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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2010-5-16 5:27
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
理想ジャイレータ
次ぎは理想ジャイレータ

ところでジャイレータってなんじゃいれーた。

調べてみると戦後すぐにオランダPhilipsの技術者Tellegenによって抵抗、キャパシタ、インダクタそれに理想変成器に続く5番目の非可逆線形受動素子として提案された。

ジャイレータは内部に2つの独立した制御電源を持つ以下のような等価回路として表すことが出来る。



V1,I1,V2,I2に関して以下の関係が成り立つ。

\begin{eqnarray}<br />I_1&=&G_2 V_2\\<br />I_2&=&-G_1 V_1<br />\end{eqnarray}

一方の端子対に流れる電流が他方の端子対の電圧に比例する。あるいは一方の端子対に加わる電圧と他方の端子対に流れる電流が比例する。

縦続行列で表すと

\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />V_1\\<br />I_1<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />0 & \frac{1}{G_1}\\<br />G_2 & 0<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />V_2\\<br />-I_2<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

電流の向きを縦続行列のそれと同じにして、G1=G2=1/Rと置くと



\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />E_1\\<br />I_1<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />0 & R\\<br />\frac{1}{R} & 0<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_2\\<br />I_2<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

著者の式と同じになる。Tellegenは図のような回路シンボルまで合わせて提案しており、現在もそれが使われている。おそらく内部の2つの独立した制御電源がちらりと見えているイメージだろう。

内部にコンダクタンス(G)を持つように見えて、実は内部では電力を消費しない。一方から供給される電力は他方にそのまま損失なく伝達される。

内部に供給される電力から出力される電力を差し引くと

\begin{eqnarray}<br />P&=&P_{in}-P_{out}=V_1 I_1-V_2 I_2\\<br />&=&R I_2 I_1-R I_1 I_2\\<br />&=&0<br />\end{eqnarray}

と内部に蓄積されたり消費される電力は0である。

著者は現実のジャイレータがHall効果やFaraday効果を利用するものや能動回路を用いても構成出来るとしているが、前者はサーキュレータやアイソレータと呼ばれるマイクロ波で用いられる受動素子のことだと思われ、厳密にはジャイレータは受動素子では実現できないのでそれとは違う。後者の能動素子回路が現実のジャイレータの実現方法である。

現実のジャイレータは能動素子(真空管、トランジスタ、オペアンプ)を用いて一般化インピーダンス変換器(Generalized Impedance Converter:GIC)を実現するのが目的。

一般化インピーダンス変換器とは何かというと、インピーダンスを逆にする回路のこと。

例えば理想ジャイレータの一方の端子対をキャパシタで終端した場合、



他方の端子対から見た駆動点インピーダンスを求めると

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&R I_2\\<br />&=& R E_2 C s\\<br />I_1&=&\frac{E_2}{R}\\<br />Z_{in}&=&\frac{E_1}{I_1}\\<br />&=&\frac{R \cancel{E_2} C s}{\frac{\cancel{E_2}}{R}}\\<br />&=&R^2 C s\\<br />&=&L s\\<br />L&=&R^2 C\,[H]<br />\end{eqnarray}

ということになり、見事にキャパシタンスを使ってインダクタンス回路を実現できることになる。キャパシタンスのジャイレータ比の二乗倍のインダクタンスがつながっているように見えることになる。

一番有益なのがリアクタンスの変換で、低周波フィルタ回路を実現する上で大きな値のインダクタンスが必要になるが、それをキャパシタンスをGICでインピーダンス変換しインダクタンスとして見せることによってコイルを一切使わずにフィルタ回路が構成できることになる。コイルは大きいし、重いし、誘導ノイズを受けやすいし、無いにこしたことはない。

GICはオペアンプと外付け部品(抵抗とコンデンサ)だけで実現できるので、アナログ回路やアナログICでは不可欠な回路要素となっている。

理想ジャイレータを第五の受動素子として加えることによって、戦後更に広範囲なフィルタが実現方法が考案されていったという経緯がある。

ちなみにTellegenという人は、他にも真空管の4極管の問題を解消した5極管を発明者、回路網理論のTellegenの定理でも有名。

詳しくはフィルタ理論に譲ることにする。
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題名 投稿者 日時
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