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webadm | 投稿日時: 2008-7-29 20:38 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3083 |
【34】相互誘導回路の等価回路 以降は相互誘導回路に関する問題が30問ほど続く。
相互誘導作用を発見したのは英国のマイケル・ファラデーであるが、同時期に米国でヘンリーも研究していたが発表がファラデーの方が先だったのでファラデーの功績とされている。ヘンリーはファラデーが発見しなかった自己誘導作用についてその功績を認められて、インダクタンスの単位であるHにその名を残している。ファラデーは静電容量の単位であるFにその名を刻んでいる。 交流回路でつきもののインダクタンスの誘導作用は目に見えないためになかなか直感的にピンとこない。しかしなんとか目に見えないものでも予め計算で予測したりできないと電気回路の設計や解析は不可能になってしまう。ファラデーの功績は後にマックスウェルの電磁気学として大成されて多くの近代科学者の卵や技術者の卵が学ばされるはめになる。これも電磁気作用を計算で求めることが近代技術では必須になっているためである。 したがって一見して作用が目に見えないけど、ある一定の法則がある相互誘導作用についても計算によってその動作が予測できるようにマスターしないといけない。詳しい理論的な背景は電磁気学を学ぶ時に譲るとして、ここでは今まで知っている電気回路理論によって相互誘導回路の等価回路を導く問題を最初に解くことになる。 問題の趣旨は理論の時に出てきた相互誘導回路と等価回路が本当に等価であることを証明せよというもの。 これは困った、図に書いてしまうとあまりに自明であるため、証明というと答えを知っているだけに難しい。 調べてみるといくつか方法はあるのだが、やはり2つの回路の方程式をたてて、それらが等価であることを示すのが良いようだ。 最初に左の相互誘導回路について e1=jωL1*i1+jωM*i2 e2=jωL2*i2+jωM*i1 が成り立つ。 次ぎに右の等価回路について e1=Z1*i1+Z2*(i1+i2) =(Z1+Z2)*i1+Z2*i2 e2=Z3*i2+Z2*(i1+i2) =(Z3+Z2)*i2+Z2*i1 が成り立つ。 このままだと未知数がi1,i2,Z1,Z2,Z3の5つになり方程式があと一つ足らないため解けない。 しかし上記の式を後に学ぶマトリックスで表すと [e1,e2]=[[jωL1,jωM],[jωM,jωL2]].[i1,i2] [e1,e2]=[[(Z1+Z2),Z2],[Z2,(Z3+Z2)]].[i1,i2] と書き直すことが出来る。この2つの式が等価であるためには [[jωL1,jωM],[jωM,jωL2]]=[[(Z1+Z2),Z2],[Z2,(Z3+Z2)]] でなければならない。2つの行列が等しいのは各要素が等しくなければならず (Z1+Z2)=jωL1 Z2=jωM (Z3+Z2)=jωL2 が成り立たなければならない。これはちょうどZ1,Z2,Z3に関する3元連立方程式なのでこれを解くと (%i23) solve([Z1+Z2=%i*o*L1,Z2=%i*o*M,Z3+Z2=%i*o*L2],[Z1,Z2,Z3]); (%o23) [[Z1=%i*o*L1-%i*o*M,Z2=%i*o*M,Z3=%i*o*(L2-M)]] Z1=jω*(L1-M) Z2=jωM Z3=jω*(L2-M) ということになり、等価回路と一致する。 著者の解では行列は使用せずに式を巧妙に書き換えてi1,i2の項が等しくなる関係を直感的に見いだす方法で行っている。聡明な読者であれば、先の4つの方程式を見比べるだけでZ1,Z2,Z3に関する三元連立方程式が思い浮かぶだろう。 あともうひとつ元の4つの回路方程式にひとつ追加して解けないかとやってみたがうまくいかない。読者の課題としよう。 現実の相互誘導回路はこのような理想的なものとは少し異なっている。コイルの巻き線には直列抵抗要素があり、磁気コアには鉄損がある。これらの要素を加味すると違った等価回路となる。電力回路とかで用いられる逆L字型等価回路がそれであるが、本書ではそれは扱っていない。電力回路に関する用語とかが電気回路の用語や概念と一致しない部分があるため混乱を避ける目的だと思われる。 |
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