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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2009-9-18 20:23
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
【57】Fourier変換公式の導出
次ぎの問題は、理論のときにすでにやってしまったFourier級数の指数形式の式からFourier変換公式を導けというもの。

"Fourier変換と波形解析"のスレッドですでに古典的なRiemann積分の考え方に基づいてFourier級数の指数形式からFourier変換の公式を導出している。手短に導出するだけならそれで十分であるが適用範囲が厳密ではない。

今日的に厳密にFourier変換の式を裏付けるには、Lebesgue積分の考え方にもとづいてRiemann積分では扱えない広範囲なケースに関してもFourier変換が成り立つことを示す必要がある。

先のスレッドでも書いたが、Lebesgue積分を導入するには、沢山の数学的な準備が必要である。ほとんどそのお膳立てにページを割くことになり、結論的には同じ結果(Riemann積分可能ならLebesgue積分可能)を得るわけである。ただしRiemann積分可能な関数のFourier変換は必ずしもLebesgue積分可能な関数とはならないためRiemann積分でお茶を濁すしかなかった。また通常良く利用される離散Fourier変換ではこうした問題は無関係なため目をつぶっても構わない。

おそらく1966年にスエーデンの数学者Lennart Carlesonが証明する前に執筆されたFourier解析の書物はどれもこうした考え方に基づいていると思われる。すでに数学的な準備をし終えた人ならまだしも、古典的な数学の基礎とRiemann積分を理解した程度の初学者にはつらいものがある。Lebesgue積分では集合論や論理学の前提知識を要求されるのだから教える側も避けたいところだ。

といっても気になるので、Lebesgue積分の考えかたで検証してみよう。

とは言え実のところLebesgue積分の考え方でFourier変換を再構成している本はめったにお目にかからない。Lebesgue積分自体が説明がやっかいであるうえ、Riemann積分なら一行で説明できるところがLebesgue積分だと小冊子分かかってしまうからである。

もともとLebesgueが彼独特の積分の考え方を生み出したのも実のところFourier解析上の諸問題に関する真摯な取り組みからである。

従ってLebesgue積分を知るには彼の学位論文に立ち戻るのが最も早道からもしれない。後生の数学者の要約ではあまりに数学的な応用を意図するあまり元来の意図がまったく見えなくなってしまっている。そうした意味では数学が急速に発展していった19世紀にはまだLebesgueは登場しなかったので、ほとんどが古典的な求積法に基づく積分の考え方で凝り固まっている。しかし新しい積分の考え方でそれらを再構成するにはあまりにも影響範囲が広すぎるので、20世紀に入ってもそのまま再構成されることなく教えられている。

ちなみに学生の時にLebesgue積分を教わった記憶が無い。恥ずかしながら長い間Lbesgueを一般的な読み方とは違った読み方をしていたのは内緒だ。手元の共立出版の数学公式集にもLebesgue積分はおろか群論や論理学などの抽象数学にかんしては一切記載されていない。たぶんに初等数学もしくは古典的解析の範囲しか扱っていない。おそらく現在の学校のカリキュラムはゆとり化で更に範囲が狭まって内容も薄まっているに違いない。もしかして大学に入っても分数を知らない子もいるかもしれない。なにせ数学が試験科目に無いところもあるし。

個人的に興味のあるデジタル信号処理に限らず、最新の科学技術をキャッチアップするにはLebesgue積分の考え方を身につける必要がある。

このままいくと将来日本はハワイやニュージーランドと同じ様に観光地として生き残っていくしかないのかもしれない。土地開発は止めて自然をなるべく残すようにすればそれで生き残っていけるかもしれない、ゼネコンやセメント会社は消滅するかもしれないけど。人工が4分の3に減ればその分CO2排出量も減って25%削減は達成できるだろうし。

話を元に戻そう。

昨日注文してあった「ルベーグ 積分:長さおよび面積」共立出版が届いた。



在庫があったのですぐに届けられた。新品である。共立出版の「現代数学の系譜」シリーズの3巻目にあたり、監修者のことばには「最近、数学がとみに時代の脚光を浴びるようになった。現代社会による数学の役割がいちじるしく拡大されてきたのである。...」

いったい何時の話だろう、と思ったら初版は40年前であり、手元にあるのは1996年に増刷されたものらしい。



はしがきにあるように、Lebesgueの学位論文の翻訳そのものである。これを受理されるまで紆余曲折があったらしい、その間にいくつもの編が追加されている。最初に書かれたのがLebesgue積分そのものである。



論文の序文を見るととても明瞭にその目的が述べられている。後生の数学者の要約ではすっかり省かれてしまっている部分である。ここを読み飛ばしてしまってはなんのことは着いていけないに違いない。

本文の方は、今日見られるLebesgue積分の概要よりももっと具体的な例をあげた説明がなされていてむしろわかり易い感じがする。

以前に別のスレッドで紹介した、Riemann論文集に、Riemann積分が登場する論文も掲載されている。もともとはRiemannがゲッチンゲン大学で教授資格試験のために用意した3つのテーマのうち2番目のものでFourier級数に関するものである。以下がその部分、



Fourier級数の収束の問題を扱うのに積分の定義と適用範囲を伝統的な暗黙の了解のままにしておけないためRiemannが初めて可積分の条件を定義したのである。もともとの論文の目的はそれではないのだが、歴史的に積分可能性の定義をしたのはRiemannが初めてということになった。ゲッチンゲン大学での試験講義ではこれは採択されずガウスのたっての希望で3番目のテーマについて講義することになった。この論文はそれでお蔵入りになるはずだったが、Riemannの没後にRiemann夫人の願いで論文集として日の目を見ることになったといういきさつがある。そうでもなければRiemann積分という言葉も歴史上あり得なかったかもしれない。

Riemann積分は可積分の条件を初めて与えただけで、目的はそれ以外にあったので、厳密で拡張性のあるものではなかった。依然として解析学の世界では古典的な求積法の暗黙の了解が支配的であることには変わりなかった。これが今日も微積分を習うと、ニュートン・ライプニッツ以来から受け継がれている積分の概念をたたき込まれる理由である。

Lebesgueの論文の序文にあるように、こうした問題をジョルダンも早くから指摘していた。しかしジョルダンはそれに代わる新しい積分の概念を提案することはしなかったので、Lebesgueがそれを引き継いだとも言える。Lebesgueは新しい積分を集合の測度(オリジナル仏語mesure、英語のmeasureと同じ意を日本語訳した数学用語、線分の長さを測る巻き尺のメジャーや液体の容積を量る計量カップのメジャーと同じ意味だと個人的には勝手に解釈している)という考えをベースに定義している。線分の長さや平面の面積、三次元の体積などを点集合として扱い、集合の測度を定義することによって線分の長さ、平面の面積、立体の体積にとどまらずn次元への拡張を可能とするものである。

やはりLebesgue積分を知る上ではこの論文は必読だろう。

以前に別のスレッドで紹介した高木貞治の「解析概論 改訂第三版」ではLebesgue積分が追加されている。



後生の数学者のLebesgue積分の扱い方はどれも共通して集合の測度に関する理論の説明に大半の紙面を割いている。これが難解な理由かもしれない。最初これを読んでいたら数日で激しく鬱に襲われたのは言うまでもない。近代物理学や量子物理とかでもLebesgue積分は必修で、頭を悩ませる人が絶えないかもしれない。いたるところでLebesgue積分がツールとして使用されるので、知らないとついていけないのだ。そうした物理数学の本でもLebesgue積分の理論は難しいから定理だけをさっと紹介しているに留まっている。実際に応用するにはやはり本質的な理解が必要だろう。測度とか集合記号が出てきたら前提としてLebesgue積分の理解が必要と思って間違いないだろう。

かなり脇道にそれた感が否めないが、本題に戻ろう。

題意としては既に理論のところで証明している周期関数のFourier級数の複素形式

y(t)=ΣAn*exp(jnωt)
An=(1/T)∫y(t)*exp(-jnωt)dt

を非周期関数のFourier変換及び逆変換

y(t)=(1/2π)∫F(ω)*exp(jωt)dω
F(ω)=∫y(t)*exp(-jωt)dt

に拡張せよというもの。

Riemann積分の考え方では、最初のAnの式をy(t)の式に代入して変数変換や区間変換を施すことによって最終的にRiemann和の形にすることでFourier逆変換の式が得られる。元のFourier係数に相当する積分から変化した式をFourier変換の式と置くと最終的な式が得られる。

これと同じ結果をLebesgue積分の考え方で得るにはまだ時間が必要である。これは個人的な宿題とするのと同時に読者の課題としよう(´∀` )

こういった問題を解くだけでも学位論文になりそうなテーマが他にもごろごろしてそうである。数学者は突っ込まれそうなところはなるべく隠す傾向があるので、そういったところをほじくりだして解くだけでも論文のネタは尽きない。それが世の中や後生に役立つかどうかは別として実力の証明にはなる。

なので当面は後続する問題のクリアに集中しよう。

後日この問題に関してなんらかの進展があれば、ここに追記するなり、返信の形で掲載することにする。
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題名 投稿者 日時
   Fourier変換と波形解析:演習問題 webadm 2009-8-7 11:06
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     【4】ノコギリ波のFourier級数展開 webadm 2009-8-13 8:34
     【5】対称波のFourier係数 webadm 2009-8-14 9:45
     【6】奇関数波のFourier係数 webadm 2009-8-14 10:46
     【7】偶関数波のFourier係数 webadm 2009-8-14 11:12
     【8】奇数次高調波のみの波形 webadm 2009-8-18 9:46
     【9】ノコギリ波のFourier級数展開(その2) webadm 2009-8-19 2:40
     【10】ノコギリ波のFourier級数展開(その3) webadm 2009-8-20 6:58
     【11】台形波のFourier級数展開 webadm 2009-8-20 8:03
     【12】ノコギリ波のFourier級数展開(その4) webadm 2009-8-21 10:15
     【13】ひずみ波の電流 webadm 2009-8-22 7:06
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