしろいよね。f1,f2のベクトル積はf1,f2の張る平面に垂直な方向を向くけど、それとまたf1かf2とのベクトル積を考えると3重積になるけど、正規直交基底みたいに、同じ基底の組のどれかと平行なわけではないんだよね。ベクトル積では一般に結合則が成り立たないから、f1x(f1xf2)は(f1xf1)xf2とは同値ではない。後者は明らかにゼロベクトルだけど、前者はそうではない。f1x(f1x(f1xf2))というのもゼロベクトルにはならないし、f1x(f1xf2)とf1の張る平面に直交する方向を向く。どうなってますか(´Д`;)

誰もこのことを研究していないのかな?

上のアプローチは入り口は簡単そうに見えるけど、中に入ると急転して複雑で手計算では無理。計算好きなGaussならなんかもっと計算を楽にする方法を考えそうな気もするけど。

もうひとつの簡単そうに見えるアプローチは、計量テンソルを使って、添え字の上げ下げをしてしまうというもの。これも途中までは手計算でできるけど、最終的に計量テンソルの成分を展開しようとすると、頭が爆発する( ̄0 ̄)

いろいろ手元の参考書を読み返すと、この議論とは直接関係ないけど、計量テンソルについて今まで知らなかった事実があることに気付かされた。

太田浩一著の「ナブラのための協奏曲」を読み進めていたら、√gとかいう係数があちこち出てきて、なんだっけこりは?と最初から読み返してみたら、計量テンソルの行列式とヤコビ行列式(Jacobian determinant)の密な関係を表しているらしい。

計量テンソルの行列式の平方根は、これまで良く出てきた自然基底のスカラー三重積と同値だというのだ。今までそれを単に基底変換行列の行列式(determinant)の意味でDとして登場させていたけど、それは計量テンソルの行列式の平方根と等しく、また自然基底を並べた行列は一般の曲面座標系ではヤコビ行列のことだということが判った。自分で発見するまでに至らなかったのが多少悔やまれるけど、その一歩手前まで来ていたので良しとしよう( ´∀`)

これまでの議論はベクトル解析というより、その手前のベクトル代数もしくはテンソル代数の議論に過ぎないので、解析が出てくるとまた別の障壁が待っている。なんとかテンソル代数からシームレスにテンソル解析へ進む道はないものだろうか?この問題についてはまた後日解析の道へ入る時に取り上げよう。

いまはまず代数的な議論の決着をつけるのが先決だ。

そういえば議論の蒸し返しになるが、一旦読者の課題としてあった一般の反変ベクトル成分によるベクトル積の表記に関して答えが得られたのでここに記しておくことにする。

よくよく最初の計算式を睨むと、以下の様に書き換えることができることがようやく判った。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

ということだった。(2016/4/1 訂正)

正規直交基底の場合と同じように綺麗に記述できるのは反変ベクトル成分のみか、共変ベクトル成分のみを使う場合で、反変ベクトル成分と共変ベクトル成分を組み合わせた場合にはそうはいかないというのは確かなようだ。

手元の 岩堀長慶 著「ベクトル解析」を通勤電車内で最初から読み進めていたら、比較的最初の方から斜交座標系が登場し、その後も正規直交基底だけではなく斜交基底も頻繁に登場していることが判明。ページによっては1ページ内に繰り返し斜交基底という文字が現れて笑ってしまった。そういうテキストは珍しい部類に入る。しかしながら、話がベクトル積に入ったとたんに、斜交基底の斜の字も一切出てこず、ひたすら正規直交基底のみの話に終始して、それまで演習問題で扱うことが多かった斜交基底もベクトル積のところでは一切登場しない。意図的にスルーしているとしか言いようがない。ベクトル積の話が終わるとテンソル代数の議論に入るけど、そこで再び斜交基底が登場するのは完全にベクトル積だけ斜交基底が禁句であるかのような感じを受ける。たぶんそうなのだろう。

テンソル代数やテンソル解析のテキストとしては、手元の 田代嘉宏 著「テンソル解析(復刊)」が個人的には読みやすいと感じている。やっぱりテンソルを理解するにはそれなりにじっくり長くつきあう必要があると思う。

さてどうしようか(´Д`;)

せめて一般のベクトル三重積がどう表されるかだけでもやっておこうかな。

(2016.02.15)
ふう、病み上がりに考え直すと束縛がとれて、いろいろ自由な視点が開けてくる。

先の反変ベクトルのみと共変ベクトルのみのベクトル積の結果から、反変と共変の混合ベクトル積を得る別方法を思いついた。それは計量テンソルを用いて片方のベクトル成分の添え字を上げ下げすればいいわけである。

思いつくのは簡単だが、いざ計算してみるとEinsteinの省略記法では簡潔そうに見えるが、実は複雑だということがわかる。

そもそも計量テンソルが関わってくる時点で、対称テンソルとの縮約が発生するので、全テンソル成分が総出動することになる。結果は基底が正規直交基底ではなくなる点で簡単になるが、計量テンソル成分が加わることでややこしくなる。

計量テンソルによる添え字の上げ下げは



これを一般の共変ベクトルのベクトル積の結果に代入すると



ということになる。Einsteinの省略記法を使ってなんとなくそれらしくなったけど、これ以上の探求は一旦止めにしよう。すくなくとも局所的にでも直交系でない空間は電磁気学では登場しないのでよしとしよう。登場したらその時改めて考えればよい。

少なくともこの時点で何も収穫が無かったわけでもなく、一般座標系の内積の場合は、反変ベクトルと共変ベクトルとの内積は座標系に依らないが、それ以外は座標系によって修正を受ける事。ベクトル積に至っては反変、共変のいずれの組み合わせでも座標系による修正を受けることが避けられないことが判った。前者は仕方ないとしても、後者は大方の予想を裏切る結果である。二つのベクトルは座標系によらないはずだからそのベクトル積も座標系に依らずに決まるべきだと思っていたが、それは正規直交座標系を選んだ時のみで、一般座標系ではそうではなかった。それが擬ベクトルとか、軸性ベクトルとか言う名前でベクトル積が区別されるゆえんである。それが判ったので決して無意味ではなかった。

大抵のテキストはそこが見える場所までは読者を誘導せずに、上手に枝切りをしていると思われる。見えたとてその先にはぺんぺん草も生えていない広大な空間があるだけなので、そっちへゆかせない方が得策というわけである。本当にそうなのだろうか?

例えばベクトルやテンソルというのを物理量として、内積やベクトル積を物理法則と読み替えれば、正規直交座標系で成り立つ物理法則は果たして一般の座標系でも成り立つだろうか?という疑問が生じるのは自然の流れである。答えはここまでの議論の通り、正規直交座標系での物理法則は一般の座標系では修正を受ける。しかしその逆はそうではない。一度一般の座標系でそれらの法則を記述すれば、それは正規直交座標系の以下の特種性によって修正を受けずにそのまま成立する。



いやはや、直交座標系というのはなんと易しいありがたい世界であるというのがここにきて実感する。これだから長い間、Newton力学が長い間正しいと信じられたきたゆえんである。誰も面倒な歪んだ座標系で好きこのんで物理現象を考える人は居なかったわけである。少なくとも20世紀に入るまでは。

本当は直交座標系での議論をちゃんとやるべきだけど、退屈なんだよね、ありがたみが湧かないというか。でも少し直交系をかじってから一般系の事を考えると謎が湧いて出てきて面白い。謎を解き明かして到達した場所から眼下の直交系を見ると雲が晴れ渡ったように良く見通せるようになるというわけ。

さて同じようにベクトルの三重積についても議論しておく必要がある。

これまでの議論では一般の座標系として斜交座標系を取り上げてきたものの、斜交基底を基準となる正規直交基底の線形写像(T)で写されたものとして論じてきた。しかしベクトル積になるとそれはむしろ煩雑で見通しが悪い。斜交基底かその双対基底のどちらかを基準にした方がよさそうである。

ここまでの結果として、反変ベクトル同士のベクトル積は一般の座標系では成分は反変のままだが基底は共変ベクトルのものに変わる、反変ではその逆になる。この天邪鬼なベクトル積の本性は正規直交系でも変わらない。正体は後に判明する擬ベクトル、もしくは軸性ベクトルと呼ぶ、通常のベクトルとは区別すべき存在である。

さてベクトル三重積は、その天邪鬼なベクトルと更に通常のベクトルとのベクトル積を考えることになる。

どうすんだそれ(´Д`;)

(2016/3/25)
実のところ、ベクトル三重積は正規直交座標系でも躓きの石のひとつでもある。

斜交座標系で考えるとややこしいので、ここはひとつ易しい正規直交座標系に立ち戻ってみることにする。

a,b,cの3つのベクトルの三重積を考える。




有名な公式として、以下のものがよく演習問題に取り上げられるが、これでみんな挫折するんだよね。もうね、挫折するのをあざ笑うかのような公式だよね。



これを自分数学的に導いてみることになるわけだが。

まず先に括弧の中を計算してしまおう



従って



公式と違う結果になってしもうた(´Д`;)

Wikipediaにこれの種明かしが書いてあった。

意図的に0を加えるというテクニックを用いるのだった。



なんだ簡単じゃないか( ´∀`)

これはあらかじめ結果を知った上で、どうすればそうなるかを考えて辻褄を合わせる、もって回った手法とも言える。

これとは別にテンソルの言葉でストレートに導く方法がある。それは読者の課題としよう( ´∀`)

さてここからが本題である。

上の公式は成分を伴わない形式なので、座標系に寄らず不変に成り立つと考えられるが、本当にそうだろうか?

公式の右辺はスカラー積を係数とする2つのベクトルの線形結合になっている。スカラー積はスカラーだから座標系によらず不変であるはず、ならばその可能性は高そうである。

(2016/3/28)
このページを編集する際に、数式を確認するために、プレビューにするのだけど、レンダリングに異様に時間がかかる。変だなと思って調べたら、普通にページを繰り返し読む度にmathtexはLatex+dvipngでイメージをレンダリングしている。遅い訳だ。どうやらブラウザー側からcacheをバイパスするようにとの指定がある場合には、新たにレンダリングするようだ。最近のブラウザはそうなのかと思ってIEの最新のを試したら同じだった。余計な話だがそういうことだった、mathtexのレンダリングイメージキャッシュ機能はほとんど有効活用されていないということに。

さて話を本題に戻そう。

斜交座標系でのベクトル積の場合は、ベクトル積の生来の天邪鬼な性格が表に出てきて、2つのベクトルが供に反変でも共変でも、正規直交系のように綺麗にならない。しかも、元のベクトルが供に反変ベクトルの場合、ベクトル積は共変ベクトルになるし、逆も真なり。2つのベクトルが一方が反変で他方が共変だと、計量テンソルが混じって更に面倒なことに。

本来はベクトルは座標系によらず不変な物理量を表しているはずなのだが、同じものとはとても思えない姿になる。

まず、上の式で、b,cを先に計算するので、それらは供に反変ベクトルだとしよう。そうするとその結果は共変ベクトルになるので次に反変ベクトルaとのベクトル積は片方を計量テンソルで添え字の上げ下げをしてやる必要がある。いずれにせよ、反変ベクトルのベクトル三重積は反変ベクトルになるということまでは予想がつく。さてその結果は正規直交系と同じ大きさのベクトルになるのだろうか?

上の公式の右辺を計算しようとすると、やはりac,abのスカラー積は、供に反変ベクトルなので、計量テンソルを間に挟んでどちらかを共変ベクトルにする必要がある。結果はスカラーなので、それをそれぞれc,bの係数として線形結合すればいいので、反変ベクトルの三重積は反変ベクトルということは予想がつく。

ちょっと計算がややこしいがやってみることにしよう。

(2016/3/29)
mathtexで毎回レンダリングがされるようになった原因が判明した。というのも昔の数式に関してはちゃんとキャッシュを使用しているのに最近使用している数式はキャッシュファイルすら作成されていないことが判明。理由はベクトル積の演算記号として使っている\timesが原因だった。mathtexは内部で\timeを現在時刻に変換する機能を備えており、その処理の部分は単に数式の中に\timeが含まれていればキャッシュを使用せずにキャッシュもせずに\time文字列を現在時刻に置換してレンダリングするようになっていたわけである。mathtexの作者はベクトル解析とは無縁のようで、\timesが存在することを知らなかったぽい。本当に\timesではなく\timeを使用した数式だったらどうしようとか、\timesと\timeが混在する数式とか考えると切りが無いので、その処理を条件コンパイルで展開されないようにすることにした。まあ、他にも似たような\todayとか\calendarとかあるけどこれらはたぶん使わないだろうから放置で。これでページ表示が素早くなった。今考えると、\timesが\timeと誤認識するバグがあるのは確かだけど、\timesが現在時刻に誤って変換されるということは起きていない。実際の置き換えはstrreplaceという謎な関数を使用しているが、それはちゃんと\timesと\timeを判別しているようで誤った変換はされていない。ならstrstr(expression,"\\time") != NULLという条件は不要なのではと思うようになった。いやまったく関係ない話である。

(2016/3/30)
さて余談が過ぎたが、本題に戻ろう。何度それを言う。

先に反変ベクトルのベクトル積は共変ベクトルになると書いたが、誤解を招く恐れがあるので付け加える必要がある。そもそもベクトル積は、狭義のベクトルの範疇に入らない。

一見すると同じベクトル空間に存在するように見えて、実は別の空間に存在するのである。それが露見するのは、符号を反転する基底変換を受けた場合である。ベクトル積の成分は元のベクトルの成分の二次形式で表されるので、元のベクトルの成分の符号が反転してもベクトル積の成分は反転しない。元のベクトルが一斉に逆の方向を向いてもそのベクトル積は向きを変えようとしない、天邪鬼な性質が露見するのである。価値観が同じお友達と思っていたのに実際には住む世界が違ったのね、という瞬間があるのと一緒。

ところで天邪鬼なベクトル積の大きさは、座標系に依らず不変だよね?

一般の斜交座標系は正規直交系と違って完備ではないので、ベクトルの大きさを計算するにもその双対ベクトルの成分が必要になる。('A`)マンドクセ

双対ベクトルの成分を得るには、計量テンソルによって縮約する必要がある('A`)マンドクセ

結果を知りたいだけなので、ここまでの一般の斜交座標系でのベクトル積の結果を用いて計算してみよう



なんですかこりは(´Д`;)

これが座標系によらず不変なスカラー量であるかどうか確かめるために、一般の斜交座標系に変換する前の正規直交系でのベクトルを用いて同じ計算をしてみよう。

正規直交系では双対基底も双対ベクトルも自然基底と自然ベクトルとぴったり一致するので、両方を混在して使用しても構わない。



なんと一般斜交座標系に変換する前の場合とでは\primeがあるかないかの違いでしかない。どちらも同じ形式で表されるのは内積ならではの性質。

実際に同じスカラー量なのかどうかを確かめるには、片方の成分をもう片方の成分に置換して同値になるか確かめる必要があるが、それは読者の課題としよう( ´∀`)

こんなしょうもない計算しているのはここだけしかないと思う。

文字数制限に達したので続
webadm
投稿日時: 2016-1-10 22:07
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Re: 自分の数学を持つことの勧め
さて内積と外積の定義に関する疑問から発した旅はまだ終わっていない。

双対基底の存在を知り、反変ベクトルと共変ベクトルの違いを理解した上で、内積と外積に関する更なる疑問が生じてきた。

・一般の斜交基底での内積と外積は直交基底と定義を変える必要があるか?
・一般の斜交基底での反変ベクトル間の外積はやはり反変ベクトルか、また共変ベクトル間の外積はやはり共変ベクトルか?

この疑問に関して検索して調べたところ結果は不毛に終わった。

内積で検索してもまるでみんな言い合わせたように正規直交基底を前提にした内積の定義を結果だけ示して終わっている。

手元の有名なベクトル解析の本やテンソル解析の本を見ても、この疑問には直接答えるような章や部分は見当たらない。

まるで世界中を敵まわすような疑問を抱いてしまったことを感じた。

世界を敵にまわしたと感じるのは小学生依頼久々である。

小学生の時は社会から追放されるという危機感を感じて自分の疑問そのものを封印してしまったが、それは間違いだったと今後悔している。世界を敵に回しても戦わなければならない時はあるのだ。

もちろん、敵の視点からすれば、ベクトルの成分によらない内積の定義は基底に依存しないので修正する必要がないと主張するだろう。それに関しては異論はない。

inner product - norm form

問題は上の定義に現れるベクトルの大きさ|a|,|b|は斜交基底の元ではどう表されるかである。

既に一般の基底を選んだ段階でベクトルの成分は反変成分となり、基底に依存して大きくもなり小さくもなる。



どうしてこのことに誰も口を開かないのだろう?

高校の数学で斜交座標系を教わるらしいが、これに関する議論は検索ではまったくひっかからない。高校には通ったことが無いので知らない。

更にひどいことに斜交基底の存在すら口にすることもはばかられることがあるのかどうか出てこない。

どうやら禁断の領域に足を踏み入れてしまったぽい。

どうも秘密にされていることがあるようなにおいがぷんぷんする。

秘密を嫌う者としてはこれは暴かねばならない。

検索すると結論だけ述べていてそれに至る過程については一切触れていない記事は見かける。

また同様の議論はEinsteinの相対性理論で結果だけ示されて世界が動揺したという歴史があるらしい。Einsteinの手書きのノートにも実のところ結論の式しか記されていないので、どうやってそれを見いだしたかは謎である。

なので普通は相対性理論とかそれに使われているRiemann幾何を学ぶ人しか知らなくていい領域なので高校や大学では絶対触れないという決まりのように想像される。違うだろうか?

しかしもっと早く知っていれば、というか何故最初に内積の定義を教わった時に疑問を抱かなかったかということを後悔している。確かに正規直交基底を用いる限りにおいては簡単な定義で済んでしまうのでそれに甘んじていたというのがある。言い換えれば甘く見ていたと言える。

ここからはどこにも書かれていない(少なくとも検索した範囲では)斜交座標系に修正された内積の定義を導くことにする。

まずはベクトルの大きさ(ノルム:Norm)をどうやって計るかが問題である。

正規直交基底(e1,e2,e3)を用いてベクトルv

vector - one form

という線形結合で表されるのは言うまでもない。

またその場合、ベクトルの大きさ|v|とベクトルの成分の関係は

norm - orthogonal basis

となることはどのテキストにも書いてある。

もはや上の成分での定義は正規直交基底の特種性に依存し、斜交基底ではまったく成り立たないのは明らかである。

問題は基底を正規直交基底(e1,e2,e3)から斜交基底(f1,f2,f3)に変換した場合、ベクトルの大きさはどうなるかということである

oblique basis - linear transform from orthogonal basis

oblique basis - matrix form

vector components - passive transform

従って元の正規直交基底でのベクトル成分は斜交基底でのベクトル成分を使って以下の様に表すことができる

vector components - matrix form

これを最初の正規直交基底でのベクトルのノルムの定義式に代入すると

norm in oblique basis

ということになる。

行列表現では

norm in oblique basis - matrix form

従って変換行列が恒等変換(単位行列)の場合には行列の対角成分T11,T22,T33が全て1で、それ以外は0であることから、正規直交基底でのベクトルのノルムの定義式と一致する。やはり正規直交基底は特種なケースだったわけだ。

ところで正規直交基底から斜交基底への変換行列とはいったいどんな成分から成るのだろうか?

それは先に挙げた変換式からただちに

transform matrix from orthogonal to oblique basis

なんと基底を順番に縦に並べた行列のことだった。

先の一般基底でのベクトルのノルムは

norm in oblique basis with riemannian metric tensor

という風に表すことができる。

このgijを成分とする行列は、計量(metirc)テンソル、基本計量テンソル、基本テンソル、Riemann計量とか様々の名前で呼ばれるものである。この二階のテンソルと2つのベクトルのテンソル積を二重に縮約すると0階のテンソル(スカラー)への線形写像となるわけである。

こんなに早くにお目にかかるとは光栄である。

すなわち正規直交基底では計量テンソルは単位行列になるため見えなくなってしまうが、一般の基底では正則な対称行列となる。

なんだそうだったのか(´∀` )

どうしてこんな大事なことを誰も書いてないのだろう、やっぱり世界を敵にまわしたかも。

この計量テンソルを使えば、意外に簡単に一般の基底へ内積の定義を得ることができそうな予感がする。

と思った瞬間に答えの一歩前まで来ていることに気付いた。片方を同じ基底に関する別の反変ベクトルに置き換えれば済む話だった。

inner product in oblique basis

計量テンソルが内積の定義に先だって存在しないといけないというのが判っただけでも大変な収穫であるが、それだけではない。

大抵のRiemann幾何のテキストには上の結果が天下り的に示されているだけである。大学院に入って初めて計量テンソル、もしくは基本計量テンソル、基本テンソル、Riemann計量、に出くわすのでは遅すぎる感がする。もっと早くに出来れば最初から一般の座標系で早い時点で計量テンソルの重要性を認識していれば、「あ計量テンソルですね、わかります」で済んでしまう話である。

最初に極めて特種なケースである正規直交系で一般性を失った形で教え込まれてしまうと後で取り返しのつかないことになる。テキストによっては、可能な限り一般性を失わない形で正規直交系でベクトル解析を構築しているものもある。それは一般の基底のベクトル解析(多様体上の解析)を学んだ後でやっとその違いが判る。そこまで配慮して書かれたテキストは少ない。

さて収穫はそれだけではない。一般の座標系で内積の定義は上の形だけだろうか? 上の定義では反変ベクトルと共変テンソルの組み合わせだが、それ以外に組み合わせがあるはずである。

実際には4通りの組み合わせがあるが、そのうち2つは前後が逆なだけで同値である。内積は可換な作用なので前後入れ替えても結果は同じである。そうすると残る2種類はどんな形だろう?

実は先の結果からは直感的にはおよそ思いつかない驚愕の事実が判明することになる。たまたま偶然に再発見した。

先の内積の定義を自然基底(f1,f2,f3)に関する反変ベクトル成分だけでなく、双対基底に関する共変ベクトルも併用してみたらどうなるだろうか?

共変ベクトルの成分は基底変換と同じ変換を受けるから

oblique basis - matrix form

(2016/7/14)訂正

従って

vector components -- passive transform

(2016/7/14)訂正

という関係が成り立つ。

これを一般のベクトルのノルムの式の片方に代入すると

inner product -- mixed form

なんと成分だけの式になってしまった。本当は計量テンソルが単位行列の形をしているだけなんだけどね。

先の結果と合わせると

metric tensor - raising and lowering indices

つまり計量テンソルにはベクトルに作用すると反変から共変へ、共変から反変へ変換する機能があるという事実が判明したことになる。これは直感では絶対わからない(天才でもないかぎり)。苦労してへたくそな行列計算を積み重ねるとIQが低くてもこの事実に辿りつくことができる。やっぱり線形代数は身につけておくべきツールだということを痛感。

Riemann幾何や物理学とかではもうこのことは常識として扱われていて、「添え字の上げ下げ」を行う機能として頻繁に登場する。内積を定義するだけではなかったのね。「計量テンソル」で検索してもほとんどまともな記事は出てこないけど、「添え字の上げ下げ」で検索すると計量テンソルのことが山ほど出てくるというのは笑える(´∀` )

同様に今度は上の結果を利用してもう片方の反変ベクトルを共変ベクトルに変えてしまう(添え字を下げる)と

metric tensor - raising and lowering indices

ということになる。

最後のは計量テンソルの成分の添え字が二つとも上付きになっている点に注意。反変テンソルである。

とどのつまり計量テンソルには以下の4種類あることになる

metric tensor and inverse metirc - covariant, mixed and contravariant

共変テンソル(添え字が下のみ)、2つの混合テンソル(添え字が上と下両方混在)、それに反変テンソル(添え字が上のみ)の4種であるが、混合テンソルはいずれも単位行列なので他と違って添え字の上げ下げの機能は持たず無害、共変テンソルと反変テンソルは互いに逆の作用を持つ関係にある。

これだけの事実を再発見できたことは収穫である。テキストでは当たり前の事実として当たり前のように頻繁に利用されるので大学院になってから知らないでは済まされない。今のうちに自分で発見して判ってしまえば怖いものはない。

テキストでは添え字記法を使って上の結果を天下り的に示しているものがほとんどであるが、基本的な線形代数の基礎知識と行列計算方法を知っていれば下手な計算でも結果を導出できることを示せたことはうれしい。今日はぐっすり眠れそうである(´∀` )

P.S
この段階で得られた成果ですっかり舞い上がってしまってもうひとつの設問を忘れていることに気付いた。
ベクトルの外積は一般の基底ではどうなるのだろうかという点である。これについては新たな記事で議論することにしよう。

P.S
後で読み返したら、内積の混合形式の導出に欠陥があったので、欠陥の無いものに差し替えたのは内緒だ。

P.S
カタカナで(ノルム)と括弧内に書くと一瞬顔文字に見えたりするのは私だけだろうか? きっと疲れているんだ。
webadm
投稿日時: 2016-1-4 22:15
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Re: 自分の数学を持つことの勧め
ベクトル解析やテンソル解析をひもとく書では共変(covariant)や反変(contravariant)というような名前のついた二種類のベクトルやテンソルが最初から登場することに困惑することがある。

それに関連して双対(dual)とか相反(reciprocal)とか聞き慣れない用語が出てくる。

これらは手元の古い数学事典にはいずれも掲載されていない。もっと新しい改版には追加されているかもしれないが。

それらは電磁気学のテキストではほとんど見当たらない。電磁気学で使われるベクトル解析をちゃんと学ぼうとしてベクトル解析の専門書を読むと冒頭から出てくるので困惑するというわけである。

おそらくそれら専門書ではそうした用語を導入した意図が隠されたまま天下り式に定義が与えられるので困惑を招いていると思われる。

それを解消するには自分でそれらの概念を再発見するしかない。

電磁気学で使われるベクトル解析でそれらのへんてこな用語が登場しないのは特種な直交座標系だけを使用しているためである。

これまでの議論でも終始、座標系は直交座標系に限定していたように、電磁気学では直交座標系の方が都合がよい。

直交座標系では互いに直交し合う単位ベクトルの組を基底として使用して任意のベクトルをその線形結合で表す。

基底は互いに直交しているので、特定の基底に関するベクトルの成分を割り出すには、ベクトルとその基底の内積を計算すればよいことになる。







これが一般の斜交基底の場合(線形独立だが互いに直交していることも単位ベクトルである必要もない)にも依然として任意のベクトルをそれらの基底の線形結合で表されるが、成分を直交座標系の様に基底とベクトルの内積で表すことはできない。何故なら基底が必ずしも互いに直交しているわけではないから。







ではどうやって成分を割り出せばよいのだろうか?

それには基底(f1,f2,f3)のうち2つと互いに直交し、残りの1つとの内積が1になるような基底(g1,g2,g3)を作り、それらと元のベクトルとの内積をとれば、元の基底に関する成分を抽出できることに気付く必要がある。







ということになる。

それではもう一つの基底(g1,g2,g3)はどうやって導かれるのだろうか?

上の新旧基底間の内積の定義からそれぞれの基底の成分の関係は



ということになる。

これから、線形代数を用いて新しい基底の成分は元の基底の成分を並べた行列の逆行列を転置したものと同じだという結果が得られることが判る。



この関係は逆も真なりで、一方の基底が判ればもう一方の基底も一意的に決定することになる。この対となる基底を双対基底(dual basis)と言う。

上の結果があっているか計算で確認してみると







ということで確かめることができた。

ところで上で出てきた行列式 D は基底(f1,f2,f3)のスカラー3重積と一致する。



従って新しい基底(g1,g2,g3)は以下の様に表すことができる



分母は基底(f1,f2,f3)で構成される平行6面体の体積で、分子は平行四辺形の面積の次元を持つため、基底(g1,g2,g3)は元の基底(f1,f2,f3)の逆数の次元を持つことになる。

こうしたベクトルを相反系(reciprocal)ベクトルと呼ぶ。

直交基底の場合、相反系は元の直交基底と平行になり大きさも同じだが、次元が元の基底の逆数を持つ点で厳密には同じベクトルではない。

直交基底が単位ベクトルかつ無次元の場合に限り、その双対基底は互いに同一で区別がつかなくなる。つまりそれは極めて特種な世界である。

任意のベクトルはそれぞれの双対基底の線形結合で表すことができるが、それぞれの表し方の間には座標変換に関する成分への影響の受け方が異なる。

続いてその性質について調べることにする。

その前にやっておくべきことがあった、鶏が先か卵が先かの問題はあるが、上の議論では双対基底を(f1,f2,f3),(g1,g2,g3)と異なる記号を用いていたが、双対基底が現れる度に2つの異なる記号を割り当てているとそのうち割り当てる文字が無くなってしまうので、慣例的に同じ文字を割り当て、添え字の位置で二者を区別することにする。

一般の基底は任意の互いに線形独立なベクトルの3つの組を選ぶことができるので、それを自然基底と呼ぶ人も居る。一方その相反系ベクトルは人為的に一意に決まるので、それを双対基底と呼ぶ人も居る。希に先走りして前者を共変基底、後者を反変基底と呼ぶ人が居るがそれは正規直交基底からの基底変換に対応しているので、その成分は基底変換と逆の変換を受けるので反変ベクトル成分となり、逆は共変ベクトル成分とややこしい。また相反系であることから、一方を基底、他方を逆基底と呼ぶ人も居る。これは自分数学的には一番納得が行くかもしれない。

なので双対基底の一方の添え字を下に、他方を上にすることで区別することにする。そうすると大抵のテキストで教えられる双対基底の定義である以下の式が導かれる。



従って、任意のベクトルは双対基底とそれに対する成分の組を使って以下の様に表すことができる



従って一方の基底による任意のベクトルの成分はそれぞれ



という関係があるように意図的に成分の添え字の位置を内積をとる基底に合わせることにする。

さて双対基底によって同じベクトルは2組の異なる成分で表されることになるが、それはどう呼べばいいのだろうか?どちらも同じベクトルを表しているのでだからちょっとこまる。

英国の数学者であるSylvesterが最初にその2つに別名を与える画期的な命名法を編み出した。
基底を別の新しい基底に線形写像で写すと、元の基底で表されたベクトルの成分は新しい基底ではどう写るかというのを考えることにする。

これはちょうど、実世界で言えば、ある対象物の方を向いた位置で、観測者が首を左に振ったら、対象物はどちらの方向へ移動して見えるかというのを考えるのと似ている。誰もが確かめて見ることができるように、首を振った方向とは逆の方向に対象物は移動したように見える。

もうひとつの実世界のおもしろい例は、ロケットの打ち上げ開始から終わりまでの中継録画をじっくり観測するとおかしな点に気付く。それは最初まっすぐ地上から垂直の方向に打ち上げたロケットが残していったロケット雲の軌跡が垂直ではなく、湾曲していて地球に逆戻りしているように見える点である。「打ち上げ成功」とかテロップが流れなければ軌跡だけ見ると打ち上げが失敗してロケットが落下したのと区別が付かない。これも良く考えれば、地球が自転しているので、時間の経過と供に座標系が回転するので、ロケットの見た目の方向も軌跡もそれと逆方向に回転して見えるためである。

それを数式で明らかにすることにする。

基底(e1,e2,e3)をとって、それを(e1',e2',e3')に写す写像を考える。新旧の基底間には以下の関係がある。



これは線形代数的に行列で表すと



ベクトルを成分とするベクトルが気に要らなければ成分に展開して以下の様にすればよい



線形代数的にその逆変換は



この逆行列を以下の様に表すと



従ってそれぞれの基底は



と表される。

従って任意のベクトルの成分は新しい基底でどう変換を受けるかは、元の基底の線形結合で表したベクトルの式に上の変換式を代入すればよいことになる。



総和記号が沢山あってなにがなんだか判らなくなったので、成分毎に分けてみると



従ってベクトルの成分は基底変換とは逆の変換を受けることが判る



従って普通に自然基底を選んでその線形結合としてベクトルを表すとその成分は基底変換と逆の変換を受けることになり、それを反変(contravariant)ベクトルと呼ぶことにする。その成分は反変成分である。

今度はその双対基底の線形結合で表された同じベクトルの成分は上の基底変化によってどう影響を受けるか調べることにする。

先の基底の変換によって双対基底は以下の変換を受けることになる。



つまり基底変換とは逆の変換を受けることになる。



従って双対基底の線形結合で表されたベクトルの成分は基底変換によって



総和記号が一杯でてくるので、Einsteinの省略記法を使えば簡単だが成分毎に分けて考えると





つまり回り回って基底変換と同じ変換を受けることになるので、これを共変(covariant)ベクトルと呼びその成分を共変成分として下付きの添え字で表すことにするわけである。

テキストとか良くまとまった本では紙面を最小限にするために最後の結果だけ示して終わっているが、やはり納得するには自分で計算して確かめてみるのが一番である。直交座標系で考えれば基底変換は常に直交行列になるのでその逆行列は転置行列になりもっと簡明に表すことができるが本質を見失わないように一般の基底で考えるのが良いと思う。

テキストによっては直感的な理解のしやすさから、二次元平面上で任意の基底とその双対基底を図示して任意のベクトルの成分が基底の変換(回転変換)によってどう変わるか示す方法が用いられており、個人的にはその図で初めて相反系の存在に気付いたのは内緒だ。でもそれに気付いたから良しとしないで、自分計算して紙の上で確かめてみると更に理解が深まることも実感した。

基底が互いに直交していても単位ベクトルでなかったり、次元(量)が違えばその双対基底は元の基底とは異なるので最初から両者の存在を頭に置いて考える習慣を付けるのが良いかもしれない。

さて、最初以前の議論で出てきて正射影ベクトルの組を一般基底として考えるつもりだったが、それには別の意図があったのだがそれはまた別の機会にしよう。

P.S
最近では双対と同義語でもっと広い範囲を示す双直交(biorthogonal)という用語があるのを知った。こちらの方が線形空間として、数ベクトル以外にFourier級数とかの直交関数空間も含まれることが判るので今後はそれを用いるべきかもしれない。数学書だと双対空間の片方が数ベクトルで他方が線形写像の集合の全体とか最初からわけがわからない定義で始まるのは、そうした結果を踏まえてのことであって、数学ではより広い範囲に適用可能な概念がより強いチャンピオン概念だから仕方が無い。

P.S
双対基底を考えている間に、それで暗号を作るアイデアを思いついたことを書き忘れていた。本題とは違うので割愛したが、反変ベクトルの成分を暗号化前の正文を文字コードを並べたビット列を整数で表したものとすれば基底は暗号鍵になる。基底には十分大きな素数を割り当てればよい。そうするとベクトルは正文と基底(鍵)が掛け合わされて足し込まれた3つの整数からなる暗号文になる。これを復号するには、元の3つの成分を抽出すればいいので、双対基底と内積をとればいいことになる。つまり暗号化と復号化で異なる鍵が使用されるので、公開鍵方式みたいなものである。確かにこれは暗号化方式と使えるかもしれないが、欠点がある。それは暗号化後の情報量が暗号化前より増えてしまうこと(かけ算と足し算が行われるので)、暗号化と復号化の鍵(基底)は互いに片方が判れば他方が一意的に決まるので両方とも秘密にしないといけないため片方を公開することはできない。また双対基底は互いに逆数なので、整数演算で済ませるには両方を有理数としないといけない。そうすると暗号文がある有理数で割り切れることになるので、暗号文を素因数分解すればその中に基底(鍵)が含まれることを意味し、暗号化の強度が弱くなる。しかし暗号化方式としてはあり得るので、欠点を改良すればいけるかもしれない。と思って双対基底と暗号で検索したら一杯特許が出てきて笑えた(´∀` )
webadm
投稿日時: 2015-12-19 21:03
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投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
ベクトル積に疑問を発してから、幾何学的な視点からそこに3階のテンソルが黒幕として潜んでいることを我々は明らかにすることができた。

とどのつまりどんな教科書にも書いてないけど、ベクトル積というのは、エディントンのεを成分とする3階のテンソルと2つの線形独立な一階のテンソル(ベクトル)のテンソル積(5階のテンソル)を1階のテンソル(ベクトル)に縮約する一種の線形写像であるということが判明した。



どの教科書にも数学書を見ても、このエディントンのεの起源については触れられていない。最初に用いたテンソル解析学を構築した数学者にちなんで Levi-Chivita 記号と呼ぶ人もいる、Eddington は Einstein の一般相対性理論の平易な解説書を書いた英国の天文学者で、おそらく彼の解説に当時ほとんど知られていなかった Levi-Chivita のテンソル解析の結果が使われて元祖よりも先に有名になったというのがありそうな話である。現在ですら Levi-Chivita の業績を調べようとしても、師匠の Ricci と共著の本を書いたことしか知りようがない。これではエディントンの名前で呼ばれても仕方がないかもしれない。

ということで大抵はそこは触れていないのだと思う。

触れてはいけないタブーにまで達してしまった感があるが、まだまだ発見は続く。

エディントンのεについては、検索すると様々な方法での定義が見つかる。しかしどれも循環論ぽいのだが( ´Д`)

ひとつは直交基底のスカラー三重積による定義



ベクトル積が使われる時点で既にエディントンのεが内に潜んでいるんだが。

もうひとつはクロネッカーのδを成分とする行列式による定義



これも行列式の計算自体に既にエディントンのεが関係しているから、クロネッカーのδそのものはこじ付けだろうという気もする。

確かにクロネッカーのδとエディントンのεの間にはいくつか関係する公式が知られている。

さてエディントンのεを成分とする三階のテンソル(Eddington のテンソルもしくは Revi-Chivita テンソル)について更に調べてみることにする。

このテンソルはテンソル積で生成することが出来るのだろうか?

エディントンのテンソルがベクトル積のや行列式の黒幕であることは判ったが、エディントンのテンソルの起源は依然として謎のままである。

またエディントンのテンソルをスライスすると三枚に下ろすことが出来て、それらは相異なる基底同士の交代積(2階の交代テンソル)になることは明らか。

そう考えると、エディントンのテンソルは、3つの基底の交代積(3階のテンソル)ではないかという予想されるが、それは確かだろうか?

しかしながら2つのベクトルの交代積は既に定義した形で与えられるが、3つの線形独立なベクトルの交代積を考えようとすると躓いてしまう。

最近出版された本を見るとそこには交代積は登場せず、交代積の記号はベクトル積の記号として使われていてちょっと違和感を感じたが、エディントンのεを三階の交代テンソルとして登場させればそれ以上深い議論は不要なわけで、交代積すら必要ないのだと理解できる。ただしそれは余計な深みに入ってしまうことを回避するための方便とも理解できる。

古いテンソル解析の数学書を見ると、厳密にこつこつと地固めするアプローチでテンソル解析が構築されていく。そのため議論は多局面に渡るため紙面数が半端ではない。薄い本であるが、それだけに最初から凝縮する必要があり、登場する式も立てた際の意図は隠されて結果だけが示されている。意図が分からないと結果だけ示されても何のことか判らないので、それは読み手の課題ということになる。

古い数学書では当然ながらエディントンのεは出てこない。出してしまうと議論がせっかくの構成が台無しになってしまうからだろう。その代わりsgn(シグナム)という記号が登場する。

エディントンのεの場合には、3階のテンソルだから、添え字は3種類あって、その組み合わせで、成分が1, -1, 0 のいずれかになるパターンは暗記しようと思えばできるけど、どうも記憶が怪しくなると間違える可能性もある。

sgnを使用するとその可能性はだいぶ減るし、エディントンのεの解説でよく使われる添え字の偶(even)置換や奇(odd)置換というのもはっきり判る。

sgnが使用されるのは、あらかじめ1から3までの整数の数列があって、それを3つ組み合わせた全ての集合を考え、その集合の任意の要素をσとした場合、3桁の数値の異なる2桁を置換する操作を考える。この置換操作は3桁あれば3通り存在する。そうした置換された結果に対してまた同様の置換を行う、それを繰り返すと、最終的には最初に考えた集合の全体が生み出されることになる。それを図に表すとよく判る



最初の組を偶(even)とすると、それに対して置換を行うと奇(odd)置換のグループが現れる、奇置換のグループに対して更に置換を行うと偶(even)置換のグループになるという具合。これを知っていれば、123が偶だとすれば奇置換のグループは直ぐに出てくるし、更に置換すれば偶のグループが出てくる。3桁の組み合わせは全部で3!=6通りあるので、これが全員集合とうことになる。

数学書ではこんな図は出てこない。

数学書では上の集合の任意の要素σとするとそれを引数としてσが偶置換か奇置換かによって1か-1を返す関数 sgn(σ)を導入している。偶置換でも奇置換でもない3桁の組み合わせ(同じ数字が2つ以上現れるもの)は元々集合にないので、0ということに。

またσ自身に引数を渡すと、指定された位置の数値を返すとすると、σ=123の場合、σ(1)=1, σ(2)=2, σ(3)=3 ということになる。

これをテンソル積の置換を表すのに使用してみると



sgnとσを使用するとn階の交代積を以下の様に表せそうな予想がつく



証明は読者の課題としよう(´∀` )

テンソル代数の適当な数学専門書には大抵書いてあるはず。

既に知っている2つの1階のテンソルから二階の交代テンソルを作る交代積に関しては添え字が2種類しかないので、上の偶置換と奇置換はそれぞれひとつづつしか無いので簡単である。



ただこれは二階のテンソルの特種性に依るので、そのまま3階の交代積には通用しない面がある。

交代テンソルの定義をちゃんと考える必要がある。

2階の交代テンソルの成分は以下の関係があると言える



それでは3階の交代テンソルの成分はどうなるのだろうか?

無理矢理予想すれば以下の様になると思われる



なんと線形独立な成分はひとつだけで、0以外の成分は互いに符号が異なるだけということになる。

数学書ではこれをn階まで議論することなく、最初から一般のn階の交代積の成分をひとつの式で表すことになる。

この予想に従うと3階の交代積は以下の様に定義できると予想される。



テンソル積の順序が偶置換の3階のテンソルは正のsgnで奇置換の3階テンソルは負のsgnで係数倍されるとすれば簡単で判りやすい。この方法は2階の交代積にも適用できる。

テンソルを扱う教科書では上の結果しか書かれていないし、以下の様に交代積の結合則を使って展開しても最後にやっぱり3階の交代積が残るのでどうしようもなくなる。



ここまでは間違ってはいないが(交代積の場合は結合則が成り立つので)、この先どうすんだこれ( ´Д`)と躓いてしまうのがオチである。

ひどい教科書になると、この後間違った展開例をわざと例示して、ばーかばーかと言って先の正解だけ示して終わっているものもある。

さて先の予想が正しいかどうか証明抜きで、計算で確かめてみることにしよう。証明は読者の課題としよう(´∀` )


3階のテンソルの成分は27個もあるのでこれから先現れる怪物のような式を恐れない覚悟が必要である。




上のa,b,cを一般の一階のテンソルとすると、その3階の交代積は





ということになる。

どうやら予想は的中しそうな感じである。

これを元に以下の正規直交基底に関する3階の交代積を計算してみると



従って先の結果に、a1=b2=c3=1, a2=a3=b1=b3=c1=c2=0を代入すれば良く



なので



ということになる。

これはエディントンのεを成分とする3階の交代テンソルそのものである。



不思議なことにこの事実は手元のテンソル解析の参考書にはまったく触れられていない。自明なことだからだろうか?

ということでエディントンのεの正体は正規直交基底の交代積だったということだった。ちょっと胸がすっきりした感じがする。

3次元の場合には4階以上の交代積の成分はかならず重複した添え字が伴うので全成分が0という零テンソルしか存在しないことになる。これは3次元の場合には最大でも3階のテンソルだけ考えればいいことになる。相対性理論とかでは時空間を扱うので4次元となり、4階のテンソルまで意味を持つことになる。4次元の4階のテンソルの成分は256個もあるので、Einsteinは必然的に総和記号を省略する記法を編み出さざるを得なかった。ゆくゆくは古典物理学のひとつの到達点である相対性理論をかじるためにもテンソルもかじっておいた方がよい。というかかじってないと理解できないし。

この後ちょうど良いタイミングなので、後続して正射影ベクトルを一般の基底(直交でもなく正規化されているわけでもないが、互いに線形独立なベクトル)として、一般のテンソルについて議論してみることにする。
webadm
投稿日時: 2015-11-15 11:47
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投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
電磁気学やベクトル解析を学ぶ上で躓きとなるのは

・電気回路理論と違い様々な物理量が次から次へと登場する
・電気回路理論の集中定数回路には距離の概念がなく、分布定数回路でやっと一次元空間だったのが、電磁気学ではいきなり3次元空間
・数ベクトル間のスカラー積やベクトル積は少なくむしろほとどは微分演算子とベクトルの間のスカラー積やベクトル積が中心
・多くの公式を暗記することを強いられる

というところかもしれない。これで最短コースで進むとすれば落伍者が多数でてもおかしくはない。

自分でゼロから構築しなおそうとすると、よくあるテキストでは肝心要のそうした部分は割愛されていてショートカットされているのが普通であり、結論だけ辻褄が合うようになっている。

何かが隠されていると思うのは私だけではないだろう。

講義を良く聴いて内容を覚えているだけで十分ならば最終的に辻褄が合っていれば時間がかからないほうがいいのだろうけど、やはり何か秘密にされると、それを知りたいと思うのは当然である。

以前に二次元空間のベクトルの内積と外積(実際には有向面積計算)を取り上げたことがあるが、その後その続きを検討する中でおもしろい発見をしたので、ここに書いておくことにする。

教科書では内積(スカラー積)と外積(ベクトル積)は最初から別もので、その関係について詮索することはしない。というかそんな時間も無いし割くべきページ数も無いから当然である。

またベクトル解析の教科書では最初から3次元空間から始めるのが普通で、3次元空間こそ応用上重要で、それ以外は重要ではないからである。

しかし最初から3次元空間だと躓きが更に増える。

実は発見というのは、二次元で考えると内積も外積も実は一緒だということである。以前に書いた時は、二次元の外積(有向面積)は内積の片方のベクトルを90度時計方向に回転したものとの内積と同値であるということを示した。

今度は二次元では内積と外積は実は同じ形で表されるということを示すつもりだ。

行列演算の表現を借りると(本当はその必要はないのだが、そうした方が記述が短くて済むし直感的である)

おさらいをすると

二次元空間(Euclid空間)上の2つのベクトルa,bの間のスカラー積(内積)とそれが作る平行四辺形の有向面積(二次元の外積)はそれぞれ





ということだったが、これを前回発見した外積のとらえ方を行列演算表現で表すと





ということになる。

新たな発見というのは、内積も外積も右辺は線形変換行列を間に入れた同じ形式であるということ

両者の違いは線形変換行列の成分だけだという点。

もっともこれは二次元ベクトルでの特殊性によるわけで、三次元ではまた三次元の特殊性がある。

この考えを拡張していけば、所謂テンソル(tensor)の概念の導入の枕に使えるのではないかという気がしたので書いた。

こんなことはどの教科書にも書いてないことだと思う。

おもしろいことに、正方行列をtensorの成分表現としてみなすと、ちゃんと双線形性と対称性、非対称性というのが3次元で考えるよりも遙かに判り易い利点がある。

行列演算表現にすると横向きや縦向きのベクトルが出てくるが、これは演算順序を直感的に判り易くするための幾何学的な利点を借りたものと考えたほうが良い。後でそれを確認するために、この方式を使わないで成分を辞書順に並べて考えてみることにする。

先の2つの行列演算式は成分が特定の定数を持つ線形変換行列だったが、成分の値を代数で置き換えると





ということになり、どちらも同じ演算式で行列の成分値が互いに異なるということだった。行列演算表現で表すと演算の順序が縦と横の組み合わせになるので幾何学的に見て覚え易いというこということになるが、ベクトルおよび行列の成分をそれぞれ辞書順に並べてもすこし煩雑だが同じ演算を記述できる。





内積の方はクロネッカーのδと呼ばれるものが成分となっていて恒等変換行列を作る。
外積の方はエディントンのεと呼ばれるものが成分となっていて90度時計方向にベクトルを回転させる回転変換行列を作る。

本来エディントンのεは三次元以上で用いられるが、2次元で無理矢理定義してみた。

このことから、二次元の場合、内積と外積はどちらも二つのベクトルからスカラーへの線形写像(双線形写像)であり、それぞれが異なる成分から成る二階のtensor, STであると見なすことができる。

実は同じスカラーでも以下の様に性質が異なることがすぐに判る。

・内積はベクトルの順序を交換しても結果は変わらない
・外積はベクトルの順序を交換すると結果の負号が変わる

内積は2つのベクトルに関して対称な演算であるが、外積はそれと異なり非対称な演算であることがわかる。

このことは3次元のベクトルで議論するとより明確になる。

この先を追記しようとしていたらWindows 7のアップデートが勝手に入ってリブートしてしまった、使用中であるにも関わらずである。以前は自動でのインストールはしないようにしたが、Windows7だとセキュリティ上重要なアップデートがあってもなんのも通知されないのな。知らずに何ヶ月も重要なアップデートを放置していたので、インストールするためにどうしても設定を変える必要があった(というか自動インストールしないでアップデートをインストールするという方法が存在しないか判らなかった)。すると今朝悲劇が起きたわけである。

なんの話だったっけ?

ああ、tensorの議論の続きね。

だいぶ書いて失われてしまったのをまた書くのは気力が要る。

先の議論では以下の暗黙の了解がある

・ベクトルは直交基底の線形結合である
・内積、外積は線形写像であるので重ね合わせの理が成り立つ

ベクトルは一般に一次独立な任意の基底の線形結合で表すことができるので、それを直交基底に限定しているということである。

内積と外積が線形写像であるためには、重ね合わせの理が成り立つ必要があるということである。

具体的には、以下が成り立つということになる



とどのつまり、それぞれの二階のtensorの成分は





ということだったわけである。

もちろんこれは二次元での特種性を含んでおり三次元では三次元の特種事情から外積に関しては別途辻褄合わせが必要になる。

三次元の場合、直交基底が3つの組になるが、内積に関しては組み合わせが増えただけで2つのベクトルをスカラーに写像することには変わらない。

一方外積は、基底が増えただけではなく、2つのベクトルからベクトルへの写像になるので話は違ってくる。

内積と外積の議論を3次元空間に拡張すると、



一応ベクトル解析の外積の規則を使うと出来ることは出来るが、線形変換行列の成分が基底ベクトルだというのが気にいらない。

これなら以下様に多くの教科書に紹介されている表現の方が簡潔であるし、ご用とお急ぎの方には好都合な暗記方法である。



しかしこれも行列の成分に基底ベクトルが含まれていて、納得が行かない。最後の式を計算するための規則を行列式の計算規則を利用して表しているだけに過ぎない。なんら新たな情報を生んではいない。

普通ならここで、何故こんなことになるのか、何か得体の知れないものが隠されているに違いないと勘ぐるのが普通である。

ここで上の表現を見て、判ったような気分になってしまうのは騙されているのである。本当に真理を知ろうとしたら、こんな欺しに乗ってはいけない。暗記しても何も本質は理解できていないのだから。

もう一度二次元から三次元に拡張した外積の式をじっと睨んでみると、



これを今度は成分別に表記すると基底は省略できるから



なんと二次元の時と同じように片方のベクトルを元のベクトルと直交するベクトルに変換したものと内積をとる形になる。bから変換された3つのベクトルがそれぞれ元のベクトルbと直交していることは以下の様に簡単に確かめることができる。



実は三次元で任意のベクトルと直交する3つの相異なるベクトルを求めようとすると無数に存在するので一意的には求めることができない。

上のbと直交する3つの線形変換されたベクトルはいずれも、3つの成分のうち一つが0であるから、原点を通りそれぞれ2つの座標軸に平行で違いに直交する3つの平面に平行であることは明らかである。

幾何学的にこれを描くとどうなるのだろう



毎日通勤電車の中で毎朝毎夜この図を考え続けてきてようやく昨日アイデアがひらめいた。

先の式ではベクトルbになっているけど、図の方はbをベクトルaと読み替えてそれに直交する3組のベクトルの関係を示している。

立体的なので判り辛いけど、赤いのは座標軸1-2が張る平面上に平行なベクトルで、ベクトルaに直交するもの。緑は座標軸1-3が張る平面に平行なベクトルで、ベクトルaに直交するもの、青は座標軸2-3が張る平面に平行で、ベクトルaに直交するものをそれぞれ描いてある。

黒で描いてある(a1,a2,0), (a1,0,a3), (0,a2,a3)はそれぞれ、ベクトルaの1-2, 1-3, 2-3平面への正射影ベクトルである。

ちょうどベクトルaに直交する±(a2,-a1,0), ±(a3,0,a1), ±(0,a3,-a2)はそれぞれ(a1,a2,0), (a1,0,a3), (0,a2,a3)を同じ平面上で±90度回転したものとなっている。

ちょっと描けなかったのは、とどのつまりaに直交する3組のベクトルはaと直交し原点を通る法平面が1-2, 1-3, 2-3平面と交わる交線にそれぞれ平行であること。

紙かなんかで立体模型を作ったほうがよいかと思ったけど、切り込みが交わってしまいそうなので接着剤かメンディングテープでとめないといけないのは明らか。それは読者の課題としよう(´∀` )

こんなことはどの教科書にも書いてないけどね。こうして生きた数学的な対象と長い時間戯れるのが大事なんだよな。

ベクトルa,bとのベクトル積はベクトルaおよびbと直交するということは、両方の法平面に対して平行であるということの言い換えである。

ベクトルa, bを同じ起点に置いた場合、そのベクトル積はそれぞれの法平面が交わる交線と平行になるということである。

そして肝心のベクトルa,bの外積(ベクトル積)は、ベクトルaの3つの正射影ベクトルを90度回転したベクトルとベクトルbとの内積をそれぞれ成分とするベクトルであるということになる。これはabを置き換えても同じことが言える。

この議論を更に進めていく

ベクトルaの法平面を考慮することは意外に重要であることが以下の事実から明らかである。

ベクトルaの法平面上に平行なベクトルの全ての集合を考える。またベクトルaとは線形独立なもうひとつのベクトルbとベクトルaの法平面に平行なベクトルの全ての集合とのベクトル積がどうなるか考えて見よう。

それは直ぐにベクトルbの法平面に平行なベクトルの全ての集合となることがわかる。何故ならベクトルbと任意の線形独立なベクトルaとのベクトル積は、ベクトルbと直交していることが必要条件であるからである。

その逆も真なりで、ベクトルbの法平面に平行なベクトル全ての集合と、ベクトルbと線形独立なベクトルaとのベクトル積は、ベクトルaの法平面に平行なベクトル全ての集合となる。

厳密な証明は読者の課題としよう(´∀` )

従って互いに線形独立なベクトルa,bのベクトル積は、両方のベクトルの法平面に平行でなければならないから、2つの法平面の交線と平行で、それは一意的に決まると予想がつく。

二次元の時の議論で、内積というのは、片方のベクトルを平面上で90度反時計方向に回転したベクトルとの外積だった。

ということはベクトルaの法平面と1-2, 2-3, 1-3平面との交線に平行なベクトルとの内積はとどのつまり、ベクトルaの1-2, 2-3, 1-3平面への正射影ベクトルとの外積ということになる。ということは、ベクトルbとベクトルaの正射影ベクトルの外積を重ね合わせればベクトルabの外積と平行なベクトルが得られるのではないかという予想がつく。

実際に計算してみると、確かにそうなる



これは何も不思議ではない、外積の線形性から以下の等式が成り立つことから自明な結果である



興味深いことに、3組の正射影ベクトルは互いに直交する平面に平行なため互いに線形独立だが、正射影ベクトルを元のベクトルの法平面に平行になるように90度回転したベクトルは線形独立ではない。同一平面上なので平面上のベクトルを表すのに必要な基底は2つで十分なためである。

さていよいよ議論はベクトル積の成分を生み出す源になっている線形写像行列に向かう。

前出の成分の式は行列を分解して以下の様に書き直すことが出来る。



注目すべきは、6つの線形独立な正方行列が現れていることである。

ここでテンソル積という新たな概念を導入する。新顔を入れると覚えるのが大変だけど、それまでに無いキャラを持っていれのだから役にたってくれるはず。

テンソル積は2つのテンソル(一般に階数や次元は同じである必要なない)から高階のテンソルを生成する双線形写像である。

といってもピンと来ないので、現実に生きて存在するテンソル積の例を挙げてみよう。

昔、「パンチでデート」というテレビ番組があって今もやっているかは知らないけど、一般の若い女性グループと、男性グループを公開マッチングするお見合いショーみたいなもの。見せ場は最後に番組特製のマッチングボードに男女グループが座って、それぞれが手元のボタンで相手の異性を一人だけ選ぶと、その選択がマッチングボード上で相手へ向かう線上のイルミネーションとなって現れ、互いが選択しあった相思相愛なら直線で結ばれ、そうでなければ消えるというもの。もちろんどれも気にいらなかければどれも押さなければ辞退したのと同じなので、向こう側が選択しても成立しないというわけ。いつもカップルが生まれていたわけではなく、全滅ということもよくあったので、やらせはなかったのかもしれない。

でそれとテンソル積とどういう関係があというと、男性グループをベクトルmで、女性グループをベクトルfで表すと、成立する可能性のあるカップルの組み合わせは、以下の様に表すことができる。



男女3人組の間で成立する可能性のあるカップルの組み合わせは3 x 3で9組あることになり、実際に一人の男性が複数の女性とカップルになることはできないので、各行、および各列では最大でも1組しか成立しないことになる。もちろん男女どちらかに今回は辞退ということでだれも選択をしない人が居れば、その人に関する行もしくは列は全て成立0ということになる。

もうひとつの例は、競馬のレースに出馬する馬のグループと、入賞枠の組み合わせもテンソル積で表すことができる。どの馬も入賞する可能性があるので、その組み合わせは以下の様に表すことができる。一般に入賞枠(一着、二着、三着)の数よりも出馬数の方が多く国内では8枠まである、従ってそれぞれのベクトルの次元は異なる。



公営ギャンブルでオッズの対象となるのは、このテンソル積の成分の一つ以上の組み合わせになる。また同着とならないように最後は写真判定で鼻の差で着順が争われることも珍しくない。

競馬の予想ソフトウェアを開発するには、こうした組み合わせを考える必要がある。テンソル積の概念を使えば、おもしろいかもしれない。くれぐれも本業を差し置いて、競馬にのめり込まないように願いたい。

なんの話だったっけ?
ああ、テンソル積ね

さてここで本題に戻って、前出のベクトル積の成分の式で現れた6つの正方行列が何かについて考えよう。

実は結論から言うと、6つの正方行列はいずれも直交基底のテンソル積である。



従ってテンソル積を使用して前出のベクトル積の成分式を書き直すと



ここで更に交代積という概念を導入する。交代積はテンソル積から交代テンソルを作る線形写像で以下の様に定義される



なんと交代積の成分はベクトル積と同じ成分から成る。

楔記号を使うので楔(wedge)積とも呼ばれる。テンソル積と同様に元のテンソルの階数を加えたものが生成されるテンソルの階数となる。

前出のベクトル積の成分式をwedge積を使って書き直すと



ということになる。

上の式の各成分の式に現れる線形変換行列をテンソルとして一般化すると



すると不思議な規則性が表れているのを発見することになる。



成分の式に現れる線形変換行列は元々は3階のテンソルだったものをスライスして二階にしたものではないかという感じがしてならない。

面倒だからどんな教科書にも書いてないけど、上の二階のテンソルと2つのベクトル(一階のテンソル)のテンソル積を計算してみると



2階のテンソルと2階のテンソルのテンソル積になるので4階のテンソルになるわけで、3階ならまだ立体的に捉えることができるけど、4階ともなると空間上ではどうにも表現できなくなる。ただ数学的には任意のn階のテンソルが出来るので、とりあえず上の様な入れ子記述にしてみた。

三次元だけでこんなに面倒になるのだから、4元空間を前提とした一般相対性理論ではそのまま成分表記していると大変なことになってしまう。今まで数学者は何をしてきたのだろうと思うけど、それを簡略する記法を考案したのがかの有名なEinsteinで、成分を全部記載する必要はないことに気付いたのは天才的である。

上の4階のテンソルはEinsteinの簡略記法を使うと以下の様に簡単に記述できる。



Einsteinの簡略記法を使うと、先のベクトル式の成分は



ということになる。

これは元々三階のテンソルを2つの一階のテンソルとの内積によって、2階 rankが下がって1階のテンソルを生成するという縮約(contraction)という線形写像を意味する。

つまり、今まで線形代数とかで線形写像や行列とベクトルの積とか教わってきたのは、実はテンソルで言う縮約(もしくは縮合)というものだったということである。

なんだそういうことだったのね(´∀` )

ということでいよいよベクトル積の黒幕である謎の3階のテンソルの正体が明らかになる。







ということで謎の黒幕3階テンソルの正体は、



ということだったのね(´∀` )

まだまだおもしろい発見はあるものの、ページ文字数制限を超えそうなので、続きは後続する記事に。
webadm
投稿日時: 2015-5-20 9:56
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登録日: 2004-11-7
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投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
ベクトル解析もしくは電磁気学を学ぶ上で初期の段階で遭遇するハザードは何かというと、それはベクトルからベクトル解析すなわちベクトル空間の微分積分にジャンプするところである。

歴史的な経緯から近代力学や流体力学では今やベクトルで速度や加速度、応力などをベクトルで表すのは当たり前になっているが、力学については19世紀になるまではベクトルという概念は存在しなかった。それらは19世紀以降に力学が再構成された際に書き換えられたものである。

Maxwell以前にも英国には静電気学の研究者が居てほとんど忘れられているか故人が発表せずにいたものがあり、それらは後生の人が偶然に発見して一般に知られることになる。

電磁気学の演習問題に以下の様な設問が無いのは何故だろう?

「電磁気学がそれ以前から知られている数学を用いて定式化をせずに、MaxwellはHamiltonの四元数を、HeviesideやHelzは独自のベクトル解析を編み出して定式化を行う必要があったのは何故か、簡単に説明しなさい」

これは何故ベクトル解析なのかという逆問題でもある。

前回まで議論してきた初等のベクトルに関する議論はおよそベクトル解析とはほど遠いものであるものの出発点としては妥当ものであることは確かだ。

しかしここまでの議論は位置ベクトルというか座標ベクトルの議論であって、それ自身はおよそ解析の対象ではない(微分積分ができない)。

解析というからには何らかの関数を成分としなければならないことになる。その関数が微分可能であれば解析が可能である。

微分積分なら力学の歴史上でとっくに登場しているので、それを何故Maxwellを始めそ後生のMaxwellian達が新たに定式化のために新たに数学を編み出さなければならなかったのはどんな理由があるのか。

それだけの道理がある理由があるはずである。

最初にはっきりするのは、Newtonの力学は質点の運動を数学的な対象として探求した結果と言える。空間には質点を除いては何も無いのと一緒で、単に質点の座標を与えるだけのものでしかなかった。すなわち絶対座標系というのが存在し、その原点は微動だ世界の中で動かないと考え、それとは別に慣性系という等速で移動する座標系を考える。やはりその座標系上には質点しか存在せず中間は何も存在しないし、質点には何らの作用もしないと考えられていた。

Newton力学では質点の座標は時間の関数として表され、時間と供に空間を移動する質点は速度を持つ、また速度も時間と供に変化すれば加速度を持つと考え、それらは共通して時間の関数である。空間は座標を与える尺度でしかない。

電磁気学はそれとは様相がまるで違っている。確かにcoulombはNewton力学の重力と同じ性質を静電気も持つと予想し、それを裏付ける実験を行った。今日の目で見れば、まともに予想を裏付けるデータが得られそうもない実験方法だったが、coulombは測定データを選別して、予想を裏付ける根拠に十分な結果を得た。今日的に見れば第三者による再現性がかなり低い論文だったと言えるが、結果的には間違っていなかったので今日もその名が刻まれている。

coulombが静電気がNewtonの発見した重力と似たようなものであると論文を書いたので、おおかたの研究者は、ああなんだ目新しいものは無いのか、じゃもう研究するのやめよう。と静電気の研究熱はそこで冷めてしまった。磁気に関する研究が欧州で活発になるのはその後の別の契機による。

Newton力学では質点間の互いの重力による作用のみを考えるだけで十分という暗黙の前提が存在する。しかし厳密には後にこれは修正されなければならないことになる。太陽とその周囲を回る衛星や彗星とかの運動を議論するにはそうした近似で十分説明できる時代の産物である。

その後天体運動の測定精度が高くなり、Newton力学では計算の誤差が説明できないぐらい顕著に表れるケースが出てきて何か理由があるとしか言えない時代がやってきた。

Einsteinの相対性理論がNewton力学の欠陥を埋めるものとして登場した。その際にMaxwellの電磁気学はそのまま相対性理論でも変わらずに通用することが判明した。

というわけで、歴史的にはMaxwellの電磁気学は結果的にNewton力学に反例を与えることになった。それは何故だろう?

電磁気学でも微分積分だ出てくるのは、電界や磁界とかの座標を変数としてベクトルを与える関数を議論するからである。Newton力学の場合はすべての物理量(速度、加速度、力)は時間という一変数の関数だったが、電磁気学では静電場や静磁場は座標の関数であり、動電場や動磁場は時間と座標の関数でもある。すなわち扱う物理量がことごとく多変数関数であるということである。

電磁気学と同様に流体力学も座標の関数として速度や密度、圧力という物理量を数学的な対象として扱う。どちらかというと両者は近い関係にある。Maxwellも電磁気学に手を染める前は流体力学を研究してきた。そこで培った独自の自分数学がやがて電磁気学の定式化に役立つことになる。それでもHamiltonの弟子であるKateの助言に沿って四元数を元に定式化を試みたが、結果的には座標の成分毎に式を立てるという極めて見通しの悪い定式化になってしまった(初版の話)。

それを19世紀に最新のベクトル解析を使用して再構成したのがHeavisideでありHelzであった。それまでMaxwellの本を読んで難解なために読むのを躊躇していた学者達の多くはHelzの論文を読んで目から鱗の体験をすることになる。

ベクトル解析誕生の黒歴史は以前に書いた通りで、すでにその結果はHamiltonの四元数の研究者によって得られていたものと同じであったが、四元数は面倒で難しくて使えない数学だったのに対して、ベクトル解析ははるかに実用的だった。四元数派からベクトル解析派に鞍替えした元四元数研究者も英国では多かったと聞く。

さて疑問にはまだ答えが出ていない。何故Maxwellの電磁気学を理解する上でベクトル解析が必要だったのだろうか?

それにはベクトル解析の長所を理解する必要がある。

(2015/7/9)

だいぶ時間が経ってしまったが、忘れていたわけではなく、通勤中にも目を通してなかった手元の電磁気学の入門書を読み始めたり、Newtonのprincipiaを眺めてみたりしていた。

あまり読んでなかった分厚い電磁気学の入門書で日本語で書かれたものは、どうも著者の蘊蓄は抱負で数式が少なく入門には向いているかなと思って購入したのだが、良く読んでみるとそれは違っていた。書かれた年代が小生の生まれた頃と近いし、こんな人が東大で教えていたのかと思うと、さぞかし学生さんは大変だったろうなと気の毒に思ったりもした。

理由としては前半がどうやら戦前戦中の電磁気学の教授方法の伝統に沿っているかららしい。というのも戦前戦中は枢軸国であったドイツからしか科学技術系の外国図書は入手できなかったので(それも海軍の潜水艦で運ぶしかなかった)自ずとドイツの電気力学を基礎としていたと思われる。

つまり前半の章がやたらと力学的な観点での議論が多く、力はもとより、仕事とかエネルギーとかいう量が定義もなく出てくる。これには閉口した。

これには理由があって、ドイツではMaxwellが電磁気学の著書を出す前に既にWilhelm Weberで電気力学理論体系を作り上げていて、MaxwellがFaradayの考えていた電磁気力の近接作用論に基づいた場の理論であるのに対して、WeberのそれはNewton力学に基づいた遠隔作用論の力学だったためだ。

今日ではWeberの理論は存在すら顧みられることはなく、電磁気学と言えばMaxwellという合い言葉に全てが覆い尽くされてしまったように見えるが、Maxwellの理論の完成に拍車を掛けたのはWeberとKohlrauschが共同で行ったWeber定数(実は光速の√2倍の定数)の測定実験結果がMaxwellの予想した光の速度に近い(といっても√2倍の違いがある)ことから即座にそれが光速だと確信させたことによる。

皮肉にもNewtonの遠隔作用論に基づいたWeberの電気力学が世界に先駆けて光の伝達速度が有限であるという矛盾を証明する種となってしまい、力の伝達速度は有限であるという近接作用論にMaxwellが正しいという根拠を与えてしまう結果となった。Weber自身は知ってか知らずか、その実験結果が自分の研究の前途に暗雲を生み出す以外の何者でもないと確信したのか、論文上ではその結果はたいした価値はないという結論に結んでいる。そのためこの業績は価値がないものとして忘れられてしまうことに。

なんの話だったっけ?

ああ、ベクトル解析の利便性ね。

話をNewtonに戻すと、そもそもprincipia執筆のきっかけを作ったのはHalley彗星の観測と研究成果で有名なHalleyの熱心な勧めによる。彗星の軌道を予測するのに必要な理論的な体系を既に持っていたNewtonにそれを本にするようにと勧めたのだ。

しかしNewtonにはまだ未解決の問題があって、すぐには執筆しなかった。しかしどうにも問題が解決しないので、やむなくその問題に関しては未完成のまま執筆したわけである。

その問題とは月の軌道計算問題である。月の軌道が正確に予想できれば潮の満ち引きだけでなく、航海上の経度を知る上でも役立つはずだった。

しかしそれは頓挫した。月の運行には地球だけでなく太陽の重力も関係しているため、太陽と彗星、太陽と惑星というような二つの質点の問題ではなく、太陽と月と地球の3つの質点の問題となるため、所謂3体問題で後にPoincareが示したように特別な場合を除いては解析的には解けないからである。

さて話はどんどんベクトル解析から遠ざかる傾向にあるが、元に戻ろう。

Newtonは当時の一般の知識人よりも一歩先を行っていたのは確かであるが、それをそのまま本に書いても認めてもらえそうもないので、当時の知識人が受け入れられるようにユークリッド幾何学による証明とラテン語による記述という方法を用いた。

これは成功し、すぐにヨーロッパ全土に本が行き渡った。ラテン語で書かれていたのが幸いしたのだろう。当時は学識者はみんなラテン語ができたので。

かのWeberをGöttingenに招聘して一緒に電磁気や重力の統一理論を模索していたGaussも若い頃にNewtonのprincipiaを読んで力学を学んだらしいから、Weberと意気投合したのは当然であり、その影響力の広がりは予想外に広範囲に及んだのは確かである。

Newtonは質点の運動軌跡をユークリッド平面上の曲線としてそれを解析するために自分数学(微分と積分)を展開することになる。

実際のところNewtonはユークリッド平面とそれに直交する時間軸を頭の中で考えていたのではないかという節もあるが、それは考え過ぎかもしれない。

しかしユークリッド平面に直交する時間軸を考えるととたんに近代的な力学がそこに見えてくる。

Einsteinが大学で数学を学んだ時の教授がMinkowskiで彼は3次元実数空間と直交する時間軸を加えたMinkowski空間を提唱していた。時間軸は空間と直交しなければならないので、実数ではなく純虚数としている点でMinkowski空間は実4次元空間とは異なる。それと時間軸の座標を時間tで光が進む距離(ct)としている。

ということでNewtonはそれに先だって二次元実平面空間とそれに直交する時間軸を3次元Minkowski空間として考えていたと仮定して議論を続けることにしよう。

まあ、これはあれだ、近代の力学の入門書はすべからくNewtonがもしベクトル解析でprincipiaを書いたらこうなるという風に書かれているのと一緒である。

(2015/10/1)
ううむ、4元時空間でベクトル解析と電磁気学を再構成するというアイデアは良かったのだが、その道のりは予想外に険しいもので、古典的な構成法すら理解していない者にとっては困難というべきもので、時期尚早すぎた感がある。

なのでこのテーマは一旦保留して古典理解の道に戻るとしよう。

もちろん聡明な読者の中には、それが十分可能な方もおられると思うのでそれを妨げるものでは決してない。
むしろ、古典的な構成法の理解だけに満足せずに、更に広い視点から再構成する試みは力試しになるし、それがより簡潔な構成法となれば誰もが評価する仕事であることは言うまでもない。
webadm
投稿日時: 2015-5-12 18:15
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登録日: 2004-11-7
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投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
さて二次元平面上の斜交するベクトルの積の結果は平べったい空間で正と負の向きを持つ有向面積というしっくり来ない結果をもたらすことは理解できたが、もうひとつ次元を増やした三次元空間上の任意の平面上の斜交する2つのベクトルの積を考えると、その真相がはっきりする。

簡単にするために三次元空間でx-y平面に平行で斜交する2つのベクトルの積を計算してみると





ということになる。

つまるところ三次元だと同一平面上の斜交するベクトルの積はベクトルが張る平行四辺形の有向面積の大きさを持つ平面に直交するもうひとつのベクトルを作り出すということになる。

二次元だと平べったい平面しか空間は存在しないので新たなベクトルを生成できないが、ベクトルの張る面積だけが定義できるという中途半端なことになる。

二次元と同様に上の関係式が成り立つもうひとつの三次元座標権が存在する。それは二次元の時と同様にちょうど鏡に映したような以下のような座標系である。



先の座標系は座標軸をどのように回転しても上の座標系とは一致しない。2つの座標軸は平行になっても、残りの座標軸の向きが反対になるのである。

しかし代数的には2つの座標系は同値であるから困ったことになる。

なので、前者をx軸を親指にy軸を人差し指として、中指をz軸に同じ向きになるようできるのは右手だけであるので右手系とし称して、逆に左手だけがそれが可能な後者の座標系は左手系と称する習わしになっている。

ベクトルの積がもうひとつのベクトルを生成する次元は限られていて、一次元と3次元と7次元だけであることが比較的簡単に証明できることが知られている。

ベクトルの積に関する局所的な議論はこのぐらいにしよう。

まだその先に躓きの石が待っている。
webadm
投稿日時: 2015-5-5 5:33
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
二次元平面上で斜交するベクトルa,bの張る平行四辺形の有効面積に正と負がある議論の続きをしよう。

以前に平行四辺形の面積が積分で考えることができると書いたが、それを使うと二つの面積が定義できる。



これともう一つが



積分の方向を逆にしたので、互いに符号が異なるが絶対値は同じ平行四辺形の面積をとる。

これは当たり前の話である。

それではベクトルa,bを入れ替えた場合はどうなるだろう



これは最初の面積のa,bを入れ替えたものだから面積は



ということで絶対値は同じだがベクトルを入れ替える前と符号が異なる。

というわけで右回りと左周りの積分で符号が変わるのと、ベクトルを入れ替えると同じ方向の積分でも符号が変わるというのが確かめられる。

同じ原理を左手系に適用すると、話は逆になって右回りに積分すると負になり、左周りに積分しないと正の面積にならないことがわかる。

ところでこれはベクトルが張る象限の違いに影響するだろうかという疑問が沸いてくる。上の結果は第一象限については正しいが、他の象限や象限を跨いだ平行四辺形についても正しいのだろうか?

それを確かめるにはベクトルを同じ角度だけ回転させても結果が変わらないかどうか確かめれば良い。

ベクトルをθだけ回転させる写像は以下の通りである



これは以下の様に幾何学的に確かめることができる





ということになる。

これは三角関数の加法定理そのものだけど、テキストで習う時にはそれは剥製で生きている対象ではないのですぐ忘れてしまいがちである。しかしベクトルの回転は生きた数学的な対象のまま目の前に存在するので、自分数学としては格好のターゲットである。

加法定理の公式を持ち出せば説明も要らないが、面白みもないし記憶にも残らなくなる。これならベクトルの回転と三角関数の加法定理がシームレスにつながっているので同時に理解できる。覚えやすいし、思い出し易い。というかこれ同じ事の言い換えじゃないのかという見方もできる。

さてこれで斜交する二つのベクトルa,bを任意の角度θだけ回転した場合に二つのベクトルが張る平行四辺形の面積がどうなるか計算してみればよい。



ということになる。

従って斜交する二つのベクトルが張る平行四辺形の有向面積は座標軸の回転に関して不変であることが確かめられた。
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