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webadm | 投稿日時: 2017-9-20 12:33 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3068 |
Re: ピアノ教本 ふう、早いものでピアノが家にやってきてから1年が経ちました。
前回は「大人のための独習バイエル(下)」のステップ3に入ったところまで書いたよね。 ピアノと毎日向かい合う日々が一年に及ぶと、以前書いた通り、自分を映す鏡的な存在のピアノは、ますます自分の内面を鮮明に映しだすのでした。 ピアノが好きになると毎日もっとピアノを弾いていたいと思うのですが、そうすると朝の練習で出勤時間を逸してしまうことになります。 そこでピアノは自分の内面を映し出すと同時にこちらに語り掛けてきます。 ピアノ:「もう出かけないとよ」 自分:「ううん、このまま弾いていたい」 ピアノ:「だめ、職場で首になっちゃうでしょう、そしたら収入がなくなるよ」 自分:「そうだね、収入が無くなったらここに住んでいることもできなくなるね」 ピアノ:「だからもう練習は切り上げて、出かけないさい。毎日の練習は30分でいいから」 自分:「うん、そうする」 アルバイトの仕事を2つ掛け持ちしていて、そのひとつは宿題があります。クライアントからの相談に対して解決の提案を考える必要があります。それはとても面倒なので、現実逃避で帰宅するとピアノに向かって眠くなるまで練習してしまいます。ピアノはそうした自分の内面を映し出して訴えてきます。 ピアノ:「今日は宿題があったでしょう」 自分:「うん、知ってる」 ピアノ:「練習とかやってる状況でないでしょう」 自分:「だって宿題面倒だし、できればやりたくないし」 ピアノ:「自分で引き受けたんじゃないの?だったらそれ優先じゃない?」 自分:「うん、そうんだけど」 ピアノ:「練習時間は短くしてもいいから、宿題を優先して」 自分:「うん、そうする」 ピアノ:「短期間には上達しないけど、丁寧な演奏を短時間でも毎日積み重ねれば着実に上達するから」 自分:「うん、わかった」 ピアノに真摯に向かいあうと、人間としてどう正しく生きるべきかというのが映し出されてきます。不思議です。 そういう意味でピアノを練習すべき理由のひとつと言えます。 仕事を優先することで毎日の練習時間は増やすことはできないのですが、短い時間でも丁寧な演奏に心がけることで1年前と差がでてきました。 テンポはまだ遅いですが、ほとんど間違えずに通しで演奏ができるので、しばらくの間は録音していませんでした。ステップ2も時間のある土日とかは通しで弾いていますが、最近また録音して聞き直してみました。 1年前は、丁寧に弾いているつもりなのに録音を聞くとおよそ丁寧に弾いているとは聞こえないという問題がありましたが、一年後の今はまったくそれがありません。とても丁寧に弾いている感じがするのです。 1年かけてようやく、丁寧に弾いていると感じさせる演奏を手に入れることができました。 話は変わって、デジタルピアノではヘッドフォンで音を聞くのですが、1年前は、どうも自分で演奏している音に聞こえないという問題がありました。 でもそれもちょっとの工夫で、自分で弾いた音に聞こえるようになりました。 それはヘッドフォンを少し耳の中心から顔の前面に移動させることです。 それによって音が自分の前方から聞こえてくることになり、違和感がなくなります。 今まではヘッドホンで耳を完全に塞ぐ形だったので、音が自分の頭の中心で鳴っているように聞こえ、はなはだ違和感があったのでした。 ヘッドフォンでなくデジタルピアノ内蔵のスピーカーとかを鳴らせば前方から自然に聞こえるのですが、夜中はそれは無理。なので、ヘッドフォンをわずかに顔の前面に移動することで同じ目的を果たすことができるということに。 譜読みが終わった段階で最初から間違いなく弾けるようになったのは、譜読みをライマー=ギーセキング流に変えたのが効いた気がします。 丁寧に弾いているように聞こえるようになったのは、1年間の練習の蓄積によるとしか言いようがありません。 また毎日の練習の始めに以前に紹介した「Pianoprima Exercises」のLevel 0 と 1をやっていたのが効いたのかも。 以前に紹介した「ピアニストへの基礎」田村安佐子 著の言葉を再び引用します。 引用: はじめは無益に思えるかもしれませんが、何ヶ月か練習を続けていると基礎が出来てきて、あとで非常に役に立ちます。 「Pianoprima Exercises」はLevel 0, 1が易しく弾けるようになったので、今はLevel 2も加えるようにしています。Level2ではちょうどバイエルでもちらほら出てきた半音階(chromatic)スケールが出てきます。半音階スケールは3本の指だけで弾くやつね。456を使って白鍵と黒鍵が作る谷間を這うように弾いていくものと、123を使って白鍵と黒鍵の作る裾野を素早く疾走しながら弾いていくものの2タイプがあります。前者は最初弾けそうもない気がして諦めかけたけど、ゆっくり間違えずに練習していたら目をつぶっても弾けるようになりました。指が太い人は黒鍵と黒鍵の間に指が挟まってしまわないようにポジションに工夫が必要かも。 さて、「大人のための独習バイエル(下)」ステップ3も仕上がりが近づいてきたので、感想を書いておきます。 74番 G-dur Moderato 通称「三連符」と呼ばれるぽい。3連符自身はそれ以前にも出てきているけどね。ずっと最初から最後まで左手か右手どちらかで続くというのは最初かも。 見開き2ページの譜面。長いようですが、テンポが速いので演奏時間は1分で今まで登場した曲の中では長い方ですが、最長ではありません。 下巻からは八分音符が導入されたので、四分音符だけの上巻と比べて音符数が格段に増えていますのであなどれないです。 典型的なホモフォニーな曲で易しそうに見えますが、7小節14小節の間はバスとメロディーの声部交換が頻繁に繰り返されるようになります。 なので常に頭の中で次の音型を記憶から呼び覚まして切り替えに備える必要があります。漫然と指の記憶だけで弾いていたのではそこで間違えてしまいます。それは大事故になります。 後半の16小節からは前半には出てこなかった同音連打が登場しこれも予め備えておかないと間違えてしまいます。 そして最後のカデンツ(Cadence)はpでしかも3つの3和音で突然終わるので、それまでに予め十分ディミニエンドしておく必要があります。 とにかくこれからはピアノというのは漫然と体で覚える方法ではなく、頭で覚えて頭で弾くようにしないと、一生弾きとおせないということをこの段階で肝に銘じる必要があります。 和声進行は、イントロがG-C-G、以降はそれにG-F6-GもしくはG-Asus4-Gが加わります。バイエルはsuspensionを使うのが得意な模様。 Youtubeの模範演奏ビデオは何を紹介しようかと迷うところですが、やはしこれにしました。 出だしから三連符とdolce感が滑らかで羨ましい、これは名演が聴けるかと誰もが期待するところ、でも当人は本番に慣れていないのか、演奏開始を逸るところとか指が緊張しているのも観てとれます、やはり先に挙げた転換点で最初の事故が起き、その後も同様の事故が続き最後まで止まらずに弾けたのが不幸中の幸い。練習ではちゃんと弾けていたのかもしれませんが、たぶん練習でも同じミスが解決できずに本番に臨んだのかも。2曲目の難しい対位法の曲を大きな事故なく弾き通せるぐらいなので、かなり上手なんだと思います。三連符の滑らかさは他の同年代や大人の先生の演奏にもないこの子だけの魅力です。同じ74番でも再生回数が4桁と桁違いに多いのがうなづけます。 もうひとつ模範というかプロが弾いたらこうなる例で、初心者は安易に模倣しないようにという演奏は以前にも紹介した北米の大学模範演奏ビデオ。 三連符の滑らかさでは先の子に負けず劣らず、メロディーパートは声部交換しても明確に聞こえるようにバスパートは常に控えめにコントロールされている点に注目。当然ノーミスでプロならではの安易に真似のできないアゴーギクを駆使した演奏になっています。 75番 D-dur Moderato 通称 Ice Dancing と呼ばれているぽい(海外)。 これは少しゆっくりした対位法的な古典舞曲。 右手も左手もそれぞれ独立した旋律と音型をもっているので、右手も左手も互いに互角。どちらか控えめだと不自然に聞こえます。 和声進行は出だしの7小節まではDと単調、残りの繰り返しの2部はG-Dの繰り返しでメリハリがついて、ちょっと音型の違うコーダ付き。 演奏時間は45秒と短いですが、デュナミークと調号に気を付けて控えめに抑えるべきところは抑え、引き立てるところは引き立て、黒鍵を弾く部分は間違えて白鍵を弾かないようにしないとね。 和声進行は、前半が D-D7-D, 後半は D-G-D という感じ バイエルはこの曲を連弾曲としては作曲していないのですが、Youtubeを見ると素敵な連弾曲演奏がいくつも投稿されています。 連弾アレンジの出典は、"Faber Piano Adventure"ピアノ教本シーリーズの中で3連符が登場するLevel3A Lesson Book p46だそうです。 Faber Piano Adventureシリーズは演奏教本、音楽理論、模範演奏CDと網羅された教材体系でカラー印刷で面白そう。買ってみようかな。 下はピアノの先生が先の教本の Ice Dancingのページを譜面台に開いた状態で模範演奏と演奏上の注意点を説いている動画。 連弾時の伴奏部分は右のページの下の方に記載されているぽい。 詳しく知るには買うしかないね。 76番 G-dur Allegro moderato 最初に譜読みしたときに驚いたのが、後半に良く知っているクリスマスの讃美歌、通称「きよしこのよる」のモティーフが出てくる点。 もともと讃美歌「きよしこのよる」の原曲(Stille Nacht, heilige Nacht!)はドイツで1818年に初演されているので、バイエルもこどの頃から良く知っているし、学生時代は合唱部にも属していたのでクリスマスの時期には歌っていたはず。 なのでこれはクリスマス用の曲なのかも。 この曲はバスパートの拍頭がほとんど休符だというのと、メロディーパートは微妙にシンコペーションしていて、オフビートで鳴らす部分が出てくる点が慣れるまで大変。 和声進行は、イントロがG-Gsus4-G, 後半はG-C-G, G-Gsus4-Gという感じ。 Youtubeでの模範演奏というか名演はこれしかないかも。 77番 C-dur Moderato 久々にハ長調の曲。 最初ホモフォニーな感じで始まるけど、実はホモフォニーと対位法の混成曲。 指のポジションコントロールをちゃんとしないと事故が多発。 ポジションは体で覚えるしかないね。目視確認しなくても間違わずに弾けるようになるのが理想。 和声進行は、最初と最後が C-G-C-F-C, 中間部がC-G-C。 国内では地方のコンクールの課題曲に選ばれたときもあるのね。 ステージで落ち着いてよく演奏できていると思います。 プロが演奏するともっと違う曲の様に聞こえてきます。 この演奏は多いに模倣したい(やれるもんなら)。 78番 G-dur Allegretto これは安心なホモフォニーな曲と思いきや、中間部で初めて保持音(Orgelpunkt:オルゲルプンクト)が登場。 オルゲルプンクトはバロック時代のオルガン曲やフーガなどのコーダ部分とかで対位法的なバスパートとして定番のもの。やはり基本中の基本として登場。 今までアルベルティバスに慣れていたので逆にバス音を抑えたままで中間声部を同時に弾くというのは慣れないとむつかしい。 それ以外にも運指パターンが身につくまで苦労させられる部分もある。右手と左手ともに最後の2泊が休符になるところがあるので、右手と左手とでタイミングを合わせないと不自然になってしまいます。 模範演奏は、埼玉純真短期大学のこのビデオが参考になります。 この動画の解説では、中間部で二長調(D-dur)に転調していると書かれています。バイエルは特別調号を記載していないので気づかないですが、言われてみれば確かにそうだとわかります。中間部ではC#が表れないので、調号としてはG-durと一緒とということでバイエルは省略したのでしょう。 幼稚園の先生とかになるにはピアノ必修だし日本ではバイエルが必修。なので今も需要があるのね。 79番 A-dur Comodo 初めてのイ長調な古典舞曲形式の曲。 対位法的にバスとメロディーが小節毎に声部交換するのもバイエルが良く使う作法。 デュナミーク的にはpで始まり、フレーズのピークでフォルテ、最後はクレッシェンドで終わる今までにないパターン。 なので解釈によっては全然違った曲になる可能性あり。 模範演奏としてはこれだというのは無いけど、その中でも一番好きなものを挙げればこれになります。 投稿主は年齢とともに演奏者が成長していく様子を記録しているようです。どことなく幼少の頃からじゃじゃ馬的な個性的な演奏をしていた Yuja Wang とどことなく似ています。 80番 D-dur Allegretto 再び二長調の古典舞曲形式。第一部と第二部が繰り返しありなのも初登場。繰り返しを省略しないと演奏時間は56秒と長い部類に入ります。 この曲はメロディーパートの拍頭が八分休符で始まるり最初の音がオフビートという小節が多いのが難儀。バスは拍をきっちり刻んでいくので、タイミングを正確に保つのに慣れが必要。 中間部では前打音と手の交差が登場。 バイエルの初版本では前打音記号の意味として, vorschlag と appoggiatura と注記してこの曲での演奏の仕方が演奏譜と対比させて解説されている。 vorschlagはドイツ語でappoggiaturaはイタリア語の違いだけではなく、後者は声楽由来の用語で今日では長前打音もしくは倚音と意味的にも演奏法的にも異なる。日本では前打音でひとくくりだけど、訳書とかではそうした違いがあるので原語がそのまま使われていることが多い。外国語も良く知っておく必要がある。 第一部は二長調、中間の第二部がへ長調に転調し、第三部で第一部が再現。 和声進行は、第一部と第三部は D-Dsus4/Gsus2-D, 第二部が G-C-Gsus4-G。 バイエルはsuspensionを使うのが好きみたい。 模範的な演奏はいろいろありますが、逆に個性的な演奏というのが見当たらない。なので無難な埼玉純真短期大学のビデオを挙げます。 81番 A-dur Allegretto アウフタクトの典型的な古典舞曲形式。 80番みたいなオフビートから始まるような音型はないものの、メロディーパートのフレーズの開始が必ずしも拍頭でないというのが難点。 それと跳躍を伴うパッセージがバスとメロディー共に現れるので注意。 まあ、アウフタクトなのでフレーズは最初から拍頭から始まっていないので当然なんだけど。 第一部と再現部(第三部)がイ長調、中間の第二部が二長調。 和声進行は、第一部と第三部がA-Asus4-A, 第二部が D-Gm-Dsus4-D-Dsus4-D、 個性的な模範演奏としてはやはりこれ。 同音連打部分がかなり特徴的に響きます。森に住むキツツキが木をつつく音なのかな。 82番 E-dur Allegretto 初めて登場するホ長調のアウフタクトで始まる古典舞曲形式。 一部と二部が繰り返しあり。中間の二部はイ長調に転調。再現部の第三部で再びホ長調に戻る。 調号に#が3つもついているので、白鍵と黒鍵を弾き間違えないようにする点が注意。 アウフタクトなのでメロディーパートのフレーズが必ずしも拍頭から始まらないのも注意。 最後の長いコーダを弾き切るには練習あるのみ。 コード進行は、E-Esus4-E, A-Asus4-A, E-Esus4-E。 個性的な模範演奏で初心者は真似しちゃいけない演奏はこちら。 アゴーギクを多用しているので初心者は真似しちゃだめだよ。それ以外の解釈に関しては参考になるところ多し。 83番 C-dur Allegretto ハ長調の対位法的な器楽曲。 フレーズ開始音の指のポジショニングを間違えると大事故。 基本は両手でのスケールのチェイニングなので滑らかにつながるように弾くのがポイント。 最後に長いコーダ部分はスケールの並進行で始まって反進行で劇的に終わる。 コード進行はスケールなので単純に、C-G-C。 この曲の演奏のアップロードは意外にも少ない。模範的な演奏はこちら。 84番 C-dur Allegretto ハ長調で8分の6拍子の器楽曲。 4声部のように見えるけど、右手は左手のオクターブ違いの同一音型のため、二声部のユニゾンである。 左手と右手で同じ音型が半小節シフトしているだけなので、片方だけ覚えれば両手覚えたのも同然。 前半と後半とでは三連符が上昇するか下降するかの違いだけで、コード進行は同じ。 なので前半を覚えれば、後半のポジショニングは前半と同じでよく、3連符を上昇から下降に変えるだけ。 ポジショニングを覚えて、あとは早いテンポで間違えずに弾くだけ。 最後のカデンツにフェルマータがついています。鍵盤から指を話さないで耳を澄ますと、低音の唸りのピークが遅れてやってくるのがわかると思います。バイエルはその低音の唸りの響きを意図的に利用するためにフェルマータ指示をつけているのね。 現代のピアノは平均律で調律されているので、唸りが生じない音程差はオクターブだけで、それ以外の音程差では必ず唸りが生じます。 短時間では気にならない程度に唸りの度合いは平均化されていますが、低音になるほど唸りの周波数が低くなるので、音を長く保つと唸りも地響きみたいな感じになります。 特に注意しないといけないのは、ペダルでダンパーを完全に外すと低音弦の唸りが最大化されるので、悪い響きの代表例になってしまいます。なのでハーフペダルというテクニックで弦の振幅の大きい低音弦側は少しダンパー制動が効く感じにするのが普通みたい。 Youtubeにはこの曲が多数アップロードされていますが、大抵はアマチュアの練習記録みたいなもので、この演奏のようにインテンポで曲想がきれいに出ているものは限られます。 85番 F-dur Allegretto 初登場のへ長調四分の二拍子の短い器楽曲。演奏時間は21秒。 典型的なホモフォニーな曲ですが、途中で左右の声部交換があり短い演奏時間ながら最初から最後まで集中力が必要な曲。 まあ声部交換は車の運転で、交差点をノンストップで左折したり右折したりするのと似ていて細心の注意が必要です。 この曲の第二小節の後半にバス側に5thを抜いた7thコードが出てきます。 ここがとても良い響きがするので好きな曲です。 後半にも他の調からの借用コードが出てきて、また違った緊張と解決が味わえます。 黒鍵を弾くのはB♭だけなので運指がややこしくないのが良いところ。 解釈によってはフレーズはかなり長くなるのでスピードの出しすぎに注意。 海外でいろんな曲の模範演奏をアップロードしている大人のピアノの先生と、この子の演奏に違いが見いだせなかったので、こちらを模範として挙げます。 個性的な演奏は唯一こちら。常にメロディーが右手から左手に移っても明瞭に聞こえる抜群のコントロールです。 P.S バイエルの初版本を見たら、この曲の後半からはmarcatoの指示が書かれており、前半のdolceとは違ってlegartoよりも幾分 staccat 寄りに歯切れよく弾くのが作曲者の元来の意図ぽい。そういう意味では上の演奏はオリジナルの意図通りということに。「大人のための独習バイエル」の編者は、バイエル初版本ではなく後生の校訂版をベースにしたと思われる。 ステップ3の課題曲:F-dur Tempo di Valse 「すみれ」ストリーボックスより これは「大人のための独習バイエル(下)」のステップ3終了判定課題曲。 Youtubeで検索したら、この段階の生徒の発表会用の曲として国内では良く演奏されるみたいだね。 確かに使用するテクニックがバイエルのステップ3で出てくるのと一緒。 7thコードが出てくるのも一緒なので、響きを大切に。 へ長調で四分の三拍子のワルツ。 原曲はダカーポ付きの3部形式で、まったく異なる落ち着いたモティーフの第三部を経て第一部に戻って終わる長い演奏時間の曲ですが、「大人のための独習バイエル」の著者は第三部とダカーポを省いて短いながら不自然ではない曲に編曲しています。 コード進行は単純で、F-C-F, C-G-C, F-C7-F 編曲された「すみれ」の模範演奏はこちら。 ピアノ教師による原曲の模範演奏はこちら。 ストリーボックスは作曲者のペンネームのひとつで、原作者はそれ以外のペンネームを使って1000曲以上も作曲したらしい。チェルニーに匹敵する規模かも。バイエルと同時代にはすでにロマン派の黎明期で芸術的に高い短い演奏時間のエチュードを作曲するのが一大ブームで、リスト、ショパン、その他の作曲家が超絶技巧を駆使した難易度の高い曲を残していましたが、基礎段階の練習曲や発表曲は皆無でしたので、バイエルやブルクミュラー、ストリーボックスが脚光を浴びることに。それまで数多くの練習曲を必要に応じて出版してきたチェルニーもリストから献呈された最初の練習曲集(超絶技巧練習曲集)で触発されたのか、ショパンがリストに献呈したような難易度の高い練習曲を遅ればせながら残しています(所謂チェルニー50番練習曲集)。演奏会ではチェルニーのそうした超絶難易度の練習曲は演奏されないと思っていましたが、北米を演奏して回ったピアニストが居たそうです。 「すみれ」を検索したら違うのがひっかかった。 これはなんだとチェルニー50番で更に調べたら、コンサートで弾いて回ったピアニストが昔いたことが判明。 Irina Smorodinova は戦後になって遅ればせながら北米デビューしたピアニストで、それもそのはず、かの Emil Gilels の高弟の一人だから。 Emil Gilels の wikipedia のページにはピアノの前に座る Emil Gilels とそのピアノを取り囲む弟子達の写真の中に紅一点の彼女の姿が確認できます。 検索すると当時のコンサートレビュー記事とかが見つかり、どうやら批評家からは評価されなかったみたい。それもそのはず、コンサートプログラムのほとんどがチェルニー50番から25曲とか、聴衆がチェルニーのテンポの速い練習曲で疲れきった頃にやっと最後にラフマニノフの前奏曲 op.23 を演奏したとあります。北米での別のコンサートでは、チェルニー50番の残りの25曲と、最後にリストの編曲によるラベルのスペイン狂詩曲で締めくくったとあります。ソビエト時代にレコードも出していてやはり内容はチェルニー50番練習曲集でした。 チェルニーの50番が上手に弾けるなら、同時代の名曲や超絶難易度の曲はわけなく弾けるはずなのに、そうしてこなかったのでしょうか?チェルニーだけ練習していたのでしょうか。 チェルニー50番がらみで検索していたら、現代のピアニストがチェルニーの前で彼の練習曲を見事に弾き切ってみせたらどうなるかというのを、チェルニーに似た俳優さんを使って見事に演じ(演奏)したDVDを出している現代のピアニストがいました。 俳優さんチェルニーに良くにてますね。この生徒は只者ではないが、ほめていいのかちゃかしていいのか対応に悩んでいる様子が良く出ています。 チェルニーは生涯独身で、たくさんの飼い猫と一緒に暮らしていたみたい。 さて、仕上がりが一段落したらステップ4に進みたいところ。 んじゃまた。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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ピアノ教本 | webadm | 2016-9-19 5:59 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-10-23 22:12 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-10-30 8:03 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-11-4 6:55 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-11-13 11:39 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-12-5 2:35 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-12-11 23:58 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-12-24 1:25 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2016-12-25 22:23 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-1-3 4:45 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-1-22 3:37 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-1-30 9:19 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-2-6 5:06 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-2-12 4:19 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-2-19 0:49 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-3-21 3:37 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-4-17 21:54 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-5-8 0:06 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-5-28 21:31 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-7-2 21:55 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-8-13 11:11 |
» Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-9-20 12:33 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2017-12-2 22:07 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-1-12 11:12 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-1-29 5:48 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-5-5 2:28 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-9-9 20:31 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-9-30 22:06 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-10-7 14:58 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2018-12-23 22:37 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-2-20 10:29 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-4-14 23:51 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-4-21 7:29 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-4-29 12:39 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-5-4 5:01 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-5-4 23:11 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-5-16 12:44 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-5-26 19:33 |
Re: ピアノ教本 | webadm | 2019-7-5 10:32 |
バイエル卒業(´∀` ) | webadm | 2019-8-5 0:50 |
Introducing Pianoprima EXERCISES | webadm | 2020-8-11 6:27 |