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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2015-5-20 9:56
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
ベクトル解析もしくは電磁気学を学ぶ上で初期の段階で遭遇するハザードは何かというと、それはベクトルからベクトル解析すなわちベクトル空間の微分積分にジャンプするところである。

歴史的な経緯から近代力学や流体力学では今やベクトルで速度や加速度、応力などをベクトルで表すのは当たり前になっているが、力学については19世紀になるまではベクトルという概念は存在しなかった。それらは19世紀以降に力学が再構成された際に書き換えられたものである。

Maxwell以前にも英国には静電気学の研究者が居てほとんど忘れられているか故人が発表せずにいたものがあり、それらは後生の人が偶然に発見して一般に知られることになる。

電磁気学の演習問題に以下の様な設問が無いのは何故だろう?

「電磁気学がそれ以前から知られている数学を用いて定式化をせずに、MaxwellはHamiltonの四元数を、HeviesideやHelzは独自のベクトル解析を編み出して定式化を行う必要があったのは何故か、簡単に説明しなさい」

これは何故ベクトル解析なのかという逆問題でもある。

前回まで議論してきた初等のベクトルに関する議論はおよそベクトル解析とはほど遠いものであるものの出発点としては妥当ものであることは確かだ。

しかしここまでの議論は位置ベクトルというか座標ベクトルの議論であって、それ自身はおよそ解析の対象ではない(微分積分ができない)。

解析というからには何らかの関数を成分としなければならないことになる。その関数が微分可能であれば解析が可能である。

微分積分なら力学の歴史上でとっくに登場しているので、それを何故Maxwellを始めそ後生のMaxwellian達が新たに定式化のために新たに数学を編み出さなければならなかったのはどんな理由があるのか。

それだけの道理がある理由があるはずである。

最初にはっきりするのは、Newtonの力学は質点の運動を数学的な対象として探求した結果と言える。空間には質点を除いては何も無いのと一緒で、単に質点の座標を与えるだけのものでしかなかった。すなわち絶対座標系というのが存在し、その原点は微動だ世界の中で動かないと考え、それとは別に慣性系という等速で移動する座標系を考える。やはりその座標系上には質点しか存在せず中間は何も存在しないし、質点には何らの作用もしないと考えられていた。

Newton力学では質点の座標は時間の関数として表され、時間と供に空間を移動する質点は速度を持つ、また速度も時間と供に変化すれば加速度を持つと考え、それらは共通して時間の関数である。空間は座標を与える尺度でしかない。

電磁気学はそれとは様相がまるで違っている。確かにcoulombはNewton力学の重力と同じ性質を静電気も持つと予想し、それを裏付ける実験を行った。今日の目で見れば、まともに予想を裏付けるデータが得られそうもない実験方法だったが、coulombは測定データを選別して、予想を裏付ける根拠に十分な結果を得た。今日的に見れば第三者による再現性がかなり低い論文だったと言えるが、結果的には間違っていなかったので今日もその名が刻まれている。

coulombが静電気がNewtonの発見した重力と似たようなものであると論文を書いたので、おおかたの研究者は、ああなんだ目新しいものは無いのか、じゃもう研究するのやめよう。と静電気の研究熱はそこで冷めてしまった。磁気に関する研究が欧州で活発になるのはその後の別の契機による。

Newton力学では質点間の互いの重力による作用のみを考えるだけで十分という暗黙の前提が存在する。しかし厳密には後にこれは修正されなければならないことになる。太陽とその周囲を回る衛星や彗星とかの運動を議論するにはそうした近似で十分説明できる時代の産物である。

その後天体運動の測定精度が高くなり、Newton力学では計算の誤差が説明できないぐらい顕著に表れるケースが出てきて何か理由があるとしか言えない時代がやってきた。

Einsteinの相対性理論がNewton力学の欠陥を埋めるものとして登場した。その際にMaxwellの電磁気学はそのまま相対性理論でも変わらずに通用することが判明した。

というわけで、歴史的にはMaxwellの電磁気学は結果的にNewton力学に反例を与えることになった。それは何故だろう?

電磁気学でも微分積分だ出てくるのは、電界や磁界とかの座標を変数としてベクトルを与える関数を議論するからである。Newton力学の場合はすべての物理量(速度、加速度、力)は時間という一変数の関数だったが、電磁気学では静電場や静磁場は座標の関数であり、動電場や動磁場は時間と座標の関数でもある。すなわち扱う物理量がことごとく多変数関数であるということである。

電磁気学と同様に流体力学も座標の関数として速度や密度、圧力という物理量を数学的な対象として扱う。どちらかというと両者は近い関係にある。Maxwellも電磁気学に手を染める前は流体力学を研究してきた。そこで培った独自の自分数学がやがて電磁気学の定式化に役立つことになる。それでもHamiltonの弟子であるKateの助言に沿って四元数を元に定式化を試みたが、結果的には座標の成分毎に式を立てるという極めて見通しの悪い定式化になってしまった(初版の話)。

それを19世紀に最新のベクトル解析を使用して再構成したのがHeavisideでありHelzであった。それまでMaxwellの本を読んで難解なために読むのを躊躇していた学者達の多くはHelzの論文を読んで目から鱗の体験をすることになる。

ベクトル解析誕生の黒歴史は以前に書いた通りで、すでにその結果はHamiltonの四元数の研究者によって得られていたものと同じであったが、四元数は面倒で難しくて使えない数学だったのに対して、ベクトル解析ははるかに実用的だった。四元数派からベクトル解析派に鞍替えした元四元数研究者も英国では多かったと聞く。

さて疑問にはまだ答えが出ていない。何故Maxwellの電磁気学を理解する上でベクトル解析が必要だったのだろうか?

それにはベクトル解析の長所を理解する必要がある。

(2015/7/9)

だいぶ時間が経ってしまったが、忘れていたわけではなく、通勤中にも目を通してなかった手元の電磁気学の入門書を読み始めたり、Newtonのprincipiaを眺めてみたりしていた。

あまり読んでなかった分厚い電磁気学の入門書で日本語で書かれたものは、どうも著者の蘊蓄は抱負で数式が少なく入門には向いているかなと思って購入したのだが、良く読んでみるとそれは違っていた。書かれた年代が小生の生まれた頃と近いし、こんな人が東大で教えていたのかと思うと、さぞかし学生さんは大変だったろうなと気の毒に思ったりもした。

理由としては前半がどうやら戦前戦中の電磁気学の教授方法の伝統に沿っているかららしい。というのも戦前戦中は枢軸国であったドイツからしか科学技術系の外国図書は入手できなかったので(それも海軍の潜水艦で運ぶしかなかった)自ずとドイツの電気力学を基礎としていたと思われる。

つまり前半の章がやたらと力学的な観点での議論が多く、力はもとより、仕事とかエネルギーとかいう量が定義もなく出てくる。これには閉口した。

これには理由があって、ドイツではMaxwellが電磁気学の著書を出す前に既にWilhelm Weberで電気力学理論体系を作り上げていて、MaxwellがFaradayの考えていた電磁気力の近接作用論に基づいた場の理論であるのに対して、WeberのそれはNewton力学に基づいた遠隔作用論の力学だったためだ。

今日ではWeberの理論は存在すら顧みられることはなく、電磁気学と言えばMaxwellという合い言葉に全てが覆い尽くされてしまったように見えるが、Maxwellの理論の完成に拍車を掛けたのはWeberとKohlrauschが共同で行ったWeber定数(実は光速の√2倍の定数)の測定実験結果がMaxwellの予想した光の速度に近い(といっても√2倍の違いがある)ことから即座にそれが光速だと確信させたことによる。

皮肉にもNewtonの遠隔作用論に基づいたWeberの電気力学が世界に先駆けて光の伝達速度が有限であるという矛盾を証明する種となってしまい、力の伝達速度は有限であるという近接作用論にMaxwellが正しいという根拠を与えてしまう結果となった。Weber自身は知ってか知らずか、その実験結果が自分の研究の前途に暗雲を生み出す以外の何者でもないと確信したのか、論文上ではその結果はたいした価値はないという結論に結んでいる。そのためこの業績は価値がないものとして忘れられてしまうことに。

なんの話だったっけ?

ああ、ベクトル解析の利便性ね。

話をNewtonに戻すと、そもそもprincipia執筆のきっかけを作ったのはHalley彗星の観測と研究成果で有名なHalleyの熱心な勧めによる。彗星の軌道を予測するのに必要な理論的な体系を既に持っていたNewtonにそれを本にするようにと勧めたのだ。

しかしNewtonにはまだ未解決の問題があって、すぐには執筆しなかった。しかしどうにも問題が解決しないので、やむなくその問題に関しては未完成のまま執筆したわけである。

その問題とは月の軌道計算問題である。月の軌道が正確に予想できれば潮の満ち引きだけでなく、航海上の経度を知る上でも役立つはずだった。

しかしそれは頓挫した。月の運行には地球だけでなく太陽の重力も関係しているため、太陽と彗星、太陽と惑星というような二つの質点の問題ではなく、太陽と月と地球の3つの質点の問題となるため、所謂3体問題で後にPoincareが示したように特別な場合を除いては解析的には解けないからである。

さて話はどんどんベクトル解析から遠ざかる傾向にあるが、元に戻ろう。

Newtonは当時の一般の知識人よりも一歩先を行っていたのは確かであるが、それをそのまま本に書いても認めてもらえそうもないので、当時の知識人が受け入れられるようにユークリッド幾何学による証明とラテン語による記述という方法を用いた。

これは成功し、すぐにヨーロッパ全土に本が行き渡った。ラテン語で書かれていたのが幸いしたのだろう。当時は学識者はみんなラテン語ができたので。

かのWeberをGöttingenに招聘して一緒に電磁気や重力の統一理論を模索していたGaussも若い頃にNewtonのprincipiaを読んで力学を学んだらしいから、Weberと意気投合したのは当然であり、その影響力の広がりは予想外に広範囲に及んだのは確かである。

Newtonは質点の運動軌跡をユークリッド平面上の曲線としてそれを解析するために自分数学(微分と積分)を展開することになる。

実際のところNewtonはユークリッド平面とそれに直交する時間軸を頭の中で考えていたのではないかという節もあるが、それは考え過ぎかもしれない。

しかしユークリッド平面に直交する時間軸を考えるととたんに近代的な力学がそこに見えてくる。

Einsteinが大学で数学を学んだ時の教授がMinkowskiで彼は3次元実数空間と直交する時間軸を加えたMinkowski空間を提唱していた。時間軸は空間と直交しなければならないので、実数ではなく純虚数としている点でMinkowski空間は実4次元空間とは異なる。それと時間軸の座標を時間tで光が進む距離(ct)としている。

ということでNewtonはそれに先だって二次元実平面空間とそれに直交する時間軸を3次元Minkowski空間として考えていたと仮定して議論を続けることにしよう。

まあ、これはあれだ、近代の力学の入門書はすべからくNewtonがもしベクトル解析でprincipiaを書いたらこうなるという風に書かれているのと一緒である。

(2015/10/1)
ううむ、4元時空間でベクトル解析と電磁気学を再構成するというアイデアは良かったのだが、その道のりは予想外に険しいもので、古典的な構成法すら理解していない者にとっては困難というべきもので、時期尚早すぎた感がある。

なのでこのテーマは一旦保留して古典理解の道に戻るとしよう。

もちろん聡明な読者の中には、それが十分可能な方もおられると思うのでそれを妨げるものでは決してない。
むしろ、古典的な構成法の理解だけに満足せずに、更に広い視点から再構成する試みは力試しになるし、それがより簡潔な構成法となれば誰もが評価する仕事であることは言うまでもない。
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題名 投稿者 日時
   自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-2-3 12:47
     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-16 10:45
       Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-17 9:57
         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-15 21:41
           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-21 10:25
             Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-26 21:43
               Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-29 20:10
                 Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-5 5:33
                   Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-12 18:15
                   » Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-20 9:56
                   Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-11-15 11:47
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-12-19 21:03
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-4 22:15
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-10 22:07
                       Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-16 17:45
                         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-4-6 12:47
                           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-7-26 20:20

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