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webadm
投稿日時: 2010-5-3 3:01
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3084
回路網理論の古書
ちょうど一端子対回路の演習問題で立ち止まっていた頃に幸運にも以下の共立出版「回路網理論I」尾崎弘、黒田一之共著の古書を手に入れることができた。







今から50年前に出版された本なので既に絶版だが、惜しまれていたその内容の一部が現在オーム社から出ている「大学課程 電気回路(2) 第3版」尾崎弘著で復活している。しかし紙面の関係から割愛された内容もあることが見比べてみるとわかる。

前書きには昭和35年5月とある



回路網理論に関しては戦後復興まもない日本の研究者がめざましい貢献をした。それと同時進行で日本の数学者も数論や代数幾何に今日につながる新展開をもたらした点を見逃すことはできない。

敗戦後の日本のどん底でこれらの偉業がなされたことに関して、経済危機や世界の経済構造が急変している今日の我々が見習うべきものがある。



目次を見てみると、最初の第一章は今も昔も代わらないどこの学校でも教えられていることだが、第二章に数学の複素関数論のおさらいが入っているのが今日の参考書と大きくことなる。現在ではこれらは数学の講座で教わるので省略されているが、回路網理論を学ぶ上で避けて通れないことは今も変わらない。



その後で一端子対回路、二端子対回路がようやく出てくる。一端子対回路は今では割愛されて二端子対回路だけ教えられていることが多いと思う。しかし本質的な部分は一端子対回路で学ぶべきことが多い。実務的には二端子対回路の知識が求められるのだが。一端子対回路をすっとばして二端子対回路が即理解できるかどうかは疑問の限りである。



巻末の付録には、Diophantusの不定方程式や宮田の構成法など現在では見られない内容が含まれている。まだ線形代数の抜粋も含まれていることから、この当時からすでに数論的代数幾何とのつながりが認識されていたことは明らかである。日本人の数学者で初めて小平邦彦がフィールズ賞を受賞したのもこの頃だし、後に二人目の受賞者となる広中平祐が代数幾何学の分野で歴史的なbreakthroughを成し遂げたのはこの本出版されたわずか数年後である。



現在の本では一端子対回路と共に割愛されているBott-Duffinの定理が載っている。



同じ理由で今では知られることのない、喜安、宮田という日本人の研究者の名前が出てくる。Darlingtonは他でも有名だが一端子対回路に関しては忘れられている。



付録の内容はあくまでオプションということで掲載されているもの。しかしここに現代数学とのリンクがあるので、大多数の学生が今それを知らずに卒業してしまうことはもったいない話しである。



中でも個人的に最も興味を抱いたのが、Diophantusの不定方程式に関する定理が出てきたところだ。ここがおそらく数論及び代数幾何とのつながりを感じさせる箇所である。この本を手に入れる前に、既に演習問題に取り組む中でDiophantusの不定方程式にたどり着いたわけだが、この本を手に入れてまっさきにこの箇所に目が釘付けになった。Diophantusの不定方程式はGaussの数論研究の出発点でもある。数学で線形代数を学ぶと二次形式という用語が出てくるがそれに関して詳しく説明を受けることはないだろう。そこでGaussの数論へとつながっているのだが、ほとんどの人はそこから先へ行くことはないと思われる。私も学生時代はそうだった。



この本を手にして初めて存在を知った、宮田の構成法。



しかしこれも一端子対回路と共に忘れ去られてしまっている。



Cauerの残した最後の業績も紹介されている。戦前は二端子対回路を縦列接続する際には理想変成器が間に必要だったが、戦後になってそれを取り除く理論が生まれてからは取り上げられなくなったものである。

最後に現在も増刷されていて一部の内容が復活収録されている尾崎弘著の本を紹介しよう。



今も本屋の電気回路理論のコーナーに行けばこの装幀の本を手にすることができるだろう。



この本の特徴は裏と表の表紙の裏が数学公式集が印刷されている点である。重要な数学公式を思い出す時に手元に別途数学公式集を用意しなくても良い点で独習には好都合である。もちろん資金的に余裕があれば、別途数学公式集や数学事典を座右に置いたり、PC上でMaxima等の数式処理ソフトを使うと良い。



現在増刷されているのは第3版で、初版と第二版は共著だったが、第三版から尾崎弘の単独著書となっている。この時に第二版で一端削除された第7章の「複素周波数変数を用いる回路理論(回路網理論概説)」が復活している。



第二巻の主な管轄はフーリエ解析、過渡応答解析、ラプラス変換、分布定数回路だが、第7章は、先に紹介した古書「回路網理論I」の内容を再編したものである。本格的に回路網理論を学ぶためにはここを読まずしてはじまらないだろう。回路網理論は学問的にはまだ閉じていない領域だし、数論や代数幾何とのつながりが益々密になってきている。面白い分野である。



巻末は「回路網理論I」では第二章に登場していた数学の複素関数論概説が掲載されている。欄外に回路網理論と現代数学との接点が明確に示されている。グラフ理論は代数幾何学の代表的な派生分野のひとつである。現在ではそれに留まることはない。



旧「回路網理論I」の内容がほぼそのまま再掲されている部分もあるが、今日的に価値がある内容に再編集されていることも比較してみるとよくわかる。



真理にかかわる部分は割愛されておらず、歴史的に重要であっても今日的には顧みる必要のないものは名残惜しくてもばっさり割愛されているということが見てとれる。



この辺で内容の紹介はお終いにして。興味がある人は自ら購入して理解に取り組まれることをお勧めする。





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題名 投稿者 日時
 » 回路網理論の古書 webadm 2010-5-3 3:01

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