ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
Main Menu
Tweet
Facebook
Line
:-?
フラット表示 前のトピック | 次のトピック
投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2015-4-26 21:43
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3068
Re: 自分の数学を持つことの勧め
ベクトル解析の入門書はいくつも購入して読んだものの、森さんの本を読んでも解ったようで実は良く解っていなかった。

やはり自分で考えるのが性に合っているかもしれない。

前回は斜交するベクトルが構成する並行四辺形の面積を考えたが、今度は同じ斜交するベクトルが構成するもうひとつの並行四辺形の面積を考えることにする。

え、斜交する2つのベクトルが構成する並行四辺形ってひとつだけじゃないのと考える方が多いがそれはもっともである。

今回はベクトルの内積について考えてみる。大抵の入門書では内積に関してページを割くのは1ページ以内で、外積についてはかなり慎重に説明しているのが普通である。なぜこうも扱いが違うのかというのを疑問に思っていたが、ベクトル解析の歴史を学ぶと理由がなんとなく分かってくる。

その前に、もうひとつの平行四辺形が存在する意味を明らかにしないといけない。

普通にベクトルの内積というと



とか、



などと書かれる。

最初のは定義だと言われても、代数的に見通しが良いと言われても釈然としない。二番目は確かに並行四辺形の面積を表していることは解るがθの定義が曖昧だと前の記事で出した外積のときの並行四辺形の面積と区別がつかない。

最初の定義になんらかの幾何学的な意味があってよさそうだ。

実は前の記事で出した外積の場合の並行四辺形の面積の式と良く似ていることに気付く。



つまるところ上に示されるように成分としてb2,-b1を持つもうひとつのベクトルcと成す並行四辺形がすなわち内積だとも言える。

このもうひとつのベクトルcは実はベクトルbを90度回転したものであることは以下の関係から明らか。



これは前回Hamiltonの四元数を再発見した際に出てきた直交変換行列の片割れ(時計方向に大きさを変えずに90度回転)である。

幾何学的に見てみると



という具合にもう一つの並行四辺形が存在し、その面積が内積として定義できることがわかる。

こんなへそ曲がりな視点で書かれたテキストは世の中に存在するはずもない、自分数学の独断場である。

この関係から、ベクトルa,bが最初から直交して居るときには、もう一つの並行四辺形はぺしゃんこにつぶれてしまう(ベクトルa,cが線形独立でなくなる)ため内積は0ということがわかる。また逆も真なりで、ベクトルa,bが平行なら、その内積であるもうひとつの平行四辺形は直角形になり最大値を持つことになる。

これで内積とが外積が同時に理解できるじゃないか(´∀` )

歴史的には19世紀のベクトル解析の暗黒時代にさかのぼる必要がある。

Hamiltonが四元数を見いだし、Maxwellが電磁気学の本を出版し、Heviesideがそれに魅了されて独学で研究を始めた時代である。

今日ベクトル解析で使われるスカラーやベクトルという用語は実はHamiltonが四元数を表した時に用いたのが最初である。後にベクトル解析学者はHamiltonの四元数を研究し、そして都合の悪い部分は捨てて都合の良い部分を採用したというまさにbootlegに限りなく近いことが行われた黒歴史がある。

ではHamiltonの四元数の何が都合が悪く、何が都合が良かったのだろうか?

Maxwellも初版では四元数を用いようとしたために、結局のところ関係式をベクトル成分毎に記述するしかなかったが、没後の第二版ではそこは改められてベクトル解析よりの記述になっている。我々が今日目にすることができるのは後者の方で、Heavisideなどの同時代人が読んだのは初版本である。

Hamiltonの四元数は実数項から成るスカラー項と、それと互いに直交する3つの直交基底からなるベクトル項で構成される。

まずはスカラー項は0としてベクトル項だけでベクトルa,bを四元数で表すとして、その積を計算してみることにしよう。



ということになり、ベクトル項だけの四元数を乗じるとベクトル項以外にスカラー項が出てきてしまう。スカラー項はベクトルの内積の形をしている、ベクトル項は外積の形をしていることがわかる。

ベクトル項のかけ算からスカラー項が出てくるのは、Hamiltonが見いだしたベクトル項の基底の乗法則から当然の結果である。

19世紀のベクトル解析学者は、ベクトル項だけで事は済むはずだと考えて、Hamiltonの乗法則を以下の用に変更し、それをベクトルの外積の定義とした。



つまり並行な(線形従属な)ベクトルの間の外積は0とすることによって、ベクトル項の積からスカラー項を抹消することにしたのである。

従ってベクトル解析では



というのが今日の定番となったわけである。

20世紀の後半になってようやくスカラー項が意味のある物理量を表すことが再発見されることになる。
フラット表示 前のトピック | 次のトピック

題名 投稿者 日時
   自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-2-3 12:47
     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-16 10:45
       Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-17 9:57
         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-15 21:41
           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-21 10:25
           » Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-26 21:43
               Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-29 20:10
                 Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-5 5:33
                   Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-12 18:15
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-20 9:56
                   Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-11-15 11:47
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-12-19 21:03
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-4 22:15
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-10 22:07
                       Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-16 17:45
                         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-4-6 12:47
                           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-7-26 20:20

投稿するにはまず登録を
 
ページ変換(Google Translation)
サイト内検索