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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2010-5-7 10:56
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
ハイブリッド行列(H行列)
インピーダンス行列がE1,E2それにI1,I2の組み合わせ、その逆がアドミッタンス行列だったのに対して、今度はI1,E2,E1,I2の組み合わせとその逆が以下のハイブリッド行列表現。

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />H_{11} & H_{12}\\<br />H_{21} & H_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]

端子対1を開放するとI1=0となるため、先の関係式に代入すると

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />H_{11} & H_{12}\\<br />H_{21} & H_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />0 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&\left.Y_{12}E_2\right|_{I_1=0}\\<br />I_2&=&\left.Y_{22}E_2\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

従ってハイブリッドパラメータは

\begin{eqnarray}<br />H_{12}&=&\left.\frac{E_1}{E_2}\right|_{I_1=0}\\<br />H_{22}&=&\left.\frac{I_2}{E_2}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

H12を開放電圧減衰率、H22を開放駆動点アドミッタンスと呼ぶ。

同様に端子対2を短絡した場合E2=0となるので

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />H_{11} & H_{12}\\<br />H_{21} & H_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />0<br />\end{array}\right]

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&\left.H_{11}E_1\right|_{E_2=0}\\<br />I_2&=&\left.H_{21}E_1\right|_{E_2=0}<br />\end{eqnarray}

従ってハイブリッドパラメータは

\begin{eqnarray}<br />H_{11}&=&\left.\frac{E_1}{I_1}\right|_{E_2=0}\\<br />H_{21}&=&\left.\frac{I_2}{I_1}\right|_{E_2=0}<br />\end{eqnarray}

H11を短絡駆動点インピーダンス、H21を短絡電流増幅率と呼ぶ。

ここで賢明な読者は受動回路ならばI2の電流の向きが逆になるはずなので-I2でなければならず、H21の値には負号が付くはずだと主張するだろう。ところがどっこい、元々ハイブリッド行列はバイポーラ型トランジスタの等価回路のために登場したので、能動回路(等価電流源を内部にもつ)を前提とするため、端子2を短絡しても流れる電流の向きは一定で変わらないという読者の知らない暗黙の了解がある。

Z,Y行列の時と同様に相反回路の場合どうなるかを考えてみよう、

端子対1を開放し、端子対2に電圧源E2'を接続した場合に端子対1に現れる電圧をE1'とすると

\begin{eqnarray}<br />{E_1}^\'&=&\left.H_{12}{E_2}^\'\right|_{I_1=0}\\<br />{I_2}^\'&=&\left.H_{22}{E_2}^\'\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

第一の式をH12で除したものから第二の式をH22で除したものを差し引いてE2'を消去しE1'/I2'を導くと

\begin{eqnarray}<br />\frac{{E_1}^\'}{H_{12}}-\frac{{I_2}^\'}{H_{22}}&=&0\\<br />\frac{{E_1}^\'}{{I_2}^\'}&=&\left.\frac{H_{12}}{H_{22}}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

ということになる。

逆に端子対2を開放し、端子対1に電流源I1'を接続した場合、端子対2に現れる電圧がE2'とすると

\begin{eqnarray}<br />{E_1}^\'&=&\left.H_{11}{I_1}^\'+H_{12}{E_2}^\'\right|_{I_2=0}\\<br />0&=&\left.H_{21}{I_1}^\'+H_{22}{E_2}^\'\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

第二式より

\begin{eqnarray}<br />\frac{{E_2}^\'}{{I_1}^\'}&=&\left.-\frac{H_{21}}{H_{22}}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

ということになる。

従ってこれらの結果から相反定理が成り立つ場合には

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{I_2=0}&=&\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{I_1=0}\\<br />\frac{H_{12}}{H_{22}}&=&-\frac{H_{21}}{H_{22}}\\<br />H_{12}&=&-H_{21}<br />\end{eqnarray}

ということになる。てっきりH12=H21だと信じて疑わなかった人は負け組。

さて今度は対称回路の条件を考えてみよう。

端子対1を開放し、端子対2に電圧源E2'を接続した場合に端子対1に現れる電圧をE1'とした場合の第二式より

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{I_1=0}&=&\left.\frac{1}{H_{22}}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

端子対2を開放し、端子対1に電流源I1'を接続した場合、端子対2に現れる電圧がE2'とした場合の二式からE1'/I1'を導くために第一式をI1'で除したものから第二式にH12/(H22*I1')を乗じたものを差し引くと

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{I_2=0}&=&\left.\frac{H_{11}H_{22}-H_{12}H_{21}}{H_{22}}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

従って対称回路では

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{I_1=0}&=&\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{I_2=0}\\<br />\left.\frac{1}{H_{22}}\right|_{I_1=0}&=&\left.\frac{H_{11}H_{22}-H_{12}H_{21}}{H_{22}}\right|_{I_2=0}\\<br />H_{11}H_{22}-H_{12}H_{21}&=&\left|H\right|=1<br />\end{eqnarray}

ということになる。

このようにハイブリッドパラメータはインピーダンスパラメータやアドミッタンスパラメータと違って、異なるパラメータの単位が混在していることからハイブリッド(混成)行列と呼ばれている。

電流増幅作用を持った小信号バイポーラ型トランジスタの性能測定時の小信号パラメータ(小文字でhパラメータと呼ばれる)もHパラメータ行列の応用である。小信号パラメータはHパラメータのH11,H12,H21,H22をhi,hr,hf,hoと呼ぶ。トランジスタはECBの三つの端子があるので、二端子回路を構成する際にどれかひとつが共通(コモン)とするためパラメータの添字の末尾にe,c,bのいずれがつくことになる。

エミッタを共通とした場合hieは出力短絡時の入力インピーダンス、hreは入力開放逆電圧増幅率、hfeは出力短絡時の電流増幅率、hoeは入力短絡時の出力アドミッタンスを意味する。hfeは小信号バイポーラ型トランジスタの主たる性能(電流増幅率)指標で、製造時にばらつきがあり、同じ型式のトランジスタでもこの測定値によってランク分けされる。

これらの小信号パラメータ測定値を使って実際のトランジスタ増幅回路を設計することも可能であるが、基本的に非線形なので小信号回路に限り線形近似が可能な設計動作点(バイアス電流)でのHパラメータを回路設計者自身で計算や特性表から求めなければならない。それらは電気回路理論ではなく電子回路理論の分担となる。電子回路理論の参考書もしくは電子回路ハンドブックから学ぶしかない。

インピーダンス行列とアドミッタンス行列の関係と同様にハイブリッド行列の逆行列がG行列である。

\left[\begin{array}<br />H_{11} & H_{12}\\<br />H_{21} & H_{22}<br />\end{array}\right]^{-1}=\left[\begin{array}<br />G_{11} & G_{12}\\<br />G_{21} & G_{22}<br />\end{array}\right]

\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />G_{11} & G_{12}\\<br />G_{21} & G_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]

Gパラメータは電圧入力で電流出力となる真空管や電界効果型トランジスタ(FET)の等価回路解析とかに利用できるがHパラメータと同様に実際に使われることはほとんどないと思われる。

相反回路や対称回路の場合の条件はHパラメータと同様に導くことができるので読者の課題としよう(´∀` )

P.S

Hパラメータもバイポーラ型トランジスタが登場した当時は扱える周波数も低かったのでパラメータの測定も可能だったが、高周波トランジスタとなるとパラメータの実測定も現実的ではなくなってくる。それに代わって登場したのがSパラメータで、Sパラメータはほとんどすべての回路に関してパラメータが存在するため、今では高周波トランジスタではそちらが設計に不可欠なデータとして提供されている。Sパラメータは不定元が電圧と電流ではなく、信号振幅(信号電力の平方根)に対する無次元係数から成るので二端子対回路パラメータとはその点が大きく異なるが考え方は共通である。

いずれにしてもHパラメータはトランジスタのような能動素子や等価電源を含む二端子対回路用途向けなので受動素子のみからなる回路で用いられることはないと思われる。

初期のトランジスタ回路の参考書を見ても、しょっぱなからHパラメータを設計で使うのは極めて難しい(困難)と書いてあるものもあるし、Hパラメータは登場した途端に既に歴史上の盲腸と化した感がある。

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題名 投稿者 日時
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