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webadm
投稿日時: 2010-12-23 21:54
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登録日: 2004-11-7
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投稿: 3084
最小位相推移回路
残る問題もあと3つになった。

次の問題はいきなり最小位相推移回路について説明せよとの筆記問題。

実は理論で学んだ時は解ったようなつもりであったが実は良く解っていなかったことがここで判明する。

調べてみると最近出版されている電気回路の参考書ではほとんど位相に関しては最小位相推移という用語すら登場しないものもある。理由は制御理論では回路のゲインと位相推移の両方が重要なのに対して電気回路理論ではゲイン(利得)のみ考えれば入門的には十分であるためである。更に踏み込んで位相推移を扱うと授業時間がかさみ、制御理論と講義内容が重複してしまうためだ。

確かに電気回路で位相が問題になるのは制御回路とかの場合が多い。オーディオや無線とかでは周波数とゲインの関係は重要だが位相についてはほとんど問題視されることはない。どちらも定常状態だけを考えればいいからである。

しかしオシロスコープなどで過渡的な応答を観測する際に広帯域アンプが周波数によって位相推移が異なるとなると源信号と異なる波形が表示されないだろうかという装置の機能の根幹に関わる疑問が生じる。その疑問に答えるにはゲインだけでなく位相推移についても解析する必要が出てくる。

とはいえ、この演習問題に対して自分なりに納得の行く理解と回答を得るには制御理論の本に出てくる概念を学ぶ必要がある。

といっても書いてある内容は古い時代からずっと変わらないので少々カビくさい感じがするのは否めない。なんとか現代風に代数的に新解釈できないだろうか。そもそも複素解析と近い領域であるためそう易々とはいかないだろう。

Wikipediaの内容は幾分近代的であるが異なる分野の間での視点を統一するものには成っていない。制御工学では制御理論を目的としているし、電気回路網ではフィルタなどの理論を目的としているため、それぞれ解釈が微妙に異なる。

本来は制御理論での最小位相推移の導入前に学ぶ周波数応答解析法もしくは正弦波形応答解析(Sinusoidal Circuit Analysis)を頭に入れておく必要がある。制御理論で学ぶので電気回路の授業では教えなくなってしまったので、電気回路だけ学ぼうとするとそこがすっかり抜け落ちてしまう。

古い回路解析の本にはそれらが必ず載っているので今まで読み飛ばしていたその部分を改めて読み直す必要があった。

現在出版されている主な制御理論の参考書では最小位相推移に関して伝統的な手法を現代風に整理して少ないページ数で解説している。これでも実は最初理解するのが容易でなかった。すっかり電気回路で交流理論が出てきた時のPhaserとかの概念を忘れていたためである。もちろんそれらは数学の複素解析の導入部で学ぶ概念そのものであるのだが、交流理論のところではそのことは触れていないためもともとあったはずの数学との接点が切断されて無くなってしまっているのが問題だ。

結論だけを論じれば最小のスペースで説明が十分できてしまうが、わかっていない人がそれを読んで理解できるかというとそういうわけではない。

結局のところ古典的な問題がどこにあったかそこから自分で考える必要がある。そうすれば参考書にまとめられていることが理解できるようになる。

結論的には以前に学んだ一端子対回路で登場した駆動点イミッタンス関数と二端子対回路で登場した伝達イミタンス関数の決定的な特徴の違いを理解することにつきる。

最小位相推移回路が存在するということは、そうでない回路も存在することを意味している。では非最小位相推移回路とはどんなものか。それは最小位相推移回路と何が決定的に違うのか?という疑問から出発するのもへそ曲がりだが良いアプローチである。

近代的な制御理論の参考書にも非最小位相推移回路の代表例として直前の問題で登場した全域通過回路が必ず出てくる。Z1とZ2が互いに逆回路でかつ周波数に対してゲインが一定であるような負荷Rが接続されている回路である。これの伝達イミタンス関数は先の問題の解答で以下の様な形をしている。

\begin{eqnarray}<br />Y&=&\frac{I}{E}\\<br />&=&\frac{R-s\,L}{R\,\left( R+s\,L\right) }\\<br />&=&\frac{1}{R}\frac{\frac{R}{L}-s}{\left(\frac{R}{L}+s\right)}<br />\end{eqnarray}

すなわち零点がs=R/L、極がs=-R/Lであり、線形受動素子だけで構成される回路でも零点が右半平面上にも現れることがある点が駆動点イミッタンス関数(正実関数)と決定的な違いである。

正実関数であれば偏角(位相推移)は|θ|≦π/2の範囲内に収まる(最小位相推移)、そうでない場合にはその範囲を超える(非最小位相推移)というわけである。

これを見通し良く線形代数的に説明できればいいわけである。

最初の着眼点は伝達イミッタンス関数もしくは伝達関数の複素有理関数表現から出発する

\begin{eqnarray}<br />G\left(s\right)&=&\frac{P\left(s\right)}{Q\left(s\right)}<br />\end{eqnarray}

分母と分子はそれぞれ複素数sに関する関数であるから、分母と分子にそれぞれ分母の複素共役を乗じると

\begin{eqnarray}<br />\frac{P\left(s\right)}{Q\left(s\right)}&=&\frac{P\left(s\right)\overline{Q\left(s\right)}}{Q\left(s\right)\overline{Q\left(s\right)}}\\<br />&=&\frac{P\left(s\right)\overline{Q\left(s\right)}}{\left|Q\left(s\right)\right|^2}<br />\end{eqnarray}

これは線形代数的に見ればG(s)はQ(s)に関するP(s)のFourier係数であることがわかる。

複素Fourier級数を思い出してみよう。

\begin{eqnarray}<br />f\left(t\right)&=&\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_{n}e^{jn\omega_{0} t}<br />\end{eqnarray}

両辺にe^-jmω0tを乗じて周期Tの区間で積分すると

\begin{eqnarray}<br />\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}f\left(t\right)e^{-jm\omega_{0} t}dt&=&\sum_{n=-\infty}^{\infty}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}c_{n}e^{j\left(n-m\right)\omega_{0} t}dt\\<br />&=&T c_n\,\left{n=m\right}\\<br />c_n&=&\frac{1}{T}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}f\left(t\right)e^{-jn\omega_{0} t}dt<br />\end{eqnarray}

更にω=ω0=2π/Tとすると、Tを無限大にした場合nω0=ωになるとすれば、上の複素Fourier係数の式から

\begin{eqnarray}<br />F\left(\omega)&=&\lim_{T\to\infty}T c_n=\lim_{T\to\infty}\int_{-\frac{T}{2}}^{\frac{T}{2}}f\left(t\right)e^{-jn\omega_{0} t}dt\\<br />&=&\int_{-\infty}^{\infty}f\left(t\right)e^{-j\omega t}dt<br />\end{eqnarray}

ということだった。

ところで線形代数と解析学のFourier係数がリンクしていることが最初まったく理解できなかった。「ラング線形代数学(上)」を読み進めていたときに突然以下の様な記述が現れて一時途方にくれた。

引用:

n-空間の通常のベクトルのときと同じように、射影という概念を考えることができる。Vを、正値スカラー積を持ったRの上のベクトル空間とし、v,w∈V,w≠0とする。数

c=\frac{<v,w>}{<w,w>}

を、wに関するvのフーリエ係数とよび、ベクトルcwを、wに沿ったvの射影と定義する。このとき、

<v-cw,w>=<v,w>-\frac{<v,w>}{<w,w>}<w,w>=0

であるから、v-cwはwに垂直である。

{v1,...,vn}をVの直交基底、v∈Vとすると、

v=x_1 v_1+\cdots+x_n v_n

となる数、x1,...,xnが存在する。この両辺とvi(i=1,..,n)とのスカラー積を作ると、i≠jのとき=0であることを用いて

<v,v_i>=x_i<v_i,v_i>

を得る、そこで

x_i=\frac{<v,v_i>}{<v_i,v_i>}

で、xiはviに関するvのフーリエ係数となる。このようにして、正値スカラー積と直交基底を持つベクトル空間において、この基底に関するVの元の座標は、そのフーリエ係数に等しい。


実はこの後に解析学とのつながりがエルミート積の以下の定義で明らかになる。この時点で少し線形代数に開眼したような気になっていたが甘かった(´Д`;)実は良くわかっていなかったのである。

上の引用した内容を複素関数からなる一次元のベクトル空間に拡張することが出来る。

二端子対回路の周波数解析は定常状態のみを考えるので複素周波数変数s=jωと置くことができる。従って定常状態の伝達関数もしくは伝達イミタンス関数は、

\begin{eqnarray}<br />G\left(j\omega\right)&=&\frac{P\left(j\omega\right)}{Q\left(j\omega\right)}<br />\end{eqnarray}

と表される。

でも振り出しに戻った感じがするよね(´Д`;)

でも両辺にQ(jω)を乗じると

\begin{eqnarray}<br />P\left(j\omega\right)&=&G\left(j\omega\right)Q\left(j\omega\right)<br />\end{eqnarray}

なんとなくさっき出てきた線形結合の式に良くにているよね。vがP(jω)、xiがG(jω)、viがQ(jω)という感じ。

考え続け調べ続けもう1ヶ月以上経過している。

そもそも一次元複素ベクトルはスカラー値と一緒なので特殊なケースになってしまう。

線形代数の入門のところで学ぶベクトルの内積も実数体(R)の場合しか書かれていないので複素数体(C)でしかも一次元ベクトルだと全部直線上にベクトルが並んでしまって意味がなくなる。

古い回路解析の本や制御の本では、零点と極と複素単位ベクトルとの関係から偏角を割り出して特殊なケース(対称格子形回路)の場合だけ、直感的に推測するためにかなりのページ数を割いている。それでも証明を示しているわけではないので納得がいかない。

もっと見通しの良い方法で、伝達関数では偏角が連続的に0≦θ<360°を取りうることを示せないものかのう。

不等式で表された公式が使えるのではないかとにらんでいるがまだ見当がつかない。

2011/2/16

とりあえず行き詰まったので、著者の回答を読んで見た。一見して手短に結論に到達しているが、途中途中にギャップがあるので狐につままれた形で最後の結論を読むことになる。結論は判っているのだが、どうやってそこに辿りつくかが問題。

途中のギャップを埋めるのは読者の課題ということかもしれない。

著者のストラテジーでは、伝達関数がRe(s)>0で正則な正実関数とRe(s)>0に特異点を持つ複素有理関数の積に分解できることを利用している。すなわち最小位相推移二端子対回路とそうでない二端子対回路の縦続接続に回路を分解するわけである。そうでない回路の位相推移が0>θ>-2πということなので全体としても最小位相推移回路でなくなるという理屈である。

説明のギャップは大きく2点あって、ひとつは正実関数が最小位相推移であることを証明していない点。もうひとつはRe(s)>0の範囲に特異点を持つ有理型関数の位相推移が0>θ>-2πであることを証明していない点。

正実関数が最小位相推移であることは自明としても、後者がやっかいだ。古い回路解析の本でも直感的に示すにとどまっている。

問題は振り出しにもどったわけである。

2011/3/14

出張先で時間ができたので今まで悩み続けてきた最小位相推移回路について少し進めてみよう。

1950年代の回路網理論の本や制御工学の本を見ると伝統的な位相推移に関する解説を見つけることができる。直観的に理解しにくい数式ではなく幾何学的に説明するものだ。必ずしもそれらは現代からみても成功しているとは思えないのだが、複素ベクトルについて視覚的に理解する手助けになるのでおさらいしておく価値はある。

駆動点イミッタンス関数や伝達イミッタンス関数はいずれも複素有理関数として表されるのは既に承知の通り。分子と分母はそれぞれ複素周波数sの多項式であり、分母と分子の次数の差は高々1である。また受動素子のみからなる回路の駆動点イミッタンス関数の零点と極はすべて複素平面上の左半面にのみ現れ、右半面には現れない(正実関数)。伝達イミッタンス関数の場合は、零点が右半面に現れることはあるものの、極は依然として左半面に限られる。

これと同じ意味のことを数式で表すと

\begin{eqnarray}<br />G\left(s)&=&\frac{a_{m}s^{m}+a_{m-1}s^{m-1}+\dots+a_{1}s+a_{0}}{b_{n}s_{n}+b_{n-1}s^{n-1}+\dots+b_{1}s+b_{0}}\\<br />&=&H\frac{s^{m}+c_{m-1}s^{m-1}+\dots+c_{1}s+c_{0}}{s^{n}+d_{n-1}s^{n-1}+\dots+d_{1}s+d_{0}}\\<br />&=&H\frac{\left(s-s_{a1}\right)\left(s-s_{a2}\right)\dots\left(s-s_{am}\right)}{\left(s-s_{b1}\right)\left(s-s_{b2}\right)\dots\left(s-s_{bn}\right)}\\<br />H&=&\frac{a_{m}}{b_{n}}\\<br />c_{i}&=&\frac{a_{i}}{a_{m}}\\<br />d_{i}&=&\frac{b_{i}}{b_{n}}\\<br />\left|n-m\right|\le 1\\<br />Re\left(s_{bi}\right)\le 0<br />\end{eqnarray}

ここでSa1,...,Samは零点、Sb1,...,Sbnは極である。

古典的な回路網理論の本や制御理論の本ではこれではピンとこない読者や学生のために複素解析の初歩で学ぶ幾何学的な視点を利用して理解のとっかかりを与えてくれている。因数分解された分子と分母の式はそれぞれ複素周波数ベクトルsと零点もしくは極を表すベクトルSai,Sbiとの差分ベクトルの積としてとらえるのである。

\begin{eqnarray}<br />G\left(j\omega)&=&H\frac{\left(j\omega-s_{a1}\right)\left(j\omega-s_{a2}\right)\dots\left(j\omega-s_{am}\right)}{\left(j\omega-s_{b1}\right)\left(j\omega-s_{b2}\right)\dots\left(j\omega-s_{bn}\right)}<br />\end{eqnarray}

再びここでは定常状態だけを扱うのでs=jωと置くと、これは虚軸と平行で大きさがωのベクトルとの差分を考えればよいことになる。



次の段階としてこの幾何学的に見た差分ベクトル(jω-Sa1)を同様に複素解析の初歩で習う極座標表示で表すと

\begin{eqnarray}<br />\left(j\omega-s_{ai}\right)&=&\left|j\omega-s_{ai}\right|e^{j arg\left(j\omega-s_{ai}\right)}\\<br />&=&M_{ai}e^{j\theta_{ai}}\\<br />M_{ai}&=&\left|j\omega-s_{ai}\right|\\<br />\theta_{ai}&=&arg\left(j\omega-s_{ai}\right)<br />\end{eqnarray}

したがって極座標表示で伝達イミッタンス関数を書き直すと

\begin{eqnarray}<br />G\left(j\omega)&=&H\frac{M_{a1}M_{a2}\dots M_{am}e^{j\theta_{a1}e^{\theta_{a2}\dots e^{j\theta_{am}}}}}{M_{b1}M_{b2}\dots M_{bn}e^{j\theta_{b1}}e^{j\theta_{b2}}\dots e^{j\theta_{bn}}}\\<br />&=&M\left(\omega\right)e^{j\left(\theta_{a1}+\theta_{a2}+\dots+\theta_{am}-\theta_{b1}-\theta_{b2}-\dots-\theta_{bn}\right)}\\<br />M\left(\omega\right)&=&H\frac{\Pi_{i=1}^{m}M_{ai}}{\Pi_{k=1}^{n}M_{bk}}<br />\end{eqnarray}

伝達イミッタンス関数を対数変換するとその主値からゲインと位相が明瞭になる

\begin{eqnarray}<br />\log{G\left(j\omega\right)}&=&\ln{M\left(\omega\right)}+j\left(\sum_{i=1}^{m}\theta_{ai}-\sum_{k=1}^{n}\theta_{bk}\right)\\<br />&=&\ln{M\left(\omega\right)}+j\Theta\left(\omega\right)\\<br />\Theta\left(\omega\right)&=&\sum_{i=1}^{m}\theta_{ai}-\sum_{k=1}^{n}\theta_{bk}<br />\end{eqnarray}

したがって当然の結果ながら、M(ω)もΘ(ω)も1変数の実数関数で伝達イミッタンス関数の零点と極とによって定まる。

上記の実数部(ゲイン)と虚数部(位相)をそれぞれωに関してプロットしたものがBode線図である。

古い回路網理論や制御理論の本では簡単な実例(全域通過関数)を考察しているのであるが、ω=0の場合を手始めに示すにすぎず、紙面の制限上それ以上は読者の課題としている。最近の参考書では説明が中途半端になるぐらいならいっそ触れないでおこうということで割愛されていることがほとんどである。実のところかなり奥が深い概念であるのは確かだ。

最小位相推移の元来の定義として「同じ周波数ゲイン特性で位相推移が最小となるもの」という意味を理解する必要がある。これの具体例はいくつでもあるのだが、ぱっと言われてもピンと思い浮かばない。幸いにして石川高専の電気工学科の講義資料に良い例を使って説明がされているので、それから学ばせていただこう。

周波数ゲイン特性が同一で位相特性が異なる伝達イミッタンス関数の具体例として

?\begin{eqnarray}<br />G_1\left(j\omega\right)&=&\frac{1+j\omega}{\left(j\omega\right)^2+j\omega+1},\,G_2\left(j\omega\right)=\frac{1-j\omega}{\left(j\omega\right)^2+j\omega+1}<br />\end{eqnarray}

を考えよう。

それぞれの周波数ゲイン特性を求めると

\begin{eqnarray}<br />\left|G_1\left(j\omega\right)\right|&=&\sqrt{G_1\left(j\omega\right)\overline{G_1\left(j\omega\right)}}\\<br />&=&\sqrt{\left(\frac{1+j\omega}{\left(j\omega\right)^2+j\omega+1}\right)\overline{\left(\frac{1+j\omega}{\left(j\omega\right)^2+j\omega+1}\right)}}\\<br />&=&\sqrt{\frac{1+{\omega}^2}{\left(1-{\omega}^2\right)^2+{\omega}^2}}\\<br />&=&\sqrt{\frac{1+{\omega}^2}{{\omega}^4-{\omega}^2+1}}\\<br />\left|G_2\left(j\omega\right)\right|&=&\sqrt{G_2\left(j\omega\right)\overline{G_2\left(j\omega\right)}}\\<br />&=&\sqrt{\left(\frac{1-j\omega}{\left(j\omega\right)^2+j\omega+1}\right)\overline{\left(\frac{1-j\omega}{\left(j\omega\right)^2+j\omega+1}\right)}}\\<br />&=&\sqrt{\frac{1+{\omega}^2}{\left(1-{\omega}^2\right)^2+{\omega}^2}}\\<br />&=&\sqrt{\frac{1+{\omega}^2}{{\omega}^4-{\omega}^2+1}}\\<br />&=&\left|G_1\left(j\omega\right)\right|<br />\end{eqnarray}

したがって周波数ゲイン特性は同一であることが確かめられた。

周波数ゲイン特性をプロットしてみると



今度はそれぞれの周波数位相特性を調べてみよう。

位相は伝達イミッタンス関数の実数部と虚数部より

\begin{eqnarray}<br />\Theta_1\left(\omega\right)&=&tan^{-1}\left(\frac{Im\left(G_1\left(j\omega\right)\right)}{Re\left(G_1\left(j\omega\right)\right)}\right)\\<br />&=&tan^{-1}\left(\frac{\frac{\omega\,\left( 1-{\omega}^{2}\right) -\omega}{{\left( 1-{\omega}^{2}\right) }^{2}+{\omega}^{2}}}{\frac{1}{{\left( 1-{\omega}^{2}\right) }^{2}+{\omega}^{2}}}\right)\\<br />&=&tan^{-1}\left(\omega\,\left( 1-{\omega}^{2}\right) -\omega\right)\\<br />&=&-tan^{-1}\left({\omega}^3\right)\\<br />\Theta_2\left(\omega\right)&=&tan^{-1}\left(\frac{Im\left(G_2\left(j\omega\right)\right)}{Re\left(G_2\left(j\omega\right)\right)}\right)\\<br />&=&tan^{-1}\left(\frac{\frac{-\omega\,\left( 1-{\omega}^{2}\right) -\omega}{{\left( 1-{\omega}^{2}\right) }^{2}+{\omega}^{2}}}{\frac{1-2\,{\omega}^{2}}{{\left( 1-{\omega}^{2}\right) }^{2}+{\omega}^{2}}}\right)\\<br />&=&tan^{-1}\left(-\frac{{\omega}^{3}-2\,\omega}{2\,{\omega}^{2}-1}\right)\\<br />&=&-tan^{-1}\left(\frac{{\omega}^{3}-2\,\omega}{2\,{\omega}^{2}-1}\right)<br />\end{eqnarray}

ということで周波数位相特性はまったく異なる。プロットしてみると



Θ1のほうは0〜-90度の範囲内に収まっているがΘ2はそうではなく90度を更に超えて-270度にまで達している。したがってG1が最小位相推移関数ということになる。グラフはatanがπ〜-πの範囲の値をとるため不連続に見えるが、実際には位相遅れが連続的に増大していることを意味する。

これでやっと直観的に最小位相推移系がG1であること、非最小位相推移系がG2であるとわかる。しかしもっとちゃんとした判別方法はないのかという疑問が残る。それなくしては最小位相推移とは何かを本当に分かっているということにならない。通常は講義時間やページ数の制約でこっから先は触れらず、とりあえず零点が複素平面の右半面にあると非最小位相推移系だということを天下り式に飲み込まされることになる。その零点は不安定零点とか呼ばれる。制御工学ではフィードバック制御理論がうまくいくのは最小位相推移系であることが暗黙の前提だからだ。非最小位相推移系だと制御入力の周波数成分が高ければ高いほど応答遅延が増すのでフィードバック制御がうまくいかないためだ。普通の振り子は最小位相推移系だが、天地さかさまにした倒立振り子は非最小位相推移系である。後者の自動制御が難しそうなのは想像がつく。また非最小位相推移系かどうかは周波数ゲイン特性を見ても判別つかないというのもこの例でわかる。

周波数ゲイン特性と周波数位相特性はそれぞれ伝達関数の実部と虚部なので、複素平面上でωをパラメータとして変化させればxy平面上に連続的にプロットできるはずである。それがNyquist線図である。

先の非最小位相推移関数G2をプロットしてみると



かなり大回りして3/4平面をまたいでいる。

それに対して最小位相推移関数G1の方は



ということで4分の1平面内に収まっている。

再び位相推移の違いが生まれる仕組みを幾何学的な視点で見てみることにしよう。

制御工学ではRoot Locus(根軌跡)メソッドと呼ばれる古くからの方法である。

2011/4/4

大震災があって間が開いてしまった。その間も暇さえあればこの問題のことを考え続けていたが、ここまできて深みにはまった感がする。すでに遅いのだが。

根軌跡を描くには、伝達イミッタンス関数の分子と分母のそれぞれをsに関する代数方程式とみなしてその解の集合を求めればいいのだが、よく考えたら高次の代数方程式の解の公式そのものが存在しないことを思い出した。二次とか三次ぐらいまではいいかもしれない、それでも四次までが限界だ。二次方程式の解の公式を思い出せば、解の集合がすべて曲線上に存在することが想像がつく。これは視点の転換であると同時に言い換えでもある。一次方程式の場合はいうまでもなく直線となる。このため根軌跡の解説としては四次以下の多項式を例としてあげているものがほとんどである。

2011/4/7

夜中にホテルのベッドで眠れずに悶々と考えをめぐらしていたら突然答えの一歩手前が見えた

それが合っているとすれば最初の着眼点は間違っていなかったということになる。

今一度最初の一歩に立ち戻って考え直し、定常状態のみを考えてs=jωとすると

\begin{eqnarray}<br />\frac{P\left(j\omega\right)}{Q\left(j\omega\right)}&=&\frac{P\left(j\omega\right)\overline{Q\left(j\omega\right)}}{Q\left(j\omega\right)\overline{Q\left(j\omega\right)}}\\<br />&=&\frac{P\left(j\omega\right)\overline{Q\left(j\omega\right)}}{\left|Q\left(j\omega\right)\right|^2}\\<br />&=&\frac{\left|P\left(j\omega\right)\right|}{\left|Q\left(j\omega\right)\right|}e^{j\angle{P\left(j\omega\right)}}\frac{\cancel{\left|\overline{Q\left(j\omega\right)}\right|}}{\cancel{\left|Q\left(j\omega\right)\right|}}e^{j\angle\overline{Q\left(j\omega\right)}}\\<br />&=&\frac{\left|P\left(j\omega\right)\right|}{\left|Q\left(j\omega\right)\right|}e^{j\left(\angle{P\left(j\omega\right)}-\angle{Q\left(j\omega\right)}\right)}\\<br />\end{eqnarray}

ということだった。以前から複素有理関数が2つの単位ベクトルの積に分解できることは気づいていたが、それが解決への一歩手前の段階だということに思い至らなかっただけだった。

伝達イミッタンス関数は見事に周波数ゲイン(正の実数値をとる関数)と右半平面に零点を持ち得るP(s)と同じ方向を持つ単位ベクトルと正実関数で右半平面に零点も極ももたないQ(s)の共役と同じ方向を持つ単位ベクトルの積に分解できるとも言える。これは著者はこのことを回答で利用している。

だいぶ寄り道したけど目の前にもっと近道があったんだ( ´∀`)

さてあとは、正実関数Q(s)のとる偏角の範囲と、右半平面に零点を持ち得るP(s)の偏角の範囲がわかればその差から伝達イミッタンス関数の偏角の範囲が決まることになる。答えの一歩手前まできた。

上の式のままだとP(s)の零点は右半平面と左半平面が複数混在しているため、因子分解して右反平面に零点を持つ因子の積からなる多項式P'(s)と右半平面に零点を一切もたない因子の積のみからなる多項式P''(s)に分解する。

\begin{eqnarray}<br />P\left(j\omega\right)&=&P^{\'}\left(j\omega\right)P^{\'\'}\left(j\omega\right)\\<br />P^{\'}\left(j\omega\right)&=&\Pi_{i}\left(j\omega-s_{ai}\right)\,\,\left{Re\left(s_{ai}\right)\gt 0\right}\\<br />P^{\'\'}\left(j\omega\right)&=&\Pi_{k}\left(j\omega-s_{bk}\right)\,\,\left{Re\left(s_{bk}\right)\le 0\right}<br />\end{eqnarray}

そうすると伝達イミッタンス関数は完全に不安定零点のみを持つP'(s)と同じ方向もつ単位ベクトルと不安定零点をもたない単位ベクトルの積に分解できる。

\begin{eqnarray}<br />\frac{P\left(j\omega\right)}{Q\left(j\omega\right)}&=&\frac{\left|P\left(j\omega\right)\right|}{\left|Q\left(j\omega\right)\right|}e^{j\left(\angle{P^{\'}\left(j\omega\right)}+\angle{P^{\'\'}\left(j\omega\right)}-\angle{Q\left(j\omega\right)}\right)}<br />\end{eqnarray}

これで∠P'(s)を差し引いた残り∠P''(s)-∠Q(s)は正実関数が取り得る偏角の範囲に収まるはず。あとは前者と後者の偏角の取り得る範囲をそれぞれ求めればいいことになる。

ここにきて著者の回答の後追いの様相をみせているが、問題解決を追体験することに意義がある。

さてこっからどうすんだこれ(´Д`;)

デジタル導波管に関するだけど

Positive Real Function



前に紹介したけど良く読んでいなかったの正実関数に関して読み直した

「回路網理論 I」尾崎弘 黒田一之 共著 共立出版
「大学教程 電気回路(2)」尾崎弘著 オーム社

こちらがヒントになった。

とりあえず正実関数、P''(jω)とQ(jω)の偏角が取り得る範囲は正実関数の定義から自明で

\begin{eqnarray}<br />Re\left(j\omega\right)\ge 0\\<br />Re\left(P^{\'\'}\left(j\omega\right)\right)&=&\left|P^{\'\'}\left(j\omega\right)\right|\cos\left(\angle{P^{\'\'}\left(j\omega\right)}\right)\ge 0\\<br />Re\left(Q\left(j\omega\right)\right)&=&\left|Q\left(j\omega\right)\right|\cos\left(\angle{Q\left(j\omega\right)}\right)\ge 0\\<br />-\frac{\pi}{2}\ge\angle{P^{\'\'}\left(j\omega\right)}\le \frac{\pi}{2}\\<br />-\frac{\pi}{2}\ge\angle{Q\left(j\omega\right)}\le \frac{\pi}{2}<br />\end{eqnarray}

しかし問題がある。∠P''(jω)-∠Q(jω)の取り得る範囲が広がってしまうのである

\begin{eqnarray}<br />-\pi\ge\angle{P^{\'\'}\left(j\omega\right)}-\angle{Q\left(j\omega\right)}\le \pi<br />\end{eqnarray}

複素有理関数が正実関数になる条件を調べなければならない。有理関数が正実関数となる条件を調べる必要がある。著者はこれを飛ばしている。

ここにきて正実関数についてわかっていたつもりで実はよくわかっていなかったのに気づいた。それと正実関数の定義も人と時代によって微妙に違いがあるというのも今頃わかった。前述のスタンフォード大学の資料では、離散時間系のz変換表記のzなのか複素数のzなのか紛らわしい。もしかしたら全部前者なのかもしれない。

有理関数の分子と分母の次数の差が1以下でないと正実関数とならないのはすでにまなんだが、それを証明することはやってなかった。今になって疑問に思えてきたので自分で証明してみないと納得がいかないことになってしまった。すでに知っている証明は次数の差が2以上だとω=0やω=∞で二位以上の零点や極が出てくる。正実関数の零点や極は一位に限るのでそれに反するというものだ。そうするとそれはどうやって証明するのかという新たな疑問が生まれる。

なまじ数学的な視点を身につけてきただけに、昔は気にしなかったそういう天下り的な知識構成も厳密に自分で構築しなおさないと気がすまなくなってしまった。

ううむ参考所の証明を読んでもなんか納得がいかない。もっと見通しがよくできないものかと思うが自分で思いつくはずもなく。

とりあえず先に進めるために、有理関数が正実関数であるためには分母と分子の次数の差が1以下であるということにしよう。

ここで先ほど不安定零点を持つ多項式とそうでない多項式を分離したが、それによって安定零点を持つ側の有理関数の分子の次数が不安定零点の数だけ減ってしまうので、それを補う必要がある。

ここで「エレガントな問題解決」でも紹介されている「意図的に0を足す」という手法を使うことにしよう。

P'(jω)の不安定零点の実数部の極性を逆にして安定零点を持つ多項式P'''(jω)を導入する

\begin{eqnarray}<br />P^{\'\'\'}\left(j\omega\right)&=&\Pi_{i}\left(j\omega-s_{ci}\right)\,\,\left{Re\left(s_{ci}\right)=-Re\left(s_{ai}\right)\le 0,\,\,\left|s_{ci}\right|=\left|s_{ai}\right|\right}<br />\end{eqnarray}

これ元の有理関数の分母と分子にそれぞれ乗じると

\begin{eqnarray}<br />\frac{P\left(j\omega\right)}{Q\left(j\omega\right)}&=&\frac{P^{\'}\left(j\omega\right)P^{\'\'}\left(j\omega\right)P^{\'\'\'}\left(j\omega\right)}{P^{\'\'\'}\left(j\omega\right)Q\left(j\omega\right)}\\<br />&=&\frac{\left|P\left(j\omega\right)\right|}{\left|Q\left(j\omega\right)\right|}e^{j\left(\left(\angle{P^{\'}\left(j\omega\right)}-\angle{P^{\'\'\'}\left(j\omega\right)}\right)+\left(\angle{P^{\'\'}\left(j\omega\right)}+\angle{P^{\'\'\'}\left(j\omega\right)}-\angle{Q\left(j\omega\right)}\right)\right)}<br />\end{eqnarray}

有理関数P''(jω)P'''(jω)/Q(jω)はそれぞれの多項式が正実関数であるのと、分母と分子の多項式の次数の差が1以下であるので正実関数である。従って、その偏角が取り得る範囲は最小位相推移

\begin{eqnarray}<br />-\frac{\pi}{2}\le \angle{P^{\'\'}\left(j\omega\right)}+\angle{P^{\'\'\'}\left(j\omega\right)}-\angle{Q\left(j\omega\right)}\le \frac{\pi}{2}<br />\end{eqnarray}

ということで残る問題は非最小位相推移系の有理関数P'(jω)/P'''(jω)の偏角∠P'(jω)-∠P'''(jω)の取り得る範囲がどうなるかである。

ここで再び以前の非最小推移関数G2を幾何学的な視点で探ってみよう

\begin{eqnarray}<br />G_2\left(s\right)&=&\frac{1-s}{s^2+s+1}\\<br />&=&\frac{1-s}{\left(s+\frac{1}{2}\right)^2+\frac{3}{4}}\\<br />&=&\frac{1-s}{\left(s+\frac{1}{2}\right)^2-\left(\frac{j\sqrt{3}}{2}\right)^2}\\<br />&=&\frac{1-s}{\left(s+\frac{1}{2}+\frac{j\sqrt{3}}{2}\right)\left(s+\frac{1}{2}-\frac{j\sqrt{3}}{2}\right)}\\<br />&=&\frac{s_{a}-s}{\left(s-s_{b1}\right)\left(s-s_{b2}\right)}\\<br />s_{a}&=&1\\<br />s_{b1}&=&\frac{-1+j\sqrt{3}}{2}\\<br />s_{b2}&=&\frac{-1-j\sqrt{3}}{2}<br />\end{eqnarray}

零点は右半平面でs=1、極は左半平面上にs=(-1+j√3)/2,(-1-j√3)/2である。これを定常状態での偏角を調べるためにs=jωとおき分子と分母のベクトルを図示すると



\begin{eqnarray}<br />\left.\angle{G_2(j\omega)}\right|_{\omega=0}&=&\left.\angle{(s_{a}-j\omega)}\right|_{\omega=0}-\left(\left.\angle{(j\omega-s_{b1})}\right|_{\omega=0}+\left.\angle{(j\omega-s_{b2})}\right|_{\omega=0}\right)\\<br />&=&0\\<br />\left.\angle{G_2(j\omega)}\right|_{\omega=\infty}&=&\left.\angle{(s_{a}-j\omega)}\right|_{\omega=\infty}-\left(\left.\angle{(j\omega-s_{b1})}\right|_{\omega=\infty}+\left.\angle{(j\omega-s_{b2})}\right|_{\omega=\infty}\right)\\<br />&=&-\frac{\pi}{2}-\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}\right)\\<br />&=&-\frac{3\pi}{2}<br />\end{eqnarray}

といことで前に解析した通りに0〜-270°までωが大きくになるにつれ位相が遅れていくのがわかる。

さて直感的にはこれで十分説明がつくので参考書ではここまでのものがほとんどだ。さっさと他へ進めということかもしれない。

ここで今一度踏みとどまって非最小推移関数を定義できないかやってみよう。

先のG1を意図的に0を足す(もしくは1を乗じる)テクニックで最小位相推移関数と非最小推移関数の積に分解してみよう。

\begin{eqnarray}<br />G_2(s)&=&\frac{s_{a}-s}{\left(s-s_{b1}\right)\left(s-s_{b2}\right)}\\<br />&=&\frac{\left(s_{a}-s\right)\left(s_{a}+s\right)}{\left(s_{a}+s\right)\left(s-s_{b1}\right)\left(s-s_{b2}\right)}\\<br />&=&G^{\'}_2\left(s\right)G^{\'\'}_2\left(s\right)\\<br />G^{\'}_2\left(s\right)&=&\frac{s_{a}-s}{s_{a}+s}\\<br />G^{\'\'}_2\left(s\right)&=&\frac{s_{a}+s}{\left(s-s_{b1}\right)\left(s-s_{b2}\right)}<br />\end{eqnarray}

G''2(s)は右半平面に零点も極ももたない正実関数となり最小位相推移関数であるので、右半平面に零点を持つG'(s)について定常状態(s=jω)の場合をベクトル図に描いてみると



\begin{eqnarray}<br />\left.\angle{G^{\'\'}_2(j\omega)}\right|_{\omega=0}&=&\left.\angle{(s_{a}-j\omega)}\right|_{\omega=0}-\left.\angle{(s_{a}+j\omega)}\right|_{\omega=0}\\<br />&=&0\\<br />\left.\angle{G^{\'\'}_2(j\omega)}\right|_{\omega=\infty}&=&\left.\angle{(s_{a}-j\omega)}\right|_{\omega=\infty}-\left.\angle{(s_{a}+j\omega)}\right|_{\omega=\infty}\\<br />&=&-\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{2}\\<br />&=&-\pi<br />\end{eqnarray}

これは全域通過関数である。これの周波数ゲイン特性を求めてみれば常に一定であることが確かめられる。位相はω=0で0でωが増大するにつれ-π(-180°)まで連続的に遅れる。従って最小位相推移回路と従属接続すると当然のことながら最小位相推移回路よりも位相遅れが大きくなるのは明らかである。

この例では零点と極はともに実軸上にあるが、複素数である場合には零点と極はそれぞれ実部の符号が異なり、共役複素数として現れることになる。このケースも全域通過特性となるが実際に確かめるのは読者の課題としよう。

数理的に示すことは実力が足らずできなかったがこれでこの問題は終わりとしよう。

正実関数の概念は元々はCauerが発端であるが、完成させたのが彼の指導のもとで学位を得たOtto Bruneである。GöttingenでHirbeltの血脈をひくCauerだけに数学的な視点から電気回路を見るとこうも光がさすものかと感嘆させられる。今度は複素関数論とかも勉強したほうがよいのかもしれない。多変数の複素関数論やその正実関数にかんする理論は日本人が歴史的に先駆的な役割を果たしているのは偶然ではなかろう。

これだけやれば近代制御理論も視野に入る基礎ができたも同然だ。学生の時にこのくらいやっていればと悔やまれる。

P.S

先に引用した最小位相推移と非最小位相推移のBode線図から気づくのは、おもしろいことに受動素子だけでできているのに1を超えるゲインが得られる周波数が存在する点である。受動回路なのに増幅をしているように見える。
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