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webadm
投稿日時: 2009-12-25 18:57
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
逆回路(Inverse Network)
大学では一時限の講義で終わるか割愛される一端子対回路について2ヶ月もかかってしまった。それだけに奥深いし視野の広いテーマではあるのだが。個人的にはLC一端子対回路のもうひとつのCauer展開でLとCの組み合わせ回路を切り出す方法を研究してみたかったのだが、難し過ぎて止めてしまった。またいつか機会があれば再開したいところ。

というわけで、そうした研究の楽しみは後に残して易しいところを先へ進もう。

これまで幾度か双対性のある2つの回路が登場したが、それについて詳しく議論する必要がある。それらは互いに逆回路であると言われる。

2つの異なる回路のインピーダンスがそれぞれZ1,Z2で表されるとすると

Z_1{\cdot}Z_2=R^2

なる関係が常に成り立つ時にZ1とZ2はRに関して互いに逆回路であるという。

なんのことだかピンとこないが、周波数を変えてもZ1とZ2の値の積が常に定数であるという意味であることはわかる。

これは後に学ぶフィルタ回路で登場する定K形フィルタ回路や全域通過フィルタの条件でもある。

一例としてZ1がn個のインピーダンスの直列回路から成るとすると以下のように表すことができる。

Z_1=Z_{11}+Z_{12}+...+Z_{1n}

これの逆回路であるZ2はどうなるか考えてみよう

\begin{eqnarray}Z_2&=&\frac{R^2}{Z_1}\\&=&{R^2}Y_1\\&=&\frac{R^2}{Z_{11}+Z_{12}+...+Z_{1n}}\\&=&\frac{1}{\frac{Z_{11}}{R^2}+\frac{Z_{12}}{R^2}+...+\frac{Z_{1n}}{R^2}}\\Y_2&=&\frac{1}{Z_2}\\&=&\frac{Z_{11}}{R^2}+\frac{Z_{12}}{R^2}+...+\frac{Z_{1n}}{R^2}\\&=&\frac{1}{Z_{21}}+\frac{1}{Z_{22}}+...+\frac{1}{Z_{2n}}\\&=&Y_{21}+Y_{22}+...+Y_{1n}\end{eqnarray}

従ってZ1の逆回路はZ1を構成するn個のインピーダンスそれぞれに対する逆回路素子を並列接続したものとなることがわかる。

LC,RL,RC一端子対回路で出てきた駆動点インピーダンスの式を思い出すと、一方の零点が他方の極で、逆も真であるような関係を持つ2つの回路は互いに逆回路ということが出来る。

最も単純なインダクタンス素子とキャパシタンス素子はちょうどその関係にある。インダクタンスはω=0を零点としω=∞を極とするが、キャパシタンスはちょうど正反対にω=0を極、ω=∞を零点に持つためそれぞれの逆回路ではLがCにCがLに換わることが予想が付く。並列と直列接続も双対性なので逆回路では直列だったものが並列接続に、並列接続だったものが直列につながるということになる。


webadm
投稿日時: 2009-12-25 21:21
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
定抵抗回路(constant resistance network)
定抵抗回路とは文字通り、駆動点インピーダンスの虚数部が周波数に関係なく常に0で実数部も周波数に寄らず一定値となる回路のことである。

抵抗だけから成る回路も定抵抗回路だが、LとCを含む回路も条件によって定抵抗回路となり得る。

駆動点インピーダンスの分子と分母の式をs=jωとしてそれぞれ実数部と虚数部の関数に分けると

\begin{eqnarray}Z(\omega)&=&\frac{f(\omega)}{g(\omega)}\\&=&\frac{f_1(\omega)+{j}f_2(\omega)}{g_1(\omega)+{j}g_2(\omega)}\\&=&\frac{(f_1(\omega)+{j}f_2(\omega))(g_1(\omega)-{j}g_2(\omega))}{(g_1(\omega)+{j}g_2(\omega))(g_1(\omega)-{j}g_2(\omega))}\\&=&\frac{f_1(\omega)g_1(\omega)+f_2(\omega)g_2(\omega)+{j}(f_2(\omega)g_1(\omega)-f_1(\omega)g_2(\omega))}{g_1(\omega)^2+g_2(\omega)^2}\end{eqnarray}

従って虚数部が周波数によらず0であるなら

\begin{eqnarray}f_2(\omega)g_1(\omega)-f_1(\omega)g_2(\omega)&=&0\\f_2(\omega)g_1(\omega)&=&f_1(\omega)g_2(\omega)\\\frac{g_1(\omega)}{g_2(\omega)}&=&\frac{f_1(\omega)}{f_2(\omega)}\\\frac{f_2(\omega)}{g_2(\omega)}&=&\frac{f_1(\omega)}{g_1(\omega)}\end{eqnarray}

が成り立つということになる。

これらを先の式に代入すると

\begin{eqnarray}Z(\omega)&=&\frac{f_1(\omega)g_1(\omega)+f_2(\omega)g_2(\omega)}{g_1(\omega)^2+g_2(\omega)^2}\\&=&\frac{\frac{f_2(\omega)g_1(\omega)^2}{g_2(\omega)}+\frac{f_1(\omega)g_2(\omega)^2}{g_1(\omega)}}{g_1(\omega)^2+g_2(\omega)^2}\\&=&\frac{f_1(\omega)}{g_1(\omega)}\\&=&\frac{f_2(\omega)}{g_2(\omega)}\\&=&R\end{eqnarray}

ということになる。

LC一端子対回路の駆動点インピーダンス式の分子と分母の多項式でs=jωと置いて実数部と虚数部の関数をそれぞれ導くと

\begin{eqnarray}Z(\omega)&=&\frac{f_1(\omega)}{g_1(\omega)}=\frac{a_0-a_2{\omega}^2+...+(-1)^{n}a_{2n}{\omega}^{2n}}{-b_2{\omega}^2+b_4{\omega}^4+...+(-1)^{n-1}b_{2n-2}{\omega}^{2n-2}}\\&=&\frac{f_2(\omega)}{g_2(\omega)}=\frac{a_1\omega-a_3{\omega}^3+...+(-1)^{n-1}a_{2n-1}{\omega}^{2n-1}}{b_1{\omega}-b_3{\omega}^3+...+(-1)^{n-1}b_{2n-1}{\omega}^{2n-1}}=\frac{a_1-a_3{\omega}^2+...+(-1)^{n-1}a_{2n-1}{\omega}^{2n-2}}{b_1-b_3{\omega}^2+...+(-1)^{n-1}b_{2n-1}{\omega}^{2n-2}}\\&=&R\end{eqnarray}

が成り立つ必要があり、すなわち

\begin{eqnarray}a_0-a_2{\omega}^2+...+(-1)^{n}a_{2n}{\omega}^{2n}&=&R(-b_2{\omega}^2+b_4{\omega}^4+...+(-1)^{n-1}b_{2n-2}{\omega}^{2n-2})\\a_1-a_3{\omega}^2+...+(-1)^{n-1}a_{2n-1}{\omega}^{2n-2}&=&R(b_1-b_3{\omega}^2+...+(-1)^{n-1}b_{2n-1}{\omega}^{2n-2})\end{eqnarray}

が成り立つためには

\begin{eqnarray}a_0&=&0\\a_{2n}&=&0\\Z(\omega)&=&\frac{a_1}{b_1}=\frac{a_2}{b_2}=...=\frac{a_{2n-1}}{b_{2n-1}}=R\end{eqnarray}

でなければならないということになる。

しかしこれの物理的意味はどういうことだろう?

数学的には定抵抗回路の駆動点インピーダンス関数は零点も極も存在しないということを意味する。これはLiouvilleの定理によれば関数が定数以外にあり得ないという当たり前の結論しか持たない。

いったいこれは何の役に立つのだろうか考えてみよう。

ほとんどの国内で出版された電気回路理論の参考書は定抵抗回路についてその由来や応用については触れていないで終わっている。何か訳が有りそうである。そう思うと調べたくなってくる。

だいぶ以前に上巻を学んだ際に交流回路理論で実は定抵抗回路に関する演習問題がいくつも登場したのを憶えているだろうか?

その中で最初に登場するのがBoucherotの回路と呼ばれるものである。他にも色々な人の名前が付けられた交流ブリッジ回路も定抵抗回路条件を求める問題が登場していた。

これまで学んだ一端子対回路では2端子回路しか構成しないので(入力と出力のある)機能をもった回路を組むには複数の一端子対回路を組み合わせる必要がある。

その中でBoucherotの回路は入力と出力を持ち、出力電流が出力負荷に関わらず入力信号と内部回路から決まるというフィルター機能を提供する。

これをもう一度考察し直してみよう。



Boucherotの回路はZ1とZ2が以下の関係を満足すると負荷であるZ3に流れる電流がZ3に寄らず決まるというものだった。

\begin{eqnarray}Z_1(s)&=&-Z_2(s)\end{eqnarray}

Z3に流れる電流I3は

\begin{eqnarray}I_3(s)&=&E(s)\frac{1}{Z_1(s)+\frac{1}{\frac{1}{Z_2(s)}+\frac{1}{Z_3(s)}}}\frac{Z_2(s)}{Z_2(s)+Z_3(s)}\\&=&E(s)\frac{1}{Z_1(s)+\frac{Z_2(s)Z_3(s)}{Z_2(s)+Z_3(s)}}\frac{Z_2(s)}{Z_2(s)+Z_3(s)}\\&=&E(s)\frac{Z_2(s)}{Z_1(s)(Z_2(s)+Z_3(s))+Z_2(s)Z_3(s)}\\&=&E(s)\frac{1}{Z_1(s)+(\frac{Z_1(s)}{Z_2(s)}+1)Z_3(s)}\end{eqnarray}

ということになり、I3がZ3の影響を受けなくなる条件は

\begin{eqnarray}\frac{Z_1(s)}{Z_2(s)}+1&=&0\\Z_1(s)&=&-Z_2(s)\end{eqnarray}

ということになる。

Z1=R1+jX1
Z2=R2+jX2

とするとZ1=-Z2を満たすには

R1=-R2
X1=-X2

が成り立つ必要がある。R1,R2は受動素子では負の値を取り得ないので

R1=R2=0

ということになり

Z1=jX1
Z2=jX2

X1=-X2

Z1Z2=(jX1)(jX2)=(-jX2)(jX2)=(jX1)(-jX1)=X1^2=X2^2

ということになる。これはZ1とZ2がX1^2やX2^2に関して互いに逆回路でなければならないということを意味する。またZ3を取り除いた開放端での駆動点インピーダンスは

Z=Z1+Z2=0

となり定抵抗回路となる。これは後にフィルタ回路で最初に出てくる定K形フィルタの原理でもある。

また後に学ぶことになる無限長の分布定数回路も定抵抗回路であることは以前に最初の直流回路で無限に続く抵抗ラダー回路の合成抵抗を求める演習問題で予告されていることである。ヘビサイドの電信方程式(Telegrapher's equation)は分布定数回路の微分方程式から波動方程式を導くショートカットを示した。それは無限長の分布定数回路が一定の特性インピーダンス値を持つ定抵抗回路を構成することも示した。これは波が周波数によらず歪みなく伝搬することを意味する。電磁気学上ではこれは誘電率と透磁率の比が一定であれば電磁波(電波や光)は歪まずに伝搬することを示す。特性インピーダンスのミスマッチが発生するような有限長の分布定数回路や境界のある空間では波の反射が発生し進行波と反射波が重なって波が歪む。光や電波では反射と屈折や回折が生じる。


それでは定抵抗回路は損失を含む回路では構成できないのだろうかという疑問が湧く。

歴史的にはこうした受動素子からのみ成る一定の機能を持った伝送回路(フィルタ回路)は第二次世界大戦で分断される形でドイツ(K.W. Wagner、W. Cauer)と米国(O. J. Zobel、H. W. Bode)とで独自に研究が行われた。急速に普及し始めた電話サービスに用いられる有限長の分布定数回路である電話回線の周波数特性を平坦化する等価器(イコライザー)や増幅回路で音声帯域のみを通過させ他のノイズ源となる帯域を阻止するような濾波器(フィルタ)の開発が急務であったためである。今日では電話網はデジタル化されてしまってそれらが用いられることは無くなってしまったが、デジタル化されたイコライザーやフィルタという名前で名残を残している。アナログ電子回路では未だに重要な理論なので教えられ続けている。詳しくは次ぎの二端子対回路やフィルタ回路で学ぶことになる。

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