ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
Main Menu
Tweet
Facebook
Line
:-?
フラット表示 前のトピック | 次のトピック
投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2010-5-24 17:53
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
ハイブリッドパラメータ
次ぎはハイブリッドパラメータ(H行列)に関する問題。

いきなりエミッタ接地のトランジスタ等価回路ですよ。寝込みそう(;´Д`)

数式モデルというのは慣れてしまうまでが大変で、慣れてもしばらく遠ざかると違和感が復活するというやっかいない代物。よく数学が苦手とかいう人は、その人の中に既に数学があるからだというのは頷ける。その人が納得のいくやり方でやればいいわけで。そういう自由は本来数学にもあるはず。先人の見方や考え方にその人がシンクロできないだけで、時間はかかるけど自分でゼロから考え直してもいいはず。学校だと時間制限があるからそうはいかないけど、独学なら許される。

そういう意味では既存のテキストで独学するには、どうしてもそれを書いた人や最初にそれを考えた人の思考回路のコピーを自分の頭の中に作り上げる必要があるわけで、これが苦痛なだけ。

なんの話しだったっけ。ああ、トランジスタ等価回路ね。

とりあえず問題の意味を自分なりにゼロから考え直してみよう。



1959年に出版されたドイツの理論電気学の教科書にも二端子対回路(Hパラメータ)でトランジスタの等価回路が既に説明されている。この当時既にPNPやNPNトランジスタ、ベース接地やエミッタ接地回路などが知られていた。それ以前には真空管があったわけだがトランジスタとは動作が異なるので別のモデルをこしらえる必要があったのは自明である。

今時真空管から考える人は居ないので、歴史的な経緯をすっ飛ばしてトランジスタから入るわけである。

バイポーラトランジスタの場合、図の様にエミッタ接地回路の場合はベース電流(Ib)に比例してコレクタ電流(Ic)が増大する電流増幅効果を発揮する。しかしながら能動素子と称しながらもトランジスタは電圧をかけないと何の機能もしない。従って回路上は入力及び出力端子対ともに電源が必要である。やっかいなことにバイポーラトランジスタは印可する電圧や流れる電流によって特性が変わる非線形素子である。従って予め与えられた動作点(電圧と電流)の近傍でのみ小信号を扱う限り線形素子と見なせる。そうした前提条件の上にトランジスタ等価回路を考えることになる。

真空管もトランジスタも動作させるにはバイアス電圧を印可してある程度バイアス電流が流れている動作点でないと線形動作を得ることができない。それには以下の図にあるように出力を電圧として取り出すために負荷抵抗を電源と直列に接続して増幅された電流変化を電圧に変換する必要がある。



これである程度解析に必要な数式モデルは立てられるが問題がある。実際に二端子対回路として縦続接続したり並列接続すると動作点(バイアス電圧やバイアス電流)が変化してしまう。

この場合には二端子対回路の時に学んだ通りに、以下の通り理想変成器を端子対に挿入することでトランジスタの動作点を一定に保ったまま外部回路と自在に接続できる。ただしDC領域と周波数領域の振る舞いは対象外とする。入力と出力は供に動作範囲内の周波数スペクトルのみを持つ交流信号に限定される。



理想変成器を挿入することで直流的にはアイソレートされているが交流的には直結と見なせる都合の良いモデルが得られる。

これが題意の等価回路の意味するところであるが、T形回路になっている点とかの理由についてはここでは詳しく触れない。実際に自分の手でトランジスタの動作特性を実験で観測し電子回路や半導体素子理論を学ぶことをお勧めする。トランジスタそのものは当初理論的に意図して作られた素子ではなく、偶然他の目的の素子(三極ダイオード)を実験中に観測された現象である。現象を説明するためや意図した性能を備えた素子を作るために後追いで理論が構築された歴史的経緯がある。これはトランジスタに限らずよくあることなのだが。

上記の等価回路では入力端子対の電流I1(ベース電流:Ib)に相互レジスタンス(rm)に比例した内部の等価電源の起電力が発生し出力端子対に電圧が発生する。出力端子対に外部回路を負荷として接続するとループを形成して出力端子対の電流I2(コレクタ電流:Ic)が決まることになる。

そこでこの等価回路のハイブリッドパラメータを導いてみることにする。

ハイブリッド行列で上記の二端子対回路を表すとすれば

\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />E_b\\<br />I_c<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />h_{11} & h_{12}\\<br />h_{21} & h_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_b\\<br />E_c<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

EbとIb,Ecの関係は回路より重ね合わせの理で

\begin{eqnarray}<br />E_b&=&r_b I_b+r_e\left(I_b+I_c\right)\\<br />&=&r_b I_b+r_e I_b+r_e\left(\frac{r_m I_b}{r_e+r_c-r_m}-\frac{r_e I_b}{r_e+r_c-r_m}+\frac{E_c}{r_e+r_c-r_m}\right)\\<br />&=&\left(r_b+r_e+r_e\frac{r_m-r_e}{r_e+r_c-r_m}\right)I_b+\frac{r_e}{r_e+r_c-r_m}E_c\\<br />&=&\left(r_b+r_e\left(1+\frac{r_m-r_e}{r_e+r_c-r_m}\right)\right)I_b+\frac{r_e}{r_e+r_c-r_m}E_c\\<br />&=&\left(r_b+r_e\left(\frac{\cancel{r_e}+r_c-\cancel{r_m}+\cancel{r_m}-\cancel{r_e}}{r_e+r_c-r_m}\right)\right)I_b+\frac{r_e}{r_e+r_c-r_m}E_c\\<br />&=&\left(r_b+\frac{r_e r_c}{r_e+r_c-r_m}\right)I_b+\frac{r_e}{r_e+r_c-r_m}E_c\\<br />&=&h_{11}I_b+h_{12}E_c\\<br />h_{11}&=&r_b+\frac{r_e r_c}{r_e+r_c-r_m}\\<br />h_{12}&=&\frac{r_e}{r_e+r_c-r_m}<br />\end{eqnarray}

同様にIcとIb,Ecの関係も重ね合わせの理で

\begin{eqnarray}<br />I_c&=&\frac{r_m I_b}{r_e+r_c-r_m}-\frac{r_e I_b}{r_e+r_c-r_m}+\frac{E_c}{r_e+r_c-r_m}\\<br />&=&\frac{r_m-r_e}{r_e+r_c-r_m}I_b+\frac{1}{r_e+r_c-r_m}E_c\\<br />&=&h_{21}I_b+h_{22}E_c\\<br />h_{21}&=&\frac{r_m-r_e}{r_e+r_c-r_m}\\<br />h_{22}&=&\frac{1}{r_e+r_c-r_m}<br />\end{eqnarray}

従ってハイブリッド行列表記では

\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />h_{11} & h_{12}\\<br />h_{21} & h_{22}<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />r_b+\frac{r_e r_c}{r_e+r_c-r_m} & \frac{r_e}{r_e+r_c-r_m}\\<br />\frac{r_m-r_e}{r_e+r_c-r_m} &\frac{1}{r_e+r_c-r_m}<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

ということになる。

有効性うんぬんについては先に触れた通りに

・理想変圧器を必要とするので現実の回路の設計には使えない
・直流増幅器やレベルシフト回路には使えない

という具合に悪口ばっかり目立ってしまう。それでも有効性としてあげれば

・動作点やバイアスは内部で閉じているので外部では配慮する必要がない
・トランジスタを使用する上での動作点やバイアスに関する回路内部の設計と外部インタフェース仕様を分離して考えることができる

などがあげられる。

先の欠点は、理想変圧器の代わりに直流をブロックし交流信号だけ通過させるカップリングコンデンサを端子対に挿入する方法で緩和することが古くから行われている。よくトランジスタの初歩の回路に登場するやつである。実際オーディオ帯域の交流信号ではうまくゆく。回路の意味については一般のトランジスタ回路の参考書に譲る。



しかし理想変圧器と違ってキャパシタンスを用いる関係上、周波数が低くなるとインピーダンスが高くなり交流信号が流れにくくなる。低域で利得を落とさないためにはできるだけ容量の大きなコンデンサを使う必要があるが、これがオーディオアンプでは災いの元である。安易に非線形特性(電圧係数や誘電体吸収)が大きいコンデンサをカップリング用に使用すると、信号が歪んでしまうことになる。所謂忠実度が低下するというやつである。

それと定常状態では理論上はうまくいっても電源投入直後は充電電流が流れ込むためにトランジスタが一辺にオンして、オーディオパワーアンプでは異常な出力が出てスピーカーが破れてしまうことになりかねない。この過渡現象の問題は定常状態だけ考えていてもどうにもならないので、高級なオーディオアンプは電源投入直後は出力をミュートするなどなんらかの回避策が施されている。

それと依然として直流増幅はできない。例えば微少な直流電圧を測定するような電圧計を作ろうとした場合、直流をブロックしてしまってはなんにもならない。これにはやはり別途DC領域まで対応した回路を考える必要がある。

またトランジスタが登場した直後から既に集積回路への応用もはじまっていた。しかしながら、オーディオアンプを集積回路化しようとした場合、カップリングコンデンサを含んだ個別部品で組んでいた増幅回路をそのままシリコンダイ上に載せることは不可能である。なぜなら集積回路上には大容量のコンデンサを実装することができないからである。集積回路では個別部品による増幅回路の設計がまったく通用しない。これも直流的に結合した回路を考えないといけなくなる。

ということで、基礎的な理論を理解をする上ではシンプルで扱い易く都合が良いものの、実務ではhパラメータはほとんど使う機会は無いということになる。

まあそういうことが解っただけでももうけものである。
フラット表示 前のトピック | 次のトピック

題名 投稿者 日時
   2端子対回路演習問題 webadm 2010-5-20 4:53
     インピーダンスパラメータ webadm 2010-5-20 5:54
     インピーダンスパラメータとアドミッタンスパラメータ webadm 2010-5-22 23:43
     インピーダンスパラメータとハイブリッドパラメータ webadm 2010-5-23 1:32
     インピーダンス行列とアドミッタンス行列 webadm 2010-5-23 10:12
     T形回路 webadm 2010-5-23 16:25
     続:T形回路 webadm 2010-5-23 16:33
     π形回路 webadm 2010-5-23 17:20
     Zobel変換 webadm 2010-5-23 17:58
   » ハイブリッドパラメータ webadm 2010-5-24 17:53
     アドミッタンスパラメータと4端子定数 webadm 2010-5-26 11:41
     伝送行列 webadm 2010-5-26 14:34
     T形回路の伝送行列 webadm 2010-5-26 15:14
     4端子定数 webadm 2010-5-27 3:18
     続:伝送行列 webadm 2010-5-27 13:50
     続:4端子定数 webadm 2010-5-27 22:14
     続々:4端子定数 webadm 2010-5-29 3:39
     インピーダンス行列 webadm 2010-5-29 11:27
     アドミッタンス行列 webadm 2010-5-29 11:57
     またまた:4端子定数 webadm 2010-5-30 11:15
     二端子対回路の並列接続 webadm 2010-5-30 12:37
     もうひとつの:4端子定数 webadm 2010-5-30 12:45
     アドミッタンスパラメータ webadm 2010-6-3 12:42
     まだまだ:4端子定数 webadm 2010-6-5 13:04
     影像パラメータと4端子定数 webadm 2010-6-5 13:44
     影像パラメータ webadm 2010-6-12 22:30
     続:影像パラメータ webadm 2010-6-13 5:07
     続々:影像パラメータ webadm 2010-6-17 5:13
     影像インピーダンス webadm 2010-6-17 16:21
     続:影像インピーダンス webadm 2010-6-17 19:40
     まだまだ:影像パラメータ webadm 2010-6-22 18:50
     もうひとつの:影像パラメータ webadm 2010-6-25 21:54
     4端子定数と影像インピーダンス webadm 2010-6-26 0:45
     インピーダンス整合 webadm 2010-6-26 11:27
     もうひとつの:影像インピーダンス webadm 2010-6-26 21:55
     反復インピーダンスと4端子定数 webadm 2010-6-27 0:05
     反復パラメータ webadm 2010-6-28 21:04
     影像インピーダンスと反復インピーダンス webadm 2010-6-29 18:16
     π形回路の伝送行列、影像パラメータ、反復パラメータ webadm 2010-7-8 21:06
     相互誘導回路と理想変成器 webadm 2010-7-28 6:11
     Norton変換 webadm 2010-8-17 10:44
     続:Norton変換 webadm 2010-8-17 20:48
     容量性変成器 webadm 2010-8-18 3:42
     抵抗性変成器 webadm 2010-8-21 10:11
     理想ジャイレーター webadm 2010-10-31 3:26
     続:理想ジャイレータ webadm 2010-11-19 2:41
     続々:ジャイレータ webadm 2010-11-23 21:29
     対称回路 webadm 2010-11-25 9:18
     続:対称回路 webadm 2010-11-30 0:01
     続々:対称回路 webadm 2010-11-30 9:27
     またまた:対称回路 webadm 2010-11-30 23:28
     軸対称二端子対回路 webadm 2010-12-3 8:26
     一方向性回路 webadm 2010-12-8 9:13
     続:一方向性回路 webadm 2010-12-8 10:37
     Zパラメータ webadm 2010-12-9 22:51
     続:Zパラメータ webadm 2010-12-10 0:17
     4端子定数 webadm 2010-12-14 6:51
     理想オペアンプ webadm 2010-12-14 7:03
     続々:Zパラメータ webadm 2010-12-20 10:10
     reactance回路 webadm 2010-12-20 22:52
     全域通過回路 webadm 2010-12-23 13:53
     最小位相推移回路 webadm 2010-12-23 21:54
     続:最小位相推移回路 webadm 2011-4-22 7:02
     続々:最小位相推移回路 webadm 2011-4-22 9:38

投稿するにはまず登録を
 
ページ変換(Google Translation)
サイト内検索