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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2011-7-29 8:37
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
定K形帯域フィルタの設計
次は定K形帯域フィルタに関する問題。

公称インピーダンスR=600[Ω]、遮断周波数fl=1[kHz],fh=10[kHz]の定K形帯域フィルタを設計せよ。

というもの。

定K形帯域通過フィルタ(半回路)についてスクラッチから解析してみよう。

定K形フィルタなので

\begin{eqnarray}<br />\frac{Z_1}{\cancel{2}}\cancel{2} Z_2&=&Z_1 Z_2=R^2<br />\end{eqnarray}

であるのは一緒。帯域通過フィルタの場合には、Z1はすくなくともひとつ以上の共振点をもつLC直列回路となり、Z2はその逆回路でひとつ以上の反共振点を持つLC並列回路という構成になる。Z1が決まれば上の関係式から自ずとZ2も定まることになる。

\begin{eqnarray}<br />Z_1&=&L_1 s+\frac{1}{C_1 s}\\<br />Z_2&=&\frac{R^2}{Z_1}=\frac{R^2}{L_1 s+\frac{1}{C_1 s}}=\frac{1}{\frac{L_1 s}{R^2}+\frac{1}{R^2 C_1 s}}\\<br />&=&\frac{1}{C_2 s+\frac{1}{L_2 s}}\\<br />C_2&=&\frac{L_1}{R^2}\\<br />L_2&=&R^2 C_1<br />\end{eqnarray}

従ってL1,C1,L2,C2とRの間には以下の関係が成り立つ

\begin{eqnarray}<br />R^2&=&\frac{L_1}{C_2}=\frac{L_2}{C_1}\\<br />L_2 C_2&=&L_1 C_1=R^2 C_1 C_2<br />\end{eqnarray}

問題は帯域通過フィルタの場合には遮断周波数が2つ以上存在するということだ、それはどうやって定まるのだろうか?

とりあえず影像インピーダンスを求めてみる必要がある。上記の式に基づいて以下構成の定K形帯域通過フィルタの影像インピーダンスを解析することにする。



上の回路の影像インピーダンスを四端子定数から導出すると



ということでZi1の零点と極はZi2の極と零点に対応する。ω=0を除いた極と零点の周波数(ω1,ω3)が影像インピーダンスが実数と純虚数の境界点となる遮断周波数ということになる。ω1<ω<ω3の範囲ではZi1,Zi2はともに実数をとり通過域となる。それ以外では純虚数となり減衰域となる。ほとんどの参考書では遮断周波数(ω1,ω3)の式は複雑なので示していない。

同様に四端子定数から影像伝達定数を求め、減衰定数と位相定数を解析すると



ということになる。

(2011/9/3)
影像伝達定数の式を導出時の形式を維持するように修正した。sqrt((o^2-o1^2)*(o^2-o3^2))=sqrt(o^2-o1^2)*sqrt(o^2-o3^2)は実数関数では常に成り立つが複素関数では常に成り立つとは限らないからである。境界周波数ω1,ω3は影像伝達定数の不連続点であるため解析接続を行う必要があった。このことに関して触れている書物は見あたらない。

従ってω1,ω2,ω3の関係からC1,L1,C2,L2は



ということになる。整然と式が導出されるのはなんとも不思議でトリッキーだ。特にω1ω3=ω2^2という関係はなかなか気づかない。

これで公称インピーダンスRと2つの遮断周波数が与えられれば素子定数が定まることになる。



ということになる。


よく見たら問題文では周波数特性は問われていなかった。おそらく大変だからだろう。

確認のために減衰定数と位相定数をプロットしてみよう。



意図した通りである。厳密には遮断周波数近傍では実際の素子定数で計算すると微妙な計算誤差(実数を浮動小数に変換することによる誤差に起因する)があるが無視できる範囲である。


P.S

手元の複素関数論や複素解析の本を読み直してみたら、0≦ω≦ω1、ω1≦ω≦ω3それにω3≦ωのそれぞれの範囲で連続で正則な関数がω1とω3の不連続点で接続することは解析接続のことだと了解した。それまでは具体例が示されていないため(数学の本ではめったに具体例を挙げることはない)釈然としなかったが、そういうことだったのかと。ω1やω3は不連続点で一種の特異点であるが、前後の領域でそれぞれ正則な関数が同じ値をとるため、"除去可能"な特異点と呼ばれることも初めて意味を理解した。

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