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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2007-12-11 20:30
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
ベクトル記号法
今年の初めから始まってようやく1年で直流回路と正弦波交流回路をマスターしたことになる。長いようで短かった。

しかしがっかりすることに、本格的な電気回路理論はここからがスタートである。

趣味の電子回路や教養としての電気回路理論という意味ではここまでで十分な気もするが、電気回路の動作原理を理解したり自分で意図したものを設計したりするためにはもっと学ばなければならないことが山ほどある。ましてや電子デバイスを駆使した電子回路の動作原理を理解したり設計するには更に勉強すべきことが沢山ある。

そうした近代的な理論を学ぶ土台がやっと出来た程度ということである。

ここまでのことをすっ飛ばしていきなり本格的な近代電気回路理論を学ぼうとしても、前提知識として直流回路で学んだオームの法則やキルヒホッフの法則が必須であるので困難である。ここまで到達した人だけがここから先を学ぶ資格があるとも言える。

もちろんいきなり本格的な理論から初めて基礎的なものは必要に応じて即席で勉強するという方法もあるかもしれないが、順序としては正統ではなく、もぐりと言われてもしかたがないだろう。

やはり先駆者の苦労を追体験しながら、その意義を理解しながら進むのが本道であろう。

さて、本題に入ると次ぎに学ぶのはベクトル記号法というものである。これは今まで三角関数を使用して表して来た正弦波交流電圧や電流、電力をベクトルとして表すことを意味する。

これまでも正弦波交流理論を学ぶ上で、三角関数による式ではなく正弦波交流電圧や電流を、直交座標上で原点を中心に外を向いた角速度で回転するベクトルとして幾何学的に捉えた方が直感的でわかりやすいことを実感してきた。

これはベクトルに関して学生時代に学んで多少の知識が残っていたからなのだが。電気の歴史の中でも同じ事が起きていたのである。

そもそも電気の歴史は静電気から始まり直流電源による直流回路が長く研究されてきて、変革が始まったのは電気事業が始まった年代と一致する。そこではエジソンが今のGE社を設立し直流送電による電力事業を始めた頃である。同時期に当時のウェティングハウス社(現在は東芝の傘下)の交流送電と競争していた。

直流は長く研究され枯れた技術であるのに対して交流は最先端技術であるため研究がこれからというものだった。エジソンは大分交流に関してネガティブキャンペーンをやらかしたみたいで初期の軍配は直流が優勢だったらしい。そのため日本にもたらされた電力事業も最初直流送電であった。最終的には交流が長距離送電で直流よりも圧倒的に有利であることから現在のような交流送電全盛に切り替わってしまった。

電力事業が始まった時代には非常に数多くの名前を挙げたらきりがないぐらいの先駆者が交流に関する研究や発明を同時多発的に世界中で行っていたことから、どの教科書でもいちいち名前を挙げてはいない。強いて最も貢献度が大きかった人の名前は知られているが、必ずしもバックグラウンドが電気畑でなかったり、育ちが良いというわけではないのであまり知られてはいない。

個人的に交流回路に関する先駆的な役割を果たした人で印象深い先人の名前を挙げよと言われれば

オリバー・ヘビサイド
ニコラ・テスラ
スタインメッツ

ぐらいかもしれない。もちろん同時期に他にも同じことを考えて発表していた人は沢山居ることを知っているが。

オリバー・ヘビサイドは難聴であったためか学校を中退して独学で勉強し、電信技師になるが上司が経験至上主義だったため恵まれず仕事を辞め自宅に籠もりマックスウェルの方程式の実用化の研究に没頭した。その結果、もともと4元数という当時最先端の数学を使用して記述されていた方程式を今我々が見る平易な形に書き直したことが後に物理学上の貢献として知られるに至っている。

副産物として現在分布定数回路として必ず学ぶ伝送路のモデルとその方程式である電信方程式も彼によるものである。しかし伝送路の過渡応答解析に用いた独自の演算子法(現在のラプラス変換の前身)の数学的な裏付けを示さなかったことにより、評価されなかったという不遇がある。電信方程式はマックスウェルの方程式の応用であり、信号が光や電磁波と同じ速度で進む可能性も示している。ただ電磁気学的な側面ではなく電圧と電流という側面で応用しているので、信号が電圧と電流で伝わるという誤った理解を与える原因ともなっている。

もともとマックスウェルの方程式が4元数という複素数を拡張した数の概念で記述されていたことから難解で扱い難かったため、ヘビサイドは複素数に関する数学の分野も独学する必要があったのは明らか。交流回路が現れる15年も前に今日誰もが学ぶ電圧や電流、インピーダンスのベクトル表記でマクスウェル方程式を今ある形に書き直したのは偉業である。同じことをドイツ人のヘルツも行ったが、その功績をヘビサイドにあっさり譲っている。ヘルツは後に電磁波の存在を実験で実証した功績で有名である。共に今誰もが恩恵を受けている無線通信の理論的な草分けである。今日知られているマクスウェル方程式はマクスウェルがオリジナルに書いたものではないので、マクスウェル-ヘビサイド方程式あるいはマクスウェル-ヘビサイド-ヘルツ方程式と呼ぶ人も居る。


交流の複素数表記で虚数部の元をjで表すが、数学で学ぶのはiでありそれと違っている。これは元々4元数が、i,j,kの3つの虚数元を持っているのであえて区別するようにその2番目を使ったのかもしれない。

ヘビサイドの伝記を今注文しているので、また新たなことがわかるかもしれない。彼が書き直したマックスウェル方程式を元にアインシュタインが特殊相対性理論を構築したことからノーベル物理学賞の候補にもあがった程その物理学や電磁気学上での貢献が認められていたことは忘れるべきではない。

ニコラ・テスラは、SFとかで必ず登場するめまぐるしくランダムに動き回る空中放電を生成する装置、テスラコイルの発明者としてしか知らない人が多いかもしれない。

彼の功績で最も大きいのはウエスティングハウス社で交流送電の実用化に尽力したことだろう。

最初はエジソンのGE社に入ったのだが、直流派のエジソンと確執が生じエジソンの元を去り、競合のウエスティングハウス社で初期の二相交流送電事業の特許を譲渡し、その後の多相交流送電への変遷を後押しすることになった。

ウエスティングハウス社を去った後はどちらかというと孤高の発明家として、マッドサイエンティストの代表格みたいな経歴を歩むことになる。どちらかというとそちらで後生有名になってしまった。晩年の彼の研究テーマや事業はトンデモ科学の類に入るかもしれない。他にもいろいろ考えさせられるエピソードが多いがとてもすべてを紹介しきれない。電気に関してはまだまだ我々が知らない秘められたパワーが隠されていると最後まで信じていた人である。

スタインメッツという人はほとんどなじみがないかもしれない。これから学ぶことになる近代的な交流理論を確立した人である。

ドイツ人であるがスイスに亡命し機械工学を学んで機械製図工としてアメリカに渡った。しかし折しも交流電気研究が盛んな時代に、交流電動機開発に従事しその過程で磁気ヒステリシス現象を発見した。後にGE社の傘下になり現在の交流回路理論を発表し複素数表記による代数式による計算が広く普及するきっかけとなった。

なんと現代の交流回路理論はバックグラウンドが機械工学の人によって構築されたものだったのだ。まあ、いつの世も第一線で活躍する人によって偉大な成果はもたらされるものであることには変わりない。

これから学ぶ理論にはまだ名前を知らない先駆者が考案したものもあると思われる。なにしろ名前がどこにも出てこないのでたぶん知らないで学んで知らないで教えているというのがほとんどなのかもしれない。ちょっと残念ではあるが、同時代で同じことを沢山の人が研究していた時代でもあるので、そのうちの一人しか名前を挙げないというのは逆に問題になるかもしれない。

現代ではインターネットの普及により、同時期に他の人と同じことを研究するというのはなるべく避けることが可能になっている。先を越されて発表されたら今までやってきた事が無になってしまうからね。公表しないで研究していると、誰か他の人もまだやっていないと思って始めて先を越されるというのもよくある話。頻繁に論文を発表して権勢をかけるとかしていないとだめなのかもしれない。

さて前書きはこのくらいにして、ベクトル記号法について勉強しよう。

しかしその前にベクトルと複素数表記の2通りがあるのは何故だという疑問にぶつかる。

数学の参考書を調べるとベクトルと複素数に関してはそれぞれ別個にタイトルがあって中味は良く似たようなことが書いてある。例えばベクトル解析という本があれば、複素解析という本もある始末。

ベクトルとは大きさと方向をもった数の概念である。これは理解できる。今まで正弦波交流理論を学ぶ過程で描いた図もベクトルを意識していたし、それはそれで役にたった。

一方複素数は数学的には後発的な概念で、長らく数学の世界では忌み嫌われていた虚数を持つ数である。虚数とは自乗すると負になる数である。数学的にはあり得ても現実にはあり得ないことから数学界でも長く禁断の領域であったらしい。二次以上の方程式の解法を研究する過程でどうしても負の数の平方根というのが根の中に出てきてしまう。二次以上の方程式の解法を研究していた数学者は密かにこのことを気づいていたが、公にするのははばかられていたらしい。ガウスという人が満を持して周到に準備した理論を公にして今に至るらしい。そのため複素数を図示するのに使われる直交座標をガウス平面と呼ぶ。縦軸が虚数で横軸が実数である。そうすると複素数はその平面上の一点を示すことになるが、原点とその点を結ぶ直線を引くと、それはベクトルと同じである。ベクトルはそれ以前の直交座標系であるユークリッド座標でも扱うことができる。

問題は今まで学んだ三角関数による交流の表記とベクトル表記あるいは複素数表記の関係である。そのことになると、単なるベクトルでは直交座標のどちらかの値が今まで学んだ三角関数による交流の電流や電圧に相当するのかわからなくなる。一方複素数表記では虚数部が電流や電圧に相当するということに決まっている。なので複素数表記が一番数学的にはあっているのかもしれない。電気の歴史上でもやはり混乱がみられ、ベクトルなのか複素数なのかという議論があったらしい。しかし実のところ数学のベクトルと複素数の概念ともしっくりこないので、フェーザー(Phasor)という概念を導入している。これは大きさと傾きをもった複素平面で原点を中心に角速度で回転するベクトルを表す。これが電気回路理論で扱うのに相応しい概念であると推奨されているらしい。それで教科書には必ずフェーザーという言葉が説明されている。が、異論と唱える人も多い。数式を扱う上では数学的に認められていない概念を数式に取り入れるのは面倒だということ。数学的には複素数として扱うのがすっきり行くというもの。最後に虚数部だけとれば現実世界の瞬時値が得られる。

実質的にはフェーザー=複素数表記=ベクトル表記ということになり、特別の断りがなければ数式は皆その表記に従ったものと解釈する。

歴史的な経緯から上記の方式をベクトル記号法と呼ぶらしい。

詳しい定義や理論は後日。

P.S

そういえば4元数について始めて知ったのはやはりマンデルブローがIBMのフェロー研究員の時にIBMのベクトル計算機を使って作成した有名な3次元のフラクタル画像「重力場」の計算方法を著書「フラクタル幾何」で説明しているページでした。当時はさっぱりなんのことかわからず、自分で同じようなプログラムを書くことはできませんでした。今でもその著書を持ってますが、太陽表面で良く見られるフレア現象に良く似たその3次元グラフィックスは不思議で現実感があります。今ならできるかも。
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題名 投稿者 日時
 » ベクトル記号法 webadm 2007-12-11 20:30
     Re: ベクトル記号法 webadm 2007-12-13 13:38
     ベクトル記号法の意味 webadm 2007-12-13 18:16
       Re: ベクトル記号法の意味 webadm 2007-12-14 17:42
         Re: ベクトル記号法の意味 webadm 2007-12-14 19:10
           複素数の加減乗除と共役複素数 webadm 2007-12-15 21:27
             複素インピーダンス webadm 2007-12-16 13:14
               基本回路の合成複素インピーダンスとアドミッタンス webadm 2007-12-16 14:48
                 Re: 基本回路の合成複素インピーダンスとアドミッタンス webadm 2007-12-16 17:15
                   電力の複素数表示 webadm 2007-12-16 18:27

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