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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2010-11-19 2:41
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
続:理想ジャイレータ
次も理想ジャイレータに関する問題。

理想ジャイレータを2段縦続接続すると理想変成器になることを示せというもの。

伝送行列の縦続接続を計算すれば簡単だけど、それだと著者と同じなので違うアプローチで。

理想変成器の伝送行列をF、2つの理想ジャイレータの伝送行列をそれぞれG1,G2とすると

\begin{eqnarray}<br />F&=&\left[\begin{array}\frac{1}{n}&0\\0&n\end{array}\right]\\<br />G_1&=&\left[\begin{array}0&R_1\\ \frac{1}{R_1}&0\end{array}\right]\\<br />G_2&=&\left[\begin{array}0&R_2\\ \frac{1}{R_2}&0\end{array}\right]\\<br />F&=&G_1 G_2\\<br />G_1^{-1}F G_2^{-1}&=&I\\<br />\end{eqnarray}

が成り立つことを証明すればよいことになる。

式の両辺にG1及びG2の逆行列を乗じると

\begin{eqnarray}<br />{G_1}^{-1}F {G_2}^{-1}&=&\left[\begin{array}0&R_1\\ \frac{1}{R_1}&0\end{array}\right]\left[\begin{array}\frac{1}{n}&0\\0&n\end{array}\right]\left[\begin{array}0&R_2\\ \frac{1}{R_2}&0\end{array}\right]\\<br />&=&\left[\begin{array}\frac{n R_1}{R_2} & 0\cr 0 & \frac{R_2}{n R_1}\end{array}\right]\\<br />&=&\left[\begin{array}1&0\\0&1\end{array}\right]\\<br />&=&I\\<br />n&=&\frac{R_2}{R_1}<br />\end{eqnarray}

従ってn=R2/R1とする理想変成器ということになる。

P.S

もしくはもっと簡単に線形代数的に

\begin{eqnarray}<br />G_1^{-1}&=&G_1\\<br />G_2^{-1}&=&G_2\\<br />G_1^{-1}F G_2^{-1}&=&G_1 G_1 G_2 G_2\\<br />&=&I<br />\end{eqnarray}

で証明は十分かもしれない。理想ジャイレータの伝送行列の逆行列はその元の行列と等しいからである。また同一のジャイレータ比のジャイレータを2つ縦続接続すると巻き線比1:1の理想変成器、すなわち単位行列(I)に等しくなる。

線形代数学では数学的対象を大局的かつ抽象的にみるので、例題とか演習問題でもないかぎり具体例を取り上げることはない。電気回路理論は具体例で考えることが求められ大局的な観点を見失いがちである。線形代数と併せて勉強すると両方学べて一石二鳥であるのに加えて、電気回路理論を更に大局的にかつ枠を超えてとらえることができるようになる。

線形受動回路ばかりじゃもうそろそろつまらないと賢明な読者は電源や能動素子を含む電子回路を学びたいかもしれない。しかしそれらの回路は線形受動回路にあった都合のよい性質、線形性が失われるのに注意しなければならない。また機会を改めて演習が終わった時に研究テーマとしてあげることにしよう。端的に例を挙げれば、電源が入力と出力端子の間に一個直列に入っただけの二端子対回路の伝送行列を導くとしたらどうなるだろう? 端子対条件の式から4端子対定数は導けるかもしれない。しかしその伝送行列は果たして線形だろうか? 線形であるためには加法則と乗法則を満たさなければならない。すなわち、入力にP1+P2の合成ベクトルを与えた場合、出力はそれぞれを単独で与えた場合の総和と等しくなければならない。残念ながら電源を含む回路ではそれは成り立たないことは計算してみればすぐわかる。

これが二端子対回路が線形受動回路に限定して議論している理由である。それじゃ線形代数学を学んでも電源を一個含んだだけで成り立たなくなるなら使えないじゃん。と思うかもしれないが、そうした暗闇にはすでに数学が先手を打って光りを照らしてくれている。

直流回路の頃から教えられていた重ね合わせの理(superposition)を覚えているだろうか? これは複数の電源を含む回路の解析を行う際に回路をそれぞれの単一の電源のみと線形受動回路で解析した結果を総和することで回路全体の解析結果を得る方法である。

これには数学的な裏付けがあるが範囲外なので教えられることはない。線形代数学やそれにつながる代数幾何学で生まれたaffine変換群は線形代数の線形変換(ベクトルの回転と拡大縮小)と幾何学的な平行移動(電源によるバイアス)を併せ持つ変換をベクトル空間の次元を1つ拡張して加法則と乗法則を改めて定義しなおしたものである。これによって線形代数学の各種定理が適用できるようになるというものである。こうした線形でないものを線形的に扱えるようにする工夫が数学ではよくでてくる。工学でもそうした線形近似のアイデアが随所に使用されている。

またこれらの話は別の機会に。

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