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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2012-4-5 10:59
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
続:RC並列回路
前問を解くのにぴったり1ヶ月を要したので、次の問題はどんだけ難しいのだろうと恐れていたが、そうでもなかった。

といっても簡単ではなく、RC並列回路が2つ直列になっているので、RC直並列回路というべきかもしれない。

以下の回路でt=0でスイッチを閉じる場合、電流iおよびキャパシタンスC1,C3の電荷q1,q3を求めよ。ただしC1,C3に初期電荷はなかったものとする。



電圧Eが直列に接続された2つのRC並列回路にステップ入力されると考えることができる。

以下の関係式が成り立つ



これをHeaviside演算子とベクトルで書き直すと



これを演算子法で解くと



ということになる。

簡単に解けたように見えるが、実はここで矛盾が生じる。題意ではt=0でC1,C3の初期電荷は0ということになっているが、上記の解にt=0を代入すると



ということになり、初期電荷が0でないということになってしまう。

どうしてこういうことになってしまうのだろう( ´д`)

宇宙の始まりのビッグバンが発生する以前に、既に宇宙があったことになってしまう。これでは矛盾する。それと同じである。

また電流iに関しても、初期状態でC1,C3の電荷は0だとすると電圧降下が0の素子が直列に接続して電源を短絡する状態で待ち受けていることになる。t=0で無限大の電流が流れることになる(最初の電荷がC1,C3どちらかに蓄積されるまでの一瞬)。それはどうなってしまったのだろうか?解からだとt=0の電流は



ということになる。括弧内の第一項は抵抗R2,R4直列部分に流れる分で、残りがC1,C3直列部分に流れる電流ということになる。有限値というのが予め電荷が蓄積されているということを意味する。これも矛盾である。

最初の立式を微分方程式ではなく積分方程式にすれば電荷の初期条件を0にできると思われるが



これを解いても少なくともq1,q3については先の結果と変わらなかった。おそらくiも同じ結果だろう。それを確認するのは読者の課題としよう(´ー` )

どうすんだこれ(;´Д`)

t=0は特異点ということで目をつぶれば済むはなしではないだろう。納得がいかない。

この問題の困難な点は定電圧源と並列にキャパシタが接続されていることにある。キャパシタの初期電荷が0とすると、初期の電圧降下は0となるためt=0ではv1+v3=Eの条件を満たさないという矛盾が生じる。

この回路と相対な以下の回路で考えても同様のことが言える



みての通り先の回路とは以下の相対関係がある

・キャパシタンスC1⇔インダクタンスL1
・キャパシタンスC3⇔インダクタンスL3
・抵抗R2⇔コンダクタンスR2
・抵抗R4⇔コンダクタンスR4
・電流i⇔電圧v
・電圧v1⇔電流i1
・電圧v3⇔電流i3
・電圧源E⇔電流源E
・スイッチ短絡⇔スイッチ開放

t<0ではスイッチが閉じているため、v=0である。しかしt=0でスイッチが開くと電流源Eは回路に定電流Eを流そうとし、L1,L3は逆に鎖交磁束不変の理で流れる電流を保とうとするために無限大の電圧降下が発生する、電流源は電流を流そうとして出力電圧を無限大に上昇させる・・・押しくらまんじゅうになる。結局t=0ではi1+i3=0が保たれる。

どこからこの状態が決壊するのだろうか?

それを考えるためには以下のように捉える必要がある



すなわちスイッチが開く前に予めL1,L3にはそれぞれ非零なるポテンシャルエネルギーが蓄えられていて、それによるi1(-0)=-i3(-0)≠0というポテンシャル電流が流れていると仮定する。スイッチは閉じているのだから、v=0であり初期条件は満足する。抵抗の両端の電圧降下については条件を付けていないのでi1(-0),i3(-0)を非零な任意の値を与えることができる。

そしてt=0でスイッチが開くと、それまで閉じたスイッチを流れていたポテンシャル電流i1(+0),i3(+0)は逃げ場を失い、L1,L3,1/R2,1/R4で構成される閉回路を流れるようになる。この場合i1(+0),i3(+0)は互いにに打ち消し合い、見かけ上0となる。

そこに同時期に電流源Eから流し込まされる電流が重ね合わされることになる。この場合は、鎖交磁束不変の理で電流を保とうとするためL1,L3の両端に同じ極性の電圧降下が発生しv≠0となる。

これであればt<0でなんらかのポテンシャル電流i1(-0)=i(+0)=-i3(-0)=-i3(+0)≠0が存在する仮定を除いてはなんの疑問も生じない。

疑り深い読者は上記のt<0のときと同じ閉回路をこしらえて抵抗の両端の電圧を測定したら0だったから電流など流れていないと反論するかもしれない。しかしi1(-0),i3(-0)の値は任意に決められるので、測定できないような限りなく0に近い微少な値でもよいのである(対称性にわずかでも揺らぎがあればよい)。

従って、著者が解で注記しているのと同様に、u1(-0)+u3(-0)=0を満足するようにt<0でi2(-0)=-i4(-0)のポテンシャル電流が予め流れているとする考えることができる。q1,q3の式はあくまでC1,C3に蓄積された電荷の量なので、C1とC3のポテンシャル電荷の極性が同じである必要は無い。ということだった。

以下の様にi4,u3の極性を逆にして解けばよい(´ー` )



以下の関係が成り立つ



これを解くと




ということになる。従ってq1(-0)+q3(-0)=q1(+0)+q3(+0)=0となり題意の初期条件を(電荷量保存則の観点から)満足するのでまったく問題ない。強いて言えば、"ただしC1,C3に初期電荷はなかったものとする"という問題文に問題があるというべきかもしれない。

P.S

簡単そうに見える回路だが、そこには宇宙の起源にも関係する深淵な理論が隠されていたのだった。そのためか、ほとんど一般に見られる出版物や講義ではこの種の問題を華麗にスルーしている。その意味では本書にこの問題を掲載した著者の見識は高く評価される。

P.S

とは言えやはり納得はいかない。その理由は本質的にこの問題の解が有界ではないことに起因するのではないかと予想している。Hilbert空間における線型作用素(演算子)の線型性が成り立つのは関数が有界である場合に限られるからである。この問題の演算子法による計算手順にはここに示した以外に部分分数に展開する方法がある。その場合、電流の解に電圧のステップ入力を微分する項が現れる。これはt=0において電流が一瞬だけ∞の値を取ることを意味する。その項を無視すると、先の解と同じ結果になる。

19世紀の数学ではδ関数は存在せずHeaviside関数の導関数も存在しなかった、微分不可能な点を含むからである。20世紀になってDiracが単位ステップ関数の導関数であるδ関数を考案した。Diracは電気工学の学生時代にHeavisideの電磁気学理論の著書に出会い、人生が変わった。厳密な純粋数学の呪縛から解き放され、解脱したのである。その結果生まれたのがδ関数、後に超関数(distribution)理論としてSchwartzが系統化し従来の関数概念を拡張する数学的な偉業を成し遂げた。それ以来やっと量子力学では大手を振ってδ関数やHeaviside関数(単位ステップ関数)を扱えるようになった。しかしそれとて決して万能ではなく、一定の条件がつくことになる。おそらく本問題の解ではt=0に関してはそれが成り立たないのではないだろうかと予想される。これ以上の研究は読者の課題としよう( ´∀`)
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