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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2012-1-14 21:44
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
続々:相互誘導回路
次も相互誘導回路の問題。前問では二次側の閉回路で電力が消費されない特殊なものだったが、今度は実験室で再現できる二次側でも電力が消費されるもの。

以下の回路のスイッチをt=0で閉じた。一次側と二次側の電流を導けというもの。



これも以下の等価回路で考えることにしよう。



t>0で以下の関係が成り立つ



これを例によってベクトルで表すと



ということになる。従って同次微分方程式の基本解を求めるために係数行列Aから固有値を求めると



ということになる。従って定係数形連立非同次微分方程式の一般解は係数行列の指数関数を用いた公式により



ここで初期条件を予めt=0でi1=i2=0を与えると不定積分項は定積分に置き換わり未定ベクトルcは初期条件となり特解は



ということになる。行列の指数関数は前問と同様に射影行列の性質を用いて導くことが出来る。固有値は2つの異なる実数であることから



ということになる。

計算を簡単にするために解の式を畳み込み積分の形に書き換えると







ということになる。おろ著者の解答とは似てもにつかない。

しかしこれはMaximaで解いた結果と一致している。怪しいのは著者の解だということになる。ちなみに著者の解を元の微分方程式に代入してみると解ではないことがわかる。著者がどこでどう間違ったのかを見いだすのは容易ではない。それを見つけるのは読者の課題としよう(´∀` )

Faradayが実験した時もこれと同じ回路だった。λ1,λ2とも負の実数なのでt→∞でi1,i2は0となる。これはFaradayの期待とは反したが相互誘導作用があることだけは確かめることができた。同時期にHenryも相互誘導と自己誘導の発見をしたが発表が遅かったので相互誘導の発見者はFaradayとなった。Faradayは数学的な専門知識を持ってなかったので、後にMaxwellが補うことになる。

E=R1=L1=1,L2=R2=M=1としてプロットしてみると



ということになる。この考察も読者の課題としよう(´∀` )

Maximaを使うと手で解くのがばからしいぐらいに簡単に連立微分方程式が解けてしまう。実はここまで到るのにさんざんな苦労をした。以前の問題では記号式をむやみに展開してしまって処理しきれなくなったので、今回はなるべく展開しないようにやり直したところ線型代数の性質で簡単に式が導出できることを発見した。これはちょっとオリジナル性が高いかもしれない。

やはりこれからは線型代数だろう。

P.S

通勤途中で道々考えていたら、行列の指数関数を積分するのではなく、それを展開した後に積分するアプローチがあることに気づいた。すなわち





なんだか疲れてきたのでこれ以降は読者の課題としよう(;´Д`)

そのかわりといってはなんだけど、Heavisideが現代に蘇ったならこの問題を以下の様に簡単に解いてしまうだろう。

Heavisideの抵抗オペレータ(演算子)で最初の連立微分方程式を書き直すと



ということになる。すなわち抵抗演算子行列Fの逆演算子行列F^-1を両辺に乗じれば



ということになる。もし抵抗演算子Fに対する逆演算子F^-1が一意的に決まるなら解がたちどころに得られることになる。このことはHeaviside没後20世紀になってHilbert空間での線形作用素論として裏付けがなされた。その先見性を評価したドイツのGöttingen大学はHeavisideに名誉博士号を贈与している。欧米では作用素はOperatorであり演算子と同じ意味のものであるが、日本の数学界では区別するために作用素と名付けている。物理数学では依然として演算子と呼ばれている。

では実際に逆演算子を求めてみよう。まずは演算子行列の逆行列を計算するとこれは簡単に



逆演算子に変換するにはpに関する部分分数に展開し



1/(p-a)を対応表から(1/a)(exp(at)-1)に置き換えれば逆演算子行列は



ということになる。従って解は



ということになる。積分計算なしに解が代数操作でいとも簡単に得られてしまった。やはり驚くべき洞察ということにつきる。

ここで気がつくのは、演算子法の場合初期問題を考慮するステップが無いという点。例えばt<0でスイッチがONでt=0でスイッチがOFFする初期条件の解を求める場合には更にステップが必要である。そうした注意点を除けば、電気回路や線型システムの工学問題は簡単に解が得られてしまうのだから、物理や工学の分野では驚きを持って歓迎されたのは言うまでもない。Cambridgeの数学者だけが嘲笑しただけだった。「傲慢は知識の妨げである」というのはイギリスの詩人Byronの名言である。Byronの娘AdaはBabbageの解析機関開発資金を公募するためにすばらしいプレゼンテーションを行った、世界で最初の女性プログラマとも言われているが、むしろ解析機関開発ベンチャーのCEOだったと言える。

なんの話しだったっけ、ああ演算子法ね。

これほど苦労して解にたどり着けない隘路がいくつも潜んでいる連立微分方程式だけど、演算子法を使うと見通しよく解に最短で辿りつけることは驚愕の事実である。それが実感できるのは19世紀の数学水準で同じ問題を解いてみないとわからない。Heavisideの演算子法はベクトル解析に通じ、多次元の微分方程式を見通しよく解くために必要な共通の概念に基づいていると言える。

P.S

今時Heavisideの演算子法を使っても歓迎はされないだろう。戦後になって演算子法は欧米諸国ですべてLaplace変換に差し替えられてしまったので今日教科書にも出てこない。しかしそれではLaplace変換の有難味が良く伝わらないのではないだろうか?演算子法が最初に提供した微分方程式のシステマティックな解法という驚きを追体験することは依然として価値があると思うからである。

個人的には演算子法について「演算子法と其応用」和田重暢 著、「第一級無線技士用 電気回路(下巻)」室住熊三 著それに共立「数学公式 改訂増補 附関数表」で学んだ。これらのいずれも、非同次微分方程式の右辺には単位ステップ関数(Heaviside関数)の積であることを忘れないようにその旨式にも太字で"1"と書かれている。これまでの演習問題でも右辺に定数が現れる非同次微分方程式には単位ステップ関数であるU(t)を記載するようにしてきたが、以降は書かれているものとして省略することにする。必要な場合には再度記載するようにするつもりである。

実のところ非同次微分方程式では右辺が関数であるのが一般的なので、定数というのは厳密には正しくない。定数x単位ステップ関数が正しい。この意味は理解が有る程度進まないとわからないかもしれない。むしろ過去無限大の時間から定数というのは積分が無限大になるので都合が悪い。

ということで今後右辺に定数ベクトルが現れた場合には、定数・U(t)の意味で解釈して欲しい。
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