スレッド表示 | 古いものから | 前のトピック | 次のトピック | 下へ |
投稿者 | スレッド |
---|---|
webadm | 投稿日時: 2010-12-8 10:37 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
続:一方向性回路 次も一方向性回路の問題。
以下の回路が一方向性となるためのZの条件を求めよというもの。ただし回路の角周波数をωとする。 著者は前問の解を利用して解いているが、それとは別解でやってみよう。 以下の様にZを流れる閉回路電流I3を考える 以下の関係式が成り立つ 第一の式をn倍したものから第二の式を差し引いてE1を消去してI3を導くと これを第一の式に代入して整理すると 一方第三の式の両辺にnを乗じてI3について整理すると これを第一の式をn倍したものと第二の式にそれぞれ代入して差分をとりI1について整理すると ということになる。 すなわち回路全体の伝送行列と行列式は む、困ったことに行列式が0にならないではないか。 分子が0になる条件であれば ということで著者の解と同じになるが、この条件だと分母も0になってしまう。 どうすんだこれ(;´Д`) ちなみにこれが理想変成器ではなくジャイレータだったらどうなるかやってみよう。 以下の関係式が成り立つ 第一の式からI3を導いて第三の式に代入して整理すると 同様に第二の式から導いたI3を第一の式と第三の式の差分に代入して整理すると 従って回路全体の伝送行列と行列式から行列式の値が0となるZの条件は ということになる。ジャイレータの場合にはうまくいく。 よく考えれば先の理想変成器の場合でも最後の行列式の条件を以下の様に分母を先に乗じて払い去れば ということになる。 これでよしとしよう( ´∀`) P.S こうした一方向性回路は検索しても情報が乏しい。特許とも絡むので各社の技術者のノウハウだからかもしれない。以前の問題で紹介したFRG-7000の増幅回路にあるブリッジcapacitorも第一中間周波数でバッファ回路を一方向性にするためのものと思われる。 問題の回路の理想変成器とLの縦続接続回路は漏れ磁束のある結合トランスの等価回路である。 FRG-7000の第一中間周波数の中心周波数は55MHzなのでn=1として漏れinductanceをブリッジcapacitorの容量とから上の式で逆算してみると 従って第一中間周波トランスの漏れinductance容量は約4μHということになる。 もっと単純に考えると結合トランスの漏れinductanceの誘導性reactance値と正反対の容量性reactance値を持つcapacitorでブリッジすることで中和する回路と考えて良いかもしれない。LとCの関係式の両辺にjωを乗じて整理すると となるからである。この中和という考え方は出力信号が入力側に漏れることが避けられない三極管増幅回路の頃から確かあったと記憶する。中学生の頃に読んでいた「ラジオの製作」に掲載された「三極管ファイナル送信機の製作」という投稿記事で中和を使って発振し易い三極管をあえてファイナル段に使った送信機を製作した一部始終が紹介されていて吸い込まれるように読みふけった。いつか自分でも作ろうとして記事を毎日眺めているうちに茶色く紙面が変色してとうとう作る機会は訪れなかったけど。忘れられない記事だった。 理想的にはブリッジキャパシタンスをトリマーコンデンサーにしてちゃんと一方向性になるように調整するとイメージ混信を低減できて良いのかもしれない。といっても容量が数pFなのでビニール被服銅線を寄り合わせる程度かもしれない。 P.S 問題の回路ではブリッジ接続だけだが、実際には共通帰線を持つように回路の底部も短絡ブリッジする必要がある。 FRG-7000の回路でも結合トランスの片方はグランドに交流的に短絡してある。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-8 9:13 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
一方向性回路 次の問題は以前ジャイレータの問題で出てきた一方向性回路に関するもの。
以下の2つの回路が一方向系であるためのZの条件を求めよというもの。ただしAD-BC≠1とする。 以前のジャイレータの時に一方向性回路では伝送行列の行列式の値が0となることを知った。これは4端子定数でインピーダンスパラメータを表した場合のZ12が伝送行列の行列式の値となることから、 従って上の式でZ12が0の場合はE1がI2によらずZ11とI1によってのみ定まることになる。 今度は4端子定数でadmittanceパラメータを表すと 従ってY12が0の場合にはI1はE2によらずY11とE1によってのみ定まることになる。 従って一方向性回路の必要十分条件は回路全体の伝送行列の行列式|F|の値が0となることである。 題意の回路の回路全体の伝送行列を求めればよい。 左側の回路は2つの部分回路の直列接続であるため合成インピーダンス行列を求めると ということになる。これを伝送行列に変換すると行列式は 従って回路が一方向になる必要十分条件は行列式の値が0となることなので ということになる。 一方左側の回路は部分回路の並列接続であるので全体の伝送行列とその行列式は 従って回路が一方向になる必要十分条件は行列式の値が0となることなので ということになる。 著者はわざわざAD-BC≠1なる前提を設けているが、この問題の場合にはむしろAD-BC≠0であることが前提として不可欠である。誤記ではなかろうか。 P.S わざわざ伝送行列を求めなくてもインピーダンス行列もしくはadmittance行列のいずれかを求めればZ12,Y12が0となる条件から導き出すこともできる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-12-3 8:26 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
軸対称二端子対回路 次は軸対称二端子対回路に関する問題。
軸対称二端子対回路を内部インピーダンスZの電源と負荷インピーダンスZの間に挿入した場合の全体の伝送行列を求めよというもの。 これは基本を理解していないとだめなひっかけ問題である。どこまでを全体の二端子対回路に含めればいいか間違えやすい。 二端子対回路は線形受動回路であるという基本を忘れなければ、電源はそれに含めてはいけないことになる。 あとは軸対称二端子対回路の扱い。これも理解していないと何のことはさっぱり判らないことになる。同じ回路を入力と出力の方向を逆向きにした回路を従属接続したものと考えるのが妥当である。 従って等価電圧源回路はシリーズ内部インピーダンスのみの二端子対回路として、負荷インピーダンスは並列インピーダンスのみの二端子対回路として軸対称二端子対回路を挟むように接続されたものとして考える。 これは誰が考えても著者の解と同じ結論に辿りつくことになる。 伝送行列の縦続接続なので行列の乗法ということになるが、ここでは著者と違う計算順序で先に軸対称二端子対回路の伝送行列を計算してやってみよう。 ということになる。 P.S ちなみに脱線してへそ曲がりな発想で電源を含む二端子対回路が行列でどう表すことができるかやってみよう。 端子対条件と重ね合わせの理で以下の関係式が導かれる これは伝送行列Fによって線形写像されたベクトルを電圧源E分だけ平行移動する変換、すなわちaffine変換である。 このため回路に与える入力に対して出力は非線形となる。(E2,I2)の代わりに(E2a+E2b,I2a+I2b)を与えた場合、線形であれば(E1,I1)は(E2a,I2a)と(E2b,I2b)をそれぞれ単独で与えた場合の(E1a,I1a)と(E1b,I1b)の和と同じでなければならない。 従って線形ではなくなってしまう。 これだと都合が悪いので拡大係数行列表現を用いればaffine変換を単一の変換行列で表すことができる。 これによって乗法について線形代数の行列の乗法がそのまま使えるため合成変換が行列の積で表すことができる。 affine変換はコンピューターグラフィックスで当たり前のように用いられる。 affine変換は係数の総和が1になるような特別な線形結合(affine結合)が定義される。 同様に線形代数で定義されている線形独立(一次独立)に対応するaffine独立という概念も定義されている。 物理学ではLorentz変換がaffine変換の特殊な例で、特殊相対性理論で光速度一定の原理を示すために使われている。 意外なほどaffine変換と電気回路理論は無縁なようでほとんど関係する記事を検索で見つけることはできなかった。研究する余地がありそうである。また別の機会に。 |
webadm | 投稿日時: 2010-11-30 23:28 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
またまた:対称回路 まだしばらく対称回路の問題が続く。
以下の回路と等価な対称格子形回路を求めよというもの。 著者は前問と同様に二等分回路のZs,Zfを求めて解いている。 今度は前問で用いたのとはまた違う方法で解いてみよう。 まず問題の回路の四端子定数が等価な対称格子形回路の四端子定数と等しいことから という関係を満たすZf,Zsがただ一つだけ存在する。 この関係をZf,Zsに関する連立方程式として解くと と解ける。 これを回路図に表すと ということになる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-11-30 9:27 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
続々:対称回路 次も対称回路に関するもの
以下の回路と等価な対称格子型回路を求めよというもの。 著者はもっともオーソドックスで簡単な軸対称面で二等分した回路の切断面の端子を解放および短絡した時の駆動点インピーダンスを求め、それを用いて対称格子型回路を構成している。 それとは違う方法でやってみよう。 まず全体の回路の伝送行列を求めることにしよう。以前の問題でたびたび登場する二端子対回路の並列接続の公式を用いて、T字型回路とシリーズインピーダンス回路の並列接続として求めると ということになる。 次に四端子定数から対称回路の映像パラメータを求めると ということになる。 従って等価な対称格子型回路のパラメータZs,ZfはBartlett's bisection theoremにより ということになる。ZsはZ1とZ2の並列接続であり、ZfはZ2とZ3の直列接続と等価である。 従って回路は ということになる。 |
webadm | 投稿日時: 2010-11-30 0:01 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
続:対称回路 次も対称回路に関する問題。
問題文では軸対称二端子対回路が対称格子型回路と等価であることを証明せよということになっている。 しかし前の問題でも明らかのように対称回路では軸対称でなくとも2つの映像インピーダンスは等しくなる(どちら向きでも伝送行列が等しいため、その固有値(伝達定数)と固有ベクトル(映像インピーダンス)が一致する線形代数的な性質による)ので軸対称回路に限定されないと思われる。 すでに同じ結論を前問で導いてしまっているので、ここでは違うアプローチで同じ結論を得ることにしよう。 右の対称格子型回路の伝送行列を計算してみよう。前の問題で対称格子型回路は2つの対称二端子対回路を並列接続したものと等価であることから これは映像パラメータZ0,θ,Z0を持つ対称二端子対回路の伝送行列であることから等価であることが証明された。 P.S 対称回路には等価な対称格子型回路が存在することが証明されたが、非対称回路と等価な非対称格子型回路は存在するだろうか? そうだとするとすべての線形受動回路と等価な格子型回路が存在するということになる。この予想が正しいかどうか証明するのは読者の課題としよう(´∀` ) |
webadm | 投稿日時: 2010-11-25 9:18 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
対称回路 次は対称回路に関する問題
以下の回路が対称か否か、また2等分定理が適用できるかどうか答えよというもの。 直感的には左右対称なような気がする。ちょっと図の上半分の部分を書き換えてみるとそれは確かめることができる。 左右ひっくり返しても回路は一緒だ。しかしこうした直感的なものは実用的には十分だが理論としてははなはだ説得力に欠けるし、一般的でもない。 もう一度対称回路の定義に立ち戻る必要がある。 対称回路とは ・伝送行列の対角要素が同じ(A=D) と定義できる。 題意の回路は同一のT型回路を左右ひっくり替えして並列接続したものである。以前の問題で導いた異なる伝送行列を持つ2つの二端子対回路を並列接続した場合の合成回路の伝送行列の公式を使い、F1を片方のT字型回路、F2をその鏡像回路とすると 従ってA=Dなので対称回路ではあるが、軸対称かどうかはこれだけではわからない。 Bartllett's bisection theoremを理論で学んだことになっているが、実は良くわかっていなかったのである。 ここでちゃんと線形代数的に新解釈しておくことにしよう。 対称回路では2つの映像インピーダンスは同一となるのは先の計算結果からも明らか。そこで対称回路が軸対称回路であると想定すると中心軸に鏡を置いた場合にはまったく同じ回路が向かい合わせに接続されたように見えたのと等価であるはず。 軸対称回路では端子対条件(電圧と電流)を対称に与えた場合にはその極性によって2通りになる。 最初のケースは回路に外部から対称の電流が流入する場合、重ね合わせの理によって中心軸を流れる電流は互いに逆方向で打ち消しあうことになり流れる電流は0とならなければならない。これは中心軸で半分に切断した回路の切断面がオープンになっているのと等価である。半回路の端子側からみたインピーダンスをZocは回路全体の四端子定数から以下の関係が成り立つ。 ここで四端子定数を映像パラメータで置き換えるとZocは ということになる。 もう一方の条件では同様に以下の関係が成り立つ。 ということになる。 ここでBartlett's bisection theoremが成り立つ場合には、ZocとZscをパラメータとして持つ等価な対称格子型回路が存在することになる。前述の2つの回路条件を重ね合わせの理で等価な回路を表すと ということになる。 従って上記が成り立つための必要十分条件は が成り立つということにつきる。上記の式を整理すると 従ってA=DかつAD-BC=1が必要十分条件ということになる。したがって問題の回路は二等分定理を適用可能である。 これは著者の回答とはまったく違う。 確認のために、問題の回路と等価な対称格子型回路を合成してみよう。 対称格子型回路の伝送行列は ということになる。これは元の回路と同じである。 従ってBartlett's bisection theoremが適用できるということになる。 著者の解はむしろ軸対称回路かどうかという題意であれば正しいが二等分定理が適用できるかという題意であれば相反な対称回路(A=DかつAD-BC=1)であればOKなので正しくないということになる。 軸対称回路かどうかを直感的な方法ではなく線形代数的に判別できないものだろうか? それは読者の課題としよう(´∀` ) |
webadm | 投稿日時: 2010-11-23 21:29 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
続々:ジャイレータ これでジャイレータに関する問題は最後。
以下の図のようにジャイレータの入力と出力が抵抗でブリッジ接続されたような回路が一方向性であることを示し、伝送行列を求めよというもの。 著者の図だと共通帰線を持たない回路になっているが、実際には共通帰線を持たないと抵抗でブリッジした意味が無い。 著者とは違うアプローチでやってみよう。 考え中... 以前に異なる伝送行列を持つ二端子対回路を並列した時の伝送行列を求める問題の解を利用しよう 引用:
題意よりジャイレータの伝送行列をF1,シリーズ抵抗Rのみから成る二端子対回路の伝送行列をF2とすると おろ、著者の解と違ってしまった。 どうみても著者が導いたadmittance行列を変換表を使って伝送行列に変換してみても上と同じ結果になるので、著者の誤記ということにしよう。 さてこの回路が一方向性であることを示すにはどうすんだ(;´Д`) この回路の伝送行列の行列式は0になるので可逆行列ではないことだけは確かだ。 しかもこの伝送行列の映像パラメータと反復パラメータは同じであるという変わった性質を持つ。以前の問題にでてきたあれである。 引用: Fが非可逆行列である必要十分条件は まさのこの条件を満たすことがわかる。 それでは映像パラメータを求めてみよう。 ふうだいぶ計算を間違えてやり直した(;´Д`) 2つある影像インピーダンスの片方Z01はRと等しい時に伝達定数θは1/2となる。しかしもう片方のZ02も同じ値になってしまう。どうすんだこれ(;´Д`) よく考えたらこれは対称回路だから2つの影像インピーダンスは合い等しいことになる。だめだこりゃ。 あとはオーソドックスに回路方程式をたてるという方法がある。ブリッジ抵抗Rとジャイレータを含む閉回路を流れる電流をI3とすると 以下の関係が成り立つ 第三の式からI3を求めて、それを第一と第二の式に代入して整理すると 従ってI2はE1,E2それにRに依存して定まるが、I1はE1とRのみで一意的に定まるので出力側の条件E2,I2にまったく依存しない。これはすなわち一方向性を持つということになる。 ふう、やっと終わったよママン(ノД`) 実はこうした一方向伝送回路は身近な無線機器には必ずといってよいほど使われている。 高周波増幅回路では増幅素子(特にトランジスタ)そのものが出力から入力方向への電力拡散があるため、複数の増幅段を縦続接続する場合には入力方向に出力電力が逆流していかないように一方向結合回路で接続する必要がある。 理想的な一方向結合回路はジャイレーターや理想変成器を必要とするため実現できないが、現実の素子を使って逆方向の伝播係数を順方向の伝播係数より低くする回路が実用化されている。 こうした一方向結合回路は後の問題で扱う。 P.S 実はたまたま故障したFRG-7000の回路図を眺めていて、中間周波トランスに問題とよく似たブリッジコンデンサが付いているのに気づいた。 複数のミキサー回路を有する通信型受信機の第一中間周波増幅回路の前後の中間周波トランスには一般のスーパーヘテロダイン受信機の中間周波トランス回路には無いブリッジコンデンサがついているのは何のためか長らく疑問だったがこれで明らかになった。トランスだけだと相反回路なので、後段のミキサー回路に注入されたローカルオシレータ信号が前段にあるミキサー回路へ拡散して不必要なイメージ混信を引き起こすことになる。それを防ぐには一方向結合回路が必要となる。理論を学べば「ああ、なんだ」ということになる。 P.S この回路は見方を変えると4端子対回路と解釈することもできる。4端子対のうち上下を終端と短絡処理したものと考えるのである。こうした回路は2端子4端子変換(ハイブリッド)回路と呼ばれている。共通点は伝送回路に一方向性が伴うというものである。代表的なのはアナログ電話網内で送話と受話信号をそれぞれ増幅するために網内で二線式の加入者回線を送話と受話の4線に信号分離する回路や、RF回路ではひとつのアンテナを送信用と受信用で同時使用するサーキュレーター回路などである。 |
webadm | 投稿日時: 2010-11-19 2:41 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
続:理想ジャイレータ 次も理想ジャイレータに関する問題。
理想ジャイレータを2段縦続接続すると理想変成器になることを示せというもの。 伝送行列の縦続接続を計算すれば簡単だけど、それだと著者と同じなので違うアプローチで。 理想変成器の伝送行列をF、2つの理想ジャイレータの伝送行列をそれぞれG1,G2とすると が成り立つことを証明すればよいことになる。 式の両辺にG1及びG2の逆行列を乗じると 従ってn=R2/R1とする理想変成器ということになる。 P.S もしくはもっと簡単に線形代数的に で証明は十分かもしれない。理想ジャイレータの伝送行列の逆行列はその元の行列と等しいからである。また同一のジャイレータ比のジャイレータを2つ縦続接続すると巻き線比1:1の理想変成器、すなわち単位行列(I)に等しくなる。 線形代数学では数学的対象を大局的かつ抽象的にみるので、例題とか演習問題でもないかぎり具体例を取り上げることはない。電気回路理論は具体例で考えることが求められ大局的な観点を見失いがちである。線形代数と併せて勉強すると両方学べて一石二鳥であるのに加えて、電気回路理論を更に大局的にかつ枠を超えてとらえることができるようになる。 線形受動回路ばかりじゃもうそろそろつまらないと賢明な読者は電源や能動素子を含む電子回路を学びたいかもしれない。しかしそれらの回路は線形受動回路にあった都合のよい性質、線形性が失われるのに注意しなければならない。また機会を改めて演習が終わった時に研究テーマとしてあげることにしよう。端的に例を挙げれば、電源が入力と出力端子の間に一個直列に入っただけの二端子対回路の伝送行列を導くとしたらどうなるだろう? 端子対条件の式から4端子対定数は導けるかもしれない。しかしその伝送行列は果たして線形だろうか? 線形であるためには加法則と乗法則を満たさなければならない。すなわち、入力にP1+P2の合成ベクトルを与えた場合、出力はそれぞれを単独で与えた場合の総和と等しくなければならない。残念ながら電源を含む回路ではそれは成り立たないことは計算してみればすぐわかる。 これが二端子対回路が線形受動回路に限定して議論している理由である。それじゃ線形代数学を学んでも電源を一個含んだだけで成り立たなくなるなら使えないじゃん。と思うかもしれないが、そうした暗闇にはすでに数学が先手を打って光りを照らしてくれている。 直流回路の頃から教えられていた重ね合わせの理(superposition)を覚えているだろうか? これは複数の電源を含む回路の解析を行う際に回路をそれぞれの単一の電源のみと線形受動回路で解析した結果を総和することで回路全体の解析結果を得る方法である。 これには数学的な裏付けがあるが範囲外なので教えられることはない。線形代数学やそれにつながる代数幾何学で生まれたaffine変換群は線形代数の線形変換(ベクトルの回転と拡大縮小)と幾何学的な平行移動(電源によるバイアス)を併せ持つ変換をベクトル空間の次元を1つ拡張して加法則と乗法則を改めて定義しなおしたものである。これによって線形代数学の各種定理が適用できるようになるというものである。こうした線形でないものを線形的に扱えるようにする工夫が数学ではよくでてくる。工学でもそうした線形近似のアイデアが随所に使用されている。 またこれらの話は別の機会に。 |
webadm | 投稿日時: 2010-10-31 3:26 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
理想ジャイレーター ふう、アルバイトの仕事で忙しくなってまたしても3ヶ月近く間を空けてしまった。
結局その間収入が無く、手持ち現金が底をついて保険を解約して生活資金を捻出しているという有様。 はたらけどはたらけど....(以下省略) それでも電車で移動する間や食事の合間に訪れる貴重な自由時間は線形代数学の本や代数幾何学の本を読んで集中力を維持する毎日。最近は数学の世界がファンタジーワールドのように現実を忘れることができる世界だと感じてきている。 その都度Dirichlet伝のエピソードを思い返す。Dirichletが子供の頃にやっと買ってもらった数学書に夢中になっている時に母親が水を差すように「お前にそれはわかるまい」と言うと、少年Dirichletはこう言い返したという「いいえお母さん、僕はわかるまで読むのです」。三つ子の魂100までもという通り、Dirichletの数学に対するこの姿勢は終生変わらなかった。ゲッチンゲンにてDirichletはいつもGaussの大著D.A(Disquisitiones Arithmeticae)を常に携帯し何度も読み直していたという。 Newtonも無名時代は手に入れた数学書が理解出来ずに躓くたびに最初のページから読み直していたという。そして遂に現在あたりまえに教えられている一般二項定理を発見したことをきっかけに今日知られるNewtonに至る。 経済的に恵まれているからといって、一度読んでもわからないといって貴重な本を読むに値しないといって投げ出すことをしていないだろうか? むしろ値しないのは読み手の方ではないだろうか。 投げだしそうになっても、Dirichletの少年の頃のエピソードを思い出し、「わかるまで読む」のである。 なんの話しだったか。ああ、ジャイレータね。 これは理論の時に似たような例題をやったような気がする。 理想ジャイレータの出力端にインピーダンスZを接続した回路の入力端の駆動点インピーダンスを求め、それがZに反比例することを確かめよという問題。 色々方法はあるけど、二端子対回路として見ればインピーダンスパラメータのZ11(開放駆動点インピーダンス)がそれに該当する。 問題の回路の伝送行列を理想ジャイレータのみからなる二端子対回路とインピーダンスZのみから成る二端子対回路の縦続接続として求め、それをZパラメータ行列に変換すればよい。面倒だがやってみよう。 また例によってインピーダンス行列を伝送行列に変換すると 従って が成り立つ必要がある。最初にZ21が求められ、順次他の式に代入していくと 従って入力端の開放駆動点インピーダンスZ11はZに反比例することになる。すなわちインピーダンス変換回路のひとつであるインピーダンス反転(impedance inverter)回路となる。アナログ集積回路などでは外付けキャパシタンスをインピーダンス反転して内部でインダクタンスとして利用することが可能になる。 このあまのじゃくな解法の副産物として、理想ジャイレータを伴う回路の出力端の開放駆動点インピーダンス(Z12)は負性抵抗となることがわかる。これは当然ながら受動素子だけでは実現できない。トランジスタのような能動素子を使えば、負性抵抗も実現できることになる。 |
« 1 (2) 3 4 5 ... 7 » |
スレッド表示 | 古いものから | 前のトピック | 次のトピック | トップ |
投稿するにはまず登録を | |