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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2011-12-29 5:39
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
RL直並列回路
次の問題はRL直列並列回路に関するもの



上のようなRL直並列回路において、t=0でスイッチを閉じて直流電圧Eを加えるとき、抵抗R1,R2,R3を流れる電流i1,i2,i3を求めよ。

というもの。

ストラテジーとしてはいくつかあり

・i1,i2,i3に関する連立微分方程式をたててそれを解く
・L1,L2,L3の電圧降下をu1,u2,u3として連立方程式をたてそれを解く
・i1に関して駆動点から見て回路全体の合成抵抗Rと合成インダクタンスLのRL直列回路に関する微分方程式を解く、また同様にi3に関して出力端から見た等価電圧源と内部インピーダンス(R0とL0)のRL直列回路に関する微分方程式を解く、残るi2はi1=i2+i3の関係から導く

というものが考えられる。単純に連立方程式をたてて解くやりかたは既に著者が示しているので、それとは別の方法でやってみよう。

あまのじゃくだけど、RL直並列回路をもっと簡単なRL直列回路の問題にする最後のアプローチに挑戦してみよう。少なくとも問題は簡単になるはずだ。



上の2つの閉回路について微分方程式をとけばよいのだが、もっと簡単にするために、下記のように2つのRL直列回路の問題として考える。



i1に関しては入力電源から見て回路の駆動点インピーダンスは合成抵抗Rと合成インダクタンスLの直列回路と等価に見えるはずである。

またi3については等価電圧源回路に置き換えることによって、出力インピーダンス(R0とL0)と等価電圧源E0・U(t)のRL直列回路にほかならない。

i1とi3がわかればi2はその差分であるので自動的に決まる。

これならば既に交流回路で学んだ方法が使え、RL直列回路に関する微分方程式だけを解けばよいので見通しが良い。

i1,i2,i3の定常電流は定常解析により定まるのでだいたいの過渡応答の予想がつく。線型素子回路ではいずれにしても指数関数の線型結合となることが判っているからである。ちょっとずるいかもしれないが、工学的な視点ではそういった予測は解の一歩手前を考えるのに重要である。

へそまがりなアプローチをやってみると、王道的なアプローチからは死角になって見えないでいたいろいろな理論の側面を発見することができる。

最初に複雑な回路を2つの一端子対回路と電源の閉回路の問題として考えるアイデアは突飛でもないものだが、いきなりそこに躓きの石があることに遭遇する。

駆動点から見て等価な一端子対回路という考え方は悪くなかったが、それが等価なRL直列回路になるという仮定がまずかった。以前学んだ定常解析の手法で駆動点インピーダンスの式は



ということになる。これは複素周波数sの有理形関数である。s=jωを代入すれば交流回路理論で学んだおなじみのインピーダンスの式になる。s=σ+jωを代入するとそれは次に学ぶLaplace変換によって複素周波数領域に変換された電圧入力に対する電流出力の伝達関数である。これに同様に電圧入力関数をLaplace変換して複素周波数領域の関数として乗じれば、結果は複素周波数領域の電流出力関数となる。それを時間領域に逆変換すれば時間領域での解が得られるというもの。しかしここではLaplace変換はまだ使わない。

定常解析は周波数領域の解析であるためそのままでは時間領域の結果を導くことにはならない。頭の良い人から見れば、「そんなの最初から判っているじゃん、普通しないよ、ばーかばーか」と言われるのがおちである。

しかし面倒な微分方程式の解法を避けてこの裏道に迷い込んで見ると、ふとHeavisideが横を通り過ぎて先へ進んでいったような不思議な感覚を覚える。彼もかつてここを通っていったのではないだろうか。現代的に考えれば、周波数領域と時間領域とでは基底が異なるだけで同一の回路の写像である。周波数領域で同じ特性を持つ回路は時間領域でも同じ過渡応答をする。なぜならどちらも同じ回路なのだから(´∀` )そう考えれば、周波数領域の結果と時間領域での結果は互いに一対一の写像関係が存在するということが確信できる。19世紀にはこれはまだ証明されていなかったが、Heavisideはこのことを確信していたに違いない。それは間違ったアプローチだった結果は正しかった。

その話しとは別に上の複素有理形関数を第一Cauer(連分数)展開してみると



ということになる。つまり回路的には



と等価ということになる。元々6素子だったのが、4素子に減っている。

どうしてこうなるのだろうか?4素子に展開された複素インピーダンス関数の式ににそれぞれ素子定数の式を代入してみれば元の有理形関数の式になることで等価であることが確認できる。良く考えればL1と直列だったR1は並列回路内に含めてしまうことができる。また並列回路部分も鎖交磁束不変の理からすれば閉回路内のインダクタンスはひとつあれば済むことになる。

元々多項式は任意の基底を選ぶことによって幾通りにも表すことができる。最も都合の良い多項式を表す標準基底(Hironaka's standard basis)というのが局所環上に存在することは日本の数学者広中平祐が特異点消失理論の際に証明していたが、実際にそれを多項式環上で求める最初のアルゴリズムが近年になってオーストリアの大学院生ブッフバーガー(Buchberger)によって発見された。グレブナー(Gröbner)指導教授に敬意を表すためブッフバーガーのアルゴリズムで求められる基底はグレブナー基底(Gröbner basis)と名づけられた。こちらが昨今は有名である。Maximaにもグレブナー基底を求める機能が実装されている。

受動素子のみから成る回路も同じで、まったく同じ極と零点を持つのであればそれは素子構成が異なってもそれらは全て等価な回路である(物理的な構成方法は異なっているが)。これなどは標準的な抵抗やコンデンサが標準数の数列に基づいた素子定数のものしか一般には販売されていないので、必要な素子定数の素子を複数の素子を組み合わせて構成するのはよく行われることだ。実際それが可能だ。単純な回路であっても素子定数が標準で用意されているものと大きく異なる場合には、標準の素子定数のものを複数組み合わせて等価な回路を構成するしかない。通所これらは機械的にはできないので、設計者が試行錯誤しながら構成や素子を選定することになる。近年発見された代数幾何学のアルゴリズムを使えばこれらもコンピュータプログラムで出来るのかもしれない。あるいはもう実用化されているのかもしれない。

単純に見える6素子のRL直並列回路だが、たかが駆動点インピーダンス関数だけを見ても複数のイデアルの加減乗除からなる係数を持つ多項式から成ることが見てとれる。Maximaでは式の複雑さが扱える限界に近い。

そんな普段は目にすることがない電気回路理論の側面を見ることができたりするのも脇道にそれたおかげである。

さて話しを元にもどそう。複素周波数領域で見ると駆動点インピーダンス関数はもっと少ない素子数で構成される回路と等価であることが判明した。同時に単純にはRL直列回路にはならないということも。駆動点インピーダンス関数が抵抗(R)とリアクタンス(X)で表せるというのとRL直列回路になるというのを勘違いしていたのは大失敗だった。いずれにせよその抵抗RもリアクタンスXも周波数の関数であるので、そのまま時間領域で使うことはできない。

どうすんだこれ(;´Д`)

これだと回路が簡略化されたものの素子定数はめちゃめちゃ複雑なので、元の6素子回路で計算したほうが簡単な気がする。一端子対回路として考えるアプローチには変わらない。


ちなみに前述の式を第二Cauer展開してみると、素子数は同じ4素子だが直列部と並列部が異なる構成の回路になることが確認できる。直列部はRのみとなり、並列部は片方がLのみ残りがRL直列回路というもの。これは直列部のL成分が並列回路に移動したとものと考えることができる。

いずれにせよ、この問題を解くには連立一階微分方程式を解かねばならないのは明らかである。演算子法やLaplace変換を用いない限り。

(2012/1/1)

ふう、給湯器が復活したので数ヶ月ぶりで湯船につかり全身の骨髄に溜まった疲れが滾々と湧き出てしばらく寝てしまった。

もう少し脇道にそれた議論をしてみよう。

前出の複素周波数による駆動点インピーダンス関数はその零点と極によってその特性がきまるのは以前一端子対回路で学んだ通り。先の駆動点インピーダンス関数の零点は有理形関数の分子の式が0となるsを求めればよく



ということになる。受動素子のみからなる一端子対回路のインピーダンス関数は正実関数なので、その零点と極は常にs平面の左半面にのみ存在することになる。インピーダンス関数の零点は回路的にどういう意味を持つのだろうか?

既に知っている単純なRL直列回路について複素周波数領域での零点を求めると



ということだった。これは過渡応答の際の時定数そのものである。つまり複素周波数領域の零点の実部が時間領域での時定数に一対一で対応すると仮定すれば、解析が簡単な複素周波数領域での特異点を知れば時間領域での解も自ずときまるのではないかという予想がたてられる。

問題のRL直並列回路は受動素子のみからなるので駆動点インピーダンス関数は正実関数となり、常にb^2≧4acの関係が成り立つと考えて良いことになる。

このことを頭に入れて駆動点に流れる電流i1(t)を求めてみることにしよう。

回路を流れるi1,i2,i3のうち線型独立なのはその2つのみなので、閉回路電流i1,i3についてのみ考えればよいことになる。以下の関係が成り立つ



(2012/1/3)微分方程式の誤りを訂正

これを見通し良くするために線型代数の行列表記に書き直すと



ということになる。これは定係数線型非同次2元連立一階微分方程式のベクトル表記ということになる。

どうすんだこっから(;´Д`)

既に理論の時にRCL直列回路の解析で定係数線型同時二階微分方程式が登場した際に同じように線型代数のベクトル表記を用いた。あのときには一階と二階の導関数をそれぞれ線型独立な未知関数として連立微分方程式に書き直して解いたのだがそれと基本的には同じである。

一階の微分方程式であることには代わらないので、i1かi3に関する微分方程式が得られれば既に学んだ定係数非同次一階微分方程式の解法手順を使って解くことができる。問題は前述の方程式のままではi1とi3が混じり合っているのでそれを分解しないといけない点である。

解法のアプローチとしては2つあり、

・オーソドックスな微分方程式の解法を用いる
・モダンな線型代数学を用いる

第一のアプローチは既に著者が一例を示しているが、一端1変数微分方程式に分離できれば一階微分方程式の解法が使えるのでこれは説明するまでもない。

第二のアプローチは予め線型代数の知識が無いとつらいが、近年の微分方程式論の本には必ず取り上げられておりむしろこちらが今後は有用である。こちらのアプローチで行ってみよう。

最初にまず以下の同次微分方程式で解を求める必要がある。非同次微分方程式の一般解は同次微分方程式の解を含んでいるからである。



未知のベクトルxが未知の関数の拡張と見なすと、これの一般解は既に知っている



という形になっていると予想される。しかし問題は行列Aを指数とする指数関数という新たな概念が必要になってくるという点である。実は歴史的には線型代数のスペクトル分解や固有値問題も連立微分方程式の解法問題が発端である。なので先に線型代数を学んでも微分方程式のここの話しを知らないと単なる教養ということになってしまう。

この議論を扱っている数学書はさっさと線型代数の成果を使って先へ進んでしまうのだが、ここでは少し寄り道をすることにしよう。

上のベクトル表記の解が問題の同次一階微分方程式の解であると仮定すれば、解の式を同次部分方程式に代入してみると



が成り立つので確かに解である。ここまでに勝手に行列Aを指数にもつ指数関数が体kの元を指数にもつ指数関数の拡張であると見なして議論を進めてきたが、具体的な解を得るには厳密に定義する必要がある。

その前にベクトル表記の同次微分方程式を独立した2つの変数分離形に分離できないだろうか?そうすれば積分するだけで解が得られる。

これにはやはり線型代数の行列の対角化もしくは標準化、あるいはスペクトル分解と呼ばれる定理を使用する。行列Aに関して以下の関係が成り立つ正則行列Pが存在すると仮定する



ここでp1,p2は互いに線型独立なベクトルである。この正則行列Pを用いて元のベクトル表記の同次微分方程式を変数変換と行列の性質を使って巧妙に書き換えると



ということになる。これでようやくy1とy2に関する独立した同次一階微分方程式が得られるのであとは変数分離して両辺を積分すると



ということになる。

なんだ簡単じゃないか(´∀` )

だがしかしこっから先が見通しが真っ暗(;´Д`)

行列の固有値はいいのだけど、固有ベクトルがわかんね。

予想によるとi1の解の時定数は駆動点インピーダンスの零点の実数部になるはずだからmaximaでインピーダンス関数の分子の式の零点を求めると



ということになる。Maximaで得られる式はfactorが不完全なので一部手でfactorしてあるが等価な式である。著者の解にある特定方程式の根とも一致している。

しかしこちらが建てた方程式の係数行列Aの固有値を求めると上の零点の式と違うのだ。何か決定的な誤りがあるのだろうか?

(2012/1/3)決定的な式の誤りを見つけた(;´Д`)

どうもR1があまりに関与してないと思ったら最初に建てた式を整理したところでR1の項がひとつ落としてしまっていた。それで係数行列Aの内容が誤ったものになり固有値が違ってしまっていたのだ。

これでもう大丈夫だ。

係数行列Aの固有値を導くと



ということになる。これは既に承知の駆動点インピーダンスの零点と同値である。

次にそれぞれの固有値に関する固有ベクトルを導くと



従って同次微分方程式の一般解は



ということになる。

次にいよいよ最終的な非同次微分方程式の解を導くことになる。

X(t)を同次微分方程式の基本行列、u(t)を未知のベクトル関数としてx*(t)=X(t)u(t)が非同次微分方程式の解を表すとすると



ということになる。この形はどっかで見覚えがあるな。

具体的に計算してみると

だめだ('A`)マンドクセ

どうすんだこれ(;´Д`)

最初に出てきた行列を指数にもつ指数関数を考えてみよう。

係数行列の固有値が相異なる2つの実数λ1,λ2を持つケースで以下が成り立つ射影行列P1,P2が存在する



射影行列には以下の面白い性質がある



つまり相異なる射影行列の和は単位行列となり、自分自身をべき乗しても変わらないが、相異なる射影行列の積はゼロ行列となる。これは行列を指数にもつ指数関数の展開時に大変都合が良い。

問題の係数行列Aの射影行列を計算してみると



ということになる。

ここで行列の指数関数は射影行列を用いて



ということになる。これも見覚えがある。

これが同次微分方程式の基本解ということになるので、非同次微分方程式の一般解は定数変化法によって



ということになる。なんだみんな同じじゃないか(´∀` )

今度こそ計算できるかな。

だめだ('A`)マンドクセ

結局Maximaで扱えないぐらい複雑な多項式になってしまうので手作業でトリッキーな式の因数分解をしないと手に負えないことがわかった。

あとはいいところまで行った同次微分方程式の一般解の不定定数項を初期条件t=+0を与えて割り出してみよう。



だめだc1,c2を解いても式が複雑すぎて以降扱いきれなくなる。

どうすんだこれ(;´Д`)

実はMaximaには連立微分方程式を解く機能が備わっているらしい。しかしほとんどだめぽい。駄目もとで試してみたら一応解けた(;´Д`)

e1:L[1]*diff(i[1](t),t,1)+R[1]*i[1](t)+L[2]*(diff(i[1](t),t,1)-diff(i[3](t),t,1))+R[2]*(i[1](t)-i[3](t))=E
e2:L[2]*(diff(i[1](t),t,1)-diff(i[3](t),t,1))+R[2]*(i[1](t)-i[3](t))-L[3]*diff(i[3](t),t,1)-R[3]*i[3](t)=0
desolve([e1,e2],[i[1](t),i[3](t)])

しかし式があまりにここに載せるには長すぎる。手操作で置換整理したところだいたいあってそうだがsinhの項だけうまい因数分解が見つからない。



Maximaなかなかやるじゃないか( ̄ー ̄)

自分で計算するとどれも正解に到達しそうに見えなかったのに。

実はこの問題の回路を手元の回路シミュレーターでシミュレーションしようとしたところ意図した通りにいかなかった。原因はどの経路もインダクタンスが直列に接続されている点にある。インダクタンスに限らずキャパシタンスも同じだた同一の閉回路中に複数のリアクタンス素子があると困るらしい。初期状態でインダクタンスはショート状態とすると一応シミュレーションできるが、初期電流0だと怒られてシミュレーションしてくれない。確かに2つのリアクタンス素子が直列になっていると、その電圧降下は不定である。しかも初期電流が0とあればなおさらである。つまり2つのリアクタンス素子が直列に接続されていた場合、その中点の電圧はどうやって計算するかという問題である。電流が流れないと電圧が発生しないのだからやっかいだ。

L1のみ初期短絡という設定にしてシミュレーションした結果は以下の通り



i1がi2とi3の和になっているのが見て取れる。RL直並列回路は一般的にβ≧0となりRLC直列回路のような振動は発生しない。これは零点が負の実軸上にある限りそうである。もちろんL1,L2,L3のいずれかが負のインダクタンスとかであればその限りではない。

実際にはシミュレーションで使用した素子定数(R1=1,L1=1,R2=2,L2=2,R3=5,L3=5)だとちょうどβ=0となり臨界減衰の特性を示す。驚いたことに著者の解はこの条件を除外している。β=0の場合は特性方程式の根が重根となるので、解も異なってくるのだ。シミュレータでうまくいったので、Maximaでプロットしようとしたら0による除算が発生して計算できない(;´Д`)

著者の解もβ>0のケースのみに限定している。実際には適当に選択した上のような素子定数でβ=0となってしまうのだった。

しかたないので、R1を0.99にちょっとずらしてβ≠0となるようにしてプロットしてみた。



これは著者の式に基づいてプロットしたものなので、当然ながらシミュレーション結果とよく一致している。

Maximaで上と同じ素子定数で先ほどたてた連立微分方程式を解くと、素子定数が確定しているので係数がすべて数値となった解が得られる。これを同様にプロットすると



というわけでMaximaで解いた結果はあっているということになる。どうやったら式が綺麗に整理されるやら。

先の途中まで整理した式で同じようにプロットしてみたら、似てもにつかぬ波形になりましたとさ(;´Д`)

先ほどのdesolveで得られる式を整理したものではなく、定数だけを数値に置き換えていった式だとちゃんと期待通りの結果が得られるので、どっかで式の整理を間違えたということに。

微分方程式の本でも代数的関数的に微分方程式を解いている例を示しているのは一般解までで、例題とかでは定数はすべて実数値で与えられているので計算がそれほど面倒なことにはならない。たかが6素子の回路でも係数の多項式はありとあらゆる要素の加減算とべき根が出現してわけがわからなくなる。とても頭に記憶して暗算で式を整理などは無理がある。紙の上でも間違いが多発してどうにもならない。

そんな事情は数学者の関知するところではないので、19世紀にはいって微分方程式論は非線形方程式の解の存在に関する問題の方が重要で実際問題計算などどうでもよかったのだ。やはりHeavisideの演算子法の登場は技術者にとっては朗報であったことは明らかである。なにしろ微分方程式論は方程式をたてることができる程度知っていればよく、それ以外は代数的な式の操作に関する知識以外は必要ないのだ。

この問題は試験にでたら、解答を暗記でもしてないかぎり落とすしかないかもしれない。最終解に到達するのにとても時間がかかるし完全に答えるには臨界減衰(β=0)と過減衰(β>0)の2つのケースについて解く必要がある。「時間ねー」という事態に陥るのは必至である。

でも半分ぐらいまでやったら半分ぐらい点をもらいたいぐらいだよね(;´Д`)

ということでこの問題は中途半端なところで一端終止符を打つことにしよう。いつも完璧というわけにはいかない。

間違いに気づいたら、後日訂正するかもしれない。

自信のある読者は自ら別解を試みられるとよい(´∀` )

P.S

著者の解の式は過減衰(指数関数項が複数)のケースだが、Maximaで解いた結果は臨界減衰となっている(指数関数項がひとつ)が見た目上は区別がつかない。ほとんど臨界に近い過減衰だからだろうか。

しかしシミュレータが無かった昔の人の苦労が忍ばれる問題であった。今ならこれ以上難しい問題を机上で解析するというのは誰もやりたがらないかも。しかし解析をやらないと素子定数が一意的に決定できないという逆問題がある。どこが特性に敏感な素子なのかも予め予測できていないと試行錯誤では設計が終わらない。

P.S

"The Art and Craft of Problem Solving"に"問題が難しすぎるなら、簡単な問題を解くとよい”と書いてあったのを思いだして、行列の要素が式だと難しいので予め素子定数値を代入してどの数学書の演習問題にあるように数値行列にしてみたら解の姿が良く見えるのではないかと夕食後に微分方程式をたてるところから始めて実際に以下の数値を代入してみた

L1=2,L2=2,L3=5,R1=1,R2=2,R3=5,E=1

すると驚愕の事実が判明した。




なんと適当に標準数列から順番に選んだ素子定数によって係数行列は綺麗に対角化されてしまうという事実が判明した。偶然なのか出題者が暗に意図していたのかは謎。これによって非同次一階線型連立微分方程式は独立した2つの非同次線型一階微分方程式に分離されることになる。



これは簡単すぎて暗算でも解ける。公式によりそれぞれの非同次微分方程式の一般解は



初期条件としてt=0でi1=0,i3=0を与えると特定解は



ということになる。従ってi2は



ということになる。

これらはシミュレーションやMaximaでのプロットとよく一致する。

ということでアプローチは間違っていないが、係数を記号式のままにするとたちどころに扱い難い代物になってしまうのが敗因だった。

それにしてもまったくうまいこと係数行列が単位行列になってしまう瞬間を目の当たりにしたときは感動した。出題者がこの問題に込めた秘密の暗号を見つけたような気分である。

数式を処理するのが面倒なら最初に適当に数値を代入して数値行列にしてしまうと結論が見えて良いかもしれない。
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