フラット表示 | 前のトピック | 次のトピック |
投稿者 | スレッド |
---|---|
webadm | 投稿日時: 2007-4-30 14:28 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3068 |
HP8640Bのリストア予備調査 HP8640Bはサービスマニュアルもあるのでとりあえず具合の悪いレンジ切り替えのロータリスイッチ部分の状態を確認するために中を開けてみることにした。
まずは上板を外してみると、そこにはアルミダイキャストで出来た大きなモジュールがいくつか見えた。それらのモジュールの蓋にはそれぞれの分解の仕方が説明書きされている。さすがHPだ。 手順はサービスマニュアルに書いてある通り。 ・筐体の底板を取り外す。 中央に見えるのが発振回路の心臓部品であるキャビティーである。精密機械であると同時に内部に発振用トランジスタが組み込まれている大変デリケートな部品だ。扱う際には絶対にキャビティの中心軸を垂直に向けてはいけないらしい。中心軸には機械グリスが塗布されていてそれが内部に流れ込み発振用トランジスタにまで及んでしまうらしい。そしたらこの装置の終わりである。 すぐ側に問題のロータリスイッチ部分が見える。 この状態でロータリスイッチ部分に指が届くので本体の電源を入れて試しに接触具合を調べてみることにした。 レンジを512-1024MHzに設定するとカウンターの表示もおかしいし出力周波数も逓倍されない256-512MHzが出てきてしまう。その状態でロータリスイッチ部分の円盤を軽く指で押さえるとどっかでリレーが動く音がして最初の頃の様に逓倍した周波数がカウンターに表示されRF出力もカウンターで見る限り2倍が出ている。やっぱり接触不良だった。 指で押さえつけないとやはりどうにもならなくなってしまっている。なんとかならないかと円盤をいじっていたら事件が起きた。 レンジスイッチを切り替えてもカウンターが正しい周波数をまったく表示しなくなってしまったのである。どうしたことだ。さっきまでは問題なかったのに。 円盤部分を良く見ると接点部分の爪が3種類あるはずが2個しか残っていない。一個どっかに行ってしまったのか。もしかしたら円盤を少し浮かしたりした時に外れて落ちてしまったのかもしれない。そうこうするうちにすぐ下に小さな金属片が落ちているのが見つかった。 どうやらかろうじて今まで脱落せずに済んでいただけらしい。ここまで来ると以前にHP8640Bで検索した時に見つけた北米のアマチュア無線家のHP8640B修理記の内容とまったく同じ状態になってしまったことに気づいた。 EB5AGV's Hewlett Packard HP-8640B Page 幸いにして脱落した接点部分はまだ手元にあるだけましかもしれない。輸送中の振動とかでいつ脱落しても不思議ではなかったはずだ。 さてどうにか元に戻さないと。それにはスイッチ部分を取り外す必要がある。 一瞬どうやったら取り出せるのだろうかと思ったがサービスマニュアルの通りにやるしかない。 ・FM変調幅と発振周波数レンジのノブをどちらみ逆時計方向に回しきる ・2つのノブを外す(六角レンチでネジをゆるめればすぐはずれた) ・シャフトの付け根にあるナットを外す(ラジオペンチでつまんで回せば簡単に回った、何度か分解された形跡がある機体ではある) ・フラットケーブルを本体から引き抜く ・スイッチユニットを慎重に外へ傾けるように引き抜く 無事取り出せた。問題のレンジ選択のロータリスイッチ部分を良く見てみると確かに3つあるはずの爪が2つしか残っていない。 脱落した爪を良く拡大して観察してみると元々は円盤から出ている2つの樹脂の小さな突起部分が貫く形で取り付けられていたことがうかがわれる。その樹脂の突起が2つともロータリースイッチが回転するたびに接点の接触抵抗によって常に応力がかかり経年変化による硬化もあったのかクラックが入って破断したようだ。おそらく手元に来た時は片方の樹脂は破断していなくて片肺でつながっていた感じだったのかもしれない。それを無理矢理ゴニョゴニョとノブをよじったことによって残った一個の突起を破断させてしまったと思われる。 それでも私が円盤を浮かすようなことをするまでは円盤と基板との間に挟まれる形でかろうじて部分的に機能していたのだろう。 とりあえずこれを修理するには円盤に脱落した接点を瞬間接着剤とかでくっつけてしまうしかない。それにはスイッチユニットを分解しなければならない。これがやっかいだ。 よく見ると一度このユニットは分解を試みられたことがあったらしく、基板を束ねるネジがひとつ元通りに締め付けられていないところがあって、下を向けたとたんにそのネジが床へ抜け落ちた。 いずれこれは修理するとして、あと電解コンデンサがどれだけ使われているか見てみた。 上蓋を開けた際にすぐさま大きな電源平滑用の電解コンデンサの数々が姿を現した。見るからに製造時のままのようだ。最初基板に半田付けされているのかと思い、交換は容易でないなと諦めたが、裏側を見てそうではないことが判明。 見るとネジ止めタイプのものが逆さに基板側に取り付けられている。これなら簡単に外して同じ形状のものであれば交換が可能である。良くできている。よく見るとかなり余裕を見て設計されているようで長い年月で容量抜けしても十分な平滑能力が残るようになっているようだ。交換はしなくても良いかもしれない。後で念のため外して容量だけを測定してみることにしよう。 HP8640Bは設計された年代はR&SのSMLUよりも後だということは容易に想像できる。しかし作りからして筐体や主要なシールドボックスは専用のアルミダイキャスト製だしまるで高級乗用車の作りと一緒だ。新品で何百万もするだけの作りである。 それとプリント基板が今なら当たり前のRHoS対応かと思わせる全金メッキである。当時半田メッキが普通だったと思われるがあえて出来るだけ長い年月経っても性能が衰えないように配慮された上での贅沢な作りである。 また驚くのはアルミ電解コンデンサが使われているのは電源用の平滑コンデンサだけで、その他は一切使われていない。その代わりアルミ電解コンデンサよりも寿命が長いハーメチックシール型の湿式タンタルコンデンサが随所で使用されている。これも廉価だが寿命の短いアルミ電解コンデンサを避けて高価だが寿命の長い湿式タンタルコンデンサを選択したと思われる。当時の湿式タンタルコンデンサはケースに銀が使われるなど大変高価なものがあった。これはどうだろうか、現在の湿式タンタルコンデンサはケースもタンタルになっているため値段は昔よりも安いが電解コンデンサよりも高いのは同じ。 ということで交換するとなると電源の大容量ブロックコンデンサをということになる。さすがこの頃のHPは高級志向だったのがうなずける。 P.S 更にレンジ選択ロータリスイッチ接点部分を拡大して観察したら驚愕の真実が明らかに。 残っている2つの爪のもう一つが既に根本の樹脂の突起が破断して接点が浮いているのが見える。もういつ脱落しても不思議ではない状態だ。これがカウンターが正常に切り替わらなくなった原因である。残りの1つは発振周波数レンジの選択でこれは機能している。 |
フラット表示 | 前のトピック | 次のトピック |
投稿するにはまず登録を | |