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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2014-8-21 10:22
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3068
Re: n重極子
前の記事の続き

いよいよ最後の方程式に取りかかることにしよう。



これを展開すると



難所は0階微分項が単純な定係数*変数係数*未知関数という形にはなっていない点である。

どうすんだこれ(´Д`;)

これがLegendre陪微分方程式(Associated Legendre Differential Equation)のひとつの表現であることは疑いないが、どの数学の参考書にも書いてあるような表現に直すことから始めることにしよう。

これは大抵の丁寧なテキストには書いてあるが、例によって変数変換を使用する。ちょうど良い微分演算子の計算練習問題。昨日の夕食前のテーブルの上で計算用紙を一枚だして計算し始めたらちょうど料理が出てくるまでに終わった。それまで何度か試みたことはあるが、うまくいかなかったのは内緒。



これらを元の方程式に代入すると



両辺をsinΘで割って整理すると



ということになる。

これで方程式がLegendre陪微分方程式であることが明らかに。

大抵のテキストではLegendre陪微分方程式を解くことはせずに、その基本解であるLegendre陪関数を示してショートカットしている。

もっとショートカットしたテキストでは、陪微分方程式は避けて、問題の方程式でk=0としたLegendre陪微分方程式の特殊なケースであるLegendre微分方程式の基本解(Legendre多項式)を議論するだけにとどめている。

いろいろネットで調べたところ、Legendre陪微分方程式の一般解は大抵の数学書に書かれているが、ほとんどは導出方法については触れていない。触れているものがわずかにあって、それも人によって細かいところが違っている。いろいろな解法があるが基本的には、Frobenius Methodをフルに用いることになり、少なくとも3ページぐらいの紙面を要する。単純なステップではできなくて、数段階のステップを精密に行う必要がある。

ここでも結果を先取りして話しを先に進めてもいいのだが、どうせなら自分で一生に一度ぐらいはやっておいても損はないだろう。

ひとつの記事の行数制限はあるものの、フォロー記事としてつなげばどうにかなるだろう。

(2014/9/13)
毎日の通勤電車内や帰宅途中のファミリーレストランでの遅い夕食(夜食とも言う)の時にこの問題を継続的に考えてきた。
既に現代ではLegendre陪微分方程式もLegendre微分方程式も解が良くしられていて、その解だけが結果として示しているだけのテキストがほとんどであるのは何度も述べた。
これはあれだ、昔も今も料理のテレビ番組で調理時間がかかるステップをショートカットするために、「こちらにあらかじめ出来上がったものを用意してあります」と結果だけ示して途中過程は省略して放送時間内に収めるというのと同じアイデアである。
それはそれで時間短縮のアイデアとしては良いのだが、実際に自分で同じ結果を得ようとするとテレビでは省略された長い過程が目の前に立ちはだかるわけで、同じ結果が得られるか不安になるわけである。
省略された過程の中に思わぬテクニックやこつが必須だったりすると、料理は失敗に終わり残念な結果が得られるだけである。
そんなことを考えながら、やはり過程は大事だと再認識したわけである。
なんの話だったっけ?ああLegendre陪微分方程式の解法ね。

いろいろ検索して調べると、いくつものアプローチがあるのはこれまでも述べた通り。具体的にどんなアプローチがあるかというと、真面目な方法とインチキな方法に大別できる。

真面目な方法:

解の形をある程度仮定して絞らないとさすがにやりきれない。最初の方法は仮定解を冪級数だけ考えるもの。実際のLegendre陪微分方程式の解はやや複雑な冪級数になるのでそれで済む程簡単ではない。二番目の方法はLegendreの結果に基づいてGaussが後出しでまとめ論みたいな感じで編み出した方法。Gaussは特殊から一般へと考えるのが好きだ。彼の結果を利用してもインチキとは言わないだろう。

(1)冪級数法(Frobenius Method)

解が冪級数となるような多くの線形微分方程式に未定係数列からなる冪級数を代入して、様々な条件(元の微分方程式を満たすこと、解の冪級数が収束すること)を精査して微分方程式を満たす未定係数を割り出し、仮定解に代入して解を導く。
冪級数を解とする線形微分方程式を体系的に研究しそれで学位を得たのがFrobinusであり、従来の方法を独自に発展させた今日Frobenius Methodと呼ばれるものを提案した。

(2)Gaussの超幾何微分方程式に帰着させる

Gaussはそれまで研究されてきた線形微分方程式の有名なものの多くが変数変換によっていくつかのパラメータ関数を係数とする共通の線形微分方程式(超幾何微分方程式)に帰着できることを見いだした。超幾何微分方程式の一般解の結果があれば、解くべき線形微分方程式を超幾何微分方程式の形に変数変換で書き換えて、そのパラメータを超幾何方程式の一般解に代入すれば解が得られることになる。超幾何微分方程式の解もまたパラメータを変数とする係数列からなる冪級数である。パラメータが取り得る範囲については冪級数法と同様に級数の収束条件から精査する必要がある。

インチキな方法:

既に答えを知った上で最短で問題の方程式から解を導く逆説的な方法がほとんど。つまり結果の先取りと逆転の発想からなる。最初に解だけ示すのはその最も極端なケース。他にも

(1) Legendre微分方程式の結果を利用する

Legendre陪微分方程式に真っ向から臨むのはあまりに険しい道のりだと分かっているので、Legendre微分方程式はLegendre陪微分方程式の特殊なケース(一部のパラメータを0としたケース)なので、先にその結果を示し(真面目な方法で導出をやる人も居る)、Legendre陪微分方程式の解にはあらかじめLegendre微分方程式の解が含まれるといった結果を先取りした仮定解を代入して解くもの(これも未定係数を決定するために冪級数が収束するパラメータが取り得る範囲を精査する必要が最低限必要)。

(2) Legendre陪微分方程式の結果を利用する

これは最も最短の例。ただし何も解いていない点で注意が必要。あらかじめ解の取り得るパラメータの範囲が定まっているのもお約束。好き勝手な値がとれるわけではない点に注意。流し読みするとその点はおろそかになりがちだ。真面目に解けば、t=cosθだから-1≦t≦1の範囲を取り、1-t^2=0となるt=±1は特異点であるから解は不定か自明な解の0しかないなど。何故そうなるかは真面目な方法で自分で解いてみないと分からないだろう。

(3) 多項式解だけを示す

無限級数解は球座標上で一価連続関数ではないので議論する必要はないから、物理的な意味のある一価連続関数としての有限次数の多項式解だけを紹介する方法。これはこの結果を利用して本来の物理的な議論への応用に展開する上で有用な方法である。後にも先にもそれ以外の解が必要になることはないのだからそれでいいという考え。Legendre倍関数でさえLegendre多項式と言い切ってしまうところが怖い。

真面目な方法、インチキな方法どちらも今まで誰もが数学の解析講義で敬遠していた級数の収束判定というテクニックが重要な鍵を握ることだけは明らかだと言っておこう。仮定解を代入するのも大変だけど、慣れれば通勤時間内にできる程度。ただし級数の収束判定については、かなり柔軟な視点が必要で、仮定解を微分方程式に代入して得られた結果の級数式を長時間睨む必要があった。
この種の級数の収束判定方法の議論はHeavisideの生きた19世紀の前半に活発に行われて数学者なら誰でも承知していないと潜りと言われかねない。冪級数の収束を論じないで怪しい冪級数展開に基づいたHeavisideの演算子法が数学者から酷評される憂き目にあったのもそうした数学界のピリピリし始めた時代と重なったからである。

インチキな方法は巷のテキストに載っているので割愛して、真面目な方法をひとつやってみることにしよう(前置きが長いぞ)。

仮定解

冪級数法を使うにせよ超幾何微分方程式に帰着させるにせよ、その結果得られる複雑な冪級数の係数を割り出すのはやりきれなくなる。
できるだけその部分を易しくするために、あらかじめ仮定解を実際の解に近い形にして代入する方法をとることにする。

Legendre陪微分方程式には(1-t^2)の項が存在する、分母の1-t^2を祓うために両辺に(1-t^2)を乗じてt=±1を代入すると



従ってk≠0の場合



でなければならないことになる。

この事から解の冪級数の項には(1-t^2)の冪が乗じられていることが予想される。
(1-t^2)の冪乗数はこの段階では未知なので、rとし冪級数u(t)の積の形の解だけを考えることにする



いきなり冪級数展開を代入すると未知係数の数が増えるのでやりきれない。
ひとまずrを先に片付けるために(各個撃破!)ひとまず冪級数部分を未知関数u(t)として代入してみることにする。





ということになる。

ここで最後の式の両辺に(1-t^2)^(1-r)を乗じても一般性は失われないので、特異点t=±1でu≠0となる場合を考えると



上記を満足する冪常数rと分離定数k^2の関係は



これでr=±k/2だということが分かった。kが正負どちらの値も取り得るとすると解の形は



と表すことができる。

丁寧なテキストでも、この辺りの事情は省略して上の仮定解をいきなり登場させるのが普通である。何故k/2なのかと疑問を持つことが大事だ。

mがどのような範囲の値を取り得るのかについては、次のステップの後で議論することにする。

k=0の場合、Legendre陪微分方程式はLegendre微分方程式になることから、u(t)はLegendre微分方程式の解であることがこの時点で明らかとなる。

冪級数の係数列

次にいよいよ上の仮定解を方程式に代入して級数の係数列を決定する段階に入る。

代入からやるとまた長く間違い易いので、あらかじめ前の結果のrにk/2を代入すると



ということになる。

u(t)の一階と二階の導関数はそれぞれ



これを先の方程式に代入すると



ということになる。

最後に総和をn=0で始まるように揃えるする流儀と、n=2に揃える流儀と二つある。どちらでもかまわない。どちらかの係数式のnをn=n+2で置き換えるか、n=n-2で置き換えるかの違いである。

最後に総和の係数項を因数分解するためにぐっと1時間睨んでも答えが出なかったので、係数項をnに関する方程式としてnに関してMaximaで解くことで因数分解の結果が得られた。体調が良ければ睨むだけで分かったかもしれない。

従って級数解が方程式を満たすためには、係数列が以下の条件を満足する必要がある。



従って係数列に関して以下の漸化式が得られたことになる。



この関係から、a0およびa1が0の場合は自明な解u(t)=0しか存在しないことになる。

a0=0でa1≠0の場合には奇数次のみ、a0≠0でa1=0の場合には偶数次のみの級数となることもわかる。

またn=m-k以降の次数では



という0の係数が現れることになる。

n=0の場合



これを順次繰り返していくと



なんとなく規則性があることがわかってくる。

問題の未知関数u(t)が奇数次のみと偶数次のみの2つの級数の和から成ると考えれば



ということになる。

なんじゃこりゃ(;´Д`)

これから分かることは、ue(t)はm-kが偶数値の場合、2n-2>m-k以降係数は0となり級数は有限項で打ち切られ多項式になるということ。
同様にuo(t)はm-kが奇数値の場合、m-kが奇数値の場合、2n-1>m-k以降係数が0となり多項式になるということ。

すると当然ながらm-kが整数値でない場合には、級数が打ち切られることはないわけで無限級数になることになる。そうすると級数の収束というのが問題になってくる。m-kが非整数な場合、級数が収束すればそうした解は存在するし、もし収束しなければ解は存在しないので考える必要はないということになる。

mもkも整数でない場合に無限級数となるが、収束するかどうか判定してみる必要がある。

隣り合った級数列の比率は



nを∞に極限移行した場合この比率の絶対値は



ということになる。

従って隣り合った項の比の絶対値は



問題の方程式ではt=cosθと変数変換してあるので、-1≦t≦1の範囲を取り得るが、t=±1は特異点でありその場合級数は発散するが、それを除けば級数は収束することになる。

さて、kに関しては既にΦの解を導出した際に整数である必要があることだけは分かっているが、mがどのような値を取り得るかは分かっていないし、mとkの間で何か関係についても調べる必要がある。

一般のLegendre陪微分方程式を考える場合には、tは任意の値(実数もしくは複素数)を取り得るので、m-kが正の整数でない限りその冪級数解が収束するのはt=±1を除く範囲に限られるということになる。

我々はt=cosθと変数変換を経てLegendre陪微分方程式を導いたので、任意のθに関して連続で球面上で周期性のある冪級数解でなければならない。従って-1≦t≦1の範囲で連続かつ有界な値をとる解である必要から、m-kが正の整数で、冪級数がm-kの値によって偶数もしくは奇数次のみの冪項から成る有限項の多項式となるということになる。

この辺りの場合分けはややこしいので文章だと漏れが生じやすい。ソフトウェア開発でもこうしたちょっと面倒な場合分けのプログラムを設計する際には人為的なバグが初期段階で入り込みやすいのはそのためである。

ソフトウェア開発ではこのため、昔からdecision tableを使うなどして厳密に考えられるあらゆるケースをマトリックス上に列挙した上で、すべてのケースを網羅するプログラム論理を設計するように推奨されている(それはJIS規格にも載っている)。

数学の世界では記号論理によってそれらの場合分けを簡明に記述する方法があるが、それを読んで解釈するのが人間なである限り、思い込みや誤った解釈で本来の記述が意図する範囲のすべてを伝わることは必ずしも保証されない。そういった事例は歴史的に枚挙に暇が無い。たとえ計算機プログラムによってそうした形式言語記述を解釈させるにせよ、その計算機プログラムを作るのは人間なので、誤りが組み込まれている可能性がある。

今日ではそうした誤りがあっても、数学者にせよ、ソフトウェア開発者にせよ、責任が問われるのは有限な範囲にとどまる。論文が間違っていたとしても、プログラムに致命的なバグがあったとしても、裁判にかけられたり罪を問われることはめったにないが、そうした誤りの混入をもたらした数学者やソフトウェア開発者は所属する組織内でなんらかの社会的制裁(処分やパワハラ)を受けたりことはある。彼らを雇用している組織が最終的な責任を問われることになる。
建築とかのハードウェアの場合には設計ミスがもたらす社会的な悪影響の重大性から設計者が国家資格を持つ必要があり、ミスを犯した場合の責任も設計者個人が負うことになる。このため建築技術は様々な形でコンピュータを活用して進化してきたとも言える。数学やソフトウェアが未熟なのは依然として個人の能力にのみ依り頼り、一方で個人の責任が曖昧にせざるを得ない点にあるのかもしれない。

なんの話だったっけ、ああ場合分けの話ね。

たいていのテキストではm-kが正の整数で級数が有限個で打ち切られる多項式のみを球座標でのLegendre陪微分方程式の解とする結論を文章で述べるにとどまっているが、果たしてそうなのかというとそれに関する確証を与えるには自分で整理するしかないということになる。

ここにm,kの2つのパラメータと変数tの取り得るすべての組み合わせについてdecision tableを使って再点検してみることにする。

(2014/9/21)
数式のレンダリングCGIを新しくmathtexを使うようにした。今までのmimetexでも別段困らなかったが、総和記号Σの中に数式が食い込むとか、積分記号の上下に境界値が配置されるとか気に入らない点はいくつかあったがそれに目をつぶれば記述はし易かったし問題なかった。
サーバーがDebianベースになったことから、Texliveが簡単に導入でき、Latexもインストールできるので、mathtexを試してみることに。
結果はmathtexはLatexをレンダリングに使用するのでamstexを使った精錬された数式レンダリング表示が得られる。
mimetexとmathtexで同じ数式をレンダリングして見比べてみると、明らかにmathtexが良い。
またmimetexは毎回数式をレンダリングするのに対して、mathtexはレンダリングした数式のイメージをファイルシステムにキャッシュするので、以降同じ数式をレンダリングする際にはそのキャッシュを再利用し毎回レンダリングすることはなく結果的にブラウザーでの表示がmimetexを使用するより軽負荷となり表示が速くなることが分かった。
しかし良い点ばかりではなく、mimetexとの互換性が失われたため、今までmimetexを使用して記述していた記事をmathtexに変えるには単にcgiパスを変更するだけではすまないという点。
実際のレンダリングがLatexを使用して行われるので、Laxtexのルールに従わなければならなくなったのと、mathtexが数式テキストをLatexのテキストに変換する際にバグがあるようで、数式以外を併記しようとすると面倒なエラーに遭遇したりする。
そういう良いではmimetexはLatexの悪い癖を隠してくれていたのだなと気づくことが多かった。mimetexだと見逃してくれた軽微な誤りもLatexではエラーとなりレンダリング出力が得られずLatexが導入されていないとかいう変梃なエラーをmathtexは出したりする。これの解決には、コマンドラインでかつデバッグモードでmathtexにエラーとなる記述を与えてLatexのログを調べる必要があった。Latexのはき出すエラーメッセージが解り難く世のLatexユーザーを悩ましているのではないかと同情する。
いくつかLatexで以前mimetexを使っていた数式をレンダリングしようとすると遭遇するエラーは、検索すると大抵Latexを使って数式を記述しようとする初心者が填まるところだったりする。そういう意味ではLatexは癖のあるプログラムなのかもしれない。20年ぐらい前にはUnix WorkstationでLatexを使って業務用のドキュメントとかレポートをコンパイルしていたけど平文をコンパイルする分にはそうした面倒を感じたことはなかったので、数式を扱う時の特有の問題なのかもしれない。数式を記述するときはマクロだらけだからね。

なんの話だったっけ、ああ、mとkの場合分けの話ね。

いろいろ検索してみると、厳密にすべての場合分けを丁寧に解説しているものは見当たらない。
大抵は球面座標から導出したLegendre陪微分方程式だから-1≦t≦1の範囲で多項式になるLegendre陪微分多項式だけに焦点をあててるし。
その場合でもmとkは正の整数だけに限って議論している。その方がその他の当面必要な枝葉や分岐に読者の注意を反らせることもないからだろう。
しかし一端疑問を持つと、どうしても知りたくなるのが人情で、虱潰しにやっていくと、これまで気付かずに通り過ぎてしまった枝分かれ道があるのに気付くことになる。
たとえば、既に議論したΦ(φ)やR(r)で出てきた分離定数が何故m(m+1)やk^2だったりするのかという話。これも線形代数的に言えば固有値の問題で、λとすればいいが、分離定数が2つ出てくるので、記号を変える必要がある。
そしてλが実はm(m+1)でしたという種明かしを説明すると長くなるし読者の集中力を低下させかねないので、ショートカットしてあらかじめ用意した結果を出して話しを先に進めるということになってしまった。
実はそのあたりを丁寧にやってもそんなに集中力をそぐことにはならないし、数学好きや計算好きな人には力試しにもなる。
19世紀の数学者がEluerを読めと口が酸っぱくなるほど言ったのは、そうした目から鱗的な数学的なテクニックがふんだんに使われているからである。Eulerの著書を読めばその事に自ずと気付くということになる。しかし、現代ではEulerの著書を読むということは数学を学ぶ人でさえ希だろう。本屋で売っているわけでもないので、大学の図書館とかにでも行かない限り読むことはできない。

(2014/9/22)
Legendre陪関数の級数(多項式)解がどうやら得られた感触があるが、厳密にmとkの取り得る範囲や組み合わせを検討する必要に迫られた。
この作業で一般的なLegendre陪微分方程式の解を論じるのでなく、球面調和関数だけに焦点を当てるのであれば知る必要のない枝葉をあらかじめ切ることができる。それらの枝葉にも関心はあるが、電磁気学理論ではそれらが登場することは無いと言えるので割愛することにする。
枝葉があることだけは明記することになるので、関心がある読者は研究するのは自由である。

手元にあるテキストでLegendre多項式を導出するところから、良く知られているLegendre多項式の様々な表現を導く過程は例外なく省かれている。この辺りもあらかじめ用意した途中結果だけを示してショートカットする手法が多用されている。
実はここのところがLegendre多項式やLegendre陪多項式で一番おもしろいところなんだと思う。
その他どのテキストにも書いてあるような直交性などの性質はつまらないし、分かってしまえば当たり前の結論でしかない。
ちょっと思いつかないような意外性のある結論がおもしろい。

(2014/10/20)
すでにこの問題に填まって2ヶ月が経とうとしている。面目ない。
パラメータの取り得る組み合わせを考えてもなかな整理がつかない。
検索してもそうした分類について触れている記事は見当たらない。
誰もやってないということなのか?
それ以外にもLegendre陪微分方程式というのは量子力学の初歩で当たり前のように出てくるというのを知っている。当然ながら結果の解だけ示して矢継ぎ早に量子力学の基礎を説明していくので、詳しく解の導出など触れているものは無い。幸いなことに電磁気学でも量子力学でもすべての解を知っている必要はなくて球対称な座標系だけを考えればよく、良く知られた解だけを知っていればよい。

Legendre陪微分方程式の解を導出する際に、どうしても同次微分方程式の解の宿命である、定数倍の不定性がある。上の導出ではa0とa1の係数が定まらないのだ。任意に決めてもいいのだが、計算機プログラムとかで一価関数としてLegendre倍関数を実装しようとするとこれでは困ることになる。

定数倍の任意性に関してnormalization(規格化とか正規化と呼ばれる)の必要性が出てくる。内積が1になるように係数を決定できればよいのだが、関数解析の立場でそれを定式化したのが20世紀前半の数学者Erhard Schmidtで、線形代数の観点で相似の理論を定式化したのがデンマークの数学者、Jørgen Pedersen Gram、今日ではGram-Schmidt Process(Gram-Schmidtの正規直交化法)と呼ばれているが、それ以前にLaplaceとCauchyが同じことを既に見いだしていたらしい。恐るべしLaplaceとCauchyの二大おじん。

正規化については後々触れるとして、組み合わせを整理しないと、やれやれ。

Legendre陪関数((1-t^2)^k/2の分数冪があるので厳密には多項式とは呼べない)の場合、冪級数の係数にm-kの項があるので、それが整数かそうでないかによって無限冪級数か有限冪級数になるかが決まる。

無限冪級数の場合は|t|=1で発散し、|t|<1で収束する。

m-kが整数でも、a0とa1の係数の組み合わせによっては、|t|=1で発散する無限級数となる場合がある。

たとえば、m-kが偶数でa0=0,a1≠0の場合、無限冪級数になり、|t|<1の範囲でのみ収束する。これは第二種のLegendre陪関数に分類される。
同様にm-kが奇数でa0≠0, a1=0の場合も、無限冪級数になり、これも第二種のLegendre陪関数に分類される。

第二種のLegendre陪関数をt=1/xと変数変換すると|x|≦1で発散し、|x|>1で収束する解が得られる。これも第二種のLegendre陪関数に分類される。第二種のLegendre陪関数については球面上で連続関数とならないため電磁気学や量子力学では登場しない。Legendre陪微分方程式だけを数学的に解いた場合のみ現れるということである。

二階の微分方程式の解は二卵性の双子の姉妹もしくは兄弟の解があって、それぞれ線形独立でどちらも同じ親(方程式)から生まれているけどまったく似てないと覚えておくと良いかもしれない。Legendre陪微分方程式の場合も、電磁気学や量子力学で扱われる第一種のLegendre陪関数(多項式)とは別に、多項式にはならない第二種のLegendre陪関数が存在する。Legendre陪微分方程式の一般解は第一種と第二種の陪関数の線形結合となる。

人の生涯は二階の微分方程式の一般解のようなもので、基本解には線形独立な幸福と不幸の二つがあって、一般解はその任意の線形結合となると覚えておくと良いかもしれない。幸福だけの解を望んでも姉妹解である不幸も必ず現れるので、幸福だけを選り好みしても仕方がないのである。不幸が続いても、いつかまた幸福がやってくるということもあるのである。

なんの話だったっけ、ああ解の分類ね。

ところでm-kが整数の場合、mとkが整数とは限らないケースもある。mとkが有理数の場合、その差が整数になる場合があるからだ。しかし、我々は既にmやkが変数分離した他の微分方程式の解が球面上で一価連続関数であるために整数でなければならないという要請があるためこのケースを考えなくて良いことになる。Legendre陪微分方程式だけを取り上げて解く場合にはそうした解も当然ながら存在するかどうか検討することが必要になってくる。数学的に一般的に考える場合には、最初から変数やパラメータを複素数空間に拡張して考えるのが良いのだが、電磁気学や量子力学ではさしずめその必要はないので安心して良い。

森さんが「現代の古典解析」筑摩書房で以下の様に書いてある意味は自分で調べて初めてその意味が解った。

引用:
ただし、これだけでは定数因子倍の不定性があるので、普通は積分などとの関連で因子を定める(定め方の流儀は、必ずしも一致していないようだ)。


と締めくくっているが、実際に調べるとそこで話題にしているLegendre関数(先のLegendre倍関数でk=0としたもの)には幾つもの異なった表現があり、まったく同じ表現でも正負の係数がついていたりついてなかったりするものが異なる分野で成立していてコンピュータプログラムを作る側にとっては頭の痛いことになっている。三角関数のように表現が一つで返す値がみな同じというわけではないのである。

森さんの本にも有名なLegendre関数のRodriguesの公式というが出てくる。



これは一定の正規化条件Pn(1)=1というのを満足する一連のLegendre多項式を一行で表している大変教える側にとって都合の良い解の公式でで必ずといって良いほどどのテキストにも登場する。この公式を見いだしたのはBenjamin Olinde Rodriguesという19世紀のフランス人数学者で、その公式を表した学位論文を書いた後、銀行家に転向しそれ以外の数学の功績は知られていない。早い時期の社会主義者で、鉄道建設などの社会資本の建設事業に融資したり、当時の労働問題や人種差別の撤廃や男女同権の未来を予測していた。若い頃は前途有望な数学者だったけど、他へ転身した人も歴史的には多い。社会運動に熱心な数学者も中には居る。

話を元に戻そう。

mとkが正の整数である場合には上のRodriguesの公式はうまくいくが、負の整数の場合はどうなるのかという疑問が沸くのは当然である。

球座標上で解が一価連続な関数であるためには、mとkが整数でなければならないという要請はあるが、負ではだめだということはない。

実はm=-(m'+1) (m'=0,1,2,3,...)をLegendre倍微分方程式代入するとmは常に負の整数だがLegendre倍微分方程式の形は変わらないことを簡単に確かめることができる。



つまりmが負の整数の場合、線形独立な解を持たないことになる。なのでmが正の整数だけ考えればmが負の整数の時の解も含まれるということになる。



kに関してはΘの解の形を解き明かす際に正負どちらでも取り得ることが解ったが、取り得る範囲はどうなるのだろうかという疑問が沸く。

先に導出した係数の漸化式にk=-k'(k'=0,1,2,3,...)を代入してみると



ということになる。

すなわち、m+k'が正の整数の場合、n=m+k'を最大次数とする有限項の多項式の解が存在することが判った。

これでもまだ、mとkの関係は十分明らかになっていない。m<|k|の場合はどうだろうか?



k,mが供に正の整数でk>mの場合、多項式解は存在せず無限級数解のみとなる。その場合の無限級数の収束半径は1なので、|t|<1で収束。

kが負の整数でmが正の整数の場合、kの絶対値がmよりも大きい場合には、n=(|k|-m)-1もしくはn=|k|+mを最大次数とする有限項の多項式のu(t)が存在することになる。|k|+mが偶数か奇数かによって、最大次数nが大小2つの偶数もしくは奇数の2つの異なるu(t)が解として存在することになる。最大次数が少ない方のu(t)の場合、(1-t^2)^(-k/2)の分母よりも次数が少なくない有理関数となり、球座標上で一価連続関数とはならない。

ふむ、どちらの結論も一般のテキストにも見当たらない。どっか間違えた可能性は否定できない。

一般のテキストでは、Rodriguesの公式を根拠に|k|≦|m|しか意味を持たないと書いてあるが、これはRodriguesの公式そのものがmとkが供に正の整数の場合の多項式の導関数表記になっているからだと思われる。負の階数の導関数については一般に定義されていないことに注意(それは微分の逆演算で積分だと考えるのは勝手だがそもそもそれはRodriguesの定義には含まれていないはず)。

テキストによってはk,mが供に正の整数で、k>mの場合にはRodriguesの公式により解は定数0になるとあるが、上の結果では無限級数解になるはず。どちらも方程式の解であることには間違いないが、果たしてどちらが正しい?

それにどうも一般のテキストではLegendre倍微分方程式の解を導出するのに、どれも口裏を合わせたように、Legendre倍微分方程式をk=0としたLegendre方程式をk回微分してとかいうもって廻った方法をつかってRodrigues公式をベースにした解に誘導しているのが気に入らない。どこか間違っているとすれば一般のテキストの方ではないだろうか(そんな大胆なことを言っていいのか?)。

なぜLegendre微分方程式より一般敵なLegendre倍微分方程式を素直に解かないのか、Legendre倍微分方程式の解の特殊なケースがLegendre多項式であることを示さないのか、それがどうしても気に入らない。

(2014/11/21)
ここで気付いたのが、Legendre倍微分方程式上ではkの負号にかかわらず方程式の形は同じなので解も同じと思っていたが実際には上の結果のように、kが正と負とでは非対称な解の集合を持つことになる。この対称性の乱れの原因はどこにあるのだろうか考えたら、仮定解が実はもう一つあることを思い出した。
(1-t^2)の冪が乗じてある仮定解があることを明らかにした際にその冪乗が±k/2であったが、正のk/2だけを扱って、球座標上で解が一価連続とならない-k/2の方は早々と切り捨ててしまっていた。実はそちらでもkが正か負の2つの解の集合があるはずなのだ。



ふむ、この結果を示している一般のテキストを見たことが無いのは確かだ。

u(t)の一階と二階の導関数はそれぞれ



これを先の方程式に代入すると



ということになる。

これから係数の漸化式は




ということになる。

これはm,kが正の整数でm≧kである限りにおいてu(t)はn=m+kを最大次数とする多項式となることを意味する。
kがmより大きい場合にはu(t)がn=k-m-1を最大次数とする多項式解が存在するので、(1-t^2)^(-k/2)の分母の次数よりもu(t)の次数が低くなることから球座標上で一価連続でない有理関数解が現れることになる。

とどのつまりkが正か負かによって、2つの仮定解を解析接続すればよいことになる。

わざわざRodriguesの公式などを持ち出さなくともkが正の場合にはΘ(t)=(1-t^2)^(k/2)u(t)をkが負の場合にはΘ(t)=(1-t-2)^(-k/s)u(t)を解の形式とすればよく、Θ(t)が球座標上で一価連続関数となるのは|k|≦|m|である場合に限ると言えるのである。

自分なりの結論が得られてよかった。

さて解の分類作業を続けよう。

(2014/11/24)
これまでの結果で、m,kの取り得る範囲は明らかになった。

Legendre倍微分方程式の解、Θ(t)が-1≦t≦1の定義域で一価連続な関数であるためには

・m,kは供に整数で|k|≦|m|でなければならない

ということになる。

また

・mが負の整数の場合は線形独立な解をもたない
・kが負の整数の場合は線形独立な解をもたない

ということも言える。

Rodriguesの公式に依らずあくまでLegendre倍微分方程式の解が球座標上で一価連続であるかどうかに基づいている点が一般のテキストと異なる点に注意。
どうしてRodriguesの公式を持ち出す必要があるのか私にはどうもわからない。

これでだいぶ枝葉がそぎ落とされたことになる。

実のところ、当初の命題に関する答えは、一般の慣例に従ってLegendre倍関数の次数をmではなくlに、位数をkではなくmに表記を変えることによって得られるのだが、その前にLegendre倍関数の定数倍の不定性をなんとかしないといけない。
少なくともPn(1)=1の正規化条件で正規化する必要がある。
そのためにはLegendre倍関数の位数を0とした特別な場合としてのLegendre関数(多項式)の正規化を考える必要がある。

(2014/12/10)
さていよいよ多項式解だけ考えればよい段階になったところで一安心して一ヶ月近く経ってしまった。
その間何もしていないとはいえ、ひとつの疑問の答えを探っていた。
それはRodriguesはどうやってLegendre方程式の多項式解が多項式の導関数であることにたどりついたかという点。つまりどうやって彼はRodriguesの公式の形にたどりついたかという興味からだった。
彼の論文など手に入らないと思っていたが、英語のWikipediaをみたら参考文献のリンクに彼の公式が登場する論文が収録されたフランスの論文集のGoogle Booksへのリンクが張ってあった。
早速見てみたところ、驚愕の事実が判明。今日あるRodriguesの公式はLegendre方程式の多項式の解の表現だが、論文ではそれとは違って球座標でのLaplace方程式から導出されたLegendre陪微分方程式の解の表現だったのだ。
意外にも至極まっとうなアプローチで誰もそれまで知り得なかった導関数としての解の形があることをある段階でひらめいたと思われるが、それを確かめるのは容易なことではなかったようだ。
論文の後半に球座標でのLaplace方程式を冪級数法ではあるがちょっと変わった変数変換を使って変数分離法を用いずにLegendre陪微分方程式をストレートに導出しているのが読み取れる。
既にこの段階でLaplace方程式の球座標での一般解は調和関数の任意の線形結合であることが明らかとなる。
問題はLegendre陪微分方程式の解がどのような形になるかである。
彼はいきなり前置きもなく解が以下の形をしていると仮定して方程式に代入している。





Rodriguesがこうやっているから、後生の人はみんなまねして同じようにこうしているわけだね。何故n/2なのかという議論は省かれている。
ただし元祖Rodriguesの場合には少し事情が違っていて、彼は仮定解がもうひとつあることを示している。



この場合、正と負の位数nを持つ未知関数xがどんな形になるか論文の焦点となる。

ここまでは今までやってきたことと一緒じゃん(´∀` )
苦労が報われた気がする。

しかしなんと次の展開でまたしても驚愕の事実が判明。

先の二つの仮定解ynを方程式に代入して得られた結果を、p回微分するという今日のテキストでも定番の方法が使われていた。なんだそれの元祖はRodriguesだったのね(;´Д`)

両仮定解ynをそれぞれLegendre陪微分方程式に代入すると



ということになる。これは前に導出済みのものと同値である(前に導出した式の両辺に(1-t^2)^(±k/2)を乗じれば同じ式であることが確かめられる)。

オリジナルのRodriguesの論文には誤植があり、最初の式の(1-μ^2)の()が抜けていたり、二番目の式の係数符号が違っていたりするが、それは直してある。

それぞれの両辺をμでp回微分すると



ということになる。

ここまでの結果についてはRodriguesは論文の中でM.IvoryとM.Legendreの二人の論文が注釈に引用として書いてある。ということは元祖はIvoryかLegendreか。

実際の計算はLeibnizの公式というのがあるのでそれを使うとよいらしい。確かめるのは読者の課題としよう(´∀` )

どっかで見覚えのある式に見えてきたが、ここで出てくる導関数項と仮定解が同値であることを示すのにRodriguesはかなり苦労をしている。

第一の式が成り立つには、n<mとしてp=m-nの場合



が必要十分条件である。

と切り出している。原論文ではdμの部分が誤植で抜けてしまっているが、上の式ではそれは直してある。

この段階でRodriguesは心の内にxnがたかだかm-n次の多項式であることを確信したに違いない。

ふむ、この時点ではn<mを前提としていてn=mは考慮されていないのね。

ここからRodriguesの苦労が始まり、だいぶ迷走した後に彼は歴史的なひとつの予想を得る。



おやこれは確かに今日知られているRodriguesの公式に良く似ているけど、違うぞ。今日では導関数部分の多項式は(μ^2-1)^mとかだし。
確かにJという定数倍の不定性があることを示しているので、それでも間違いではない。

驚きなのはRodriguesが示したのは今日知られるLegendre方程式の解の公式ではなく、より一般的なLegendre陪微分方程式の解の公式だったという点である。やっぱりそのアプローチでも間違ってはいなかったのだ。やったよママン(ノД`)

おそらく今日Rodriguesの公式として知られる定式化の形にしたのは、Heineだったと思われる。Helmiteはこの公式を見つけたのはRodriguesが最初だと明らかにした。Rodriguesよりも遅れてIvoryとJacobiがそれぞれ独立に見いだして論文に書いた、以来Ivory–Jacobiの公式として有名だったのをHelmiteがそれを覆し、Heineはそれを整理して今日知られているRodriguesの公式に整えたと思われる。
IvoryはRodriguesが引用しているぐらいなので、RodriguesはIvoryの初期の論文から多項式の導関数としてのLegendre方程式の解の存在に気付いたと思われる。実際にIvoryは初期の論文で示唆していたもののそれを論文にしたのはRodriguesの論文から10年以上後のことだった。

論文の後半は上記の予想が正しいことを検証することに費やされている。それまで出てきた方程式に順に予想解を代入して方程式を満たすことを確かめ、Rodriguesの公式から成る球面調和関数(spherical hermonics)の級数展開が球座標でのLaplace方程式の一般解であるという今日n重極子展開式を得て終わっている。やはりこの論文のハイライトは上記の予想に尽きる。

みんな苦労してきたのね。

Heineは彼が整理して定数倍の不定性を無くした形の導関数型の多項式解の表現を自分の公式とは呼ばすにRodriguesの公式と一貫して主張したことが今日につながっている。

これはHeviesideやhertzがベクトル形式に書き直したものを彼らの方程式とは呼ばずに一貫してMaxwellの方程式と呼ばれているのも同じ理由である。後生誰がどのように改良しても、最初に元ネタを提供した人が尊重されるということである。

さて、一ヶ月の間に他にも調べたことがある。Legendre関数は特殊関数のひとつであるが、それを最初に学ぶ機会は数学の解析であるので手元にある高木貞治の「解析概論」にも何か書いてないか久々に開いてみた。
以前一読した時には微分方程式論には触れてないし、特殊関数といってもΓ関数やB関数とか基本関数だけだった記憶があるが、実は違った。
参考文献や引用の類いがまったく無い今では珍しい数学書である「解析概論」だけど、公式の名前も一切記されてないけど、Rodriguesの公式が扱われているのを再発見した。
p119から数ページだが、Legendreの球関数という節が登場する。その最初のページで巷のテキストとは違った切り口からRodriguesの公式が導出され、それをLegendreの球関数と称している。
「解析概論」で高木貞治は元ネタがあるかどうかは別として、直交関数の問題から見事に1ページ足らずでRodriguesの公式を導出している。
Legendre関数はいろいろな数学の分野で登場する。直交関数論もそのひとつで、もうひとつは球関数もしくは調和解析、それ以外にも二階の微分方程式論、偏微分方程式論、ポテンシャル理論とか。それらの分野は離散していて一見するとつながりが無いように見えるが、実は同じものを見ているという代表例である。
高木貞治の示したRodriguesの公式の導出の技をちょっと垣間見て見よう。

彼は最初に部分積分の応用問題として、以下の積分方程式を満たす多項式Pn(x)を求める問題を取り上げている。



これは直交多項式の問題でもある。

関数の内積を上の式のように定義すると、内積が0になる(すなわち直交関数となる)関数が存在する条件ということになる。

問題のn階の多項式Pn(x)は2n次の任意の多項式F(x)の第n階の導関数であるから、




ということになる。

上記が成り立つためには以下が必要十分条件となる。



従って2n次の多項式F(x)は(x-a)(x-b)のn冪乗から成ることが予想される。



従って定数倍の不定性はあるものの



が条件を満たすことになる。

区間[a,b]を[-1,1]とした場合、



ということになる。これは今日知られるRodriguesの公式そのものである。

定数倍の不定性は、正規化することによって除くことができる。この点については高木は何も触れておらず、正規化した結果だけを示している点に注意。いずれにせよ見事である。
おそらく高木はRodriguesの論文も、Heineの論文もHelmiteの論文もとうの昔に目を通しているはずなので(高木の「代数学講義」にHelmite行列とか出てくる)、すべてお見通しなのである。
さすがに数学が血肉化した人だけあって、「解析概論」のどこにもRodriguesのロの字も出てこない、論文に誤記があるし証明の見通しも悪いので記憶に残る数学者ではなかったのかもしれない。
どちらかというと上の導出した式はIvory-Jacobiの形に近い気がする。そちらが元ネタなのかもしれない。
ただ同じ結果を得るために幾つものアプローチがあるのはこのことからも明らかで、だからそれができたからといってどういうことでもない。当たり前になってしまってからだと、アプローチが違っても、当たり前の結果とみられてしまう。ただそれだけのことである。手短に同じ結果を導出するとなると簡単で短い方法の方が良いというのはある。ただし別のアプローチで苦労して導出した人たちが居たことはそこから伺い知ることはできない。
そういう意味で高木貞治の「解析概論」は危険な本であると言える。

Rodriguesの論文の方が若々しくて荒削りだけどドラマがあっておもしろい。そういう論文は数学では珍しいのだが。人間の内面の情緒というかそういうものを感じる。

さてここまで来ると、この問題が実はRodriguesの仕事を追体験させるものであることが判明した。著者がそれを意図していたかどうかは別としてそれは歴史的にも裏付けられたことになる。

(2014/12/16)
先の高木貞治のRodriguesの公式の導出技を見て、その正規化の方法も同じ要領でできることに気付く。
だから正規化した結果だけ示し、行間は自分で考えて埋めなさいという数学書のお約束。



という準正規化条件の下にLeibnizの高階導関数の公式を用いると



ということになる。

一般のテキストでは定数Cを適当に選ぶととか根拠を曖昧(これも自分で考えろということだろうけど)にしたまま上の定数を導入していることが多い。方程式と解くことと正規化はシームレスにはつながらない離散的な視点なので仕方がないことだ。

上の導出でも面倒なので行間は省略してある。行間を埋めるのは読者の課題としよう(´∀` )

この結果を用いると、Legendre陪微分方程式の解も正規化した形で表すことができるようになる。
直接Legendre陪微分方程式の解を正規化しようとすると、(1-t^2)^k/2の項があるので、k≠0の場合はt=±1で関数値が0をとるため上の様な一定の準正規化条件を与えることができないためである。
k=0の場合はLegendre陪微分方程式の解はLegendre方程式の解と同値になるので正規化したLegendre多項式の表現がそのまま適用できることになる。

(2014/12/19)
RodriguesがIvoryの論文から思いついた、Legendre多項式の最大次数はたかだかn-m(nは次数、mは位数)だということは、前に導出したLegendre陪微分方程式の多項式解の係数の漸化式からも知ることができる。



n=m-k(mは次数、kが位数)の場合、多項式の最大次数はn=m-kとなることが明らか。

更に、k=0の場合にはLegendre陪微分方程式はLegendre微分方程式となるため、多項式の係数項は上の漸化式でk=0と置いた



となるから、Legendre多項式の最大次数はn=m(mは次数)ということになる。

残るは問題その多項式がどのように形になるかである。級数展開した形からそれを因子分解しようとしても見通しが悪い。なによりも定数倍の不定性が残っているので、それをなんとかしたとしても、やっぱり見通しが悪い。Rodriguesの公式から級数展開を得るのは容易なことだが、逆はそうはいかない。

Legendre多項式はその係数の漸化式から、nが偶数の場合偶関数、nが奇数の場合には奇関数となることが明らか。

考え中(-.-)

(2014/12/21)
再びRodriguesがどうやって最初に彼の解の予想にたどり着いたか興味があるので論文を読んでみた。

彼はLegendre倍微分方程式の一価連続な解の導関数部分に関する必要十分条件の式を二回積分することによって以下の関係式を導いている。








この辺りはよく演算子法で用いたテクニックと同じだ。

この結果から、彼は導関数の種として(1-μ^2)の冪乗が現れることの根拠を得たことになる。かなり強引であるが、おそらく彼は結果を先に予想して、それにたどり着く答えの一歩手前として上のテクニックを見つけ出したのだろう。

この後に彼は、微分回数pを0,1,...,m-n-1まで順次計算している、

p=0の場合





p=1の場合





p=m-n-1の場合





この結果から、xnは



ということになる。

ここで彼は、







で割り切れると言明している。

(1-μ^2)^mは2m次の多項式なので、それをm-n回微分すると最大次数が2m-(m-n)=m+nの多項式となるので、2n次の多項式(1-μ^2)^nで割ると、m-n次の多項式となるというわけである。

このことは後で出てくる。

Rodriguesの論文をなぞることになってしまっているが、誤記が多い論文だけに、後生の数学者は間違っているとは言わずに自分なりに解釈した正しい式に書き直していたのが判る。

同様にもう一つの仮定解であるx_nについても検証してみると

p=0の場合





p=1の場合





p=m+n-1の場合





(どうやらここで記事の長さの制限を超えそうなので、続きはフォロー記事に続く)

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