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webadm
投稿日時: 2017-5-28 21:31
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登録日: 2004-11-7
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投稿: 3086
Re: ピアノ教本
ふう、「大人のための独習バイエル(下)」の STEP2 に取り組んで早3ヶ月近く経ちますが、まだ全曲は仕上がっていません(´Д`;)

以前は大部分仕上がって、あとは課題曲だけ難しくて仕上がりが遅れていたのですが。

バイエルの70番あたりに入って挫折する子とかピアノ止める子とが多いという本当の理由がそうした停滞の原因を突き詰めることでわかったような気がします。

下巻のSTEP1で上巻の時の静かな手(5度圏固定)の制限が無くなり、6度もしくは8度圏に指を拡げる程度ですが、ポジションの移動には変わらないので慣れが必要で、3ヶ月もかかったわけです。

WALKMANで録音したSTEP2の最後の頃と通奏を聞くと、良く弾けてるなという感じがします。

それに比べて STEP3 は雲泥の差(´Д`;)

STEP3 は STEP2 とどこが違うのでしょうか?

それぞれの曲の演奏時間は長いものでも1分以内で、1分以上のものがあった STEP2 よりは短いものばかり。

確かに STEP2 ではトリルだけでしたが、 STEP3 はトリルとトレモロのどちらも出てきます。トレモロは慣れるのに苦労したよね。

それだけだったら苦労はしないはず。

譜読みの段階や運指確認の段階で見落としていた要素が多々あったことに後になって気づいたのが敗因(´Д`;)

そんなこんなを具体的に各曲別に感想を述べたいと思います(まだ仕上げの途中ですが)。

一言で言えば、バイエルの70番代で挫折する真の理由は、ピアノ演奏の本当の難しさを実感する段階だからだと思います。

厳しい先生ならこの関所は容易に通してもらえないでしょうから、何年もここでとどまってしまう生徒も出てきてしまいます。子供だと理由が分からず止めてしまう原因になると思うのですが、大人なら疑問を持って質問したり、うまく弾けていない原因を自分で考えたりして乗り越えてほしいところですが、そうでないとやはりそこで一生を終えてしまうかも。

59番 Allegretto c-dur

3拍子の古典舞曲な感じ。右手は大部分ポジション固定で5度圏内を弾きますが、左手はほとんど分散和音(アルベルティバス)を弾く感じですが、指拡げでポジション移動の頻度が多いです。

左手の分散和音を観ると、ハ長調の C(ドミソ) と G(シレソ) が交互に現れているのが観てとれます。これは典型的なコード進行(I-V-I)パターンです。G は基本和音(ソシレ)の根音ソを1オクターブ上にした第一転回和音だというのをこの機会に覚えておくと良い感じ。

下に2度、上に2度指拡げが出来るようになると、片手で弾ける和音の種類が基本和音の I 以外に II, V, VI, VIIが加わります。

この段階から音楽理論の基本を並行して学ぶと良いかも。

さてこの曲のどこが難しいかというと全体を通して左手と右手の並進行(parallel motion)、反進行(contrary motion)、斜進行(oblique motion)すべてが1小節毎に登場する点だと思われます。

最初は後半に怒濤の様にそれが現れるのでそこで躓くのですが、実はそれ以前からそういう曲だというのを見落としていたというのが敗因(´Д`;)

後半の怒濤の部分がなんとか弾けるようになると、それ以前のところでも時々間違えるのはそれが原因。

2ヶ月ぐらいしてそのことにやっと気づく(遅)

そうとわかれば、そのための練習曲なんだと目的がはっきりするので取り組み方も違ってきます。

バイエルさん良く考えているよね。

なので、この並進行、反進行、斜進行が間違いなく弾けるまではデュナミークとか考える余裕はありません。考えたとたんタッチが狂ってミスしまくりな惨事になりかねません。

各小節毎に、「ここは反進行ね、次は並進行、その次はまた反進行、。。。」という感じで分析して覚えておくと良いかも。

「大人のための独習バイエル(下)」ではこの曲のメトロノーム値はかなり速めな数値になっている感じがします。でも最初はゆっくりでないと前述の理由でミスが絶えません。

デュナミークに取り組む時には、クレッシェンドやデクレッシェンドは予告みたいな感じで早いタイミングで記載されるので、そこでびっくりしてタッチを急に変化しないように気をつけましょう(´Д`;)

ついつい f(フォルテ)や p(ピアノ)みたいに、そこから変化させてしまうのですが、クレッシェンドが現れた時点では弱いまま、デクレッシェンドが記入された時点では強いままでそこから指数関数的に変化させる感じ。

そういえば、f, p は昔は f. p. と省略語を表すピリオドが付いていたのね、やがてピリオドは省かれて f p だけになったみたい。

本当は譜読みの段階で演奏記号についても分析してどういうタッチで全体を弾けばいいか考えるのが良いけど、導入が終わってまだ日も浅い段階ではすべて同時期にこなすのは難しいので、ひとつひとつ段階的に分けて、優先順位の高いものから攻略するのが良いよね。

STEP1 だとお休みの日1日で15曲譜読みと運指確認が出来たので、翌日から通しで弾き始めることができましたが、STEP2 では譜読みと運指確認が最初の2曲しか出来なくて(難しくて)翌日は2曲しか通しで弾けませんでした。

参考になる演奏動画は少なくて、やはり以前に紹介した大学のビデオ。



上級者がバイエルを弾いたらこうなるという例でしょうか。アゴーギクを使ってテンポを揺らしています。自然でうまくいっているようです。


60番 Comodo a-moll

3拍子の古典舞曲。aで始まってaで終わるので、ハ長調の平行調であるイ短調。

なんとなく物憂げな感じがするよね。そういえば、ショパンの物憂げなワルツもこの曲と同じイ短調。調性というのはこういうことなのね。

出だしの部分を聞くと、子供の頃にテレビで良く観ていた「魔法使いサリー」の主題曲の出だしを思い出しました「マハリス・マハリタ・ヤンバラヤンヤンヤン・・・」

Youtube とかでもバイエルのこの曲は良く見かけます。海外では"Round Dance" とか "Circle Dance"という題名で親しまれているようです、ショパンの物憂げなワルツも「華麗なる円舞曲」と呼ばれるぐらいだから、そこから来ているのかも。

魔法使いサリーの作曲は小林亜星、テレビに良く出演してドラマ「寺内貫太郎一家」で主役の父親役で出ていたのが印象的で、CMやアニメで超有名な売れっ子作曲家だというのを知ったのは後の話。医学生時代に音楽好きが高じて転部したのが親にばれて勘当され、卒業後に就職したものの、音楽の道を目指す決意をして辞め、服部正に弟子入りしたというユニークな経歴。

魔法使いサリーのうたもイ短調なのでどこか物憂げな感じがするのは納得。

この曲の特徴は中間部分が平行調のハ長調に転調していること。物憂げな感じから、明るい雰囲気に色合いが変化します。最後はまたイ短調に戻るんだけどね。

ポジション移動が使えるようになると、こうした転調が自在に出来るので、演劇とかで使う舞台照明みたいな感じで、青から赤へスポットライトが変わり、また青へ戻るみたいな効果が得られます。

古典時代の曲では色調を変える手段として転調が多用されたようです。モーツアルトとかはめまぐるしく転調するので、演奏する方も大変みたいだよね。

それとこの曲には古典時代ではおなじみの対位法が使われています。右手が単独で始まり、一小節遅れて左手が加わり、右手が先にお休みに入ると今度は左手が先行し、右手が後から加わるという繰り返し。

良く覚えておかないと、緊張して右手と左手が最初同時に出てしまったり、大失敗を招きます(´Д`;)

右手、左手それぞれ休符が入るところではちゃんと音を切るように注意が必要。

それと最後は休符が無いので注意、うっかり早く音を切ってしまわないように(´Д`;)

こちらの曲はデュナミークが cresc. dim. として記入されていますが、意味は前の59番と同じ。 dim. がある小節は右手は四分音符一つで残りは休符であることから、左手の旋律に対するものだということがわかります。

dim.の後にfが来ることから、調性だけでなく音の強弱でも明暗をはっきりさせる意図が感じられます。

右手、左手ともに休符の前の四分音符が短めなスタッカートになってしまわないように注意。

ピアノ教室の先生のお手本演奏がありました。



もうひとつは、以前から参考にしているベテランの先生の動画の中にあったこの曲を題材にしてピアノの練習方法を伝授しているもの。



短い曲でもこんなにも研究の余地があるのだということを実感。

バイエルのこの曲は連弾曲ではないですが、日本の作曲家、三枝成彰が連弾曲にして初心者向けに書いたオリジナル曲を含めた曲集「バイエルであそぼう」を出版しています。プリマはほぼバイエル原曲のままですが、セコンダは三枝氏オリジナルの青い葉っぱとお月様という題名、イントロで鳥肌が立つぐらい印象的な作品に仕上がっています。



これを聞くと、プリマの子はイントロ聞いてびびりまくらないのかなという心配になります。


61番 Allegro moderato g-dur

調号記号は無いけど、低音部が gで始まりgで終わっているのでト長調。

4拍子ですが、右手は特徴的なリズムの音型の繰り返し、左手は最初から最後まで4拍子を刻むように分散和音を弾きます。

コード進行は59番と違って、低音部が g を保持音とするような感じで g が続きますが、高音部のメロディーとの和声的な関係によって、低音部のコードが影響を受けて変化するところがあります。

左手は g の分散和音で通したいつもりが、三小節目で右手のドシラが現れると、それまでの左手のソシレのままだと不協和音(ソラシドレ)になってしまうので、左手のシを2度つり上げて(suspended)ドにすることで回避していることがわかります。左手はコードで言うと Gsus4ということになります。

いろいろと作曲も大変だよね。和声理論の勉強には、右手のメロディーだけある曲に左手の低音部の伴奏を付けるとか、逆に伴奏が先にあって、それに合うメロディーを作るとかいう課題があるらしいね。

カラオケとかは演奏が伴奏だけなので、歌う時にはメロディーそのものを覚えていないと歌えないけど、うまい人だと曲聞いたことないのに伴奏に合わせて勝手にメロディー即興で歌いきる人とか居る。

なんの話だったっけ、ああ61番ね。

ちょっと変わったコード進行だけど、それに注意すれば間違わずに済むよね。右手がドシラの時は左手は Gsus4 という感じ。

最後が女性終止なので休符の前の音価を正確に。

参考になる動画は少なくて、やはり以前紹介した大学のビデオになります。このあたりの曲の番号は出版社によってオリジナルと異なった番号でアップロードされていることがあるのでことさら見つけにくいです。



これはちゃんと譜面通り dolce になってますね、そうなってない演奏がほとんどです。


62番 Allegro c-dur

3拍子で跳躍を繰り返す忙しい歌曲な感じ。

ハ長調だけど、2小節毎に転調を繰り返します。

コード進行で言うと C-Dm-G-C、典型的な I-II-V-I (1-2-5-1) で、中間の繰り返し部分だけは、G-C (V-I) が2回でて C-Dm-G-C (I-II-V-I )がそれに続いて繰り返し。

そうと解れば暗譜はし易いよね。

問題は跳躍だよね。

跳躍は小節毎に忙しく発生しますが、跳躍する前の最後の音はスタッカートでその後は休符なので、跳躍するのに十分な時間が与えられています。跳躍する小節の最後の音は短く切ってよいので指を鍵盤から離すと同時に休符の間にオクターブ上のポジションに移動して次の拍を待って弾き始めればいいことになります。

左手にはスタッカートは無いので、右手につられて休符の前の音の音価が短くならないように注意。右手は決まった音型なので、左手の音を最後まで聞いて弾く感じ。

最初はゆっくり間違えないように、拍をしっかり数えられるようなテンポで練習すると良いよね。

参考になりそうな演奏そしては、やはり以前に紹介した大学の先生の教材記録映像の中から



ちょっとやそっとでこの演奏の真似はできないよね。


63番 Allegretto g-dur

3拍子のユニゾンな古典舞曲。

これも基本は3拍子の拍を正確にテンポが極端に速くなったり遅くなったりしないように最初はゆっくり練習。

クレッシェンドやデクレッシェンドが一小節内で完結しているので、最初から意識するとリズムが崩れるという罠(´Д`;)

出だしは mf で中間の繰り返しが終わると f と p とくっきり感を出し、仕上げは長めのクレッシェンドでフォルテで力強く締めくくる感じ。

最後のコーダの部分では g の分散和音がスタッカティッシモになっているので、タッチを変える必要があります。私は指で鍵盤の上を払い落とす感じ(ひっかく感じ)で弾いていますが、はっきり聞こえれば人それぞれで良いかも。

最後女性終止なので休符を忘れずに。

もともとバイエルは連弾曲としてこの曲を書いていますが、「大人のための独習バイエル」ではプリマのみとなっています。

発表会とかで連弾曲としてこの曲が演奏される時にはバイエルオリジナルのものではなく、先に紹介した三枝氏の編曲による"むぎばたけ"が普通のようです。



発表会での動画もあるのですが、そちらは演奏事故ぽい部分があったりして気の毒なので、こちらをご紹介。

下のはバイエルオリジナルの連弾譜を演奏したもの。ワルツのリズムがはっきり出ていてオリジナルも捨てがたいよね。




64番 Comodo g-dur

調号はそうなってませんが、コード進行が G で始まり G で終わっているのでト長調ということに。

3拍子ですが、リズム的には古典舞曲ではなく、どちらかというと歌曲、それもアリアな感じ。

同じト長調で有名なアリアは、バッハのゴルドベルク変奏曲のアリアが有名ですが、それと感じが良く似ているのは同じ調性のおかげ。

そのためか、演奏記号も dolce で始まります。

どちらかというpかppぐらいの弱めで優しく歌う感じが良いのかも。

右手には同音連打と、シンコペーション、スケール、など小節毎に変わる忙しさ。
左手もそれに負けずにトリルとトレモロが小節毎に交互に現れます。


この段階でトリルとトレモロがしっかり途中で疲れることなく引き続けるコツを習得しないといけないことに気づかされます。

指先も大事ですが、指が自由に上下出来るようにそれをサポートするように手首や腕も心持ち回転(ローテーション)すると疲れずに済みます。

右手の同音連打は、スラーで繋がっているので、2つの指で交互に鍵盤を撫でる感じで弾くと、dolce とスラーの双方の要件を満たすことができます。

問題は左手のトリルやトレモロが右手より目立ち過ぎないように手加減するのが難しい点。

これは一朝一夕では出来ないよね。そう覚悟した方がよさそう。

幼少の頃から何年も練習してレッスンに通って居る小学生に、初めて数ヶ月の大人が太刀打ちできるわけが無いよね。

やっぱりレガートと左手の強弱のコントロールが両立するには数年はかかと覚悟した方がよさそう。無理に強化練習しても故障するのが見えているし。

それでも日々の練習の積み重ねの効果は実感しているので、朝の最初にやっている「Pianoprima exercises」のメニューも、それまでは加減とか考えずに早いテンポで弾ききることしかしてなかったけど、一番難しいピアニッシモで安定して弾けるように耳をダンボにしてゆっくり弾くように変えました。

右手の方はさすがに利き手なので強弱の加減は左手に比べるとまだましですが、左手はふにゃふにゃなので思ったタッチが安定してできません。

それと気になるのが、休符だけの最後の小節。音はそのひとつ前の小節でで終わっているので、その後に休符だけの小節を書く必要はないはず。

テンポの速い曲だと、急に始まって耳が追い付いてきたときには急に終わってしまって印象に残らないので、1小節最後に耳が追い付くための余韻を与える時間という解釈が普通ぽい。

ベートーベンとかの曲にも同様の休符だけの小節に更に謎めいたフェルマータ指示があるという例があるそうです。

文章でいえば、ピリオドとそれに後続する空白みたいな感じかな。

ちなみに最後の小節の繰り返し数1は、バイエル初版本には記載されていないので、著者が独自にオーケストラ譜とかに良く表れる、楽器のパートが演奏されない部分については休符だけの小節が続くことになるので、省略記法として繰り返し小節数を中央に記載する例を示していると思います。

手元のデジタルピアノはYAMAHAのP-115という数年前に出た現行モデルですが、鍵盤は据え置きタイプのアリウスの上位機種と同じ GHS 鍵盤で、アップライトピアノのタッチを実現しています。なのであまりそっと弾くと音が出ない(´Д`;)、ピアニッシモを安定して出すのは超難しい。時々音が抜けるのよね。Pシリーズはアリウスの本体だけ可搬にしてステージやスタジオに持ち込めるようにしたモデルな感じ。

Youtube でも時々 P-115を使って演奏動画を見かけます。海外のピアノのベテランの先生だけど、デジタルピアノの演奏動画がアップロードされていました。普段の生ピアノを弾いている時よりかなり慎重にかつ丁寧に弾いているのが観てとれます。それだけにタッチが難しいのかも。



この手のポータブルデジタルピアノはステージやスタジオでライン出力を使用してアンプで拡声やレコーディングを行うことを前提としているので、内蔵スピーカーの出力も据え置きに比べて小さく、最低限に押さえられています。

別の動画では、インドの音楽学校のピアノ課の先生のもので、良く観るとボリューム設定が最大になっています。実際それぐらいにしないとピアニッシモからフォルテッシモまでのメリハリを出すことが出来ないのも事実。これを観てからはタッチの差を聞き取れるように自宅のP-115 もボリューム最大にしています(たまにミスタッチで大きな音が出る時はびっくりしますが、それも耳の訓練のため)。



P.S
良くみたらこちらはP-105でひとつ前のモデル。ほとんど同じなのですが、デザイン上の違いとして、P-105ではメーカーログが左側にあるのに対して、P-115では中央に位置しています。P-105は工業デザイン上はいいけど、ピアノで大事な鍵盤の中央を示すメーカーロゴが中央に無いという間違いを犯していたので、P-115で修正された模様。

他の動画ではボリュームをオフにしているので、やはり内蔵スピーカ出力ではなくライン出力から直接録音するようになったのかな。

たぶんにクラッシックピアノ向けではないけど、現代のポピュラー曲とか流行のニューエイジとか聞いて大人になってからピアノを弾けるようになりたいと思った人にはかなり刺激的な内容かも。先生だけあって、ちゃんとタッチの基礎はしっかりしているから、誰もがそのレベルにすぐに到達できるということは無いんだけどね。

たぶん今の状態では生ピアノでも同じ状況になると思うので、生ピアノはたぶん一生弾かないけど、デジタルピアノはちゃんと弾けるようになりたいでちゅ。

バイエルはこの曲を連弾曲として書いていますが、発表会で演奏される時には、オリジナルではなく先に紹介した三枝氏の編曲による"みんなでかりいれ"が定番のようです。



ちなみにこちらはオリジナルのバイエルの連弾譜を演奏したもの。同じ曲の連弾動画でも三枝氏の編曲であるとは書いていない場合、三枝氏の編曲によるものがあるのでオリジナルと勘違いしないように注意。



いやはや同じテーマーでも編曲によってこれほどまで違う曲になるのかと驚かされます。というか三枝氏の編曲がすごすぎ。


65番 Moderato c-dur

ここでようやく長いスケールを使った曲が登場。

対位法で右手が旋律、左手が伴奏の後に役割が交代します。コーダはスケールの反進行の繰り返しになっています。

これも片手のスケールの基本が地についていないと毎回ミスを誘発する原因になります。

最近ようやく指くぐりに不安が無くなったので安心して取り組めるようになりました。以前にいろいろなアプローチがあるのを紹介したけど、その中には無かったけど、その後読んだホフマン著の本のQ&Aの中にあった問答がヒントになりました。指くぐりの際に掌を内向(以前アレキサンダー・テクニークの本に出てきた)させるのがみそ。今まではその逆をやってて、肘が外に出すぎたり親指が痛くなったりどうにもまずかったのです。人によって違うアプローチがあるけどね。

sempre legato とあるので、終止レガートで弾く必要があります。最初は片手づつゆっくりと(レガートが難しくなるけど)音をつなげるようにしてからテンポを上げていく感じ。

後半のスケールの反進行は意外に楽です。反進行だと運指が左右対称になるからです。

よくスケールの練習メニューとかだと、反進行と並進行を繰り返すのがあるよね、並進行が難しいね。

参考になる演奏を探すと、アマチュアの方の演奏が癖が無くよさげでした。



ピアノ初心者でバイエルから始めましたと書いてあるけど、絶対に子供のころしっかり稽古しているよね。初心者がこんなに流れるように弾けるわけがないし。バイエルから再開組と思われ。


66番 Allegretto c-dure

六拍子だけど、著者がワンポイントアドバイスに書いてあるように六拍子は元々は二拍子を三連符で均等割りしたもの。早いテンポで二拍子の拍感覚が出るようにアクセントを付けると良い感じ。

ハ長調で、コード進行を観ると基本は C-F-C (I-IV-I)とC-G-C(I-V-I)の組み合わせですが、FからCへのコード遷移の際に次の小節のCの和音の gの音だけ前の小節の最後に先行して弾かれるというところがあります。これは和声理論では先行音とか呼ばれているものです。

慣れればいいのですが、それまでは意識しすぎるとそこで手が固くなって必ずミスするという罠。

繰り返し部分の最後が女性終止なので、繰り返しに戻る際に拍を外さないように最初は拍を数えながら練習すると良いかも。

最後の音は長くならないように休符をしっかり守って。

この曲もデュナミークが一小節内で完結しているので、右手か左手かどっちを加減すべきか最初に考えて置く必要があります。それと慌てないように。

この曲は著者が演奏を人前で披露するレパートリーとしてお勧めと書いてあります。確かに弾き心地も良いし、聴き映えもいいだろうなということは予想できます。しかし、タッチが安定してからね。ピアノの先生によっては、良いと言うまでは人前で弾くことを禁止しているようです、聞く側はどのようにとらえてもいいし批判するから、まだその心の準備が出来ていないうちに心ない批判にさらされるとどうなるかは想像が付きます。

聴き映えが良い曲なのでどれでもよさそうだけど、ピアニストのクリストファー・ブレントは癖の無い模範的な演奏をアップロードしています。



ペダルを使っているのな。



67番 Moderato c-dur

アウフタクトの二拍子のマーチかな。バイエルは教本以外に、バイエル親子二代で世界中の国家や愛唱曲をピアノに編曲した曲集を出版していることで知られています。この曲はそうした得意なジャンルならではの一品。

テクニックとしては右手の6度の重音のパッセージが課題。6度は指が届くけど、手指を固定したままにしてしまうと運指が変わるところでミスが出るので、音を出す瞬間だけ固めて、直後すぐ緩めるというのを繰り返し。

曲風としては古典時代に数多く作曲されたmusetteぽい感じがするよね。特に低音部の歯切れの良いスタッカートは、バッハの有名なmusetteを彷彿させるよね。



繰り返しもアウフタクトで始めるけど、拍としては繰り返しの最後の続きなので拍感覚が狂わないように注意。

参考動画でよさそうなのは少ない中、以前にも紹介した大学の記録教材シリーズの中から



初心者は真似をしてはいけない上級テクニックのアゴーギクを駆使した演奏なのでテンポが伸びたり縮んだりしています。真似をしないように。左右のバランスが良いよね。

個人的には自分で易しく弾けるようになるまでは、自分独自の解釈を優先するように他人の演奏は聞かないしようにしています。

一応手元にはユニバーサルから出ているクリストフ・エッシェンバッハのCDは持っていますが、仕上がった後に自分の解釈と比較するために聞く程度です。

68番 Moderato g-dur

四拍子の短い曲。STEP2にも似たような短い曲があったよね、短いからと言って油断は禁物。

右手が3度の重音のみのパッセージ。2つの指がびっこを弾くと台無しになってしまいます。

指先に神経を集中すると運指がおろそかになってミスする罠。

対位法ですが右手は休符が無く拍に音を正確に乗せる必要があります。

左手は休符があるので、ちゃんと守って小節をはみ出ないように注意。かといって早く切りすぎてもだめ。

右手が入るタイミングと左手との間の交換のタイミングを間違わないように。

69番 g-dur

これは前の68番と組だね。テンポ表示が無いので、メドレー曲という感じ。実際、Youtubeとかにアップされている場合も組で演奏されている。

前の曲と右手と左手の役割が交代したのと、コーダの高音部が同じ g
でも転回和音に変わる点に要注意。

お手本というと、先に紹介した二者の動画になるわけですが。



こちらは手元がはっきり見えるので、ちゃんと音を切っているタイミングとか入るタイミングとか見えて参考になります。けど音が良くないですね、カメラのマイクで拾っているのかな、ちゃんとしたマイクで録音した方がいいと思います。

ちゃんとした機材で録音していて良い音なのはこちら。



残念ながら手元がはっきりしないのと、音を切った時に無駄に鍵盤から指を離していない点が前者と演奏スタイルが違いますね。

70番 Moderato g-dur

これも先の68番と69番のように重音と単旋律の対位法の曲。コーダの部分がシンコペーションしていてリズムが難しくなっています。

最初このコーダの部分がなかなか弾けるようにならなくて苦労しました。アクセントの付く強拍の音がスタッカティッシモなのも注意。

71番 g-dur

バイエルの初版本では69番と同様にテンポ記号は書いてないので組となる70番と同じと解釈できますが、「大人のための独習バイエル」では何故か71番にも70番と同じテンポ記号が記載されています。

右手と左手の役割が70番と逆になるだけではなく、コーダの音型が異なりますがリズムは同じです。

これも前と同じ二者のお手本演奏を紹介します。





前者は最初から最後までペダルに足を乗せていませんのでペダルを使用せずにレガートで弾いています。後者は明らかに最後の72番でペダルに足を移動して演奏終了時に鍵盤から指を離した後しばらく倍音の響きがしているので最後にペダルを離している感じ。

72番 Comodo g-dur

3拍子ですが舞曲と言うよりも歌曲という感じ。ドイツ風の元気が良い歌声が聞こえそう。

だいぶ長いことここのトレモロとトリルには泣かされました。3ヶ月近くになってようやく拍子を数えながらトレモロが弾けるようになりました。

しかもデュナミークがあるので、フォルテの音を出そうとするとせっかく弾けるようになったところがフォームが崩れて元の木阿弥(´Д`;)

デュナミークはとりあえず諦めて出始めの dolce からピアニッシモで弾き通すことに専念してようやく安定し、その後でデュナミークを付けることが出来るようになりました。

トレモロが左手から右手に切り替わる時とかタイミングが遅れたり、トレモロとトリルが切り替わるところも間違いが絶えませんでした。

演奏時間にすれば45秒ぐらいですが、短いとなめてかかると負けます。

重音のトレモロやトリルが苦手だった頃は、まずエンドゲイニングを止めて(トレモロやトリルを弾くのを諦める)曲想を失わない範囲でトレモロとトリルの部分は拍の上の重音だけ弾いて、単旋律部分は間引かず全部弾く形で安定して最初から最後まで弾けるように練習しました。

拍を数えながらトレモロとトリルを間引きで弾けるようになったら、間引いた部分を弾くように練習。これはすぐに弾けるようになりました。

全体の流れは覚えているので拍も乱れずに時々ミスがある程度。

懸案としては、低音部と高音部のバランスが悪い点。これは左手のデュナミークが出来ていないのが原因。右手が左手より控えめになるという逆の状態。

左手のフニャフニャ君をなんとかしないと。長期的に考えよう。


73番 Moderato c-dur

これで STEP2 の最後の曲。4拍子の典型的な器楽曲。歌うには適さない音型から始まります。

中間部に半音進行のパッセージを間に挟んで後半は前半とはまったく様相の異なるパッセージとコーダの反復で終わります。

コード進行はC-G-C(I-V-I)の繰り返しで変わらないのですが、音型を3部でまったく違うものにすることで飽きのこない曲になっています。

これまでの曲みたいに最初のテーマーが最後に再現するという形式ではないので、練習を三カ所それぞれ行わないといけないという面倒くささがあります。

それぞれ部分練習しても通しでやるとつなぎの部分でミスするので、つなぎの部分も部分練習してと時間がかかります。

それでも曲の構成を頭に入れておけば、攻略手順も自ずと頭に浮かんできまが、それだけではありませんでした。

この曲の難しさは単にテーマが再現しないとか、3部がそれぞれまったく音型が異なるとかそういうことではないのです。

出だしは易しそうに見えますが、右手は2度と3度のインターバルの組み合わせのパッセージですが、左手も3度と2度のインターバルの単旋律で拍の上で右手と左手が同期しないといけないのでどちらかが拍の上でミスするとそこから一気に崩れてしまいます。

暗譜で弾けるようにする必要があります。譜面を観ながら弾く場合には、今弾いているところではなく次に弾く強拍のところに目をやって、次の運指に備える必要があります。

中間部では右手は半音階進行ですが、左手は弾く音符の数はまばらなもののポジション移動とかがあるので、予め心の準備とポジションの移動の準備をする必要があります。

後半に重音のパッセージが出てきますが、重音を弾く指先ばかりに注意するとポジション移動のタイミングを逸してしまいます。途中休符があるのは、そのタイミングでポジションを先に移動しておけという作曲者の指示みたいなものです。もし休符が無いと初心者には演奏が難しいものになってしまいます。

単に部分練習を繰り返すだけの頭を使わない機械的練習では克服できない難しさがこの曲にはあります。

前に紹介した本「ミスタッチを恐れるな」の後半の始めにネガティブスペースという題でこの種の難しさについて述べています、おそらくその点について具体的に核心をついた事を文章にしたのはこの本ぐらいでしょうか。

その部分を抜粋して引用すると

引用:

ネガティブスページ
ときに、注目に値するのは音符そのものではなく、音符と音符のあいだの物理的空間の場合があり、これに気づくことでブレークスルーの発端とすることができる。

美しい刺繍をほどこした布が手元にあるとしよう。「表」には、細部に渡って表現されたイメージがはっきり見える、ところがこの布を裏返してみると、不揃いで混沌としたジグザグの糸があらわれる。ただしご承知の通り、見えているのはほんとうの混沌ではない。これはネガティブスペース(対象物の間にある空間)であり、刺繍のひと針から次のひと針へと糸がつながっている模様だ。美的に磨き上げられた結果を生み出すためには、布の両面どちらも欠かせない。


本ではこの後に具体的な曲例を挙げて詳しく説明しているので興味のある方は入手して読んでみることをお勧めする。

お手本になりそうなもので、たまには既に紹介した以外の奏者のもので興味深いものを



演奏者は遅いテンポでの練習での通奏と通常のテンポでの通奏を2つつ続けている。この方は伸ばした指で弾くタイプの人らしく、終止指が伸びた状態で曲げた指で弾く人にとっては奇異に見えるかも。ショパンとかは伸ばした指で弾く人だったのでまあ、ガリバー旅行記に出てくる、ゆで卵を先のとがった方から食べる(little endian)と丸い方から食べる(Big endian)との間の論争みたいなものだと言っていいかも。

バイエル曲は終わりですが、「大人のための独習バイエル」には STEP2 の課題曲みたいのがあります。

課題曲 「威風堂々 第一番」より

これはエルガーの行進曲第一番に出てくる穏やかだけど堂々とした第二主題をベースに易しく編曲したもの。

これまでになく難しい点は、コード進行が半小節単位だということ。普通の基本和音だけでなく、それ以外の他の調からの借用和音ありで、ちゃんと和声分析するには相当の知識と経験が必要な感じ。

それでもト長調で、基本は G-C-G (I-IV-I)だけど要所では7thコードで代用しているところがある感じ。

とりあえず調性音楽なので難しいことは考えずに、一小節一小節を覚えていく感じ。

左手は終止拍をとっているので左手を先に練習して、それに合わせて右手の旋律を乗せている感じ。

両手が同期したところで左手の重音と右手の単音とで3和音となるところがあるので、そこは音が抜けないようにしっかりと弾くしか。

右手はレガートでフレーズ内の音をつなぐ感じ。左手は拍を正確に刻む。

それでもこの曲の演奏時間は1分に満たないというのが信じられないぐらい長く感じる。

ちゃんと拍を数えながら通しで弾けるようになったのはつい最近のこと。

お手本と言えるかどうか謎だけど、この課題曲を演奏した動画を貼っておきます。



これだとちょっと原曲の堂々とした雰囲気が出ていない感じがするよね。初見で弾いたみたいな感じ。

原曲のピアノアレンジはいろいろあって、ちゃんとしたのは最初の演奏が難しい第一主題から始まります。後半に良く知られている覚えやすい第二主題が登場。

こちらはローランドのデジタルピアノの演奏。ローランドは音が良いね。



現役のコンサートピアニスト赤松さんの動画も紹介します。



使用しているピアノはショパン国際コンクールでも使用されているShigeru Kawai ですね。

赤松氏はCASIO のデジタルピアノ最上位機種である CELVIANO Grand Hybridを使用したコンサートもしていたり、今の時代のピアニストという感じ。CASIO は最上位機種でも価格は競合他社より低いのでお手頃感はあるよね。今はどこの最上位機種もグランドピアノのタッチを再現しているのでそれ以上のものはデジタルピアノでは望めないという感じ。

次は STEP2 を卒業できたらね。

んじゃまた。



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題名 投稿者 日時
   ピアノ教本 webadm 2016-9-19 5:59
     Re: ピアノ教本 webadm 2016-10-23 22:12
       Re: ピアノ教本 webadm 2016-10-30 8:03
         Re: ピアノ教本 webadm 2016-11-4 6:55
           Re: ピアノ教本 webadm 2016-11-13 11:39
             Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-5 2:35
               Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-11 23:58
                 Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-24 1:25
                   Re: ピアノ教本 webadm 2016-12-25 22:23
                     Re: ピアノ教本 webadm 2017-1-3 4:45
                       Re: ピアノ教本 webadm 2017-1-22 3:37
                         Re: ピアノ教本 webadm 2017-1-30 9:19
                           Re: ピアノ教本 webadm 2017-2-6 5:06
                             Re: ピアノ教本 webadm 2017-2-12 4:19
                               Re: ピアノ教本 webadm 2017-2-19 0:49
                                 Re: ピアノ教本 webadm 2017-3-21 3:37
                                   Re: ピアノ教本 webadm 2017-4-17 21:54
                                     Re: ピアノ教本 webadm 2017-5-8 0:06
                                     » Re: ピアノ教本 webadm 2017-5-28 21:31
                                         Re: ピアノ教本 webadm 2017-7-2 21:55
                                           Re: ピアノ教本 webadm 2017-8-13 11:11
                                             Re: ピアノ教本 webadm 2017-9-20 12:33
                                               Re: ピアノ教本 webadm 2017-12-2 22:07
                                                 Re: ピアノ教本 webadm 2018-1-12 11:12
                                                   Re: ピアノ教本 webadm 2018-1-29 5:48
                                                     Re: ピアノ教本 webadm 2018-5-5 2:28
                                                       Re: ピアノ教本 webadm 2018-9-9 20:31
                                                         Re: ピアノ教本 webadm 2018-9-30 22:06
                                                           Re: ピアノ教本 webadm 2018-10-7 14:58
                                                             Re: ピアノ教本 webadm 2018-12-23 22:37
                                                               Re: ピアノ教本 webadm 2019-2-20 10:29
                                                                 Re: ピアノ教本 webadm 2019-4-14 23:51
                                                                   Re: ピアノ教本 webadm 2019-4-21 7:29
                                                                     Re: ピアノ教本 webadm 2019-4-29 12:39
                                                                       Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-4 5:01
                                                                         Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-4 23:11
                                                                           Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-16 12:44
                                                                             Re: ピアノ教本 webadm 2019-5-26 19:33
                                                                               Re: ピアノ教本 webadm 2019-7-5 10:32
                                                                                 バイエル卒業(´∀` ) webadm 2019-8-5 0:50
       Introducing Pianoprima EXERCISES webadm 2020-8-11 6:27

 
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