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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2008-8-31 4:46
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
【65】Owenのブリッジ
ここからしばらく30問ほど交流ブリッジ回路の問題。



ブリッジが平衡状態にあるとしてR1,L1の値を求めよというもの。

Z1=R1+jωL1
Z2=R2
Z3=R3-j/ωC3
Z4=-j/ωC4

とするとブリッジの平衡条件

Z1*Z4=Z2*Z3

より

(R1+jωL1)*(-j/ωC4)=R2*(R3-j/ωC3)

展開すると

L1/C4-jR1/ωC4=R2*R3-jR2/ωC3

従って両辺が等しくなるためにはそれぞれの実数部と虚数部が等しくなければならないため

L1/C4=R2*R3

∴L1=R2*R3*C4

-R1/ωC4=-R2/ωC3

∴R1=R2*C4/C3

それぞれ値を代入すると

L1=20*300*20*10^-6
=12*10^4*10^-6
=12*10^-2
=0.12 [H]

R1=20*20*10^-6/5*10^-6
=20*20/5
=80 [Ω]

ということになる。

このRL,R,C,RCの要素で構成された交流ブリッジはOwenブリッジと呼ばれているらしい。
webadm
投稿日時: 2008-8-30 18:47
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
Re: 【64】相互誘導回路(その27)
やはり磁気エネルギーの式の導出について不安が残る。

相互誘導回路に関してこれほど演習問題を扱っている本は希である。

大抵は単一のトランスだけの問題を扱って終わっている。しかも本来は巻き線の方向によっては二通りの解があるが、ほとんどの本はその片方だけを示すにとどまっている。

L1,L2の2つのコイルが互いに誘導結合していて電圧E1,E2の交流電源がそれぞれ接続されているとすると

jωL1*I1+jωM*I2=E1

jωL2*I2+jωM*I1=E2

という関係が成り立つというもの。実際には相互誘導が互いに磁束を弱め合う方向だと

jωL1*I1-jωM*I2=E1

jωL2*I2-jωM*I1=E2

という関係が成り立つ。

従って本来は

jωL1*I1±jωM*I2=E1

jωL2*I2±jωM*I1=E2

と書くのが良いのかもしれない。ただしMの符号は全式で正負どちらか取り得ないので。2通りしかない。

ここで回路の瞬時値電力を計算すると

p=E1*I1+E2*I2
=(jωL1*I1±jωM*I2)*I1+(jωL2*I2±jωM*I1)*I2
=jωL1*I1^2+jωL2*I2^2±2*jωM*I1*I2

ということになる。従って回路に蓄えられる電磁エネルギーは

wl=(L1*I1^2+L2*I2^2±2*M*I1*I2)/2
=L1*I1^2/2+L2*I2^2/2±M*I1*I2

ということになる。

これと同様に先の問題について解く場合には、巻き線の向きと電流の流れる方向の関係の組み合わせはM1とM2の符号の組み合わせで2×2で4通りあることになる。

-case1-

(R1+jωL1)*I1+jωM1*I=E1
(R2+jωL2)*I2+jωM2*I=E2
(jωL3+jωL4)*I+jωM1*I1+jωM2*I2=0
p=R1*I1^2+R2*I2^2+jω*(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2+jω*(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2-2*M1*M2*I1*I2
wl=(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2/2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2/2-M1*M2*I1*I2

-case2-

(R1+jωL1)*I1-jωM1*I=E1
(R2+jωL2)*I2+jωM2*I=E2
(jωL3+jωL4)*I-jωM1*I1+jωM2*I2=0
p=R1*I1^2+R2*I2^2+jω*(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2+jω*(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2+2*M1*M2*I1*I2
wl=(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2/2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2/2+M1*M2*I1*I2

-case3-

(R1+jωL1)*I1+jωM1*I=E1
(R2+jωL2)*I2-jωM2*I=E2
(jωL3+jωL4)*I+jωM1*I1-jωM2*I2=0
p=R1*I1^2+R2*I2^2+jω*(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2+jω*(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2+2*M1*M2*I1*I2
wl=(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2/2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2/2+M1*M2*I1*I2


-case4-
(R1+jωL1)*I1-jωM1*I=E1
(R2+jωL2)*I2-jωM2*I=E2
(jωL3+jωL4)*I-jωM1*I1-jωM2*I2=0
p=R1*I1^2+R2*I2^2+jω*(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2+jω*(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2-2*M1*M2*I1*I2
wl=(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2/2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2/2-M1*M2*I1*I2

ということで結局は

p=R1*I1^2+R2*I2^2+jω*(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2+jω*(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2±2*M1*M2*I1*I2
wl=(L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2/2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2/2±M1*M2*I1*I2

ということになる。著者の解はM1*M2の項が+となるケースなのでそれ自体は間違いではないが、本来はcase2かcase3の関係から導かれなければならないが実際にはcase1の関係を用いているので導出過程でのミスであることは確かである。おろらく一般的にみかける式のように+であるという思いこみが働いたのかもしれない。

P.S

それぞれのケースに関するMaximaでの導出を以下に示す。

-case1-

(%i43) e1:(R1+%i*o*L1)*I1+%i*o*M1*I=E1;
(%o43) I1*(R1+%i*o*L1)+%i*o*I*M1=E1
(%i44) e2:(R2+%i*o*L2)*I2+%i*o*M2*I=E2;
(%o44) I2*(R2+%i*o*L2)+%i*o*I*M2=E2
(%i45) e3:(%i*o*L3+%i*o*L4)*I+%i*o*M1*I1+%i*o*M2*I2=0;
(%o45) %i*o*I2*M2+%i*o*I1*M1+I*(%i*o*L4+%i*o*L3)=0
(%i46) e4:p=E1*I1+E2*I2;
(%o46) p=E2*I2+E1*I1
(%i47) e5:wl=(p-R1*I1^2-R2*I2^2)/(2*%i*o);
(%o47) wl=-(%i*(-I2^2*R2-I1^2*R1+p))/(2*o)
(%i48) solve([e1,e2,e3,e4,e5],[I,E1,E2,p,wl]);
(%o48) [[I=-(I2*M2+I1*M1)/(L4+L3),E1=(I1*(L4+L3)*R1-%i*o*I2*M1*M2-%i*o*I1*M1^2+%i*o*I1*L1*(L4+L3))/(L4+L3),E2=-
(I2*(-L4-L3)*R2+%i*o*(I2*M2^2+I2*L2*(-L4-L3))+%i*o*I1*M1*M2)/(L4+L3),p=
(I2^2*(L4+L3)*R2+I1^2*(L4+L3)*R1+%i*o*(I2^2*L2*(L4+L3)-I2^2*M2^2)-2*%i*o*I1*I2*M1*M2-%i*o*I1^2*M1^2+%i*o*I1^2*L1*(L4+L3))/(L4+L3),
wl=-(I2^2*M2^2+2*I1*I2*M1*M2+I1^2*M1^2+I2^2*L2*(-L4-L3)+I1^2*L1*(-L4-L3))/(2*L4+2*L3)]]

-case2-

(%i49) e1:(R1+%i*o*L1)*I1-%i*o*M1*I=E1;
(%o49) I1*(R1+%i*o*L1)-%i*o*I*M1=E1
(%i50) e2:(R2+%i*o*L2)*I2+%i*o*M2*I=E2;
(%o50) I2*(R2+%i*o*L2)+%i*o*I*M2=E2
(%i51) e3:(%i*o*L3+%i*o*L4)*I-%i*o*M1*I1+%i*o*M2*I2=0;
(%o51) %i*o*I2*M2-%i*o*I1*M1+I*(%i*o*L4+%i*o*L3)=0
(%i52) solve([e1,e2,e3,e4,e5],[I,E1,E2,p,wl]);
(%o52) [[I=(I1*M1-I2*M2)/(L4+L3),E1=(I1*(L4+L3)*R1+%i*o*I2*M1*M2-%i*o*I1*M1^2+%i*o*I1*L1*(L4+L3))/(L4+L3),E2=
(I2*(L4+L3)*R2+%i*o*(I2*L2*(L4+L3)-I2*M2^2)+%i*o*I1*M1*M2)/(L4+L3),p=
(I2^2*(L4+L3)*R2+I1^2*(L4+L3)*R1+%i*o*(I2^2*L2*(L4+L3)-I2^2*M2^2)+2*%i*o*I1*I2*M1*M2-%i*o*I1^2*M1^2+%i*o*I1^2*L1*(L4+L3))/(L4+L3),
wl=-(I2^2*M2^2-2*I1*I2*M1*M2+I1^2*M1^2+I2^2*L2*(-L4-L3)+I1^2*L1*(-L4-L3))/(2*L4+2*L3)]]

-case3-

(%i53) e1:(R1+%i*o*L1)*I1+%i*o*M1*I=E1;
(%o53) I1*(R1+%i*o*L1)+%i*o*I*M1=E1
(%i54) e2:(R2+%i*o*L2)*I2-%i*o*M2*I=E2;
(%o54) I2*(R2+%i*o*L2)-%i*o*I*M2=E2
(%i55) e3:(%i*o*L3+%i*o*L4)*I+%i*o*M1*I1-%i*o*M2*I2=0;
(%o55) -%i*o*I2*M2+%i*o*I1*M1+I*(%i*o*L4+%i*o*L3)=0
(%i56) solve([e1,e2,e3,e4,e5],[I,E1,E2,p,wl]);
(%o56) [[I=-(I1*M1-I2*M2)/(L4+L3),E1=(I1*(L4+L3)*R1+%i*o*I2*M1*M2-%i*o*I1*M1^2+%i*o*I1*L1*(L4+L3))/(L4+L3),E2=
(I2*(L4+L3)*R2+%i*o*(I2*L2*(L4+L3)-I2*M2^2)+%i*o*I1*M1*M2)/(L4+L3),p=
(I2^2*(L4+L3)*R2+I1^2*(L4+L3)*R1+%i*o*(I2^2*L2*(L4+L3)-I2^2*M2^2)+2*%i*o*I1*I2*M1*M2-%i*o*I1^2*M1^2+%i*o*I1^2*L1*(L4+L3))/(L4+L3),
wl=-(I2^2*M2^2-2*I1*I2*M1*M2+I1^2*M1^2+I2^2*L2*(-L4-L3)+I1^2*L1*(-L4-L3))/(2*L4+2*L3)]]

-case4-

(%i57) e1:(R1+%i*o*L1)*I1-%i*o*M1*I=E1;
(%o57) I1*(R1+%i*o*L1)-%i*o*I*M1=E1
(%i58) e2:(R2+%i*o*L2)*I2-%i*o*M2*I=E2;
(%o58) I2*(R2+%i*o*L2)-%i*o*I*M2=E2
(%i59) e3:(%i*o*L3+%i*o*L4)*I-%i*o*M1*I1-%i*o*M2*I2=0;
(%o59) -%i*o*I2*M2-%i*o*I1*M1+I*(%i*o*L4+%i*o*L3)=0
(%i60) solve([e1,e2,e3,e4,e5],[I,E1,E2,p,wl]);
(%o60) [[I=(I2*M2+I1*M1)/(L4+L3),E1=(I1*(L4+L3)*R1-%i*o*I2*M1*M2-%i*o*I1*M1^2+%i*o*I1*L1*(L4+L3))/(L4+L3),E2=-
(I2*(-L4-L3)*R2+%i*o*(I2*M2^2+I2*L2*(-L4-L3))+%i*o*I1*M1*M2)/(L4+L3),p=
(I2^2*(L4+L3)*R2+I1^2*(L4+L3)*R1+%i*o*(I2^2*L2*(L4+L3)-I2^2*M2^2)-2*%i*o*I1*I2*M1*M2-%i*o*I1^2*M1^2+%i*o*I1^2*L1*(L4+L3))/(L4+L3),
wl=-(I2^2*M2^2+2*I1*I2*M1*M2+I1^2*M1^2+I2^2*L2*(-L4-L3)+I1^2*L1*(-L4-L3))/(2*L4+2*L3)]]

インターネットでMutual Inductanceで検索すると英文の資料がいろいろ出てくるけど、中には磁気エネルギーの式が明らかに間違っているものがあった。どっかの大学のDr.なんたらという人が書いたものであってもうっかり鵜呑みは禁物である。

P.S

本屋にいって相互誘導回路の磁気エネルギーを扱っているものを2冊ほど購入。最初は何を言っているのかわからなかったけど、巻き線の方向によって確かに二通りがあることは事実。磁気エネルギーの式については常に正でなければならない条件からL1,L2,Mとの関係が導出できるということ。そのためMの値そのものの符号は式の上にでないようにMの項は正にする暗黙のルールがあるらしい。そうすればすべての式でMの項は正とすることができるので式が一本化できる。

ということで著者はそれを説明せずにMの項の符号を正にした式にしたということらしい。

本によっては相互誘導回路を後に学ぶ2端子対回路網(4端子回路)で詳しく扱う例もみられる。確かにここではまるとまだ先が長いので。
webadm
投稿日時: 2008-8-28 23:32
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
【64】相互誘導回路(その27)
いよいよ相互誘導回路の問題の最後。2つの交流電源が供給される回路で消費される全電力の瞬時値と回路の磁気エネルギーを導けというもの。



著者の解を見るといままでの問題と題意は違ったところにあるように見える。単純に考えれば回路全体の瞬時値電力は電源E1,E2とそれから供給される電流I1,I2のそれぞれの積の合計である。

p=E1*I1+E2*I2

またE1,E2に関して以下の関係式が成り立つ

(R1+jωL1)*I1+jωM1*I=E1

(R2+jωL2)*I2+jωM2*I=E2

従ってこれらを先の瞬時値電力の式に代入すると

p=E1*I1+E2*I2
=(R1+jωL1)*I1^2+jωM1*I*I1+(R2+jωL2)*I2^2+jωM2*I*I2

ここで

(jωL3+jωL4)*I+jωM1*I1+jωM2*I2=0

であることからIについて解くと

I=-(jωM1*I1+jωM2*I2)/(jωL3+jωL4)
=-(M1*I1+M2*I2)/(L3+L4)

これを代入すると

p=(R1+jωL1)*I1^2-jωM1*(M1*I1+M2*I2)*I1/(L3+L4)+(R2+jωL2)*I2^2-jωM2*(M1*I1+M2*I2)*I2/(L3+L4)
=(R1+jωL1)*I1^2+(R2+jωL2)*I2^2-jω*(M1^2*I1^2+M1*M2*I1*I2+M1*M2*I1*I2+M2^2*I2^2)/(L3+L4))
=R1*I1^2+R2*I2^2+jω*((L1-M1^2/(L3+L4))*I1^2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2-2*M1*M2*I1*I2/(L3+L4))

ということになる。

磁気エネルギーは回路の実効インダクタンスと電源の間で交換される瞬時値電力から抵抗で消費される有効電力を差し引いた無効電力を2*jωで除したものとなる。

wL=(L1-M1^2/(L3+L4)*I1^2/2+(L2-M2^2/(L3+L4))*I2^2/2-M1*M2*I1*I2/(L3+L4)

著者の解は最初の瞬時値電力の式を求める際に致命的なミスを犯している。(M1*i1+M2*i2)*di/dtを展開する際にdi/dtの符号が負なので最終的にM1*M2の項は負とならなければならないが正になってしまっている。

またM1*M2の項が負になるのは、結合係数が1となって漏洩インダクタンスが無くなった場合に磁気エネルギーが相殺されなければならない観点からして理にかなっている。M1*M2の項が正だと結合係数が1になっても実効インダクタンスが決して0にならない式となるため矛盾する。
webadm
投稿日時: 2008-8-28 13:04
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
【63】相互誘導回路(その27)
次ぎの問題は一次側と二次側が共に共振回路を構成し、共振周波数がω0で同一の場合、結合係数を変化させて二次側に流れる電流が最も大きくなる結合係数とその時の電流の式を導けというもの。



これも等価回路に置き換えて解いてみよう。



全体のインピーダンスは

Z=R1-j/(ωC1)+jω*(L1-M)+1/(1/(jωM)+1/(jω*(L2-M)+R2-j/(ωC2)))
=R1+j*(ω*(L1-M)-1/(ωC1))+jωM*(R2+j*(ω*(L2-M)-1/(ωC2)))/(R2+j*(ωL2-1/(ωC2)))
=R1+j*(ω*(L1-M)-1/(ωC1))+jωM*(1-jωM/(R2+j*(ωL2-1/(ωC2))))
=R1+j*(ωL1-1/(ωC1))+ω^2*M^2/(R2+j*(ωL2-1/(ωC2)))
=R1+j*(ωL1-1/(ωC1))+ω^2*M^2*(R2-j*(ωL2-1/(ωC2)))/(R2^2+(ωL2-1/(ωC2))^2)
=R1+ω^2*M^2*R2/(R2^2+(ωL2-1/(ωC2))^2)+j*(ωL1-1/(ωC1)-ω^2*M^2*(ωL2-1/(ωC2))/(R2^2+(ωL2-1/(ωC2))^2))

ここで共振角周波数ω0では

ω0=1/sqrt(C1*L1)

∴ω0*L1-1/(ω0*C1)=0

ω0=1/sqrt(C2*L2)

∴ω0*L2-1/(ω0*C2)=0

を適用すると

Z0=R1+ω0^2*M^2/R2



従って一次側を流れる電流I1は

I1=E/Z0
=E/(R1+ω0^2*M^2/R2)
=E*R2/(R1*R2+ω0^2*M^2)

実効値は

|I1|=E*R2/(R1*R2+ω0^2*M^2)

また二次側を流れる電流I2は分流則により

I2=(jωM/(jω(L2-M)+R2-j/(ωC2)+jωM))*I1
=(jωM/(R2+j*(ωL2-1/(ωC2))))*I1

ω0の時はω0*L2-1/(ω0*C2)=0なので

I2=(jω0*M/R2)*I1

従って実効値は

|I2|=(ω0*M/R2)*|I1|

|I1|の式を代入すると

|I2|=(ω0*M/R2)*E*R2/(R1*R2+ω0^2*M^2)
=E*ω0*M/(R1*R2+ω0^2*M^2)

ということになる。

ここで誘導係数の定義

M=k*sqrt(L1*L2)

を代入すると

|I2|=E*ω0*k*sqrt(L1*L2)/(R1*R2+ω0^2*k^2*L1*L2)

|I2|が最大になる誘導係数を求めるにはkで微分すると

(%i69) diff(o0*k*sqrt(L1*L2)/(R1*R2+o0^2*k^2*L1*L2),k);
(%o69) (o0*sqrt(L1*L2))/(R1*R2+k^2*o0^2*L1*L2)-(2*k^2*o0^3*L1*L2*sqrt(L1*L2))/(R1*R2+k^2*o0^2*L1*L2)^2
(%i70) factor(%);
(%o70) (o0*sqrt(L1*L2)*(R1*R2-k^2*o0^2*L1*L2))/(R1*R2+k^2*o0^2*L1*L2)^2

従って微分係数が0となる条件は

R1*R2-k^2*ω0^2*L1*L2=0

これをkについて解くと

(%i71) solve([R1*R2-k^2*o0^2*L1*L2], [k]);
(%o71) [k=-sqrt((R1*R2)/(L1*L2))/o0,k=sqrt((R1*R2)/(L1*L2))/o0]

kは正の値でなければならないので|I2|が最大値を取るkは

kmax=sqrt(R1*R2/L1*L2)/ω0

これを|I2|の式に代入すると

(%i80) subst(sqrt(R1*R2/(L1*L2))/o0, k, (k*o0*E*sqrt(L1*L2))/(R1*R2+k^2*o0^2*L1*L2));
(%o80) (E*sqrt(L1*L2)*sqrt((R1*R2)/(L1*L2)))/(2*R1*R2)

またしてもMaximaの因数分解は中途半端だ

|I2max|=E*sqrt(L1*L2)*sqrt((R1*R2)/(L1*L2))/(2*R1*R2)
=E*sqrt(R1*R2)/(2*R1*R2)
=E/(2*sqrt(R1*R2))

ということになる。結果的にL1,L2は消え、L1,L2,C1,C2に無関係にR1,R2のみによって定まる。すなわち最大電流値がコイルの導体抵抗値のみによって決まるということになる。

実際には共振点は誘導結合が無い時に一緒でも、誘導結合し始めると前前問の解の式よりR1,R2が無視できる程小さい場合には

ω0と

ω0'=ω0*sqrt((1+k)/(1-k))

の2つの山に分かれることになる。



上のプロットではR1,R2を1としているので結合係数が大きくなると片方の山が少し低い周波数へゆっくり移動していく。
webadm
投稿日時: 2008-8-28 11:11
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
【62】相互誘導回路(その26)
次ぎは一次側と二次側にそれぞれ負荷が直列に接続された回路。回路全体のインピーダンスを求め、それぞれの負荷が抵抗負荷となった場合に、全体で消費される電力は負荷で消費された電力の合計となることを示せというもの。



著者はここにきて等価回路を使わずに回路方程式で解いている。

別解法として等価回路を使って解いてみよう。



全体のインピーダンスは直並列混成回路なので

Z=Z1+jω*(L1-M)+1/(1/(jωM)+1/(jω*(L2-M)+Z2))
=Z1+jω*(L1-M)+1/((jωM+jω*(L2-M)+Z2)/((jωM)*(jω*(L2-M)+Z2)))
=Z1+jω*(L1-M)+(jωM)*(Z2+jωL2-jωM)/(Z2+jωL2)
=Z1+jω*(L1-M)+jωM+(jωM)*(-jωM)/(Z2+jωL2)
=Z1+jωL1+ω^2*M^2/(Z2+jωL2)

ということになる。

続いてZ1,Z2をそれぞれR1,R2とした場合、インピーダンスの式は

Z=R1+jωL1+ω^2*M^2/(R2+jωL2)
=R1+jωL1+ω^2*M^2*(R2-jωL2)/(R2^2+ω^2*L2^2)
=R1+ω^2*M^2*R2/(R2^2+ω^2*L2^2)+jω*(L1-ω^2*M^2*L2/(R2^2+ω^2*L2^2))

ということになる。従って全体で消費される電力は実効抵抗で消費される電力であるため

Pa=(R1+ω^2*M^2*R2/(R2^2+ω^2*L2^2))*|I1|^2

ということになる。

I1はR1に流れる電流である。R2に流れる電流は分流の法則によって簡単に求めることが出来る。

I2=(jωM/(R2+jω*(L2-M)+jωM))*I1
=(jωM/(R2+jωL2))*I1

従って

|I2|=(ω^2*M^2/(R2^2+ω^2*L2^2))*|I1|

∴Pa=R1*|I1|^2+R2*|I2|^2

である。

確かに方程式をたてるより等価回路を使ったほうが手計算で出来る。
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投稿日時: 2008-8-27 10:58
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【61】相互誘導回路(その25)
次ぎは一次側と二次側共に共振回路となっている問題。



一次側と二次側のそれぞれの共振周波数をω1,ω2とした場合の回路全体の共振周波数ω0を結合係数を用いて導けというもの。

未知数は共振周波数と一次側と二次側に流れる電流である。

以下の関係式が成り立つ

(jωL1-j/(ωC1))*I1+jωM*I2=E

(jωL2-j/(ωC2))*I2+jωM*I1=0

(%i6) e1:(%i*o*L1-%i/(o*C1))*I1+%i*o*M*I2=E;
(%o6) %i*o*I2*M+I1*(%i*o*L1-%i/(o*C1))=E
(%i7) e2:(%i*o*L2-%i/(o*C2))*I2+%i*o*M*I1=0;
(%o7) %i*o*I1*M+I2*(%i*o*L2-%i/(o*C2))=0
(%i8) solve([e1,e2],[I1,I2]);
(%o8) [[I1=(C1*E*(%i*o^3*C2*L2-%i*o))/(o^4*C1*C2*M^2+C1*L1*(o^2-o^4*C2*L2)+o^2*C2*L2-1),I2=-(%i*o^3*C1*C2*E*M)/(o^4*C1*C2*M^2+C1*L1*(o^2-o^4*C2*L2)+o^2*C2*L2-1)]]

回路全体が共振状態の場合には一次側の電流が∞になる時なので、I1の分母が0となる条件

ω^4*C1*C2*M^2+C1*L1*(ω^2-ω^4*C2*L2)+ω^2*C2*L2-1=0

ここで

M=k*sqrt(L1*L2)

ω1=1/sqrt(C1*L1)

∴C1*L1=1/ω1^2

ω2=1/sqrt(C2*L2)

∴C2*L2=1/ω2^2

で書き換えると

ω^4*C1*C2*M^2+C1*L1*(ω^2-ω^4*C2*L2)+ω^2*C2*L2-1
=ω^4*C1*C2*k^2*L1*L2+ω^2*(1-ω^2/ω2^2)/ω1^2+ω^2/ω2^2-1
=ω^4*k^2/(ω1^2*ω2^2)+ω^2*(1-ω^2/ω2^2)/ω1^2+ω^2/ω2^2-1
=ω^2*(ω^2*k^2/(ω1^2*ω2^2)+(1/ω1^2-ω^2/(ω1^2*ω2^2))+1/ω2^2)-1
=ω^2*(ω^2*(k^2-1)/(ω1^2*ω2^2)+1/ω1^2+1/ω2^2)-1
=0

両辺にω1^2*ω2^2を乗じると

ω^2*(ω^2*(k^2-1)+ω1^2+ω^2)-ω1^2*ω2^2
=ω^4*(k^2-1)+ω^2*(ω1^2+ω^2)-ω1^2*ω2^2
=0

これをωについて解くとω0は

(%i52) solve([o^2*(o^2*(k^2-1)/(o1^2*o2^2)+1/o1^2+1/o2^2)-1], [o]);
(%o52) [o=-sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)/(k^2-1)-o2^2/(k^2-1)-o1^2/(k^2-1))/sqrt(2),o=
sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)/(k^2-1)-o2^2/(k^2-1)-o1^2/(k^2-1))/sqrt(2),o=-sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2)),o=
sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2))]
(%i53) factor(%);
(%o53) [o=-sqrt((sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)-o2^2-o1^2)/(k^2-1))/sqrt(2),o=sqrt((sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)-o2^2-o1^2)/(k^2-1))/sqrt(2),o=-
sqrt(sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2)),o=sqrt(sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2))]
(%i54) solve([o^4*(k^2-1)+o^2*(o1^2+o2^2)-o1^2*o2^2], [o]);
(%o54) [o=-sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)/(k^2-1)-o2^2/(k^2-1)-o1^2/(k^2-1))/sqrt(2),o=
sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)/(k^2-1)-o2^2/(k^2-1)-o1^2/(k^2-1))/sqrt(2),o=-sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2)),o=
sqrt(sqrt(o2^4+4*k^2*o1^2*o2^2-2*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2))]
(%i55) factor(%);
(%o55) [o=-sqrt((sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)-o2^2-o1^2)/(k^2-1))/sqrt(2),o=sqrt((sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)-o2^2-o1^2)/(k^2-1))/sqrt(2),o=-
sqrt(sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2)),o=sqrt(sqrt(o2^4+(4*k^2-2)*o1^2*o2^2+o1^4)+o2^2+o1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2))]

ω0は正の実数でなければならないので

ω0=sqrt((sqrt(ω2^4+(4*k^2-2)*ω1^2*ω2^2+ω1^4)-ω2^2-ω1^2)/(k^2-1))/sqrt(2)
=sqrt((sqrt(4*k^2*ω1^2*ω2^2+(ω1^2-ω2^2)^2)-(ω1^2+ω2^2))/(2*(k^2-1)))
=sqrt(((ω1^2+ω2^2)-sqrt(4*k^2*ω1^2*ω2^2+(ω1^2-ω2^2)^2))/(2*(1-k^2)))

ω0'=sqrt(sqrt(ω2^4+(4*k^2-2)*ω1^2*ω2^2+ω1^4)+ω2^2+ω1^2)/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2))
=sqrt(sqrt(4*k^2*ω1^2*ω2^2+(ω1^2-ω2^2)^2)+(ω1^2+ω2^2))/(sqrt(2)*sqrt(1-k^2))
=sqrt(((ω1^2+ω2^2)+sqrt(4*k^2*ω1^2*ω2^2+(ω1^2-ω2^2)^2))/(2*(1-k^2)))

ということになる。

P.S

こうした共振回路を誘導結合したトランスは受信機の中間周波トランスとして応用されている。式の上では2つのピークを持つが、結合係数を調整すると2こぶになったり台形になったり、山が重なったりする。

Maximaを使ってある回路定数で結合係数を変えてアドミッタンスの周波数特性をプロットしてみると太平洋海底のハワイ列島のような軌跡が見える。

C1=10pF,C2=20pF,L1=L2=1uH

plot3d((500000*%pi*abs(f)*abs(%pi^2*f^2-12500000000000000))/abs(%pi^4*f^4*k^2-%pi^4*f^4
+37500000000000000*%pi^2*f^2-312500000000000000000000000000000), [k,0,1], [f,10^3,5*10^8],[grid,50,50])$



もともと2つの共振回路の共振点は隣接しているが、ある結合係数では山が完全に2つにスプリットしているのがわかる。

演習問題では一次側は直列共振だったが、中間周波トランスと同じように並列共振にしたらどうなるかとか一次側と二次側の出力比(ゲイン)がどうなるか研究してみると面白いかもしれない。
webadm
投稿日時: 2008-8-27 9:05
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【60】相互誘導回路(その24)
あと残すところ5問で相互誘導回路は終わり、がんばって突破しよう。

次ぎは相互誘導回路の負荷の電流と電圧が一定の場合、電源と負荷の力率の関係を導けというもの。少々わかりにくい。



今までの問題と逆で、負荷側のインピーダンスとそれに流れる電流が既知で電源電圧が未知数だという点。

負荷の力率をcosφとした場合、以下の関係が成り立つ

(jωL1+|ZL|*(cosφ+jsinφ))*IL+jωM*(I-IL)=E

jωL2*(I-IL)+jωM*IL=E

これらをI,Eに関して解くと

(%i1) e1:(%i*o*L1+abs(ZL)*(cos(p)+%i*sin(p)))*IL+%i*o*M*(I-IL)=E;
(%o1) IL*((%i*sin(p)+cos(p))*abs(ZL)+%i*o*L1)+%i*o*(I-IL)*M=E
(%i2) e2:%i*o*L2*(I-IL)+%i*o*M*IL=E;
(%o2) %i*o*IL*M+%i*o*(I-IL)*L2=E
(%i3) solve([e1,e2],[I,E]);
(%o3) [[I=-((%i*sin(p)+cos(p))*IL*abs(ZL)-2*%i*o*IL*M+%i*o*IL*L2+%i*o*IL*L1)/(%i*o*M-%i*o*L2),E=
(IL*(sin(p)*L2-%i*cos(p)*L2)*abs(ZL)-o*IL*M^2+o*IL*L1*L2)/(%i*M-%i*L2)]]
(%i4) abs(%);
(%o4) [[abs(I)=sqrt((-(sin(p)*IL*abs(ZL))/(o*M-o*L2)+(2*o*IL*M)/(o*M-o*L2)-(o*IL*L2)/(o*M-o*L2)-(o*IL*L1)/(o*M-o*L2))^2+(cos(p)^2*IL^2*ZL^2)/(o*M-o*L2)^2),abs(E)=
sqrt((-(sin(p)*IL*L2*abs(ZL))/(M-L2)+(o*IL*M^2)/(M-L2)-(o*IL*L1*L2)/(M-L2))^2+(cos(p)^2*IL^2*L2^2*ZL^2)/(M-L2)^2)]]
(%i5) factor(%);
(%o5) [[abs(I)=(abs(IL)*sqrt((-4*o*sin(p)*M+2*o*sin(p)*L2+2*o*sin(p)*L1)*abs(ZL)+sin(p)^2*ZL^2+cos(p)^2*ZL^2+4*
o^2*M^2+(-4*o^2*L2-4*o^2*L1)*M+o^2*L2^2+2*o^2*L1*L2+o^2*L1^2))/(abs(o)*abs(M-L2)),abs(E)=(abs(IL)*sqrt((2*o*sin(p)*L1*L2^2-2*o*sin(p)*L2*M^2)*abs(ZL)+sin(p)^2*L2^2*ZL^2+cos(p)^2*L2^2*ZL^2+o^2*M^4-2*o^2*L1*L2*M^2+o^2*L1^2*L2^2))/abs(M-L2)]]

整理すると

|E|=(|IL|*sqrt((2*ω*sinφ*L1*L2^2-2*ω*sinφ*L2*M^2)*|ZL|+sinφ^2*L2^2*ZL^2+cosφ^2*L2^2*ZL^2+ω^2*M^4-2*ω^2*L1*L2*M^2+ω^2*L1^2*L2^2))/|M-L2|
=(|IL|*sqrt(2*ω*L2*sinφ*(L1*L2-M^2)*|ZL|+L2^2*ZL^2*(sinφ^2+cosφ^2)+ω^2*(M^4-2*L1*L2*M^2+L1^2*L2^2)))/|M-L2|
=(|IL|*sqrt(2*ω*L2*sinφ*(L1*L2-M^2)*|ZL|+L2^2*ZL^2+ω^2*(M^2-L1*L2)^2))/|M-L2|
=(|IL|*sqrt(L2^2*ZL^2+ω*(L1*L2-M^2)*(2*L2*sinφ*|ZL|+ω*(L1*L2-M^2))/|M-L2|

ということになる。

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投稿日時: 2008-8-26 8:13
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【59】相互誘導回路(その23)
次ぎは超難問。トランスの一次側と二次側が容量結合している回路で、二次側に電流が流れない条件を結合係数kを用いて導けというもの。



現実のトランスは理想的なトランスと違って一次側と二次側の巻き線間に容量結合が存在する。今までの問題ではそれは無いものとして扱ってきたが現実には歴然と存在し、低周波領域では無視できても高周波領域では無視できなくなる。

問題はこの回路図ではCは閉回路を構成していないので回路に影響を与えないように見えてしまう点である。これは電気の不思議である。実際には流れるのであるが、理屈をほじくりだすと電磁気学の世界に入ってしまうので、電気回路理論では等価回路で置き換えて考えると都合が良い。今までの問題では等価回路を持ち出さなくても回路方程式を立てることができたが、この問題ではさすがに等価回路に置き換えないと式が立てられない。



これでやっとCを含む閉回路が現れる。以下の関係が成り立つ

(jω*(L1-M)+jωM)*I1-jωM*I3-jω*(L1-M)*I2=E

(jω*(L1-M)+jω*(L2-M)-j/(ωC))*I2-jω*(L1-M)*I1-jω*(L2-M)*I3=0

(jω*(L2-M)+R+jωM)*I3-jωM*I1-jω*(L2-M)*I2=0

これをI1,I2,I3について解くと

(%i51) e1:(%i*o*(L1-M)+%i*o*M)*I1-%i*o*M*I3-%i*o*(L1-M)*I2=E;
(%o51) I1*(%i*o*M+%i*o*(L1-M))-%i*o*I3*M-%i*o*I2*(L1-M)=E
(%i52) e2:(%i*o*(L1-M)+%i*o*(L2-M)-%i/(o*C))*I2-%i*o*(L1-M)*I1-%i*o*(L2-M)*I3=0;
(%o52) -%i*o*I3*(L2-M)-%i*o*I1*(L1-M)+I2*(%i*o*(L2-M)+%i*o*(L1-M)-%i/(o*C))=0
(%i53) e3:(%i*o*(L2-M)+R+%i*o*M)*I3-%i*o*M*I1-%i*o*(L2-M)*I2=0;
(%o53) I3*(R+%i*o*M+%i*o*(L2-M))-%i*o*I1*M-%i*o*I2*(L2-M)=0
(%i54) solve([e1,e2,e3],[I1,I2,I3]);
(%o54) [[I1=(E*(%i*o^2*C*L2*R-%i*R+o*L2)+E*L1*(%i*o^2*C*R-o^3*C*L2)-2*%i*o^2*C*E*M*R+o^3*C*E*M^2)/(L1*(-o^3*C*L2*R+o*R+%i*o^2*L2)+M^2*(o^3*C*R-%i*o^2)),I2=
(E*L1*(%i*o*C*R-o^2*C*L2)-%i*o*C*E*M*R+o^2*C*E*M^2)/(L1*(-o^2*C*L2*R+R+%i*o*L2)+M^2*(o^2*C*R-%i*o)),I3=(o^2*C*E*M^2+E*M-o^2*C*E*L1*L2)/(L1*(-o^2*C*L2*R+R+%i*o*L2)+M^2*(o^2*C*R-%i*o))]]
(%i55) factor(%);
(%o55) [[I1=-(E*(2*%i*o^2*C*M*R-%i*o^2*C*L2*R-%i*o^2*C*L1*R+%i*R-o^3*C*M^2+o^3*C*L1*L2-o*L2))/(o*(o^2*C*M^2*R-o^2*C*L1*L2*R+L1*R-%i*o*M^2+%i*o*L1*L2)),I2=-
(o*C*E*(%i*M*R-%i*L1*R-o*M^2+o*L1*L2))/(o^2*C*M^2*R-o^2*C*L1*L2*R+L1*R-%i*o*M^2+%i*o*L1*L2),I3=(E*(o^2*C*M^2+M-o^2*C*L1*L2))/(o^2*C*M^2*R-o^2*C*L1*L2*R+L1*R-%i*o*M^2+%i*o*L1*L2)]]

いつもながらMaximaの因数分解は詰めが甘い。

I3について整理すると

I3=(E*(ω^2*C*M^2+M-ω^2*C*L1*L2))/(ω^2*C*M^2*R-ω^2*C*L1*L2*R+L1*R-j*ω*M^2+j*ω*L1*L2)
=(E*(ω^2*C*(M^2-L1*L2)+M))/(ω^2*C*R*(M^2-L1*L2)-j*ω*(M^2-L1*L2)

従ってI3が0になる条件は分子が0となる

ω^2*C*(M^2-L1*L2)+M=0

すなわち

ω^2=-M/(C*(M^2-L1*L2))
=M/(C*(L1*L2-M^2))

ここでMを結合係数の定義

M=k*sqrt(L1*L2)

で置き換えると

ω^2=k*sqrt(L1*L2)/(C*(L1*L2-k^2*L1*L2))
=k*sqrt(L1*L2)/(C*L1*L2*(1-k^2))
=(k/(1-k^2))/(C*sqrt(L1*L2))

ということになる。理想的なC=0やk=1の条件ではω=∞となる。Cが大きくなればなるほどωは低くなる。Cが0でない時はL1,L2が大きければ大きいほどωは低くなる。RやL4に流れる電流とは無関係。

等価回路に置き換えた場合、網目電流法では相互インダクタンスによる電圧降下の極性に注意しないとついつい間違ってしまう。

この問題を等価回路を用いないで解く方法は存在するのだろうか?

P.S

これと良く似た回路がアマチュア無線のSWR計とかに使われているCM形電力計にみられる。Cは容量結合、Mは相互インダクタンスの意味らしい。CM形方向性結合器と呼ばれる。昔は特許で押さえられていたらしい。検索しても詳しく解析したものは見あたらない。なにか秘密があるに違いない。
webadm
投稿日時: 2008-8-26 5:56
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【58】相互誘導回路(その23)
次ぎは前問と似て非なる相互誘導回路。L4に流れる電流が0となる電源周波数fを導けというもの。



以下の関係が成り立つ

(jωL1-j/(ωC))*I1+jωM1*I2+(j/(ωC))*I3=E

(jωL2+jωL3)*I2+jωM1*I1+jωM2*I3=0

(jωL4-j/(ωC))*I3+jωM2*I2+(j/(ωC))*I1=0

これをI1,I2,I3に関して解くと

(%i35) e1:(%i*o*L1-%i/(o*C))*I1+%i*o*M1*I2+(%i/(o*C))*I3=E;
(%o35) %i*o*I2*M1+I1*(%i*o*L1-%i/(o*C))+(%i*I3)/(o*C)=E
(%i36) e2:(%i*o*L2+%i*o*L3)*I2+%i*o*M1*I1+%i*o*M2*I3=0;
(%o36) %i*o*I3*M2+%i*o*I1*M1+I2*(%i*o*L3+%i*o*L2)=0
(%i37) e3:(%i*o*L4-%i/(o*C))*I3+%i*o*M2*I2+(%i/(o*C))*I1=0;
(%o37) %i*o*I2*M2+I3*(%i*o*L4-%i/(o*C))+(%i*I1)/(o*C)=0
(%i38) solve([e1,e2,e3],[I1,I2,I3]);
(%o38) [[I1=
(E*(o^2*C*(M2^2-L3*L4-L2*L4)+L3+L2))/(L1*(%i*o^3*C*(M2^2-L3*L4-L2*L4)+%i*o*(L3+L2))+%i*o*(-M2^2+L3*L4+L2*L4)-2*%i*o*M1*M2+(%i*o^3*C*L4-%i*o)*M1^2),I2=
(E*(o^2*C*L4-1)*M1-E*M2)/(L1*(%i*o^3*C*(M2^2-L3*L4-L2*L4)+%i*o*(L3+L2))+%i*o*(-M2^2+L3*L4+L2*L4)-2*%i*o*M1*M2+(%i*o^3*C*L4-%i*o)*M1^2),I3=-
(o^2*C*E*M1*M2+E*(-L3-L2))/(L1*(%i*o^3*C*(M2^2-L3*L4-L2*L4)+%i*o*(L3+L2))+%i*o*(-M2^2+L3*L4+L2*L4)-2*%i*o*M1*M2+(%i*o^3*C*L4-%i*o)*M1^2)]]

I3の式を整理すると

I3=-(ω^2*C*E*M1*M2+E*(-L3-L2))/(L1*(jω^3*C*(M2^2-L3*L4-L2*L4)+j*ω*(L3+L2))+j*ω*(-M2^2+L3*L4+L2*L4)-2*j*ω*M1*M2+(j*ω^3*C*L4-j*ω)*M1^2)
=E*((L2+L3)-ω^2*C*M1*M2)/(j*ω*(L1*(ω^2*C*(M2^2-L4*(L2+L3))+(L2+L3))+(L4*(L2+L3)-M2^2)-2*M1*M2+(ω^2*C*L4-1)*M1^2)

従ってI3が0になるためには

(L2+L3)-ω^2*C*M1*M2=0

でなければならず、上記の式をωについて解くと

ω=sqrt((L2+L3)/(C*M1*M2))

ω=2πfを代入すると

2πf=sqrt((L2+L3)/(C*M1*M2))

fについて解くと

f=sqrt((L2+L3)/(C*M1*M2))/2π

ということになる。
webadm
投稿日時: 2008-8-26 5:24
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投稿: 3089
【57】相互誘導回路(その22)
次ぎはちょっと変わった相互誘導回路に流れる電流を求めよというもの。



以下の関係が成り立つ

(jωL1+jωL4)*I1+(jωM1+jωM2)*I2=E

(jωL2+R+jωL3)*I2+(jωM1+jωM2)*I1=0

これをI1,I2に関して解くと

(%i24) e1:(%i*o*L1+%i*o*L4)*I1+(%i*o*M1+%i*o*M2)*I2=E;
(%o24) I2*(%i*o*M2+%i*o*M1)+I1*(%i*o*L4+%i*o*L1)=E
(%i25) e2:(%i*o*L2+R+%i*o*L3)*I2+(%i*o*M1+%i*o*M2)*I1=0;
(%o25) I2*(R+%i*o*L3+%i*o*L2)+I1*(%i*o*M2+%i*o*M1)=0
(%i26) solve([e1,e2],[I1,I2]);
(%o26) [[I1=(E*(R+%i*o*(L3+L2)))/(L4*(%i*o*R+o^2*(-L3-L2))+L1*(%i*o*R+o^2*(-L3-L2))+o^2*M2^2+2*o^2*M1*M2+o^2*M1^2),I2=-
(%i*E*M2+%i*E*M1)/(L4*(%i*R+o*(-L3-L2))+L1*(%i*R+o*(-L3-L2))+o*M2^2+2*o*M1*M2+o*M1^2)]]

整理すると

I1=E*(R+jω*(L3+L2))/(L4*(jωR+ω^2*(-L3-L2))+L1*(jωR+ω^2*(-L3-L2))+ω^2*M2^2+2*ω^2*M1*M2+ω^2*M1^2)
=E*(R+jω*(L2+L3))/(ω^2*((M1+M2)^2-(L1+L4)*(L2+L3))+jωR*(L1+L4))

I2=-(j*E*M2+j*E*M1)/(L4*(jR+ω*(-L3-L2))+L1*(jR+ω*(-L3-L2))+ω*M2^2+2*ω*M1*M2+ω*M1^2)
=-E*j*(M1+M2)/(ω*((M1+M2)^2-(L1+L4)*(L2+L3))+jR*(L1+L4))

実効値はそれぞれの絶対値になるので

|I1|=E*sqrt((R^2+ω^2*(L2+L3)^2)/(ω^4*((M1+M2)^2-(L1+L4)*(L2+L3))^2+ω^2*R^2*(L1+L4)^2))

|I2|=E*sqrt((M1+M2)^2/(ω^2*((M1+M2)^2-(L1+L4)*(L2+L3))^2+R^2*(L1+L4)^2))

ということになる。

著者の提供している回路図には相互インダクタンスがどちらもMと記載されているが、解答を見るとM1,M2と異なっていて答えがまったく合わず焦った。出題問題と正解が違っている典型例。こんなんで採点されたら受験者は不幸としかいいようが無い。

図は著者の解答に合わせてM1,M2と書き直したもの。



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