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webadm | 投稿日時: 2008-6-10 12:25 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3068 |
【25】RLC混成回路(その2) 次ぎは再びRLC混成回路に関する問題。
図のような回路のインピーダンスが最大値となる条件を導き、その等価回路を示せというもの。 簡単そうに見えて意外に難問。最大のインピーダンスの式さえ導けば、どんなインピーダンスも直交形式で表せば、実効抵抗と実効リアクタンスから成るので抵抗とリアクタンスが直列に接続された回路と等価になる。 あとはインピーダンスの最大点を見つけるだけ。 回路のインピーダンスの式を導いてみると Z=1/(1/Z1+1/Z2) =1/(1/(R+j(ωL-1/ωC))+1/(-j/ωC1)) =1/(1/(R+j(ωL-1/ωC))+jωC1) =(R+j(ωL-1/ωC))/(1+jωC1(R+j(ωL-1/ωC))) =(R+j(ωL-1/ωC))/(1+jωC1R-ωC1(ωL-1/ωC)) =(R+j(ωL-1/ωC))/(1-ω^2C1L+C1/C+jωC1R) =(R+j(ωL-1/ωC))*(1-ω^2C1L+C1/C-jωC1R)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) =(R-ω^2*C1LR+C1R/C-jωC1R^2+j(ωL-1/ωC)-jω^2C1L(ωL-1/ωC)+jC1(ωL-1/ωC)/C+ωC1R(ωL-1/ωC))/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) =(R-ω^2*C1LR+C1R/C+ωC1R(ωL-1/ωC)-jωC1R^2+j(ωL-1/ωC)-jω^2C1L(ωL-1/ωC)+jC1(ωL-1/ωC)/C)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) =(R-ω^2*C1LR+C1R/C+ω^2C1LR-C1R/C-jωC1R^2+j(ωL-1/ωC)-jω^3C1L^2+jωC1L/C+jωC1L/C-jC1/ωC^2)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) =(R-j(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2))/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) =R/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2)-j(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) |Z|=sqrt(R^2/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2)^2+(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2)^2/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2)^2) =sqrt(R^2+(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2)^2)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) という複雑な式になる。 ω>0という条件でインピーダンスが最大になる点はどこだろう? ω=0の時は当然ながらインピーダンスが∞になってしまうのでそれは除外する。 RLC直列回路は共振点があり、そこでインピーダンスの最小点が存在する。一方並列に接続されたC1はωに比例してインピーダンスは直線的に下がっていく。 試しにR=10Ω,L=1mH,C=10uF,C1=1pFとした場合の回路のインピーダンスをプロットしてみると 5MHz付近に鋭いピークが確認される。 同じ定数でシミュレーターでやってみると 低い方の谷間は直列共振点で高い方の山が並列共振点でありその周波数は概ね一致している。 題意としてこの回路の並列共振点を求めてその時の等価回路を示せということになる。 |Z|=sqrt(R^2+(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2)^2)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) 分子と分母をそれぞれω^2で割ると |Z|=(1/ω^2)*sqrt(R^2+(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2)^2)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2/ω^2+(C1R)^2) |Z|が最大値をとるのは分母の式が最小値をとる場合とすれば ((1-ω^2C1L+C1/C)^2/ω^2=0 を満たすωが|Z|が最大になる角周波数すなわち並列共振点である。 ωについて解くと (%i43) (1-o^2*C1*L+C1/C)^2/o^2; (%o43) (-o^2*C1*L+C1/C+1)^2/o^2 (%i44) factor(%); (%o44) (o^2*C*C1*L-C1-C)^2/(o^2*C^2) (%i45) expand(%); (%o45) o^2*C1^2*L^2-(2*C1^2*L)/C-2*C1*L+C1^2/(o^2*C^2)+(2*C1)/(o^2*C)+1/o^2 (%i46) solve([o^2*C1^2*L^2-(2*C1^2*L)/C-2*C1*L+C1^2/(o^2*C^2)+(2*C1)/(o^2*C)+1/o^2], [o]); (%o46) [o=-sqrt(1/(C1*L)+1/(C*L)),o=sqrt(1/(C1*L)+1/(C*L))] (%i47) factor(%); (%o47) [o=-sqrt((C1+C)/(C*C1*L)),o=sqrt((C1+C)/(C*C1*L))] ω>0なので ω0=sqrt((C1+C)/(C*C1*L)) ということになる。 C1=1pF,C=10uF,L=1mHを適用すると ω0=2πf0=sqrt(10^-12+10^-5)/(10^-5*10^-12*10^-3)) ∴f0=sqrt(10^-12+10^-5)/(10^-5*10^-12*10^-3))/2π =5.03*10^6 [Hz] =5.03 [MHz] グラフと一致している。 ちなみに直列共振点は ω0'=2πf0'=sqrt(1/(L*C)) ∴f0'=sqrt(1/(10^-3*10^-5))/2π =1591 Hz これもグラフと良く一致している。 実はMaximaで|Z|の式を以下のように整理し sqrt(o^2*C^2*R^2+o^4*C^2*L^2-2*o^2*C*L+1)/(o*sqrt(o^2*C^2*C1^2*R^2+o^4*C^2*C1^2*L^2+(-2*o^2*C*C1^2-2*o^2*C^2*C1)*L+C1^2+2*C*C1+C^2)) 二乗して (o^2*C^2*R^2+o^4*C^2*L^2-2*o^2*C*L+1)/(o^2*(o^2*C^2*C1^2*R^2+o^4*C^2*C1^2*L^2+(-2*o^2*C*C1^2-2*o^2*C^2*C1)*L+C1^2+2*C*C1+C^2)) 分子の式をo^2で割ると (o^2*C^2*R^2+o^4*C^2*L^2-2*o^2*C*L+1)/o^2 =(C^2*R^2+o^2*C^2*L^2-2*C*L+1/o^2) 分子の式が最小になるのは o^2*C^2*L^2-2*C*L+1/o^2=0 の時なのでこれをoについて解くと (%i74) o^2*C^2*L^2-2*C*L+1/o^2; (%o74) o^2*C^2*L^2-2*C*L+1/o^2 (%i75) solve(%,o); (%o75) [o=-1/sqrt(C*L),o=1/sqrt(C*L)] ω=1/sqrt(C*L) と直列共振点が得られる。 同様に分母の式を展開してo^2で割ると (%i76) o^2*(o^2*C^2*C1^2*R^2+o^4*C^2*C1^2*L^2+(-2*o^2*C*C1^2-2*o^2*C^2*C1)*L+C1^2+2*C*C1 +C^2); (%o76) o^2*(o^2*C^2*C1^2*R^2+o^4*C^2*C1^2*L^2+(-2*o^2*C*C1^2-2*o^2*C^2*C1)*L+C1^2+2*C*C1+C^2) (%i77) expand(%); (%o77) o^4*C^2*C1^2*R^2+o^6*C^2*C1^2*L^2-2*o^4*C*C1^2*L-2*o^4*C^2*C1*L+o^2*C1^2+2*o^2*C*C1+o^2*C^2 (%i78) %/(o^4); (%o78) (o^4*C^2*C1^2*R^2+o^6*C^2*C1^2*L^2-2*o^4*C*C1^2*L-2*o^4*C^2*C1*L+o^2*C1^2+2*o^2*C*C1+o^2*C^2)/o^4 (%i79) expand(%); (%o79) C^2*C1^2*R^2+o^2*C^2*C1^2*L^2-2*C*C1^2*L-2*C^2*C1*L+C1^2/o^2+(2*C*C1)/o^2+C^2/o^2 分母が最小値(C^2*C1^2*R^2)をとるのは以下の条件 o^2*C^2*C1^2*L^2-2*C*C1^2*L-2*C^2*C1*L+C1^2/o^2+(2*C*C1)/o^2+C^2/o^2=0 を満たすoの時なのでこれをoに付いて解くと (%i80) solve([o^2*C^2*C1^2*L^2-2*C*C1^2*L-2*C^2*C1*L+C1^2/o^2+(2*C*C1)/o^2+C^2/o^2], [o]); (%o80) [o=-sqrt(1/(C1*L)+1/(C*L)),o=sqrt(1/(C1*L)+1/(C*L))] (%i85) factor(%); (%o85) [o=-sqrt((C1+C)/(C*C1*L)),o=sqrt((C1+C)/(C*C1*L))] という具合に同じ結果が得られる。 ベクトル軌跡で考えてみたが、RLC直列回路のアドミッタンスが円を描くところまでは良いが、それとキャパシタのアドミッタンスのベクトルを加算するところで複雑な曲線になってしまうため挫折。微分して極大点をもとめようとしても式が四次以上の高次方程式となるためMaximaでは解けない。 著者も分母が最小となる点を解いているが、実際に様々なC,L,C1,Rの組み合わせを試してグラフをプロットしてみると、Cが小さくなると低域周波数でのインピーダンスが並列共振点のインピーダンスを超えてしまうので厳密には並列共振点が最大のインピーダンスを示すとは限らなくなる。その場合でも式の上では並列共振点は存在する。 Rの値を大きくするとQが低くなるため山と谷がなだらかになる。またC1を大きくしていくとRLC直列回路のインピーダンスよりも常に低くなってしまって並列共振点でインピーダンスのピークが見られなくなる。それでも式の上では並列共振点は存在するのだが。 Maximaでグラフを描く際に横軸のレンジを大きくするとプロット単位が荒くなる影響か谷の位置がずれて見える。実際にはレンジを狭めるとより正確な谷が現れる。 最後に並列共振点の角周波数を複素インピーダンスの式に代入すると Z=R/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2)-j(ωC1R^2+ωL-1/ωC-ω^3C1L^2+2*ωC1L/C-C1/ωC^2)/((1-ω^2C1L+C1/C)^2+(ωC1R)^2) (%i69) R/((1-o^2*C1*L+C1/C)^2+(o*C1*R)^2)-%i*(o*C1*R^2+o*L-1/(o*C)-o^3*C1*L^2+2*o*C1*L/C -C1/(o*C^2))/((1-o^2*C1*L+C1/C)^2+(o*C1*R)^2); (%o69) R/(o^2*C1^2*R^2+(-o^2*C1*L+C1/C+1)^2)-(%i*(o*C1*R^2-o^3*C1*L^2+(2*o*C1*L)/C+o*L-C1/(o*C^2)-1/(o*C)))/(o^2*C1^2*R^2+(-o^2*C1*L+C1/C+1)^2) (%i70) subst(sqrt((C1+C)/(C1*C*L)), o, R/(o^2*C1^2*R^2+(-o^2*C1*L+C1/C+1)^2)-(%i*(o*C1*R^2 -o^3*C1*L^2+(2*o*C1*L)/C+o*L-C1/(o*C^2)-1/(o*C)))/(o^2*C1^2*R^2+(-o^2*C1*L+C1/C+1)^2)); (%o70) R/((C1*(C1+C)*R^2)/(C*L)+(-(C1+C)/C+C1/C+1)^2)- (%i*(C1*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*R^2-C1*((C1+C)/(C*C1*L))^(3/2)*L^2+(2*C1*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*L)/C+sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*L-C1/(C^2*sqrt((C1+C)/(C*C1*L)))-1/(C*sqrt((C1+C)/(C*C1*L)))))/((C1*(C1+C)*R^2)/(C*L)+(-(C1+C)/C+C1/C+1)^2) (%i71) factor(%); (%o71) -(%i*C1*R+%i*C*R-C*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*L)/(C1*(C1+C)*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*R) (%i72) rectform(%); Is C * C1 * (C1+C) * L positive, negative, or zero? p; (%o72) (C*L)/(C1*(C1+C)*R)-(%i*(C1*R+C*R))/(C1*(C1+C)*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*R) (%i73) ratsimp(%); (%o73) -((%i*C1+%i*C)*R-C*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*L)/((C1^2+C*C1)*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*R) (%i74) factor(%); (%o74) -(%i*C1*R+%i*C*R-C*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*L)/(C1*(C1+C)*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*R) (%i75) rectform(%); Is C * C1 * (C1+C) * L positive, negative, or zero? p; (%o75) (C*L)/(C1*(C1+C)*R)-(%i*(C1*R+C*R))/(C1*(C1+C)*sqrt((C1+C)/(C*C1*L))*R) Maximaの因数分解はいつもながら手ぬるい。 Z0=(C*L)/(C1*(C1+C)*R)-j(C1*R+C*R)/(C1*(C1+C)*sqt((C1+C)/(C*C1*L))*R) =(C*L)/(C1*(C1+C)*R)-j*R*(C1+C)/(C1*(C1+C)*ω0*R) =(C*L)/(C1*(C1+C)*R)-j/(ω0*C1) 従って実数部が実効抵抗値、虚数部が実効リアクタンスなので かなり式が複雑なので最初式が間違っていたりして時間を潰してしまった。 この回路は確か水晶発振子かセラミック発振子の等価回路だったと思う。 P.S やはり水晶振動子の等価回路だった。セラミック振動子の場合は更に並列に抵抗がつながっている等価回路だったように思える。 水晶振動子はセラミック振動子よりもQが高い。セラミック振動子はもともとは意図的に特定の自己共振周波数を持たせたセラミックコンデンサのようなもの。 昔高い周波数の水晶振動子を使う回路でどうしても発振してくれないと本職のハードウェア開発者が悩んでいた。高周波の専門家に見てもらってアドバイスを得たところ、推奨回路で付けるようになっている両端子の微少容量のセラミックコンデンサを取り除いたら嘘のように安定して発振し出した。なんとも高周波回路は目に見えていながら見えてないところがあって難しい。 発振回路をこしらえるとまったく発振してくれなかったり変な周波数でも寄生発振していたり、増幅回路のつもりが発振してしまうとかいうのは良くある。このあたりは制御理論とかで系の安定性を判別すると予め予測できるらしい。 |
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