ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
Main Menu
Tweet
Facebook
Line
:-?
フラット表示 前のトピック | 次のトピック
投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2014-3-24 13:28
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
Re: n重極子
続きはこちらで

著者の付録(B.20)の式をとりあえず展開してみようとしたが元記事が行数制限に引っかかってしまったので、フォロー記事で継続。



ということになる。

つまり元々のLaplace方程式の解では、次数nが増えると、それより少ない次数の項も含むのに対して、著者が理論で示した式では特定の次数nの級数項しか含まない点が異なる。

更にいろいろ調べると、どうやらm>0しか扱っていないというのも変らしい。nは確かに非負整数でなければならないが、-n≦m≦nであるらしい。実際のところ負のmのパターンは正のmのパターンを回転させたり鏡で映したような形になるので正のmのパターンだけ見ればよいのかもしれないが、分子化学の世界では具体例として異性体というのが存在し薬学や生科学分野では無視できない。
学生の時の化学の実験でアスピリンを合成したことがあるのだが、「飲んだりしないように、不純物が含まれているので」と言われたことを良く憶えている。今にして思えば異性体のことだったのかもしれない。特に何もしなければ光学的な異性体がどれも同じ確率で合成されるので、同じ効能を持つものだけとは限らないのである。

かつて日本でサリドマイド事件というのがあり、それは睡眠薬の主成分を合成する際に生じる一方の異性体が有害な奇形を引き起こす催奇性を持つことによるものだった。当時は製薬分野でも異性体についてはほとんど研究されていなかったと思われる。工業的に効率良く製造することにだけ努力が払われていたような時代である。その後は化学合成の際には意図した性質を持つ異性体のみを合成する研究が必須になった。そのため分子化学を専攻する学生は優先してこのことを学ぶ必要に迫られている。
皮肉にもサリドマイド事件で発覚した異性体の催奇性がある種の難病の治療に効果が認められている。
特定の異性体のみを合成する不斉合成の先駆的な研究者の一人としてノーベル化学賞を受賞したのは、STAP細胞論文疑惑調査の中間報告会見で頭を下げた独立行政法人理化学研究所理事長の野依良治である。

多極子モーメントで検索すると、mは正負の値を取るように説明されている。

静電場の場合を考えると、n=0では単電子なので電界は球対称となり、向きを変えても鏡に映してもまったく違わない。

n=1の場合は双極子となるので、鏡に映すと方向によっては向きが変わったように見えるだけ。

n=2の四極子ではm=0の軸対称なパターンを除くと、m≠0のケースはいずれも正負それぞれの電界の2つの両腕が直交していて鏡像によって向きが変わったようなパターンを取る。いずれも回転させれば同形(等方体)である。

とここまでは特定のnに関する項だけを考えればよいというのが明らかだが、nが更に増えた場合にもそれは当てはまるのだろうか?

また三次元空間では変位ベクトルInは任意の斜交座標軸に平行にとることができるはずだが、解が次数nによって有限個に限定されるのは何故だろう?

r=∞で0となるLaplace方程式の解から命題の式に辿り付く間にはまだ伏兵が待ち構えているようである。

(2013/3/23)
多極子モーメントで検索していると、「電場勾配」なる見慣れない用語に出くわす。「電位勾配」の間違いかと思ったがどうやらそうではないらしい。東大の講義資料やあちこちの研究所の論文にも頻繁に現れる。更に「電場勾配」で検索すると、どうやらこれが量子力学や量子化学、核磁気共鳴の分野では一般的なElectric Field Grandient(EFG)のことだと解る。EFGは実際にはTensor量で初学者の理解できる範囲を超えたところにある。
n=2の四重極子の主軸を様々に変化させた場合に作り出す電位を導出するとどうしてもTensorという物理量が出てくる。普通はそこには触れずにさっと流す程度だろう。
Tensorをどうするかは考え中。

(2014/3/25)
本棚代わりの押し入れに積んであった古い「岩波 数学事典 第2版」を取り出してLgendreを索引から引いてみた。すると球関数という項目にとてもよくまとまった記述を見いだすことができた。切り口は少し違うが解り易く方向微分による二重極ポテンシャルの導出が例示され、その一般化として多重極ポテンシャルの式も示されている。これはだいたい合っていたようだ。
少ないページ数だがとても良くまとまっていて、自分で描いた任意の斜交座標軸を主軸にとった場合の二軸球関数というものがでてくる。それに続いて【Legendre関数の拡張】としてmが正の整数でない場合への拡張の方法が述べられている。mが不の整数の場合はもちろん、一般のmについても述べられていて。一般のm(複素数)の場合は超球関数という名前がついているらしい。初めて知った。そのほかにも命題の式に出てくる調和関数Yn(θ、φ)の項にもそれぞれ名前がついていることも知った。
なかなか良いところまで来てたじゃないか( ´∀`)

(2014/4/1)
どうやらあちこちのテキストを拾い読みしてみたところ、この種のLaplace方程式の極座標の解(球面調和関数)を解くのは一生に一度でいいから自分でやるのが流儀らしい。どの本もネタバレ禁止の方針をとっているのがおもしろい。それと各著者はそれぞれ独自に解いた経験からか、どれひとつとして記述が似てない。同じ結果に辿り付くのに、まるでアプローチが無限にあるような錯覚さえ憶える程。読んだ本を紹介すると、

「現代の古典解析」森毅 ちくま学芸文庫
森さんの本はどれもできの悪い学生が読んでも読める程度に敷居が低く、またどこから読んでも構わないところが良い。途中から読んで知らない用語や概念に出くわしたら、前の方に遡って読んでいけばよい。途中で笑いのネタもあるので笑うタイミング逸しないように。とはいえ理念を伝えることが目的なのでポイントは押さえてある。Laplace方程式の極座標形も平面極座標の易しい例だけどちゃんとLegendre関数やBessel関数が出てくるところまで示されている。何度も読んだはずだけど、そのことを思い出したのがこの問題に取り組んでからだったのは内緒。

「ベクトル解析」森毅 ちくま学芸文庫
電磁気学にはベクトル解析がつきもので、ベクトル解析だけ勉強すればいいと思うのは礼儀しらず。先の「現代の古典解析」にもご用とお急ぎの方向けのベクトル解析ダイジェストの章がある。こちらも理念と一般教養の充実という視点なので専門的な話には立ち入らない。それでもやっぱりLaplace変換の極座標形について出てくる。その手の演習問題があったら自分でやることと書いてある。
森さんは自宅で調理中に不慮の事故で大やけどを負い、病院で帰らぬ人となってしまった。きっと和服の着流しで裾がめくれていて、そこに火をかけていた調理器の取っ手かなんかを引っかけてしまったのかもしれない。自分でも調理中にめくれた和服の裾が鍋の柄にひっかって料理を台無しにした経験がある。あれが天ぷら鍋とかだったらと思うとぞっとした。森さんは沢山の著書を残してくれているし、懐かしいお声を思い出しながらまるでご本人が頭の中では話しているように読むのが楽しい。

「理論電磁気学」砂川重信 紀伊國屋書店
これは先日新宿のコクーンタワー地下の本屋で買い求めたもの。Laplace方程式の球面極座標形からLegendre陪方程式を導出しその解であるLegendre陪関数を導く過程の要点が解説されている貴重な資料。やはりちゃんと自分の肥やしにするにはLaplace方程式の球面極座標形を導出することを一生に一回は自分でやっておくべきという暗黙の了解がある。それをやるのに難しいテクニックが必要なわけではなく、面倒なだけなのだが。電気回路理論おもちゃ箱の時に微分方程式のオーソドックスな解法をいくつか学んだけれど、それらを使うのだ。

「独習独解 物理で使う数学 完全版」Roel Snieder著 井川俊介訳 共立出版
この本は数年前に本屋で見かけてよさそうなので買ってあったが、大抵のことは書いてあるが、既に知っていることが多いのであまり読まなかった。Legendre関数についてどんなことが書いてあるかと最近開いてみたら、Bessel関数とLegendre関数の類似性が興味深い観点から解説されていた。著者は二一世紀を迎える前にお亡くなりになっている。国内で電磁気学の本は沢山の著者が居るが、随所に他所では得られない示唆を与える歴史的なエピソードやはっとする視点からの解説があるのは数える程しかない。

さていよいよLaplace方程式の球面極座標形を導出するのをやってみる時が来たようだ。

(2014/4/1)
いざ始めようと思うと、へそ曲がりな性格が災いし普通の人が気にならないところが気になって仕方がなくなる。

最初に気になるのが直行座標系から球面座標系への座標変換として定番の以下の式



おいおいこれは球面座標から直交座標への変換だろうと突っ込みたくなる。

じゃ本当に球面座標から直交座標の変換式を書いてみろと言われるとこまってしまう



ここまでは良いが



ということになる。

どのテキストでもこのことは書いてないが、大変都合の悪い事実が明らかとなるからだと思われる。
x=0,y=0をとるz軸上ではψが不定となり直行座標から球面座標への写像が存在しない特異点となる。
どのテキストにも載っている、球面座標から直交座標への写像は単射であり特異点は存在しない。

なのでどうやら球面座標で考えた方がゆくゆく見通しが良さそうである。わざわざ袋小路にぶつかる脇道を示す必要はないのである。

(2014/5/1)

一ヶ月の間何も書かなかったが、何もやっていなかった訳では無い。通勤の電車内で森さんの「現代の古典解析」や「ベクトル解析」を何度も読み返し、以前は解らなかったところが解ったり、以前は疑問に思わなかったところが疑問が生じたりと少しずつ理解が進んでいることを確認した。何が書かれていて、何か書かれていないか、ややもすれば方向性が多方向に広がる可能性のある議論をうまく枝切りして剪定して方向を定める森さんの丹念な意図がやっと見えてきた。

数学の本に限らず電磁気学の本も基本的に脇道を道草することはしない。そこには人によっては本道よりも興味をそそられるテーマがあったりするのだが、そんな脇道にそれたら戻ってこれなくなるのは目に見えているのでばっさりと跡形もなく枝を切る。行儀の良い学生なら枝なの最初から無かったかのように疑問も生じずに前に進むことになる。

生来あまのじゃくなので、やってはだめだというとやりたくなるし、やりなさいと言われたことはやりたくなくなる性分なので、ここでは普通のテキストでは絶対やらない脇道に入ってみることにする。前に電気回路理論おもちゃ箱でもそうすることでHeavisideがかつて通った道と交差する体験が出来た。それは普通はどうでもいいことだけど、自分にとっては貴重な発見であった。

さて脇道とは何かというと、Laplace方程式は座標の直積空間であるCartesian座標系で最初に表記されるが、その解は極座標系もしくは球座標系で定式化されてCartesian座標系による定式化が示されることはない。

何故かというと見通しが良くないからというのが理由らしいが、はたしてそうなのか?自分の目で見てみないと納得がいかない。

最初に三次元のLaplace方程式を解くのは難儀なので、一次元から考えてみよう。二次元のLaplace方程式の解については森さんの本でも出てくるのだが、一次元というとどの本でも見かけない。何故だ?

自分でやってみるしかあるまい。



これが一次元のLaplace方程式ということになる。座標軸が一つしかないので偏微分方程式ではなく、二階の常微分方程式である。これも教科書ではまったく出てこない。解は自明なのか?どうやらそうらしい。

Heavisideの演算子法で解いてみると



これだと右辺が0なので両辺に逆演算子を乗じてもu=0になってしまう。

電気回路理論おもちゃ箱の最後で電信方程式を解く時に発見した方法を使う。それは二回積分して未定積分定数を出現させる方法である。



これをuについて解くと



ということになる。未定積分定数、K0,K1については境界条件を与えることで決まるが、どうみても基本解は一次の線形関数である。
一次関数なので、それを複数重ね合わせても一次関数であることには変わりない。

確かにこれは元の微分方程式を満足するので解であることには違いない。なるほどこれは自明であると言ってもよいだろう。議論の余地はない。

次にどの本にも出てくる二次元のLaplace方程式を同様に解いてみよう。



両辺を片方の座標軸に関して二重積分して未定積分定数を出現させると



これをuについて解くと



(2014/7/19)
電気回路理論おもちゃ箱で分布定数回路の過渡応答問題を解いた時にはうまくいったのだが、電信方程式は双曲型と放物型の混成だったからだろうか? Laplace方程式はそれとはまったく異なる楕円型である。

二次元空間の二階の偏微分方程式では上の様に演算子の冪級数が現れてどうしようもなくなる。

これ以上深入り止めよう。Heavisideもベクトル解析を使うようになってから演算子法を止めてしまったのもそうした理由があるからかもしれないということにしよう。

さて普通の教科書ではこの種のLaplace方程式の解を求める問題は静電場に関する最も高度な問題として華麗にスルーするか、結果だけ示して終わることが多い。

少しアプローチを変えてみることにする。

Heavisideの演算子法は分布定数回路の過渡現象問題を解くのに最も効果的だが、解くべき未知関数が常にHeaviside階段関数(単位ステップ関数)との積であることを前提としているので、そうではない解が存在する場合には解けないことになる。これは解の一意性がある問題ならなおさら。過渡現象の場合、必ずt<0では回路が静定していることを前提としている。t>0の挙動だけに関心があるからである。

ところが一般の微分方程式(偏微分方程式)ではそういった座標空間の特定の象限だけを問題にするものは限られている。大抵は未知関数は座標空間の複数の象限にまたがって存在する。

それとHeavisideの演算子法では微分演算子の指数が1より大きい冪乗を伴った演算子方程式に関しては変換公式が存在しない。これも未知関数が暗黙に単位ステップ関数との積で表されるという前提に基づいているため。このあたりはもうだれも研究していないので、なにか突破口がありそうだけど、入ったら戻ってこれない可能性が十分高い。

そこで偏微分方程式のテキストに書いてあるような初歩的な考察に立ち戻ることにしよう。

二次元空間のLaplace方程式について自明な解を考えてみよう。



以下の独立した2つの同次偏微分方程式の組は上のLaplace方程式を満たすことは自明。



これはHeaviside演算子法でも説けそうである



おろ、異なる2つの解が出てきてしまった。しかし良く考えれば、Aはyに関する一次関数で、Cはxに関する一次関数でも解の条件を満たすことに気づく。

一方uの式を他方のuの式の比例係数として代入すると



従って上の2つのuの式を加えても元の方程式を満たすので



が同次偏微分方程式を満たす自明な解ということになる。

実はこれはxに関する一次関数とyに関する一次関数を乗じた形をしていることに気づく。



これは重要な発見である。

係数および初期条件(u(0,0))が与えられれば自明な特解が導かれる。

Maximaでその一例をプロットしてみると



断面だけ見ると直線だけど、実は曲面だという。これは関数が双線形形式をしているためである。曲面上には極大極小点があるように見えるが、実はどの点を切断しても断面は一次直線であり、極大極小点は存在しない特徴を持つ。

昔々ビニールの下敷きというのがあって、それを左右で反対方向にひねったような形状をしている。もしくは南京玉簾(すだれ)のように一本一本は直線状の棒を並べてひもで結びつけると平面を形成して、やはり捻るとこんな感じになる。


実は自明な解には別のパターンがある。



という条件を満たす。

なんだ片方の項を右辺に移しただけじゃないかと笑うかもしれないが、未知関数uがX(x),Y(y)の2つの積で表される、かつ元のLaplace方程式の解であるものだけを考える。



先の自明な解のように関数の積で表されるものが解であることが確かめられているので、このケースでもそうした解が存在することが期待される。

この関数を条件式に代入すると



従って



という具合にうまいこと左辺はX(x)だけの関数に右辺はY(y)だけの関数となる。先の自明の解と異なるのは、k≠0の場合もあるという点である。k=0なら先の自明の解と同値である。

上の結果から、以下の2つの独立した非同次偏微分方程式が得られる



これをそれぞれHeavisideの演算子法で解くと





ということになる。

従って、未知関数uは



ということになる。

これを元のLaplace方程式に代入すれば解であることを確かめることができる。それは読者の課題としよう(´∀` )

係数K0,K1,C0,C1は境界条件を与えることによって決まる。

また異なる解の任意の線形結合も解であるので、



も解ということになる。Fourier級数みたいな感じだが、実は良く似た性質、直交性を持っている。それを確かめるのは読者の課題としよう(´∀` )

簡単な一例をプロットしてみると



どっかで見覚えのある波形が出てきた。電信方程式の解の時間軸に近い領域(しかし世界線の外で光速より早く伝わる波で実際の現象としては観測されない領域)に現れる波と一緒である。あれは確かBessel関数だったはず。しかし上の式からBessel関数だとは想像もつかない。これがCartesian座標系でLaplace方程式を解いた場合の見通しの悪さである。

Laplace方程式の解法について検索すると、kの取り得る範囲によってもっとバリエーションがあることがわかる。k<0の場合や、kが純虚数や複素数の場合など考えるのは読者の課題としよう(´∀` )

さて道草はこのくらいにして本流に戻ることにしよう。

Laplace方程式の極座標形式を考えることにする。

最初に意図を明確にする必要があるのでストラテジーをあらかじめ立てておく必要がある。

問題を解くには答えの一歩手前の予想が付けば早道なので、それは何かというと

・Cartesian座標系での二階偏微分演算子(∂^2/∂x^2,∂^2/∂y^2)を極座標系の偏微分演算子(∂/∂r,∂^2/∂r^2,∂/∂θ,∂^2/∂θ^2)と極座標r,θを使った形式に変換する

これを実現するためには、その前に

・Cartesian座標系の一階偏微分演算子(∂/∂x,∂/∂y)を極座標系の一階偏微分演算子(∂/∂r,∂/∂θ)と極座標r,θを使った形式に変換する

を解決する必要がある。これには座標変換とそれに関わる微分を使えばできそうである

ということで最低でも2段階のステップを踏む必要があることがわかる。

ではやってみよう


(1) Cartesian座標x,yのポテンシャル関数Uを極座標r,θで変数変換する



(2) ポテンシャル関数UのCartesian座標系での偏導関数を計算する



従ってCartesian座標系の一階の微分演算子は以下の様に極座標系の一階微分演算子と極座標の関数に変換されることになる



従って二階の偏微分演算子を計算すると





ということになる。

演算子(作用素)の計算には細心の注意を払う必要があった。作用する項が複数積になっている場合には、関数の積に対する微分の場合と同様。

従ってLaplace演算子に上の結果を代入すれば



ということになる。

なんだ簡単じゃないか(´∀` )

元のrに関する二階と一階の微分作用素の形は以下のBessel微分方程式の微分作用素の形をしている(これは森さんの本からの入れ知恵)。なのでその解のr方向成分にはBessel関数が現れることが想像に難くない。



さていよいよ本命の三次元を球座標系に変換してみよう(吐血)

その前に簡単な円柱座標系をやってみよう。というよりもそれは上の結果にz軸の項を足し加えただけなんだけど。



なんだそのまんまじゃないか(´∀` )

球座標に関する座標変換は以下の通り



従ってCartesian座標系の一階微分演算子は







ということになる。

従って二階微分演算子は







ということになる。

計算が面倒だった、転記ミスや誤りが紛れ込んで何度も検算をする必要があった。

従って3次元のLaplace演算子は



ということになる。

できたよママン(ノД`)

さていよいよクライマックスとしてこのLaplace方程式の解を求めることになる。

これまで二次元のCartesian座標系での解を求めたりしたが、三次元のCartesian座標系については割愛した。同様に二次元の極座標系でのLaplace方程式の解も割愛した。それらの解の導出手順について良くまめられたテキストが手元にある。「電磁気学基礎理論」熊谷信昭 著 オーム社である。"5.8 Laplace方程式の解" p157からそれらを見ることができる。

それを参考に球座標系でのLaplace方程式の解を導出してみることにする。

基本的には前に二次元のCartesian座標系のLaplace方程式の解を導いた時と同じであるが、3次元なので3段階となる。

最初に元となるLaplace方程式は



ここで二次元Cartesian座標系で発見したように解が以下の独立した単一変数関数の積のものだけを考える。



これをLaplace方程式に代入すると



ということになる。

これだと異なる変数の関数が各項に混ざりあっていて、変数分離されていないので、可能な限り変数分離型に各項がなるように分母や分子を払うと



ということになる。rに関する項を除いては2つの項が完全に変数分離型になっている。

従って自明な解の条件は



ということになる。kは0を含む任意の定数だけを考える。

従って上の条件式は以下の連立微分方程式を与える



第二の式に関しても変数r,θによらず常に成り立つためには以下の条件が成り立つ必要がある



最後の定数は任意の記号でよいが、伝統的にm(m+1)としてある。後でこの方が見通しが良いことがわかるので、結論を先取りする形で意図的にそうしているのである。

さて同様にこの関係式から残る2つの変数分離型の微分方程式が得られる答えの一歩手前まで来た



明確な意図なくしてこうした式は得られない。

さて後は3つの独立変数型の方程式をそれぞれ解くだけである。

最初の式はHevisideの演算子法で簡単に解ける



ということになる。

(2014/8/2)
大事なことをここで書き忘れていた。
Φは球面上で周期関数であるはずなので以下が成り立つためにkは整数でなければならないという条件が付く。



そして二番目の式はというと、どうすんだこれ(´Д`;)



と置き換えると、第二の式は



という具合に一階の微分演算子の項が消滅した。

更に両辺をrで割って、二階の微分演算子の係数を祓うと



ということになる。

テキストによっては最初から解が以下の形をしているとして結果を先取りしているものもある



最初からこうすれば、さっきの小技は必要なくなる。

それでもまだ0階の項に変数rの関数が残っているのでまだ安心できない。

これまでは微分作用素の係数はすべて定数の易しいものばかり扱ってきたが、ここに来て変数係数をとる一般的な形を解かなければならない点が難しい点である。

大抵のテキストでは面倒なので結果だけ示して終わっている。導出は読者の課題という格好だ。いろいろな方法があるし、どれも面倒なので結果だけ覚えておけば十分ということだろう。もちろん結論を先取りして議論をすることも可能であるが、どっか腰砕けの感じがしないでもない。

たとえば結果を先取りして解がr^nの形をしているとして、代入すれば



これをnに関して解くと



という結果が得られる。従って解は



ということになる。異なる解の線形結合もまた解であるので



この結果が得られただけでもご用とお急ぎの読者は小躍りするかもしれないが、誰が最初に解がr^nの形をしていることを見つけたのだろうかという疑問が最後まで残る。それがもし適当に思いついたということだったらやはり腰砕けに近い敗北感を味わうかもしれない。

(2014/8/2)
歴史的には冪級数を解とする一般の微分方程式について研究した19世紀のドイツの数学者Frobeniusの結果を用いたFrobenius Methodだと思われる。これはこれで電磁気学とかでは好都合なのだが、最初から解の形を制限している点に注意が必要である。多くのテキストがそのことを一言書いてあれば、正統な方法だと納得するのだがまったく明記されていない点が問題だろう。インターネットで検索すると出てくるごく一部のテキストだけはその点を明記してあった。

Frobeniusに先だって18世紀にEulerが変数係数を持つEuler微分方程式について研究しており、おおらかな数学の自由な発想で19世紀の数学者は常々後進に"Eulerを読め!、Eluerを読め!"と口が酸っぱくなるほど言って聞かせていたぐらい、数学者の理想がそこにあったからだろう。19世紀はMaxwellの電磁気学も登場しポテンシャル理論については数学、物理隔たりなく激しい議論が行われた古き熱い時代でもあった。今ちょうどそうした時代の人々と同じ土台にたっているわけである。

(2014/8/12)
このrに関する微分方程式は線形代数的には固有値方程式なのは明白で、固有値はm(m+1)/x^2と変数係数であるが、mが整数値の解しか存在しないとすれば、固有値の数は無限加算個あることになり、それぞれの固有値に対して解が存在することになる。

しかし手元の微分方程式のテキストをみても、どれも二階微分方程式になると、どれも定数係数だけに限って議論を進めている。なんですかそりは(´Д`;)

電磁気学のテキストでは解だけぽんと出して、元の微分方程式に代入すれば条件を満たすから解であるという開いた口がふさがらない解説で逃げ切っているものもある。まあそれでもまったくLaplace方程式を解くという問題に触れないテキストもあるので、まだ問題に触れているだけでもましなのだが。実はLaplace方程式を解かなくても電磁気学の大半は学ぶことができる。ただどうしても実際問題として電場や磁場を計算する時には否応なしにLaplace方程式に正面から向かい合う必要が出てくる。現実的な問題では境界条件が複雑なので、解析的に解くのは困難で数値計算に頼ることになる。それだけで飯が食っていける世界もある。学校ではそっちをむしろ教えているところもある。ただし厳密解は解析的に導かないと、それと計算で求めた結果と近いか遠いかは判断がつかない。

なんの話だったっけ。ああ、二階の同次線形微分方程式の解法ね。

昔いろいろ学んだ記憶があるけど、今再びそれらのテキストを開いてみると、上に書いた体たらくで、入門にはなるけど直接的には役に立たないということがわかった。

これは自分で解法を考えるしかなさそうである。

(2014/8/16)
たかが一般線形微分方程式、されど一般線形微分方程式。世の中に一般線形微分方程式と題打って公開されているテキストが多数あれど、どれも中身は定係数微分方程式という詐欺。表題に偽りありなのだ。それはどうでもよいとして。

実はMaximaのマニュアルを見ていたら、Maximaで問題の方程式が解けるらしいのでやってみた。



ほほう、どうやって解いているのだろうか興味深い。

いずれもlog(x)を指数とする指数関数が現れている。これはとどのつまり



ということである。

(1+sqrt(4*m*(m+1)+1))/2というのをmに関してプロットしてみると



興味深いことに、mが整数をとる時に式の値も整数である。



同様に(1-sqrt(4*m*(m+1)+1))/2についてもプロットすると





ということになる。

このMaximaの結果からm=-1,0は別の解になるのでmが0より大きい整数値をとる場合に限れば



ということで、先にfrobenius methodで導出した解と一致する。Maximaもなかなかどうしてやるじゃないか(´∀` )

(2014/8/18)
変数係数線形微分方程式で検索したら芝浦工業大学数理情報研究室の応用数学入門の中の変数係数線形微分方程式ページにずばり、問題の方程式の解法が解説されていた。

ストラテジーとしては変数係数微分方程式を変数変換によって定係数微分方程式に書き換えてしまうというもの。定係数微分方程式になれば解けたも同然。

問題の方程式は以下の形をしている。



これを変数xをパラメータtを変数とする連続関数に置換することで以下のような形に持っていけないだろうか?



そうすればQ(x)で両辺を割ってQ(x)が消えてパラメータtに関する定係数微分方程式になる。



こうなってしまえば答えの一歩手前まで来たのも同然、Heavisideの演算子法で以下の様に解ける



ということになる。上の解はm=-1/2の時は係数の分母が0となるため不定となり解ではなくなる。それでもm=1,2,3,...の正の整数値をとる場合にはv(t)は一価関数となることは指数関数の性質から明らかである。またm=0,-1の場合も、元の方程式の0階の項がなくなってしまうので、元の方程式の解であるとは言えない点にも注意が必要である。

ここで結果の先取りでt=log(x)とすると、Maximaの解と一致することは明らか。次にこの変換をどうやって意図的に見いだす方法を考えよう。

x=f(t)に変数変換した場合未知関数u(f(t))の二階微分は



ということになり。従って少なくとも問題のtからxへの変数変換は以下の条件を満たす必要がある。



xで1階微分すると1/xになり、二階微分すると-1/x^2になる関数はなーんだ? 
という謎々(謎々は実は連立方程式問題だったという事実)の答えは積分すれば明らかに自然対数



ということになる。

従ってその逆関数



が必要な変数変換ということになる。

できたじゃないか(´∀` )

これがわかった時の爽快感は格別だった。通勤電車の中でメモ用紙上で計算して確かめた時は長い便秘が解消したような気分。

やったよ(ノД`)ママン

まだ最後の方程式が残っている。これがラストボス級。

どうやら行数が尽きてしまったようなので続きはフォロー記事で。
フラット表示 前のトピック | 次のトピック

題名 投稿者 日時
   真空中の電荷分布による静電界演習問題 webadm 2014-1-9 0:00
     一直線上の複数の点電荷 webadm 2014-1-9 0:04
     振り子検電器 webadm 2014-1-12 3:42
     続:振り子検電器 webadm 2014-1-12 4:10
     平面上の複数電荷 webadm 2014-1-12 13:05
     電気双極子 webadm 2014-1-12 21:28
     続:電気双極子 webadm 2014-1-13 22:09
     点電荷による電界 webadm 2014-1-13 23:45
     続:点電荷による電界 webadm 2014-1-14 0:34
     続々:点電荷による電界 webadm 2014-1-14 12:28
     線電荷 webadm 2014-1-14 13:30
     続:線電荷 webadm 2014-1-16 4:04
     続々:線電荷 webadm 2014-1-19 18:08
     もうひとつの:線電荷 webadm 2014-1-20 12:44
     面電荷 webadm 2014-1-20 16:30
     続:面電荷 webadm 2014-1-20 18:11
     どちらかというと:線電荷 webadm 2014-1-20 21:51
     球面電荷 webadm 2014-1-22 23:48
     球体積電荷 webadm 2014-1-23 3:31
     一般の体積電荷 webadm 2014-1-26 1:37
     電気双極子 webadm 2014-2-5 6:28
     電気四重極子 webadm 2014-2-5 6:43
     電気二重層 webadm 2014-2-9 2:31
     続:電気二重層 webadm 2014-2-10 17:27
     n重極子 webadm 2014-2-10 19:02
     » Re: n重極子 webadm 2014-3-24 13:28
         Re: n重極子 webadm 2014-8-21 10:22
           Re: n重極子 webadm 2014-12-22 4:09
     多重極展開 webadm 2024-1-30 18:55

投稿するにはまず登録を
 
ページ変換(Google Translation)
サイト内検索