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webadm | 投稿日時: 2009-10-4 21:30 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
【76】既知のインパルス応答から方形パルス応答を求める 次ぎの問題は以下のように予め時間軸領域でのインパルス応答関数がわかっている回路に方形パルスを入力した場合に出力がどうなるか求めよというもの。
既知のインパルス時間軸応答関数は h(t)=h0*exp(-t/T) (t>0) =0 (t<0) 与える方形パルス関数は x(t)=A (|t|<T/2) =0 (|t|>T/2) これも著者の解とは違うやりかたで解いてみよう。 ストラテジーとしては予めわかっているインパルス時間軸応答関数をFourier変換し周波数伝達関数H(ω)を得る。次ぎに与えられた方形パルス関数を同様にFourier変換し入力周波数スペクトル関数X(ω)を得る。周波数伝達関数と入力周波数スペクトル関数の積H(ω)X(ω)を逆Fourier変換すれば方形パルス入力に対する時間軸応答関数y(t)が得られるはずである。 最初に周波数伝達関数を求めてみよう H(ω)=∫h(t)*exp(-jωt)dt (t=-∞,+∞) =∫h0*exp(-t/T)*exp(-jωt)dt (t=0,+∞) =h0∫exp(-(1/T+jω)t)dt =h0*(-exp(-(1/T+jω)∞)/(1/T+jω)+exp(-(1/T+jω)0)/(1/T+jω)) =h0/(1/T+jω) ということになる。 次ぎに方形パルス入力をFourier変換すると X(ω)=∫x(t)*exp(-jωt)dt (t=-∞,+∞) =∫A*exp(-jωt)dt (t=-T/2,T/2) =-A*exp(-jωT/2)/jω+A*exp(jωT/2)/jω =(A/jω)(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2)) ということになる。これはちょうどsgn(t+T/2)-sgn(t-T/2)のFourier変換を意味する。図で表すと sgn(t+T/2)-sgn(t-T/2)が実は方計パルスの式であったことをFourier変換した結果から気づいたわけだ。 従って求める方形パルス応答関数は y(t)=(1/2π)∫(h0/(1/T+jω))((A/jω)(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2)))*exp(jωt)dω =(1/2π)∫(A*h0/jω(1/T+jω))(exp(jωT/2)*exp(jωt))dω-(1/2π)∫(A*h0/jω(1/T+jω))(exp(-jωT/2)*exp(jωt))dω =(1/2π)∫(A*h0/jω(1/T+jω))*exp(jωT/2)*exp(jωt)dω-(1/2π)∫(A*h0/jω(1/T+jω))*exp(-jωT/2)*exp(jωt)dω これは周波数スペクトルが(A*h0/jω(1/T+jω))である応答関数を時間軸上で左にT/2と右にT/2それぞれ推移させて後者を符号反転し合成したものであることを意味する。 一方(A*h0/jω(1/T+jω)は(A/2)*sgn(t)関数のFourier変換である(A/jω)とh0*exp(-t/T)のFoureir変換である(h0/(1/T+jω)の積である。従ってその逆Fourier変換は(A/2)*sgn(t)とh0*exp(-t/T)の畳み込み積分であることを意味する。 y(t)=∫(A/2)*sgn(t+T/2)*h0*exp(-(t-t'+T/2)/T)dt'-∫(A/2)*sgn(t-T/2)*h0*exp(-(t-t'-T/2)/T)dt' (t'=-∞,+∞) =(A*h0/2)(∫sgn(t+T/2)*exp(-(t-t')/T-1/2)dt'-∫sng(t-T/2)*exp(-(t-t')/T+1/2)dt') さてここからどうするか sgn(t)=1 (t>0) =0 (t=0) =-1 (t<0) なので sgn(t+T/2)=1 (t>-T/2) =0 (t=-T/2) =-1 (t<-T/2) sgn(t-T/2)=1 (t>T/2) =0 (t=T/2) =-1 (t<T/2) したがって以下の3つの区間 (1) t > T/2 sgn(t+T/2)=1 sgn(t-T/2)=1 (2) -T/2<t<T/2 sgn(t+T/2)=1 sgn(t-T/2)=-1 (3) t < -T/2 sgn(t+T/2)=-1 sgn(t-T/2)=-1 についてそれぞれ考える必要がある。 むう、わかんね〜(´Д`;) 挫折しそ、逆Fourier変換の式から素直にやり直そうかな... y(t)=(1/2π)∫(h0/(1/T+jω))((A/jω)(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2)))*exp(jωt)dω 諸悪の根元は (h0/(1/T+jω))(A/jω) という分数の積である。これが畳み込み積分に逆Fourier変換されるのはわかるが、そのアプローチは茨の道だった。 これが部分分数の和に展開できれば楽なのだが そこでまだ習っていないヘビサイドの展開定理にご登場願おう ヘビサイドの展開定理は彼が独自の演算子法を使って微分方程式を変換した結果として出てくる多項式を伴う分数を部分分数に展開し逆変換を容易にするために発見した定理である。 一般的な定理の紹介は他所に譲るとして、ここでは上記の式の展開に焦点をあててやってみよう 最初に以下のような展開が成り立つとする (h0/(1/T+jω))(A/jω)=k1/(1/T+jω)+k2/jω 未知数k1,k2を求めれば良いので両辺に(1/T+jω)(A/jω)を乗じると A*h0=k1*jω+k2*(1/T+jω) ということになる。ここで右辺の第二項を消去するためにjω=-1/Tを代入すると A*h0=k1*(-1/T) ∴k1=-A*h0*T 同様に第一項を消去するためにjω=0を代入すると A*h0=k2*(1/T) ∴k2=A*h0*T ということになる。従って問題の分数式は (h0/(1/T+jω))(A/jω)=k1/(1/T+jω)+k2/jω =(-A*h0*T)/(1/T+jω)+(A*h0*T)/jω =(A*h0*T)*(1/jω-1/(1/T+jω)) ということになる。これでもはや分数の積ではなくなるので逆Fourier変換結果に畳み込み積分は現れなくなる。 そこで既に知っているFourier変換対の公式により 1/jω <=> (1/2)sgn(t) 1/(1/T+jω) <=> exp(-t/T) F(ω)*exp(-jω*t0) <=> f(t-t0) という関係が成り立つ。 従って応答の式は y(t)=(1/2π)∫(h0/(1/T+jω))((A/jω)(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2)))*exp(jωt)dω =(1/2π)∫(A*h0*T)*(1/jω-1/(1/T+jω))*(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2))*exp(jωt)dω =(1/2π)∫(A*h0*T)*(1/jω)*(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2))dω-(1/2π)∫(A*h0*T)*(1/(1/T+jω))*(exp(jωT/2)-exp(-jωT/2))dω =(A*h0*T)*(sgn(t+T/2)/2-sgn(t-T/2)/2)-(A*h0/T)*(exp(-(t+T/2)/T)-exp(-(t-T/2)/T)) =(A*h0*T)*(sgn(t+T/2)/2-sgn(t-T/2)/2-exp(-(t+T/2)/T)+exp(-(t-T/2)/T)) =(A*h0*T)*((1/2)*(sgn(t+T/2)-sgn(t-T/2))+exp(-(t-T/2)/T)-exp(-(t+T/2)/T)) ここで再びsgn関数部分は sgn(t+T/2)=1 (t>-T/2) =-1 (t<-T/2) sgn(t-T/2)=1 (t>T/2) =-1 (t<T/2) なので (1/2)(sgn(t+T/2)-sgn(t-T/2))=0 (t>T/2) =1 (-T/2>t>T/2) =0 (t<-T/2) ということになる。 同様に指数関数部分は exp(-(t-T/2)/T)-exp(-(t+T/2)/T)) =exp(-t/T)*(exp(1/2)-exp(-1/2)) (t>T/2) =-exp(-(t+T/2)/T) (-T/2<t<T/2) =0 (t<-T/2) 従って y(t)=(A*h0*T)*((1/2)*(sgn(t+T/2)-sgn(t-T/2))+exp(-(t-T/2)/T)-exp(-(t+T/2)/T)) =(A*h0*T)*exp(-t/T)*(exp(1/2)-exp(-1/2)) (t>T/2) =(A*h0*T)*(1-exp(-(t+T/2)/T)) (-T/2<t<T/2) =0 (t<-T/2) ということになる。 なんだ簡単じゃないか(´∀` ) A=1, h0=1, T=1 としてプロットしてみると wxplot2d([if t>1/2 then (sqrt(%e)-1/sqrt(%e))*%e^(-t) elseif t>-1/2 then 1-%e^(-t -1/2) elseif t<-1/2 then 0 ], [t,-5,5])$ 方形パルスが加わるt=-T/2=-0.5までは0でそこから指数関数的に1に近づいていき方形パルスが取り去られるt=T/2=0.5で1-exp(-1)に達しそこから指数関数的に減衰していくというもの。 ところで著者の解を見てみると、いきなり畳み込み積分の式を導出した際に伴う畳み込み積分区間の取り方の根拠がわからないが結果は正しい。 最初にやった逆Fourier変換の式から畳み込み積分を導出する方法が挫折したアプローチを最後まで完遂させるのは読者の課題として残しておこう(´∀` ) |
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