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webadm | 投稿日時: 2010-11-30 23:28 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
またまた:対称回路 まだしばらく対称回路の問題が続く。
以下の回路と等価な対称格子形回路を求めよというもの。 著者は前問と同様に二等分回路のZs,Zfを求めて解いている。 今度は前問で用いたのとはまた違う方法で解いてみよう。 まず問題の回路の四端子定数が等価な対称格子形回路の四端子定数と等しいことから という関係を満たすZf,Zsがただ一つだけ存在する。 この関係をZf,Zsに関する連立方程式として解くと と解ける。 これを回路図に表すと ということになる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-3 8:26 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
軸対称二端子対回路 次は軸対称二端子対回路に関する問題。
軸対称二端子対回路を内部インピーダンスZの電源と負荷インピーダンスZの間に挿入した場合の全体の伝送行列を求めよというもの。 これは基本を理解していないとだめなひっかけ問題である。どこまでを全体の二端子対回路に含めればいいか間違えやすい。 二端子対回路は線形受動回路であるという基本を忘れなければ、電源はそれに含めてはいけないことになる。 あとは軸対称二端子対回路の扱い。これも理解していないと何のことはさっぱり判らないことになる。同じ回路を入力と出力の方向を逆向きにした回路を従属接続したものと考えるのが妥当である。 従って等価電圧源回路はシリーズ内部インピーダンスのみの二端子対回路として、負荷インピーダンスは並列インピーダンスのみの二端子対回路として軸対称二端子対回路を挟むように接続されたものとして考える。 これは誰が考えても著者の解と同じ結論に辿りつくことになる。 伝送行列の縦続接続なので行列の乗法ということになるが、ここでは著者と違う計算順序で先に軸対称二端子対回路の伝送行列を計算してやってみよう。 ということになる。 P.S ちなみに脱線してへそ曲がりな発想で電源を含む二端子対回路が行列でどう表すことができるかやってみよう。 端子対条件と重ね合わせの理で以下の関係式が導かれる これは伝送行列Fによって線形写像されたベクトルを電圧源E分だけ平行移動する変換、すなわちaffine変換である。 このため回路に与える入力に対して出力は非線形となる。(E2,I2)の代わりに(E2a+E2b,I2a+I2b)を与えた場合、線形であれば(E1,I1)は(E2a,I2a)と(E2b,I2b)をそれぞれ単独で与えた場合の(E1a,I1a)と(E1b,I1b)の和と同じでなければならない。 従って線形ではなくなってしまう。 これだと都合が悪いので拡大係数行列表現を用いればaffine変換を単一の変換行列で表すことができる。 これによって乗法について線形代数の行列の乗法がそのまま使えるため合成変換が行列の積で表すことができる。 affine変換はコンピューターグラフィックスで当たり前のように用いられる。 affine変換は係数の総和が1になるような特別な線形結合(affine結合)が定義される。 同様に線形代数で定義されている線形独立(一次独立)に対応するaffine独立という概念も定義されている。 物理学ではLorentz変換がaffine変換の特殊な例で、特殊相対性理論で光速度一定の原理を示すために使われている。 意外なほどaffine変換と電気回路理論は無縁なようでほとんど関係する記事を検索で見つけることはできなかった。研究する余地がありそうである。また別の機会に。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-8 9:13 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
一方向性回路 次の問題は以前ジャイレータの問題で出てきた一方向性回路に関するもの。
以下の2つの回路が一方向系であるためのZの条件を求めよというもの。ただしAD-BC≠1とする。 以前のジャイレータの時に一方向性回路では伝送行列の行列式の値が0となることを知った。これは4端子定数でインピーダンスパラメータを表した場合のZ12が伝送行列の行列式の値となることから、 従って上の式でZ12が0の場合はE1がI2によらずZ11とI1によってのみ定まることになる。 今度は4端子定数でadmittanceパラメータを表すと 従ってY12が0の場合にはI1はE2によらずY11とE1によってのみ定まることになる。 従って一方向性回路の必要十分条件は回路全体の伝送行列の行列式|F|の値が0となることである。 題意の回路の回路全体の伝送行列を求めればよい。 左側の回路は2つの部分回路の直列接続であるため合成インピーダンス行列を求めると ということになる。これを伝送行列に変換すると行列式は 従って回路が一方向になる必要十分条件は行列式の値が0となることなので ということになる。 一方左側の回路は部分回路の並列接続であるので全体の伝送行列とその行列式は 従って回路が一方向になる必要十分条件は行列式の値が0となることなので ということになる。 著者はわざわざAD-BC≠1なる前提を設けているが、この問題の場合にはむしろAD-BC≠0であることが前提として不可欠である。誤記ではなかろうか。 P.S わざわざ伝送行列を求めなくてもインピーダンス行列もしくはadmittance行列のいずれかを求めればZ12,Y12が0となる条件から導き出すこともできる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-8 10:37 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
続:一方向性回路 次も一方向性回路の問題。
以下の回路が一方向性となるためのZの条件を求めよというもの。ただし回路の角周波数をωとする。 著者は前問の解を利用して解いているが、それとは別解でやってみよう。 以下の様にZを流れる閉回路電流I3を考える 以下の関係式が成り立つ 第一の式をn倍したものから第二の式を差し引いてE1を消去してI3を導くと これを第一の式に代入して整理すると 一方第三の式の両辺にnを乗じてI3について整理すると これを第一の式をn倍したものと第二の式にそれぞれ代入して差分をとりI1について整理すると ということになる。 すなわち回路全体の伝送行列と行列式は む、困ったことに行列式が0にならないではないか。 分子が0になる条件であれば ということで著者の解と同じになるが、この条件だと分母も0になってしまう。 どうすんだこれ(;´Д`) ちなみにこれが理想変成器ではなくジャイレータだったらどうなるかやってみよう。 以下の関係式が成り立つ 第一の式からI3を導いて第三の式に代入して整理すると 同様に第二の式から導いたI3を第一の式と第三の式の差分に代入して整理すると 従って回路全体の伝送行列と行列式から行列式の値が0となるZの条件は ということになる。ジャイレータの場合にはうまくいく。 よく考えれば先の理想変成器の場合でも最後の行列式の条件を以下の様に分母を先に乗じて払い去れば ということになる。 これでよしとしよう( ´∀`) P.S こうした一方向性回路は検索しても情報が乏しい。特許とも絡むので各社の技術者のノウハウだからかもしれない。以前の問題で紹介したFRG-7000の増幅回路にあるブリッジcapacitorも第一中間周波数でバッファ回路を一方向性にするためのものと思われる。 問題の回路の理想変成器とLの縦続接続回路は漏れ磁束のある結合トランスの等価回路である。 FRG-7000の第一中間周波数の中心周波数は55MHzなのでn=1として漏れinductanceをブリッジcapacitorの容量とから上の式で逆算してみると 従って第一中間周波トランスの漏れinductance容量は約4μHということになる。 もっと単純に考えると結合トランスの漏れinductanceの誘導性reactance値と正反対の容量性reactance値を持つcapacitorでブリッジすることで中和する回路と考えて良いかもしれない。LとCの関係式の両辺にjωを乗じて整理すると となるからである。この中和という考え方は出力信号が入力側に漏れることが避けられない三極管増幅回路の頃から確かあったと記憶する。中学生の頃に読んでいた「ラジオの製作」に掲載された「三極管ファイナル送信機の製作」という投稿記事で中和を使って発振し易い三極管をあえてファイナル段に使った送信機を製作した一部始終が紹介されていて吸い込まれるように読みふけった。いつか自分でも作ろうとして記事を毎日眺めているうちに茶色く紙面が変色してとうとう作る機会は訪れなかったけど。忘れられない記事だった。 理想的にはブリッジキャパシタンスをトリマーコンデンサーにしてちゃんと一方向性になるように調整するとイメージ混信を低減できて良いのかもしれない。といっても容量が数pFなのでビニール被服銅線を寄り合わせる程度かもしれない。 P.S 問題の回路ではブリッジ接続だけだが、実際には共通帰線を持つように回路の底部も短絡ブリッジする必要がある。 FRG-7000の回路でも結合トランスの片方はグランドに交流的に短絡してある。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-9 22:51 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
Zパラメータ 次はZパラメータに関する問題。
ある二端子対回路に関して下記の2つの端子対条件からこの二端子対回路の端子11'から見た駆動点インピーダンスを求めよというもの。 問題文では入力側については理想電圧源とシリーズインピーダンスZしか与えられていない。出力側については2つのケースとも与えられている。 題意で求められている駆動点インピーダンスはYパラメータの短絡駆動点admittance(Y11)の逆数で以下の端子対条件ということになる 4端子定数で表すと ということになる。 入力側の端子対条件を以下の様に定義する 2つの回路条件を4端子定数で表すと 第四の式にZを乗じて第三の式に加えてI1'を消去すると これと第一の式とでB,Dに関する連立方程式として解くと ということになる。 従って求める短絡駆動点インピーダンスは ということになる。 P.S 二端子対回路は線形代数的には基底の選び方(座標軸の選び方)によっていくつもの線形変換行列の形で表すことができる。なのでどの行列表現を使っても同じ様に解ける。基底の取り方には正負の方向の違いもあるので注意を要する。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-10 0:17 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
続:Zパラメータ 次もZパラメータに関する問題。
二端子対回路のインピーダンスパラメータをZ11,Z12,Z21,Z22とするとき、端子対22'から見た等価電圧源と電流源を示せというもの。 著者は出力端子対に関して短絡と開放の2つの端子条件を与えて等価電源回路を割り出している。 それとは違う方法でやってみよう。 それぞれの回路は全体として等価なのだから、対向接続すれば全体として対称となり2等分定理が適用できる。 等価電源の極性によって以下の関係式が成り立つ これらの関係が成り立つEとZ0がただ一つ存在しそれぞれ ということになる。 これは著者の解とは異なっている。その議論は後ほど。 等価電流源に関しても同様に という関係が成り立つ。 従ってIとY0は ということになる。 さて著者とZ0に関して結果が違うが、等価電圧源と等価電流源は互いに双対回路なので以下が成り立たなければならない 従って著者の解は間違っているということになる。著者がどこをどう間違えたか考えるのは読者の課題としよう( ´∀`) P.S 実は著者の回答が誤りだと証明するのに大部分の時間を要してしまった。基底の取り方というのは本当に注意しなければならない。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-14 6:51 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
4端子定数 次は4端子定数に関する問題。
以下の回路のE2/Eを求めよというもの。 これは全体が入力側のシリーズインピーダンスZと出力側のシャントインピーダンスZLをそれぞれ縦続接続した二端子対回路とした場合の4端子定数の開放電圧減衰率の逆数を意味する。 回路全体の伝送行列を求めれば良い 従ってE2/Eは ということになる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-14 7:03 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
理想オペアンプ 次の問題はいきなり電子回路的な理想オペアンプに関するもの。
理想オペアンプGは入力インピーダンスが無限大で出力インピーダンスが0かつ電圧増幅度Aが十分大きく|AZ1|≫|Z2|が成立するものとする。 以下の回路のE2とE1の比はいくらか示せというもの。 最初に理想オペアンプGの等価回路を考える必要がある。 出力インピーダンスは0で電圧増幅率Aを持つということなの入力電圧に比例した制御電源が出力側に置くことになる。 とすると回路全体の等価回路は以下の様になると考えられる 電源が2つあるので重ね合わせの理でEを求めると以下の関係が成り立つ 従って上記よりE2とE1の比は整理すると ここで題意にあるようにAが|AZ1|≫|Z2|であるようにAが十分大きな正の値、たとえば無限大とすると ということになる。 これは典型的な理想オペアンプを用いた反転増幅回路である。 同様の解析方法で非反転増幅回路やその他の理想オペアンプ回路を研究してみるとおもしろいかもしれない。 現実のオペアンプは理想オペアンプではなく、なおかつ非線形回路なので等価回路はもっと複雑で多様のものが考えられ、その回路解析も複雑なので電気回路理論では扱わない。 P.S 良く考えれば重ね合わせの理を用いずとも入力端と出力端の電圧差から と式をたてることもできた。 更によく考えたら二端子対回路としても解けることが判明した。 回路全体の伝送行列を3つの部分回路の並列接続と縦続接続として表すと 従って以下の関係式が成り立つ 第一の式よりE2とE1の比は自明で 同じ結論が導き出せる。むしろこちらが本来二端子対回路の模範解答として相応しいかもしれない。 P.S 理想オペアンプは制御電源を含むが線形なので上記の様に扱うことができる。理想オペアンプの伝送行列は見ての通り線形だが非可逆である。 現実のオペアンプは増幅率が有界限度内なので実際の増幅率はZ1とZ2の比から少しずれることになる。オーディオアンプとかでは厳密な増幅率は必要とされないが、精密デジタルマルチメーターとかでは測定精度に関わるため、回路を精密に解析してZ1,Z2の値を決定する必要がある。その場合Z1,Z2の値は標準数系列では実現できないので特注の抵抗値を持った薄膜抵抗器が製作される。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-20 10:10 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
続々:Zパラメータ 再びZパラメータに関する問題
ある線形二端子対回路について以下の様な端子対条件が成り立つ場合のZ22を求めよというもの 二端子対回路のZパラメータをZ11,Z12,Z21,Z22とすると与えれた端子対条件から以下が成り立つ 第三と第五の式から線形受動回路(Z21=Z12)として求めたE'と第五と最後の式から求めたE'が互いに等しいと置くとZ22は ということになる。 数式操作でかなり間違いをやらかして手間取った。 もっと見通しの良いやり方を考えるのは読者の課題としよう(´∀` ) |
webadm | 投稿日時: 2010-12-20 22:52 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3086 |
reactance回路 次の問題はreactance回路に関するもの
線形受動素子のみで構成された二端子対回路において電力が消費されないならば、そのインピーダンスパラメータはすべて純虚数となることを証明せよとのこと。 著者の解とは別のやり方で証明してみよう。 ラング線形代数学(下)の最初の章にこの証明のヒントがある。 線形受動回路で消費される有効電力は線形代数の双線形形式(bilinear form)で下記の様に表される これは線形受動回路のインピーダンス行列Zが対称行列であることから線形代数の双線形形式の性質を利用している。 従って上記を満足するための必要十分条件は 従って すなわちZ11,Z12,Z21,Z22の実数部が0の純虚数でなければならない。 P.S ラング線形代数学(下)は専門的(数学的)な内容で最初の章から難解で躓いていたが、この問題に到達した時に一瞬で理解できるようになった。やはり電気回路理論と線形代数学は同時期に学ぶと良い。 P.S 証明のもう一つのアプローチとして、インピーダンスパラメータが純虚数でないと仮定して最初の前提と矛盾することを示すやりかたがある。これは良い練習になるので読者の課題としよう(´∀` ) P.S ちなみに線形代数では特定の性質を持った行列には名前がついている。この問題のインピーダンス行列Zの条件 を満たす行列は歪Hermite行列という名前がついている。 すなわちリアクタンス行列は歪Hermite行列の実相というわけである。 Hermiteは現代ではエルミートと呼ぶが、高木貞治の「代数学講義」の"§67 ヘルミートの二次形式"の演習問題で、歪Hermite行列に関する問題が出ている。ここにすでにヒントがあったことは驚きである。 |
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