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webadm | 投稿日時: 2008-8-26 8:13 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
【59】相互誘導回路(その23) 次ぎは超難問。トランスの一次側と二次側が容量結合している回路で、二次側に電流が流れない条件を結合係数kを用いて導けというもの。
現実のトランスは理想的なトランスと違って一次側と二次側の巻き線間に容量結合が存在する。今までの問題ではそれは無いものとして扱ってきたが現実には歴然と存在し、低周波領域では無視できても高周波領域では無視できなくなる。 問題はこの回路図ではCは閉回路を構成していないので回路に影響を与えないように見えてしまう点である。これは電気の不思議である。実際には流れるのであるが、理屈をほじくりだすと電磁気学の世界に入ってしまうので、電気回路理論では等価回路で置き換えて考えると都合が良い。今までの問題では等価回路を持ち出さなくても回路方程式を立てることができたが、この問題ではさすがに等価回路に置き換えないと式が立てられない。 これでやっとCを含む閉回路が現れる。以下の関係が成り立つ (jω*(L1-M)+jωM)*I1-jωM*I3-jω*(L1-M)*I2=E (jω*(L1-M)+jω*(L2-M)-j/(ωC))*I2-jω*(L1-M)*I1-jω*(L2-M)*I3=0 (jω*(L2-M)+R+jωM)*I3-jωM*I1-jω*(L2-M)*I2=0 これをI1,I2,I3について解くと (%i51) e1:(%i*o*(L1-M)+%i*o*M)*I1-%i*o*M*I3-%i*o*(L1-M)*I2=E; (%o51) I1*(%i*o*M+%i*o*(L1-M))-%i*o*I3*M-%i*o*I2*(L1-M)=E (%i52) e2:(%i*o*(L1-M)+%i*o*(L2-M)-%i/(o*C))*I2-%i*o*(L1-M)*I1-%i*o*(L2-M)*I3=0; (%o52) -%i*o*I3*(L2-M)-%i*o*I1*(L1-M)+I2*(%i*o*(L2-M)+%i*o*(L1-M)-%i/(o*C))=0 (%i53) e3:(%i*o*(L2-M)+R+%i*o*M)*I3-%i*o*M*I1-%i*o*(L2-M)*I2=0; (%o53) I3*(R+%i*o*M+%i*o*(L2-M))-%i*o*I1*M-%i*o*I2*(L2-M)=0 (%i54) solve([e1,e2,e3],[I1,I2,I3]); (%o54) [[I1=(E*(%i*o^2*C*L2*R-%i*R+o*L2)+E*L1*(%i*o^2*C*R-o^3*C*L2)-2*%i*o^2*C*E*M*R+o^3*C*E*M^2)/(L1*(-o^3*C*L2*R+o*R+%i*o^2*L2)+M^2*(o^3*C*R-%i*o^2)),I2= (E*L1*(%i*o*C*R-o^2*C*L2)-%i*o*C*E*M*R+o^2*C*E*M^2)/(L1*(-o^2*C*L2*R+R+%i*o*L2)+M^2*(o^2*C*R-%i*o)),I3=(o^2*C*E*M^2+E*M-o^2*C*E*L1*L2)/(L1*(-o^2*C*L2*R+R+%i*o*L2)+M^2*(o^2*C*R-%i*o))]] (%i55) factor(%); (%o55) [[I1=-(E*(2*%i*o^2*C*M*R-%i*o^2*C*L2*R-%i*o^2*C*L1*R+%i*R-o^3*C*M^2+o^3*C*L1*L2-o*L2))/(o*(o^2*C*M^2*R-o^2*C*L1*L2*R+L1*R-%i*o*M^2+%i*o*L1*L2)),I2=- (o*C*E*(%i*M*R-%i*L1*R-o*M^2+o*L1*L2))/(o^2*C*M^2*R-o^2*C*L1*L2*R+L1*R-%i*o*M^2+%i*o*L1*L2),I3=(E*(o^2*C*M^2+M-o^2*C*L1*L2))/(o^2*C*M^2*R-o^2*C*L1*L2*R+L1*R-%i*o*M^2+%i*o*L1*L2)]] いつもながらMaximaの因数分解は詰めが甘い。 I3について整理すると I3=(E*(ω^2*C*M^2+M-ω^2*C*L1*L2))/(ω^2*C*M^2*R-ω^2*C*L1*L2*R+L1*R-j*ω*M^2+j*ω*L1*L2) =(E*(ω^2*C*(M^2-L1*L2)+M))/(ω^2*C*R*(M^2-L1*L2)-j*ω*(M^2-L1*L2) 従ってI3が0になる条件は分子が0となる ω^2*C*(M^2-L1*L2)+M=0 すなわち ω^2=-M/(C*(M^2-L1*L2)) =M/(C*(L1*L2-M^2)) ここでMを結合係数の定義 M=k*sqrt(L1*L2) で置き換えると ω^2=k*sqrt(L1*L2)/(C*(L1*L2-k^2*L1*L2)) =k*sqrt(L1*L2)/(C*L1*L2*(1-k^2)) =(k/(1-k^2))/(C*sqrt(L1*L2)) ということになる。理想的なC=0やk=1の条件ではω=∞となる。Cが大きくなればなるほどωは低くなる。Cが0でない時はL1,L2が大きければ大きいほどωは低くなる。RやL4に流れる電流とは無関係。 等価回路に置き換えた場合、網目電流法では相互インダクタンスによる電圧降下の極性に注意しないとついつい間違ってしまう。 この問題を等価回路を用いないで解く方法は存在するのだろうか? P.S これと良く似た回路がアマチュア無線のSWR計とかに使われているCM形電力計にみられる。Cは容量結合、Mは相互インダクタンスの意味らしい。CM形方向性結合器と呼ばれる。昔は特許で押さえられていたらしい。検索しても詳しく解析したものは見あたらない。なにか秘密があるに違いない。 |
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