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webadm
投稿日時: 2010-5-4 2:58
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3093
インピーダンス行列(Z行列)
ちょうど一端子対回路の駆動点インピーダンスを考えた際に、任意の受動素子と電源から成る回路網内の任意のn個の素子の両端を端子対とするn端子対回路のひとつの端子対を除いてすべてを短絡したものが一端子対回路だったと同様に、二つの端子対を除いてすべてを短絡したものが二端子対回路とみなすことができる。

その場合に、2つの端子対の電圧と電流、E1,E2,I1,I2の間には以下の関係が成り立つことになる。

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />Z_{11} & Z_{12}\\<br />Z_{21} & Z_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]

ここで係数行列がインピーダンス行列もしくはZ行列とよばれ、行列の各要素はインピーダンスパラメータと呼ぶ。

それぞれのインピーダンスパラメータは以下の意味を持つ。

端子対1を開放するとI1=0となるため、先の関係式に代入すると

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />Z_{11} & Z_{12}\\<br />Z_{21} & Z_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />0 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&\left.Z_{12}I_2\right|_{I_1=0}\\<br />E_2&=&\left.Z_{22}I_2\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

従ってインピーダンスパラメータは

\begin{eqnarray}<br />Z_{12}&=&\left.\frac{E_1}{I_2}\right|_{I_1=0}\\<br />Z_{22}&=&\left.\frac{E_2}{I_2}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

Z12を開放伝達インピーダンス、Z22を開放駆動点インピーダンスと呼ぶ。

同様に端子対2を開放した場合

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />Z_{11} & Z_{12}\\<br />Z_{21} & Z_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />0<br />\end{array}\right]

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&\left.Z_{11}I_1\right|_{I_2=0}\\<br />E_2&=&\left.Z_{21}I_1\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

従ってインピーダンスパラメータは

\begin{eqnarray}<br />Z_{11}&=&\left.\frac{E_1}{I_1}\right|_{I_2=0}\\<br />Z_{21}&=&\left.\frac{E_2}{I_1}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

Z11を開放駆動点インピーダンス、Z21を開放伝達インピーダンスと呼ぶ。

だいぶ前に、上巻の「回路網解析と基本諸定理」で受動素子(L,C,R,M)のみからなる線形回路網では一般的にインピーダンスマトリックスが対称行列となるため相反定理が成り立つことを学んだ。

二端子対回路にも同じことが言える。ここでは上巻の時とは逆に相反定理が成り立つ場合、インピーダンスマトリックスが対称行列であることを確認してみよう。

相反定理が成り立つ時には下記の関係式が成り立つことになる。

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{E_1}{I_2}\right|_{I_1=0}&=&\left.\frac{E_2}{I_1}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

これは先に定義した開放伝達インピーダンスそのものであるので、置き換えると

\begin{eqnarray}<br />Z_{12}&=&Z_{21}<br />\end{eqnarray}

ということになる。

従って一般的な二端子対回路ではインピーダンスマトリックスは対称行列となるため、独立なインピーダンスパラメータは3つということになる。

一方今度は以下の関係が成り立つ二端子対回路は対称回路であると言う。

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{E_1}{I_1}\right|_{I_2=0}&=&\left.\frac{E_2}{I_2}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

これは先に定義した開放駆動点インピーダンスそのものであるので、

\begin{eqnarray}<br />Z_{11}&=&Z_{22}<br />\end{eqnarray}

ということになる。

二端子対回路をインピーダンス行列表現は複数の回路の各端子対を直列接続する場合に都合がよい。

P.S

後半の内容は既に学んでいたことなので、最初なんの疑問もなく書いてしまったのだが、ふと疑問が沸いた。どの参考書にも受動素子のみから成る線形回路網では一般的に相反定理が成り立つとだけ書いてあるが、ひょっとして相反定理が成り立たない例外があるから一般にと断っているのではないだろうかと。そう考えたら眠れなくなってしまった。参考書に書いてあるのを丸飲みしていただけで、実はよくわかっていなかったのである。

実際のところ、普通に思いつく範囲の受動素子のみから成る回路は相反定理が成り立つ可逆回路なわけである。マイクロ波送受信機に必ず使用されるサーキュレータが受動素子のみから成る非可逆回路である。サーキュレータは厳密には三端子対回路であるが、ひとつの端子対を終端すればアイソレータという一方向伝送の二端子対回路となる。原理は電磁気学理論の知識を必要とし電気回路理論の範疇を越えてしまうので触れないようにしているようだ。

ユニークな受動素子のみから成る非可逆回路を発明すれば特許になるかもしれない。実際検索すると特許がたくさん出てくる。

それと、二端子対回路は昔は四端子回路と呼ばれていた時代があったことを古書を色々調べると明らかになる。二端子対回路(Two Terminal Pair Network)なる用語と、これから学ぶ様々な表現は戦後になってフィルタ回路、真空管やトランジスタ電子回路、それにマイクロ波回路の研究が盛んに行われた70年代初頭にGuilleminとその弟子達によって現在の回路網理論の形に体系化されたようである("A century of electrical engineering and computer science at MIT, 1882-1982" MIT Pressより)

一方でそれ以前はどうだったかというと、主に集中定数型のフィルター理論の導入が目的だったようで、リアクタンス回路を前提としたものが古い本では顕著に見られる。戦前のドイツの理論電気学の本ではマイクロ波を扱うために分布定数回路を含めた形に拡張するところで終わっているものがある。この辺がまたしても戦争の傷跡を感じさせる部分でもある。レーダー技術に代表されるマイクロ波技術の研究に力を入れた米国が戦勝国となり、それに遅れたドイツや日本は敗戦国となった。未だに戦争勃発の兆候が見られると軍事力=技術力みたいな形でようやく技術振興が叫ばれるのは悲しいことである。

ドイツ仕込みの四端子回路の本は戦前戦後の日本の古書にもそっくりそのまま出てきている。特徴的なのは、二端子対の電圧の極性が現在のそれと異なっている点とインピーダンス行列、アドミッタンス行列それに四端子定数の3つの表記のみで戦後になって提案されたそれ以外の表記は出てこない点にある。I1が流入方向、I2が流出方向だとすると、外部の電圧源E1,E2は互いに逆極性になる。



またドイツの参考書ではインピーダンスパラメータが偏微分方程式になっていることに気づく。なるほど、一方入力変数を0固定として他方で偏微分すればよいわけで。

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&Z_{11}I_1+Z_{12}I_2\\<br />E_2&=&Z_{21}I_1+Z_{22}I_2<br />\end{eqnarray}

それぞれI1=0とI2=0としたケースでI2とI1で偏微分するとインピーダンスパラメータは

\begin{eqnarray}<br />Z_{11}&=&\left.\frac{\partial{E_1}}{\partial{I_1}}\right|_{I_2=0}\\<br />Z_{12}&=&\left.\frac{\partial{E_1}}{\partial{I_2}}\right|_{I_1=0}\\<br />Z_{21}&=&\left.\frac{\partial{E_2}}{\partial{I_1}}\right|_{I_2=0}\\<br />Z_{22}&=&\left.\frac{\partial{E_2}}{\partial{I_2}}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

ということになる。なんだ簡単じゃないか(´∀` )

本書の記述はどちらかというと古い伝統に基づいているものの現代知られている表現方法を一通り紹介している、次に学ぶフィルタ理論への準備という意味合いが強い。また高周波やマイクロ波回路で必須のSパラメータ表現は分布定数回路でも出てこない。これらはマイクロ波の専門の講義で扱うことになるからであろう。
webadm
投稿日時: 2010-5-4 1:49
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3093
二端子対回路
ようやく二端子対回路まで進んだ。

もともと電気回路理論を学ぼうとした発端は、トランジスタが縦列接続された回路の解析方法を分からずそれを知ろうとしたからだった。

しかしここにきてその願いがかなうのはまだずっと先のことだということがようやく分かってきた。それはそれでひとつの到達点である。なんでも始めてみたら、目標としていた地点はまだずっと先だったというのは登山とか冒険、研究開発でよくあること。

これから学ぶことになる二端子対回路は、トランジスタのような能動素子はもちろん、ダイオードのような非線形素子は無論、電源すらも含まない、受動素子からのみなる回路網が前提条件である。

かなり制約があるが、実務的には後に学ぶ分布定数回路なども扱えるため受動素子からのみ成るフィルタや高周波伝送路などの伝送回路を扱うのに役立つ。

ひとつ前の一端子対回路で駆動点インピーダンス関数についていろいろ基本を学んだことが役立つ。

一般的に二端子対回路では与えられた条件での回路解析が主で、その合成は扱わない。というのも既に一端子対回路の演習問題で判ったように、回路の駆動点インピーダンス関数が得られたとしてもそれを実現する回路はひとつとは限らないからである。回路合成の解の集合は空集合を含む一つ以上の元を含む集合となる。その解の集合を求めることは代数多様体上の有理点を求める問題を解くことに帰着するため簡単ではない。

故に、二端子対回路では回路解析のみに限定して、有用な定理や考え方、視点を学ぶのみに止まる。これは有限時間で教えることができ、また学ぶことができる。

これを学んだ上で、やっと能動素子や電源を含む回路網の解析や合成ができるようになる。もちろんまったく電気回路理論を学ばなくてもキルヒホッフの法則を知っていれば特定の回路の解析は十分可能であるが、回路を与えられずに与えられた特性を得る回路を合成することは思考錯誤の連続となり有限時間内に解が得られる保証はない。

ということでとりあえずしばらくは以下の制約を与えて扱う回路を限定することになる

・線形素子(R,L,M,C)のみで構成される
・一対の端子の一方から流入する電流は、他方の端子から流出する電流に等しい

従って以下の様に一定の回路の外部条件が与えられることになる。



従って二端子対回路はE1,I1,E2,E2の中から2つを主要不定元とする組み合わせ

_{4}C_{2}=6

だけの種類の表現方法があることになる。

以降でそれぞれの表現方法について学ぶことにする。
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