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webadm
投稿日時: 2011-7-30 0:19
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3107
「濾波回路」DR.-ING. WILHELM CAUER原著
とんでもなく貴重な古本を手に入れた。

Wilhelm Cauerが北米時代に執筆したものの第二次世界大戦が勃発してドイツに帰国後出版された"Siebschaltungen"というフィルタ設計に関する本の邦訳である。かなり値が張ったがこれは自分が買うしかないだろうと落札。

届いてみたら非常に状態が良く、戦中や戦後を経て大事に保管されていたものと思われる。



巻頭には原著の邦訳が記載されている。




訳者序文にはまだCauerがドイツで存命中だった頃を物語っている。当時の日本の技術者や研究者に影響力を及ぼしたことは想像に難くない。Cauerが新たに執筆した書は順次邦訳が提供される計画だったらしいが、戦時中にドイツから技術書を持ってくるのは困難だったと想像される。潜水艦で運ぶしかなかったかもしれない。






原著者(Cauer)の序文が日本語で読めるとは思わなかった。執筆当時の考え方を知る上で貴重である。




本書は本編以外に六八ページもの曲線図からなっている。どちらかというとそれが大半を占めている。計算機が無かった時代の工学設計計算は、こうした曲線図を使用する計算図表方式が一般的だった。これとKennelyの数表とかが設計計算には必須アイテムだった。本書の曲線図もそうした当時の計算技術を使用して膨大な時間と労力をかけて作成されたものだ。観るどれも今風のコンピューターでプロットしたようななめらかな曲線が描かれている。実に驚くべきことだ。



本編はフィルタ設計実務に必要ことだけが要約されて説明されている。数学的な証明などは一切ない。



本書が意図しているのは急峻な特性を持つTchebyscheff特性フィルタの設計法である。Tchebyscheff特性フィルタ特有の通過帯域での等リップル特性についても触れられている。



本編の最後にはCauerの文献がリストアップされている。



確かに戦時中に配本されたものであることがわかる。



細かい字で設計表が載っている。当時これを理解して活用できていたのだろうか。戦中は役にたつ機会がなかったとしても戦後の復興期にはこれらが大いに役立ったのではないだろうかと想像する。



68枚もの設計曲線図を紹介することはできないが、比較的意味のわかりやすいものを。手ぶれしているが、かなりなめらかに描かれている。現代なら計算機で瞬時にプロットできるかもしれないが、当時これだけなめらかに曲線を作成するのは手作業だったわけで苦労が忍ばれる。これらは横軸が正規化周波数で描かれているので、周波数変換によって任意の遮断周波数に変換することが容易だ。そうした目的に使われることを意図している。

本編についてはいずれフィルタ理論を本格的に学ぶ機会にでも改めて読むことにしよう。
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