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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2009-10-2 10:25
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3082
【73】RC直列回路の伝達関数
しばらくの間Fourier変換に関する公式を解くような問題ばかりでうんざりした人もいるかもしれない。これから先の残りの問題はようやく工学問題に関するもの。

最初のものはRC直列回路の周波数領域での伝達関数を求めよといういきなり習ってもいない伝達関数が出てきた。

伝達関数は制御理論の中心的な概念だけれども長らくの間電気理論とは別の工学理論として発展してきた経緯がある。しかし真空管やトランジスタなどの能動素子を使った電子回路の時代に入ってやおら電気電子と制御理論の間に橋がかかって相互に理論がつながるようになったのはつい近代のことである。また電子回路による制御は連続時間系(いわゆるアナログ)であることは、それ以前の機構式や力学的な制御システムと変わりなかった。それが変わったのはデジタルコンピューターが登場してA/D変換器による連続時間信号を離散時間信号に変換して処理するデジタル信号理論が発展してからである。以降それに基づくデジタル制御やデジタル信号処理があっという間に今日全盛を極めるに至っている。

本書の著者がFourier変換にかなりページ数を多く割いているのも、こうした時代的な背景と著者の読者に対する思い入れがあるのは明らかである。およそ初学者にとっては、電気回路の古典的な理論を学ぶのだけでも大変なのに、教える側としては、それだけでは社会にでてはなはだ不十分であるということを察しているわけだ。

そういう意味ではデジタルコンピュータ登場以前に形作れ、延々と未だにのさばっている古い文部省の学習指導要領体系がすでに「終わっている」と言える。本来ならば早急に制御工学と電気電子回路理論を融合して知識体系として再構成するなどの努力が必要であろう。

話をもとにもどそう。

題意は以下のようなRC直列回路の周波数領域伝達関数を求めよというもの。



あらかじめ題意では上記回路のインパルス応答が以下のように与えられている

h(t)=(1/RC)*exp(-t/RC) (t>0)
=0 (t<0)

インパルス応答とは制御理論で入力信号としてデルタ関数を与えた場合の出力として現れる応答波形のことである。デルタ関数はFourier変換するとすべての周波数が一様に含まれているので、それを入力に与えた場合の出力信号をFourier変換すれば周波数領域の応答(伝達関数)を知ることができるというわけである。

従って、周波数領域での伝達関数を知るには、デルタ関数を入力として与えた場合の出力応答波形をFourier変換すればよいことになる。

従ってそのFourier変換は

H(ω)=∫h(t)*exp(-jωt)dt (t=-∞,+∞)
=∫(1/RC)*exp(-t/RC)*exp(-jωt)dt (t=0,+∞)
=(1/RC)∫exp(-(1/RC+jω)t)dt
=(1/RC)(-exp(-(1/RC+jω)∞)/(1/RC+jω)+exp(-(1/RC+jω)0)/(1/RC+jω))
=(1/RC)*exp(0)/(1/RC+jω)
=1/(1+jωRC)

ということになる。

これは入力周波数が高くなるにつれ出力低下していくローパスフィルターの特性そのものである。

RC=1として周波数と位相特性をプロットしてみると

wxplot2d([sqrt(1/(x^2+1)),-atan(x)], [x,-5,5])$



ということになる。こうした周波数と位相特性をプロットしたグラフを制御工学ではボーデ線図と呼ぶ。

伝達関数は出力関数を分子に入力関数を分母とする有理関数である。

その意義は、伝達関数に任意の入力関数式を乗じればそれに対する出力波形に対応する式になり、逆変換すれば時間領域の関数式が得られるという点で制御システムや電子回路の特性を予測するのに欠くことができない概念である。

電子回路や制御回路の設計ではもっぱら意図したような入力に対して意図した出力が得られるように伝達関数を設計もしくは解析できることが不可欠となる。数学的に設計は逆問題、解析は順問題である。学校や参考書では順問題のみを扱い、逆問題は読者の課題ということになる。

本格的な回路の周波数領域の伝達関数を解析するには後に学ぶことになるラプラス変換が使用される。かつてはヘビサイドの演算子法が担っていたが戦後ラプラス変換にすり替わってしまった。ヘビサイドが演算子法を考案した当時はまだ量子物理学は登場しておらずデルタ関数すらなかったが、その積分関数である単位ステップ関数を使って回路の過渡応答を解析する方法を確立した。現在もアナログ回路の時間領域での応答特性を観測するためにステップ入力を与える方法が依然として使われている。これはインパルス信号が理想的だが数学的に机上でしか扱うことができず実回路では実現し得ないことが理由である。机上での解析ではデルタ関数を使って解析が行われる。デルタ関数の変わりに周波数領域の応答特性を測定するための信号源としてスイープジェネレータがある。ただしこれは時間で周波数を変化させるので周波数領域の応答を調べるのには有用だが時間領域での応答を調べることはできない。
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