最近テレビとか報道で海外先物取引で巨額の利益を得ながら所得申告してなかった人が出ていた。

数億の利益を得たらしいけどその裏では総額数億の損をした人たちが居るのは確か。先物とはそういうものだ。

半導体部品とかも供給量が多く需要が多いものは農作物と同様に先物取引の様相を帯びてくる。

かつてはDRAM。半導体の米とか称されていた頃も、今もたぶんそうだろう。

知り合いにかつてDRAMの取引で巨額の利益を会社にもたらし、また末期には多額の損失をもたらした人が居た。当時はDRAMの需要が切迫し、メーカーはもちろん仲介ブローカーや秋葉原のショップとかもDRAMの先行発注を競っていた。当然買値は上がる一方、他方DRAMメーカーは日夜努力を重ね歩留まりを上げ価格は下がる傾向に。これに目を付けた人は少なくないだろう。先に高値で買い注文を受けておいて、後でDRAMメーカーから安く仕入れる。差益は取引量が多ければ多い程大きい。どんどんエスカレートする。仕入れ値を下げるために余分に買う必要も出てくる。しかし相場が急速に下がっているのでたちまち仕入れ値ですら売れなくなる。そのまま不良在庫。

DigiKeyとかでは日本の半導体メーカーの製品は扱っていない。おそらくそのほとんどが日本固有の特約店制度によるものだろう。メーカーは直接需要家に販売することをしないで特約を結んだ代理店を通して販売する。特約店はそれぞれテリトリーが決まっていて特約店同士が競合することはめったにない仕組み。価格も安定しメーカーおよび代理店とも利益を共有できる。反面少数需用家は相手にされないので二次代理店（特約店からまとめがいして在庫し小売りする）や三次代理店から買うことができるかどうか。ほとんどは利益を上乗せするのでべらぼうな価格になって商売にはならない。

先のDRAM先物に手を染めた恩人は、その後多額の損失を出したために天下りした先の企業を追われ、個人経営の会社を立ち上げた。その後その事務所で首つり自殺していたことが判明。

いろいろ聞くと日本全国に販売網のある有名な酒蔵の次男だったらしい。小さい頃からセレブとして育てられていたらしく、毎日フランス料理に舌鼓を打っていたらしい。大きな酒蔵はそうなのかもしれない。反面、窮地には精神的な弱さを露見することもあり、DRAMで損失を重ねていた晩年はかなり体調を崩していたようだ。

大手通信企業時代は研究所で年間数億の研究予算を獲得していたので或意味中小企業レベルの経営者的な存在であった。毎年年明けには研究所の関係者を呼んで盛大な鏡割りパーティを開いていたらしい。或程度の年齢になると上の役職に進めない人は関連企業に天下りするしかない。そうして彼は研究所を後にして新興の子会社に天下りした。

研究所時代には仕事を頂いたりしてかなり勉強をさせてもらったものの、同じテーマーに参画している松下通信のような大手メーカーはそうした研究所の仕事は新入社員のプロービンググラウンド的にしかとらえていなくて、こちらがちゃんと量産設計に対応したものを出しても松下通信からは実験試作用のプロトタイプでボロボロのものしか出てこなくてがっかりしたことがある。もっと早く気づけはよかったが、松下とかは研究所の仕事を新人の研修テーマーぐらいにしかとらえていなかったようだ。それにしては莫大な予算をぶんどっていたような気がする。

とうぜんそんな酷い状態のプロジェクトは成功するはずもなく論文だけを残して消滅していった。研究者もそれぞれ関連子会社へと転籍していった。みんなが金ずるとしてしか利用していなかったのだ。日本の悪い体質が今もどっかで残っているに違いない。

お金は沢山かせいだかもしれないがチャレンジに満ちたことは何一つできなかった時代だった。ほとんどは半導体ICを入手すれば出来てしまったし。頑張っていたのはそうした半導体を開発している人たちだけだった。

たぶん今も状況は変わらないだろう。トランジスターの魔法的な部分は今や半導体メーカーの開発者の中に閉じこめられてしまっている。我々はそうしてできあがった半導体を線でつなぐだけで済んでしまう。そうした空洞化の技術の時代でもある。

半導体メーカーは需用のあるテーマーに向いた新しい半導体を日夜開発し眠ることを知らない。こちらは寝ている間に夢のデバイスが出てくるので使い方をいかに早く習得するか安く買えるようにするかが関心点になってしまう。

なんともなさけない時代である。