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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2012-12-18 5:18
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3088
分布定数回路の過渡現象
遂に来てしまった最終章。

やっと若き日のHeavisideの足下に辿りついた。Heavisideはそこから更に電磁気学を究める飛躍をしたわけであるが、それはそう簡単にはいかない、追々やることにしよう。

歴史的には分布定数回路の過渡現象解析がHeavisideによって成されたのが最初だが、実務上では分布定数回路の定常解析を先に知っておくとそれだけでも役立つ機会が多いので、伝統的に定常解析が先で過渡解析は後に学ぶことになっている。

分布定数回路が何故電気回路理論の一番最後なのは、2変数関数で物理量が表さなければならないためである。分布定数回路の定常解析では、定常状態のみ扱うので時間に依存せず、物理量は端点から距離の関数になる。これは基礎数学で十分足りる世界である。

ということで2変数関数となると微分とかも偏微分という応用数学の世界となる。

分布定数回路の定常解析で用いたのと同じ線路モデルが過渡解析でも使用されるが、定常解析と違ってそれぞれの物理量が線路上の位置と、時間との2つの変数を伴った関数で表される。

まずその辺から躓きの種がありそうだが、引っ込み思案にならずに必ず判るようになると信じて進むことにしよう。
webadm
投稿日時: 2012-12-18 5:22
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3088
基礎方程式とその解
著者は定常解析のページと内容を重複しないようにしているが、ここではおさらいのために、再び線路モデルから考えることにしよう。

特性が均等な線路の単位区間(x)について近似モデルを考える



単位区間は単位長さ当りの線路の抵抗RとインダクタンスLが直列に、単位長さ当りのキャパシタンスCと漏洩コンダクタンスGが並列に接続された逆L字回路から成るものとみなす。



単位区間の左端の位置xと右端の位置x+xでの線路の電流と電圧には以下の関係が成り立つ。



これが分布定数回路の過渡現象時における基礎方程式である。

さてこっからが問題だ。

どうすんだこっから(´Д`;)

寺沢寛一の「自然科学者のための数学概論(増補版)」の偏微分方程式のところを読んでみる。

zがxおよびyの関数であるとき



と置くと、次の隠関数表記



を一般に2つの変数に関する一階偏微分方程式という。

実は先の偏微分方程式はi(t,x)とv(t,x)の2つの未知関数からなる連立偏微分方程式なので、いきなり易しくないところから始まるわけである。

基礎数学では未知関数がひとつだけの偏微分方程式論しか扱っていない。

なのでこっから先は応用数学の範疇になるわけで数学書は役にたたなくなる。

先の連立偏微分方程式を解くには既に学んだLaplace変換でs領域に移してしまって考える方法がこれまで学んできた知識とシームレスにつながって判りやすいかもしれない。

しかしあえて、それとは違う脇道を目指してみることにする。

ストラテジーとしては、2つあるかもしれない

(1) 未知関数i(t,x)とv(t,x)がそれぞれ独立した偏微分方程式になれば数学の本に書いてある解き方で解けるはず

(2) 未知関数i(t,x)とv(t,x)は互いに一次独立なら、それを成分とする未知関数ベクトルをひとつ定義して、それに関する作用素方程式に書き直して解く

さてできるかな。

もはや理論というよりもテクニックの世界になってしまったが、分布定数回路そのものもアイデアとしては理論というより近似のテクニックであるのでよいだろう。

(1)についてまず取り組んでみよう

基礎方程式を隠関数表記の形に整理すると



第一式を更にxで偏微分し、第二式をtで偏微分すると



ここで未知関数は連続で以下が成り立つとすると



第一式から第二式にLを乗じたものを差し引くと



ということになる。

これに元の基礎方程式の第二式にRを乗じたものを差し引くと



ということになり、v(t,x)に関する偏微分方程式が得られた

これを整理すると



ということになる。

i(t,x)に関して同様にすると



が得られる。

v(t,x)とi(t,x)それぞれの偏微分方程式は実はまったく同じ形をしている。初期条件が互いに異なるので解は自ずと異なることが予想される。

手元にあるWhittaker & Watson "A COURSE OF MODERN ANALYSIS"のCHAPTER XVIII "THE EQUATIONS OF MATHEMATICAL PHYSICS"には上の式でG=0とした式が以下の様に電信方程式"The equation of telegraphy"として紹介されている。



L,K,Rはそれぞれ単位長さ当りのインダクタンス、キャパシタンスそれに損失抵抗である。

上と同じ式が手元にある寺沢寛一「自然科学者のための数学概論 応用編」に電信方程式として紹介されている。これは素粒子論でスカラー中間子の運動を記述するKlein-Gordon方程式と同じ形であると書いてある。

残念ながら漏洩コンダクタンスを考慮した形についてはどれも記述が無い。難しいからだろうか。

これはHeavisideが1876年の論文で提示した式そのもので、その時はまだ漏洩コンダクタンスGが配慮されてなかったが、1887年の論文では以下の様に



現在知られるような漏洩コンダクタンスGを含めた形になり、今日知られる特性インピーダンスや無歪線路の条件が示されている。

あとはこれを数学の教科書通りに解けばよいことになる。

しかし偏微分方程式の解法理論を他書で一通り学んでからでは何年先になるかわからない(´Д`;)

とりあえず自分で考えて、わかんないところが出たら調べることにしよう。

手元の電気学会編「コンパクト版 電気工学ポケットブック」には分布定数回路は定常解析のみで過渡応答解析は割愛されている。他にも掲載しなければならないことが多すぎて、今日的には重箱の隅的となった分布定数回路の過渡応答解析は学校でも教えていないところがあるのかもしれない。つまり試験には出ないと。

しかしやはりここは最後まで貫き通すべきだろう。

寺寛本によれば導出された電信方程式は以下の形の二階偏微分方程式の一種となる。



とすると



寺寛本ではsの項を含む二階偏微分方程式の解法例が2つもあるが、電信方程式にはsの項が存在しない。だめじゃん(´Д`;)

以下の電信方程式を寺寛本の記号を使って隠関数表記してみると





ということになる。

実は寺寛本を読み進めると、その後に定係数の二階線型微分方程式というのが出てくる。

a,b,cを定数とし、



で表されるのがそうである。

電信方程式を上の形式に書き直すと...

だめじゃん一階の偏微分項がないじゃん(´Д`;)

だめぽ。

更に読み進めて、第14章の境界値問題のところに電信方程式がやっと登場する。

それは弦の減衰振動の式



として最初に出てきて、電信方程式とも称せられると書いてある。

この点は分布定数回路の定常解析の時にちらっと触れたのを思い出した。

でもこれは漏洩コンダクタンスG=0の式である。

寺寛本では上の式の一般解が導かれている。それは非常に複雑な長い式となっている。

ましてや漏洩コンダクタンスGを考慮した解はもっと複雑になることは予想に難くない(´Д`;)

寺寛本ではそれ以外に電信方程式の別形式を例に別の解法が示されているが、その過程をなぞるだけでも大変である。

どうすんだこれ(´Д`;)

いろいろ参考書を読んでみると表記方法がまちまちでおなじことを書いてあっても気が付かないことがある。

一つは偏微分記号∂(round d)を使う表記方法と、偏導関数で表す方法がある。どちらも同じことを書いているのだが見た目は違ってくる。

例えば、線路の電圧V(x,t)に関する漏洩コンダクタンスも考慮した電信方程式は



という感じ。これを偏導関数表記にすると



偏導関数の添え字はどの変数で偏微分したものかを示している。従って関数名は大文字表記にせざるを得ない。

集中定数回路の過渡現象の場合には、解の未知関数は時間tの関数なので、一次元であるが、分布定数回路の場合には、更に端点からの距離xが変数に加わるので二次元の関数となる。

難しくなったように思えるが、集中定数回路と同様に分布定数回路でも与えられた条件に対してその過渡応答挙動は常に一対一の関係がある。同じ入力を与えてるたびに結果がころころ変わるということはないと考えてよい。

先の偏微分方程式の解として、V(x,t)=0というのを考えてみると、これは解のひとつとしてあり得るだろうか?

x,tの値によらず常に線路のどこでもいつでも電圧Vが0であるとすると、v(x,t)=0を先の偏微分方程式に代入しても結果は矛盾しないのでそれもひとつの解であることがわかる。

つまり最初から電圧が一切加わっていないか、両端を短絡した状態なら線路のどこで測定しても電圧、電流とも0なのは当たり前である。この場合、外界からの線路への電磁誘導は当然無いという前提である、そうでないと回路モデルが我々が描いたものと異なってしまう。

V(x,t)=0が解であるとしたら、もっと一般的にV(x,t)=Const.は解だろうか?

これを代入してみると、R≠0,G≠0の場合には矛盾するので解ではないことになる。しかしR=0もしくはG=0の場合にはRG=0となり解として成り立つことは明らか。

これはR=0,G=0の場合も同じで、無損失線路では受電端から送電端まで電圧もしくは電流が距離時間にかかわらず一定(Const)という解があり得ることになる。

またそれとは別にf(x,t)とg(x,t)がそれぞれ偏微分方程式を満たす解である場合、V(x,t)=f(x,t)+g(x,t)も偏微分方程式を満たすことになる。これは電信方程式が線型偏微分方程式であるからである。

これは代入してみれば明らかのように重ね合わせの理と同じである。



これは線路上を送電端から受電端方向へ進む進行波の電圧と受電端から送電端方向へ進む反射波の電圧がそれぞれf(x,t)とg(x,t)と考えることもできるし、常微分方程式のように過渡解と定常解と考えることも出来る。

過渡解は、時間tが無限大に移行すると0に収束しなければならないので、何らかのtの関数を指数とする指数関数E(t)とxの関数X(x)の積で表されると考えられる。

それでは2つの関数の積E(t)X(x)は電信方程式の解と成り得るだろうか?

この場合、微分の時と同様に関数の積E(t)X(x)の偏微分に関してちゃんと定義する必要がある。

手元の共立数学公式の微分学の多変数の関数の章の偏導関数の定義を見ると...明らかな誤植がある(´Д`;)

引用:
定義 1, 多変数の関数F(x1,x,2,...,xn)をxkの関数と考えるとき



が存在すれば、これを(a1,a2,...,an)におけるxkに関するF(x1,x2,...,xn)の偏導関数といい、F'xk(a1,a2,...,an)で表す。


0へ極限移行するのはnではなくhの間違いである。

第一次偏導関数と第二次偏導関数、および一般的な第m次偏導関数については省略。これはもう知っている範囲である。

次に偏導関数の基本的性質についておさらいすると

引用:

1. F(x1,x2,...,xn)の凡ての第m次偏導関数が存在して、しかもこれらが連続であれば

はxi,xj,...,xnの順序に関係しない。


これも既に知っていることだが、関数U(x,y)の偏導関数Uxy,Uyxがそれぞれ連続だあれば、Uxy=Uyxであるというのと一緒である。

次にいよいよ関数の積の偏微分の性質が出てくる

引用:




公式集なので証明は付記されていないが、証明されているとすると、関数の積の偏微分は1変数の関数の積の微分と同様であることがわかる。(1)のδはKroneckerのδでi=jの時1でそれ以外は0となる関数である。偏微分する変数以外は定数と見なすので偏微分すると0になるしそうでない場合は微分して1になるという意味である。

さてそうすると関数の積の第一次偏微分は、それぞれの関数の第一次偏導関数ともう片方の関数の積の合成となる。つまり偏導関数を含む二次式の総和ということになる。

これを利用し、先のE(t)X(x)関数を電信方程式に代入すると



ということになる。

E(t)=0,X(x)=0の自明な解を除くと



がE(t),X(x)に関して成り立つか、それが成り立たないとしてももうひとつの条件



を満足すればE(t)X(x)は解であると言える。

上の式の両辺を解の関数E(t)X(x)で割って整理すると



というような変数分離形の偏微分方程式が得られる。

R=G=0の無損失線路のケースに限定すると最初の条件は



となり、X(x)が定数もしくはxに関する一次式でかつE(t)が負の実数値をとるtの一次式を指数とする指数関数ということになる。

X(x)とE(t)がそれ以外の場合にはもうひとつの条件式から



をX(x),E(t)が満たす場合にE(t)X(x)が解となる。この条件が成立するのは両辺が定数でなければならない。この定数を仮にLCμ^2とすると



という偏微分方程式が得られる。これを解くと



ということになる。従ってE(t)X(x)の関数の積で表される無損失線路の第二条件を満たす解は



ということになる。あとは初期条件を与えることで未定係数μ,K1,K2,K3,K4を決定すればよいことになる。

これは解の一部の形を明らかにすぎない。まだ第一の条件の解も存在するだろうし、それらを組み合わせれば無数に解が存在することになる。1変数関数の常微分方程式と違って、一般解をひとつの式で表すというのは2変数以上の関数の偏微分方程式については果てしなく遠い道という気がする。

例えそれが得られたとしても、そこから特定の初期条件の特殊解を得るのは大変面倒なことになりそうである(上の例で5つの未定係数を決定するには少なくとも5つの連立方程式が必要)。そしてその方法が良いとは限らない。

しかし果たして解析的に特殊解をストレートに導く万能な方法があるのだろうかという疑問もある。

学生の頃の卒業研究で3次元で高階の流体(偏微分)方程式を解く必要がある設計問題で解析的に解くのは早々に諦めて得意の計算機プログラミングで数値計算した憶えがある。

もちろん今考えれば解析的に解いても同じ結果が得られたかもしれないし、計算機を使用しなくてもよかったかもしれない(それでも電卓は最低限必要である、出来ればプログラム電卓)。

時間と費用を考えると数値計算の方がよいかもしれないが、誤差解析は必須である。そうするとやっぱり厳密解が必要になり、解析的に解を求める必要が出てくる。

こうした偏微分方程式の定性的な考察は時間がかかるが頭の体操としては丁度良い。19世紀後半には解けない微分方程式の存在が知られるに至って、解くためのテクニックを離れて根本的な理解から始めようとする動きが数学界で繰り広げられた結果現在の抽象的な数学に変貌した歴史的経緯がある。

いろいろ厳密に重箱の隅を掘り進めると、19世紀以前の数学はかなり危うい土台の上に立っていることが露見して構造的な学問へと変貌することを余儀なくされた。

なんの話しだったっけ、ああ偏微分方程式の解ね。

また次の定義も偏微分方程式の参考書には当たり前のように登場する。

引用:

3. F(y1,y2,...,yn)において、yk=fk(x_1,x_2,...,xn) (k=1,2,...,n)であれば



ここまでは2変数以上の関数をそれぞれの変数について、その他の変数を定数として偏微分可能である場合を考えてきたが、それだと特定の座標軸上に沿った微分でしかないが、全方向からの微分も当然のことながら考えられるわけで、いわば空間の全方位からの微分を考える必要が出てくる。

空間の全方向から微分可能なことを全微分可能という。

前出の公式集より引用すると

引用:

1. (a,a2,...,an)をF(a1,a2,...,an)の定義域の一点とするとき

(但しAk,(k=1,2,...,n)は定数)と書けて

であれば、F(a1,a2,...,an)は(a1,a2,...,an)において全微分可能であるといい、ΣAkhkを(a1,a2,...,an)におけるF(a1,a2,...,an)の全微分という。そしてこれをdF(a1,a2,...,an)で表す。




多少曖昧な点があるが、これを更に突き詰めるとTopologyの世界に入っていくことになる。

全微分可能な関数であれば、偏微分する変数の順序によらず偏導関数は一致する性質は同じ。

意外にも共立公式集は偏微分方程式論に関してまとまっているので、微分方程式の章の二階偏微分方程式についても少し読み進めてみよう。

最初に二階偏微分方程式の解の存在に関して以下のように書かれている。

引用:

2.1 二階偏微分方程式の解の存在

1. x,yを複素変数とし、z=z(x,y)をその関数とする。

とおき、
方程式

を考える。ここにFはおのおのの変数の解析関数で、点P0(x0,y0,z0,p0,q0,r0,s0,t0)において0となり、その近傍で正則とする。更にP0で∂F/∂r≠0とする。φ'(y),ψ(y)はy0の近傍で正則で、φ(y0)=z0、φ'(y0)=q0,φ"(y0)=t0, ψ(y0)=p0, ψ'(y0)=s0とする。そのときQ0(x0,y0)において正則で、x=x0のとき

となるF=0の解析関数が存在して、唯一に限る。


において、fは点P0の近傍で正則で且つ∂f/∂r=0とする。更にφ(x),ψ(y)が与えられた解析関数で、おのおのがx0,y0で正則で

とする。そのとき、Q0において正則で、y=y0のときφ(x)と一致し、x=x0のときψ(y)と一致するs=f(x,y,z,p,q,r,t)の解析的解が唯一存在する。


なんのことかさっぱり意味わかりませんが(´Д`;)

これも常微分方程式の解の存在定理と同様に、二階偏微分方程式が解けるための十分条件ということだろうか。

手元のdtv-Atlas Mathematik(邦題 カラー図解数学事典 共立出版)で偏微分方程式を引くと、以下の文面に行き着く。

引用:

上記のように、一つの変数の解関数について解くものを常微分方程式という。これを、多変数の解関数から成り、偏導関数が役割を果たすいわゆる偏微分方程式とは区別しなければならない。はるかに困難な理論に属する偏微分方程式には言及しない。


やはり基礎数学では偏微分方程式は扱わない(扱えない)という既知の事実が確認される。

仕方がないので、無損失線路についてだけちょっと解を求めたやり方で、損失を考慮した分布定数回路での解を求めてみよう。

解がE(t)X(x)で表されると仮定すると、最初の条件式



をMaximaで解くと



ということになり、解は



と表されることになる。

別の条件を満たすE(t),X(x)はちょっと複雑だが両辺をE(t)X(x)で除して整理すると



これが成立する両辺が定数(分離定数)となる場合を考えると、その値を-μ^2と仮定すると



を満たすE(t),X(x)を解く問題に帰着する。

これをMaximaで解くとそれぞれ3つのケースに分類され



ということになる。

実際には上のそれぞれの組み合わせになるわけでE(t)X(x)のバリエーションは9通りあるということになる。それだけではなく、任意の分離定数による解が存在しそれらの解の任意の総和もまた解ということになる。

上記はμ^2が正の値を取る場合である条件で振動的な解が現れるが(これは1887年の論文でHeavisideが既に示している)、負の場合を取る場合、すなわちμが純虚数の場合には正の値をとるR,G,L,Cに限定すれば双曲線的な解のみとなる。

ここでは具体的に初期条件を与えて特殊解を求めることまでは踏み込まないようにしよう。それは演習問題やることに。

これ以外に解を求める伝統的な方法は沢山ありそうだが、参考書に載っているものは一般解でよく判らないので、ここでは言及しない。

telegraph equationで検索すると最も簡潔な一般解がEncyclopedia of Mathmaticsに示されている。最初に導出した二階偏微分方程式の両辺をLCで除して、



ここで



と置くと



という形式になる。

R=G=0の無損失線路の条件だと、上の式は波動方程式となる。

損失がある線路では、波動方程式と熱伝導方程式(拡散方程式)の両方の性質を併せ持つことになる。歴史的には熱伝導方程式が最初でそこからWillam Thomsonの海底電信ケーブルのモデル(RC分布定数線路)が考え出され、それにHeavisideがインダクタンスを加えて熱伝導方程式と波動方程式の両方の性質を持つモデルに拡張した。

偏微分方程式の薄い参考書では波動方程式と熱伝導方程式しか扱っていない。Whittaker & WatsonのA COURSE OF MODERN ANALYSISも同様であるが、電信方程式は紹介するにとどまっている。

Encyclopedia of Mathmaticsで紹介されている解法は、第二次世界大戦前後に初版が出版された2巻併せて1000ページ近くになるCourantとHilbertによる"Methoden der mathematischen Physik:Vol 2"のPartial differential equationsが初出らしい。戦前と戦中および戦後でVol2の内容が改訂の度に最先端の概念を取り入れてブラッシュアップされており、初版とは別ものらしい。これもいずれ最新版を手に入れて見てみることにしよう。ちょっと高額であるが。Vol2だけでも十分か。

おそらく今日多くの偏微分方程式論のネタ本になっているのが、上のCourantとHilbertの本であろうと思われる。

解法の続きに戻ろう。

既に分布定数回路の定常解析で学んだ通り、線路上の電圧と電流は送電端から受電端方向へ移動する進行波と受電端から送電端方向へ移動する反射波の合成で表される。

そこに着目して、互いに進む方向が異なるがそれぞれ同じ線路によって波形が同じような変化を受けるはずなので。

互いに正反対方向に移動している進行波と反射波を同一の座標系に線型写像する。



時間とともに現在の座標から波の移動速度に比例して進行方向に原点が移動する座標ξと、もうひとつはそれとまったく逆方向に原点が移動する座標ηをそれぞれ以下のように定義する。



したがってこの新しい座標を使って未知関数v(x,t)を表すことができる。



v(x,t)がxとtに関して定義区間内で全微分可能であればその偏導関数も新しい座標に変換することができるので



従って元の偏微分方程式はξとηを使って



と書き直すことができる。

これは以下の一般的な線型二階偏微分方程式



の分類でA=0,C=0でB^2-AC>0の双曲型偏微分方程式(hyperbolic partial differential equation)に入るらしい。
そういえば最初から双曲型をしているじゃん、早く気づくべきだった、大失敗(´Д`;)

適切な変換によって以下のようになるらしいが、もうそうなってるじゃん(´Д`;)



こっからどうすんだ(´Д`;)

どうやら順番を間違えたくさい。先のEncycropediaでは詳しい導出仮定を一切省いているので自分でやってみるしかない。

前半に独自に局所的な解を求めたが、それはE(t)に共通してtに関する一次式を指数とする指数関数があったのを思い出す必要がある。そうであれば、未知関数を先にその形に仮定して代入してみればよいことになる。



これを代入すると



ということになる。一次の偏導関数の項が消失した。

この後で座標変換すればよかったのである。





両辺を4c^2で割って整理すると



という極めて単純な形式になる。

これは線型代数的にみれば-λを固有値とする固有方程式である。

この方程式はSturm-Liouville型方程式の特別な場合らしいが隅々まで見て学ぶ時間が今はないので、おきまりコースだけ辿ることにしよう。Strum-Liouville型方程式および固有値と固有関数の理論については、寺沢寛一「自然科学者のための数学概論 応用編」に詳しいのでそちらを参照のこと。

ここで更に特殊なケースでα=R/L=β=G/CもしくはR=G=0の場合、固有値λは0となり



ということになる。

未知関数Uはξとηによらず一定であることになる。これはR/L=G/Cの無歪み線路やR=G=0の無損失線路では波が歪まずに最初の姿のまま線路上を伝わることを意味する。

無歪み線路や無損失線路では、ξとηで上の方程式を二重積分することによって未知関数Uが得られる



という具合に2つの関数の和で表されることになる。それぞれが進行波と反射波のξ、ηの座標系に線型写像したものである。

これはd'Alembertの解として知られるものである。d'Alembertはフランスの数学者で、フランスの砲兵隊士官を父に社交界で有名な元修道女を母として生まれたが非嫡出子であるため修道院に捨てられ修道院名であるd'Alembertを名乗った。ガラス職人の夫婦に預けられ。その後独学で学んだ数学で才能を現し春分・秋分の歳差問題の解決やd'Alembertの原理を始めとする百科全書の力学や数学の執筆などで功績があり、一方で論争を巻き起こすことにもなった。

当時砲兵隊というと砲弾の軌跡などを予測計算するために最先端の解析学をマスターしていた秀才揃いであったから、持って生まれた数学の才能を子孫が受け継ぐのは当然かもしれない。Cauchyが解析教本を執筆したのも優秀な砲兵隊を一人でも多く養成するための時代の要請でもあった。大砲もただ数撃てば当たるというのではだめなのである。砲兵隊員が優秀だと大砲がボロでも良く当たるということになる。日本軍の将校は兵隊をただの大砲の弾のように考えていたようだが、そのあたりが勝敗につながったかどうか議論するつもりはまったくない。

そういえば北朝鮮の新しい指導者は当初から砲兵に詳しいと紹介されていたが、その意味することは数学や科学知識に長けてたインテリであるということを博付けするためのものだろう。少なくとも欧州ではその意味に取られることを意図したものであろう。

なんの話しだったっけ、ああ、d'Alembertの解を話したところだった。

話しを元にもどそう。

無歪み線路や無損失線路のような特別な場合についてだけ触れるだけで終わっている参考書も多い。なにか大事なことを忘れていないか? 大学だと半年でこの辺りを他のテーマも含めて講義しないといけないので、一番みたいものをものを見せない観光コースみたいな詐欺みたいなことになるのは致し方ないが。

先ほどの続きに移ろう

先のEncycropediaでは、解としてRiemann関数を示すだけにとどまっている。ところでRiemann関数ってなんだ? って同じページのリンクを辿ると以下の様な三角関数



が収束し以下の二重積分が成り立つ関数fが存在する場合それをRiemann関数と呼ぶらしい。

ページ下部の参考資料のところに知らない別のキーワードRiemann methodというのがあるのを発見。なんですかこりは? 更にリンクを辿ると

Riemann methodとはRiemann-Volterra methodとも呼ばれるらしい。Volterraは積分方程式理論で登場するRiemann methodと同じ解法を積分方程式で独立に発見した数学者だ。

それは何かというと、電信方程式を含む二変数の双曲型偏微分方程式に関するGoursat問題およびCauchy問題を解く方法である。Cauchy問題は常微分方程式にもあった初期値問題である。Goursat問題というのは初耳である。Goursatというフランス人数学者は戦前に解析教程に関する大書を出版して当時の数学者なら知らないひとは居ないらしい(純粋数学者からは不評だったが)。かの高木貞治が解析概論を執筆開始したのもGoursatの解析教程を全訳した人物が出版社に持ち込んだ話しが伝わったのが契機らしい。

Goursat問題のリンクを辿るとようやくRiemann関数やRiemann method(寺寛本の応用偏にはRiemann積分法とあるもの)の全容が見えてきた。

以下の二変数の双曲型偏微分方程式を考える



上記の方程式を満たす未知関数u(x,y)が以下の定義領域Ω内と境界条件の下で正則で、Ωの境界を含む閉包内で連続であるとする



ここでφ,ψは共に繰り返し微分可能な任意の関数。FがΩとその境界を含む閉包内の座標(x,y)において連続かつ、任意の座標系の実数変数u,p,qと偏導関数Fu,FpそれにFqの絶対値がある値よりも小さい場合に限り解が存在しかつ唯一であるというもの。

ここで以下の非同次双曲型偏微分方程式



の解を表すのに以下の方程式を満足するRiemann関数、R(x,y;ξ,η)が用いられる。



座標(ξ,η)をax,bx,cが連続な定義領域Ω内の任意の点とし、、x=ξ,y=ηにおいて



を満足するRが存在する場合

φ=0,ψ=0の場合Goursat問題の解は以下のRiemann公式を用いて表される



というもの。でもこれは非同次双曲型偏微分方程式の解だよね。今問題にしているのはf=0の同次双曲型偏微分方程式の解なんだけど(´Д`;)

良くみたらRiemann methodのページの後半にその解が書いてあった、複雑過ぎて読み飛ばしていた...orz

以下の双曲型偏微分方程式を考える



ここでGoursat問題と同様に以下の偏微分方程式を満たすRiemann関数が唯一存在する



それはa=b=0,c=constの場合、z=(x-ξ)(y-η)と置くと一変数の常微分方程式



と書き換えることができる。これを更に座標変換してBessel微分方程式



に変換することを意図して、r^2=4czと置くと



であるからして



という0次のBessel微分方程式に帰着する。この解は



であることが知られている。J0は0次のBessel関数である。この理論で使われている補助変数ξ、ηそれにtは、座標変換で導入した新変数とは無関係であることに注意。混同しないように。

この解法は、寺寛本の第14章の14.20 Riemann積分法の応用例に書かれている内容を参考にしたが、寺寛本では最終的なBessel微分方程式に誤植があるのと詳しい導出過程は省略されているので注意しておく。

最終的に区間{(x0,y0);(x,y)}で偏微分方程式を二重積分することによってRiemann関数を用いて以下の形式が得られる



この解法はRiemannによって提案されたのでそれにちなんでRiemann method(寺寛本ではRiemann積分法)と呼ばれている。

とにかく電信方程式の解は複雑だということが判ったのでよしとしよう( ´∀`)

それで電信方程式が手元の最近刊行された偏微分方程式の参考書には出てこないのね。

解法を説明するための事前準備だけで大変なページ数を割かなければならないからね。そして一般解が得られたとしても特殊解をそこから求めるのは更に説明困難。

これだけ判っただけでも収穫である。

電信方程式の一般解の詳しい導出過程はここには書ききれないので、寺沢寛一「自然科学者のための数学概論 増補版」を参照して欲しい。第14章の境界値問題の14.20 Riemann積分法の応用例として例2で上の方程式が出てくる。初期条件を与えて境界値問題を解いてu(ξ,η)を導くところまで大筋が書かれている。その他に電信方程式に関する別解がいくつか解説されている。とても追うだけでも難解である。いずれにせよBessel関数と初期条件を用いた解が得られている。

そういえば以前どこかで書いた、前の会社の社長さんが学生の頃の物理実験で円盤上に粉を蒔いて振動を加えるとある周波数で規則的な模様を描くのを観測してそれを考察するレポートで、独自に微分方程式をたててそれを解いた結果を出したら褒められて、最新の数学ではBessel関数を使った解があるというのを教えてもらったという話しを聞いた。おそらく同じような双曲型偏微分方程式のGoursat問題だったのかもしれない。陽子の周りに存在する電子もある振動を与えると決まった分布に集まるというのもあり得るかもしれない。きっとそういった方向へ発展する実験だったのかも。

さて前半のアプローチで大分かかってしまったが、後半のアプローチであるベクトルと演算子法を使った解法に臨むことにしよう。

19世紀にHeavisideはどうやって電信方程式の解を得たか大変興味があるが、おそらく詳しい導出過程までは示していないことが容易に想像が付く。

つまりHeavisdeは当時既に電信方程式の一般解をある時点から知っていて当たり前の様に用いていたということになる。今の大学では教えもしないし教科書でも華麗にスルーしているというのに。

で最初にどうやって求めたのかが謎。詳しい導出過程は書かれていないが、以下の部分を見ると、どうやら1/2べきの演算子が現れる微分方程式を解いた解の無限べき級数の形から見当をつけたとしか思えない。



これは当時も今も数学者が認めない方法で結果が正しくとも誤りだとされている。今では変数変換で2変数の偏微分方程式を1変数のBessel方程式に書き直して同じ結果を得るのが物理数学の常套手段である。

それ以上の謎解きは止めて、現代風に自分で考えてみよう。

ベクトルと演算子を使用するためには、これまで学んできたことをかなり反芻する必要がある。初歩の直流回路から分布定数回路の定常解析まで。学校ではそんな時間はないのでさっさと定式化されたものを詰め込むことになるが、本当は反芻して自分で考えた方がよいに決まっている。しかしそれだと進み具合に個人差が大きくでてしまってほんの一握りの人以外は落第となってしまう。

学校も商売だから落第されて止めてしまっては収益が落ちるので、なんとか落第しないように工夫すると今日のような観光バスガイド付き団体旅行みたいな形になってしまう。

最初に書いたように偏微分方程式に関して系統的に学ぶだけで数年はかかってしまう。そしてその大部分はこちらの主題とはかけ離れたものだ。

最初に何故電信方程式の一般解が難しいのか理解するところから始めたほうがよいかもしれない。それが集中定数回路の過渡現象とどう違うのかも。

伝統的には問題の発端から考えていくのが普通だが、逆に解の方から問題へ向かって考えるというアプローチがあるはずが、どうも見かけない。

例えば、無限長の無損失線路の送電端にステップ入力電圧を加えた場合の解を考えてみると、無損失なのだから線路上の進行波の波形は入力波のままということになる。しかも受電端が無限遠点にあるので反射波は永遠にやってこないので線路上は進行波のみとなる。

解は単純に時間と共に線路上を受電端方向に移動する電圧1のステップ関数ということになる。これを時間と送電端からの距離を座標軸とする平面上に垂直に電圧をプロットすると、



というはんぺんのような立体表面と波が伝わることのない領域の三角形の平面をつなぎ併せたような矩形面ということになる。

v(x,t)は2変数の一価関数なので厳密には二次元平面上の座標から1次元の座標への写像になる。さてこの解を解析関数で表すことができるのだろうか? かなり面倒そうなことが容易にわかる。

例えば時間tをt0に限定してxに関するv(x,t0)をプロットすると



という矩形波になる。これはFourier級数で近似出来そうである。

同様にxをx0に固定してtを変化させた場合も



こちらも矩形波なのでFourier級数で表せそうである。

しかし解の平面を全て表すにはどうすればいいのだろう?

やはり級数になりそうな予想はつくがそれ以上は見当がつかない。

またx,tいずれか一方を固定とした場合の関数の導関数はどうなるのだろう? 一応区分的には連続であるから、級数の項別微分が可能かもしれない。しかしそれ以上のことはわからない。

どうも平面上の点(x,t)からv(x,t)への写像だと面倒であるから、いっそのこと(v(x,t),i(x,t))という平面への写像を考えたほうがよいのではないかという考えも浮かぶ。



と置くと基礎方程式は演算子を用いて



Uが零以外の関数である場合、演算子Fは非可逆でなければならないから



という関係が成り立つことになる。

いかにもそれらしい式が得られるが、これらが何を意味するのかすら見通せていない。

考え直そう。

良く見ると上の結果は電信方程式の微分演算子そのものである。つまり電信方程式は基礎方程式の特性方程式だったのだ。電信方程式のエレガントな導出方法を偶然見つけてしまった感じだ。

電流と電圧の関数ベクトルで考えると、先の無限長無損失線路の解は極めて単純に表すことができる。



時空平面上の(x,t)はその座標によって電流と電圧のベクトル空間の平面上の2点のどちらに写像されるか決まることになる。なるほどこれだから非可逆なわけである。(x,t)を与えれば電圧と電流が一意的に求まるが、その逆は出来ない。写像が単射でも全射ではないからである。

そうすると基礎方程式ではなくその特性方程式である電信方程式そのものを解く必要が出てくる。係数を置き換えて整理すると



ということになる。

ここでUを前半に独自に導いた局所的な解の形式を代入する形で以下の様に置き換えると



一階の項が消えて



ということになる。

ここからα=β=0(無損失線路)もしくはα=β(無歪み線路)の場合



となり、波動方程式となることがわかる。

このことは無歪み線路の条件を利用した信号ケーブルの特許を出願していたHeavisideが既に承知済みである。

この部分の議論は先に紹介したCourant&Hilbertの著書の192ページに登場する。先に紹介した寺寛本に書いてあるRiemann積分法による解法はGoursatの著書の153ページに見いだすことができた。そこには出典が1894年のフランスの数学者Picard(ピカール)の論文であると脚注に記されている。Goursatはそれ以前に知られている最新の解析学の成果を百科全書的にまとめ上げただけであるが、当時の最先端の数学者から見るとどれも古典的内容だったというわけである。それが日本では寺寛本の中に受け継がれているわけで、複雑な心境である。高木貞治はGoursatの著書に一騎打ちすべく解析概論を執筆したものの、同じ穴の狢になった感が強い。高木貞治が現代に蘇れば、「我々(日本人数学者)で新しい本を出版すべき時が来ているのでは」と仰るに違いない。Topologyに基づいた解析学は既に海外ではいくつか出版されているが、日本では古典的なものしか見あたらない。やはり学校で教えるにはTopologyが躓きの石となってしまって、古典的な教え方のほうがてっとり早いからかもしれない。そういう自分も定評のあるL.V.AhlforsのCOMPLEX ANALYSIS 3/eを手にとって読んでみたが、Topologyが出てきたところで挫折した。そういえばH.Legesugueの論文を読んだときも初っぱなからTopologyが判っていないとついていけないので挫折したんだっけ。

なんの話しだっけ。

さていよいよ上の作用素方程式の一般解を演算子法で解くことにしよう。

と書いたところで思い出したのだが、演算子法の欠点は作用素方程式の中に初期条件を与える不変量が含まれていないといけない点である。つまり演算子法は他の解法と違って一般解を導いてから初期条件を与えて未定積分定数を決定するということができないので、最初から積分定数を含んでいる必要があるのだった。

演算子法をつかわずにオーソドックスな線型同次微分方程式の解法を用いれば距離xに関する局所的な一般解が得られるが、それは読者の課題として、ここでは演算子法に徹する。

古い演算子法による分布定数回路の過渡解析について書いてある本を見ると、やはり演算子p=∂/∂xに関して先に常微分方程式の方法で解いて(q=∂/∂tは定数して扱う)それに関して初期条件を適用してqを確定するということをしているが、どうもよく判らない。

行き詰まったので、Heavisideの論文集Electrical Papers Vol Iを最初から眺めていたら、繰り返し以下のような記述が異なる論文(というよりもPhi Mag誌の連載)に繰り返し出てくる。



後で自分で手を動かしてなぞってみることにするが以下の結果が得られるとある。これはFourierが最初に用いた方法だと書かれている。



なんだ演算子法で求めたわけじゃないのか( ´∀`)

ちょっと肩の荷が下りた気分。

Electrical Papers Vol IIを読み進めると、192ページの"Section XL. Preliminary to Investigations concerning Long Distance Telephony and Connected Matters"にHeavisideがW. Thomsonの海底ケーブルに関するRC線路理論に触発されて欠落していた導体の自己誘導成分と漏洩コンダクタンスを加えた現在知られる電信方程式のアイデアを生み出した経緯が書かれている。同時にW.Thomsonの結果を無批判にそのまま地上の電信線路に流用した論文を書いたMr. Preeceを何度となくこき下ろしている。それ以外の論文(雑誌の連載)でも1ページ中に何度となくMr. Preeceの名前が登場し批判の火花を散らしている。

まだElectrical Papers Vol IIの半分まで眺めただけだが、通勤バスの行き帰りの際に考え続けた結果、演算子法で解けそうな気がしてきた。

まず、集中定数回路の時と同じように、元の作用素方程式を積分して初期条件によって決まるシステムの不変量としての未定積分定数(ベクトルポテンシャル)を出現させる。電信方程式の場合、時間と距離に関してそれぞれ二階の微分項があるので、最初に距離に関して二度積分する。



演算子法の場合、積分は微分演算子pの逆演算子1/pを乗じるだけで済む。これをベクトルVについて解くと

と思ったら記事の分量上限に達してしまったので、フォロー記事で続きを書くことにしよう。

webadm
投稿日時: 2013-2-15 8:37
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3088
Re: 基礎方程式とその解
表題のスレッドの続きで



と距離xに関してだけ解ける。

演算子法や作用素方程式の優れた点は、解の最終形が巨視的に見通せる点である。

両辺に波の移動速度であるcの二乗を乗じると、ポテンシャルエネルギー方程式となる。つまり送電端から受電端方向に伝達される線路上のエネルギー量を表すことになる。e=mc^2の左右を逆にしたような感じである。

とするとポテンシャルベクトルK1は初期エネルギー量で、K0は線路上のエネルギー移動量であることがすぐわかる。

そんなことを考えていると、もうひとつの見方が有ることに気づく。

進行波と反射波を、高速道路の登り下りの車線を移動する自動車の列と考えると、各自動車はなんらかのエネルギーを持っていることになる。反射波がなければ、エネルギーが速度cで線路上を浸透していく、送信端から線路に供給されるエネルギーは時間と共に増加する。

面倒なので最初は反射を考えなくて済む無限長線路で考えたが、反射があるとすると、逆方向からエネルギーの一部もしくは全部が戻ってくることになる。無損失線路でない場合には更に線路上でエネルギーは放射されて失われるので、距離と共に減衰していく。

なのでかなり一般形を考えるとややこしいことになるのがわかる。

さて次は時間に関して解く必要がある。これが難題だ。

まず以下の変換を行う



どうすんだこっから(´Д`;)

かなりお手上げの状態なので、Heavisideのもうひとつの著書である"ELECTROMAGNETIC THEORY"の三部作のうち演算子法について解説しているVol IIを読んでみた。

前半はありとあらゆる集中定数回路への演算子法による微分方程式の解法、それに続いて分布定数回路のあらゆる初期条件や境界条件に関する偏微分方程式の解法への応用が述べられているが、ほとんど継ぎ目なしで解説されているので、大変読むのに苦労する。知りたいのは分布定数回路のあたりだが、そこに使われている記号とかが、ずっとそれ以前のところで定義されているものだったりするので、結局遡って読む必要がある。

しかしHeavisideといえども分布定数回路の偏微分方程式に関しては距離に関して解いて時間に関しては微分演算子が残ったままの作用素方程式の状態の解について様々な初期条件を考察している。時間領域に関して解くのは後半で行われていた。

Heavisideは時間領域に関して解く段階で、どうしても解の中に任意の関数が現れてきてしまうので、独自に2つの無限べき級数で表していたが、途中からもっと良く知られている2種のBessel関数を使ったほうが良い判断して、Bessel関数を使った表現に書き直している。

318ページにほとんどこちらが導いたのと同じ形をした式があるのを見つけたときには目を疑った。なんだ良いところまでいってるんじゃないか( ´∀`)



1/2べき乗の文字が小さくて滲んでしまっているが、p=∂/∂tでσは、それよりずっと以前の218ページに以下のように定義されている。vは1/LCの平方根で波の伝達速度cと同値である。ページの最初の式と2番目の式を見比べるとcoshの部分で(p→ρ)としているのが良くわからない。双曲線関数の表記も今とは違っている。coshは同じだがsinhはshinという表記が使われている。Heavisideはそれらを演算子のように扱っているのでまた判りにくい。



説明のところでρ=0の場合には無歪み線路になる旨が解説されている。Rは線路の直列抵抗。Lは直列インダクタンス、Kは線路の漏洩コンダクタンス、Sは線路のキャパシタンスである。Heavisideの著書ではCはCurrentの意味で電流として用いられているので最初は戸惑うかもしれない。

こちらが導いた式とHeavisideの式を見比べると、薄々気づいていたが、ベクトルポテンシャルK0,K1はどうやら時間tの関数ベクトルと解釈すべきようだ。元々距離xで偏微分したら0になるのは定数の場合と、時間tの関数の場合が考えられるからだ。xで偏微分する場合には時間tは定数と見なすので0になってしまう。そのことを考慮に入れて引き続き解法を考えてみよう。

それにしてもHeavisideのElectromagnetic Theoryには無限べき級数がこれでもかと登場する。無限べき級数だらけといったほうが正しいかもしれない。

現代では流石にHeavisideの辿った脇の小道を好んで探る好き者はいないかもしれない。しかし、Heavisideの著書を読んでいると、まだ著者の息が感じられる。t=0でのコンデンサへ流れる電流の挙動を考察しているあたりでは、明らかに古典物理学の限界を垣間見るところまで近づいている感じがする。そこから先のミクロな考察は量子の世界を考えないと説明ができないからだ。そうした意味では、アマチュアが電磁気学や古典物理学の裾のから量子物理学の高みへゆっくり登ってくのにHeavisideの存在は励みになるかもしれない。マクロ的にはどうでもよいだろうと思うところまで執拗に見極めようとしている。

更にElectromagnetic Theoryを読み進めると396ページで複雑で難解な式が出尽くしたところで、簡単な集中定数回路をHeaviside演算子を使った作用素方程式に続いてHeavisdeの驚愕の告白が綴られているのを発見した。



Heaviside自身はこれまでの電信ケーブルの問題をElectromagnetic Theoryを執筆する22年前に取り組み始め、やがてMaxwellの自己誘導理論とW.Thomsonの海底電信ケーブルの理論がつながることに気づき、信号が有限速度で伝わること、Fourierの解が独立した解の無限級数になることを知り、10年目にしてやっと有限長線路の終端を短絡した場合と開放した場合を解析できたと人間の歩みの鈍さを告白している。その後の10年間で、全ての境界条件について、複雑なべき数の積であるが以下の392-393ページの簡潔な形にまとめることができた。おそらく間違いをしでかしているかもしれないが、もしそうであれば訂正を潔く受け入れようと述べている。



これがHeavisideが最終的に得た電信方程式の一般解である。

この後にも実際の解析例を具体的に示すために、進行波と反射波が伝送路上を進み電圧と電流がどう変化するかをグラフで図示している。これは今日でも観測が難しい伝送路上の信号伝搬の様子を19世紀の時代に計算してグラフとしてプロットしたというのは驚くべきことである。

数年で済む話しじゃないのね(´Д`;)

まあこの電気回路理論おもちゃ箱も既に開始して5年になるし、あながち10年や20年というのは間違いではないような気がする。独学だと回り道とか寄り道とか迷い道も沢山あるし。

たまたま独自のやり方でHeavisideが歩んだ小道を横切った感じだが、他にもっとHeavisideが歩んで居なかった小径があるので、そちらを先に調べてみよう。

距離xと時間tに関してどちらから先に解いてもよいような気がするが、HeavisideもそしてどのLaplace変換を使った解法を載せているテキストも最初に距離に関して解いて、最後に時間に関して解いている。

逆をやったら途中どんな結果が得られるのだろうか?

まず最初に二階の偏微分方程式を時間について解いてみると

時間で積分して距離xに関する任意の関数を出現させる



これをVについて解くと



ということになる。距離で先に解いたのと似たような感じになったが、いずれにせよ1/2べきの演算子が出てきてしまうのは避けられない。

ということで向きを逆方向に辿ってもここから先険しいのは一緒だ。

Heavisideも20年も脇目もふらずに解析した結果にしては最後は自身なさげである。演算子法で解くのは難しくは無いといいつつ、後半は置換に次ぐ置換の連続でどうにか一行の式にねじ込んだという感じが否めない。実際には無限級数の積の無限級数という複雑さは避けて通れないということも明らかに。

Telegraph equationで検索すると、今も新しい方法で電信方程式を解くというテーマが論文になっているぐらいなので古く新しい問題であることは変わりない。数値解析手法も様々試みられているが、最後は厳密解(解析解)との誤差分析をしなければならず、やはり解析的に見通しよく解くという需要がある。なので、電信方程式の過渡解を扱うのは学校では無理な感じもしないでもない。ちょっと存在を知っておく程度で、後で必要になったら勉強し直すというのが良いのかもしれない。

さて迷いの小径を更に元へ戻って、最初の基礎方程式のベクトル表記に戻り、そこでやはり積分を使ってみよう。



Uについて解くと



ということになる。これはまだ変数分離型にする前の基礎方程式の段階だが、既にその後どうなるかは予想がつきそうな感じがする。双曲線関数が出てきているので。

Heavisideは距離についてだけ解いてまだ時間微分に関する演算子が残った状態で簡単な初期条件から始め、後に全ての条件について解を求めている。一般化というのは最後にまとめとして行っただけである。実用的には最初に初期条件を与えて解のバリエーションを絞り込んでいったほうが計算が易しい。

ここではHeavisideが歩んだ小径をなぞることはしないで、現代的な視点から見通しの良い方法を見いだしてみることにする。

余談だが、Heavisideの演算子法をまとめてある数学書というのがいくつか存在する。ひとつは先般紹介したCourant&Hilbertの"Methods of Mathematical Phisics Volume 2"の"TRANSIENT PROBLEMS AND HEAVISIDE CALCULUS"にあるp517から始まる"§2 The Heaviside Methods of Operators"である。この章では数学的な証明とかは参考文献としてMikusinskiの"Operational calculus"を挙げるに留めている。 微分演算子pとその逆演算子1/pが可換になるのは被作用素関数g(0)=0となる場合だけであるとしっかり書かれている。これは以前になんども触れている通り、Heavisideの演算子の被作用素関数には見えないHeavisideのステップ関数が常に乗じられていると考えれば納得する。

(2013/03/01)
共立の「数学公式改訂増補」の演算子法変換表を何気なくルーペで拡大して見ていたら、以下の変換対が最期の方にあるのを発見



最初に導いた解とそっくりじゃないか( ´∀`)

微妙に違うけど(´Д`;)

やっとBessel関数とのつながりが見えてきた。



(2013/3/21)
上の式は演算子項がいくつもの積が含まれるので、単純に考えても畳み込み積分とかが幾重にも展開されるのが想像に難くない。やはりいきなり一般解を解くのは色々な準備を経ないとできないので、もっと特殊なケースを先に解いてみるのがよさそうである。

まず最初に最も簡単な無損失線路や無歪み線路について解いてみるのことにする。無損失線路や無歪み線路ではα-βの項は消失するので



(2013/3/28)
ベクトルポテンシャルK0,K1共にtに関する関数である可能性が考えられるため(例えば送電端に交流電圧が加えられる場合)、ここから先は初期条件を明らかにしてケースバイケースで解く必要がある。

最初に半無限長(受電端までの距離が送電端からの波が届かない程十分長い)かつ無損失線路を考えると



ただしx0はx0>0で十分大きいとする。

これを代入するとベクトルポテンシャルに関する連立方程式が得られる



これをベクトルポテンシャルK0,K1について解くと



ということになる。

これを途中解の式に代入すると



ということになる。

ここでx0を無限大に移行すると



であるからして、半無限長線路の場合には第一項が消失し



ということになる。

演算子方程式では常に両辺にHeavisideのステップ関数が乗じられているのでTaylorの定理により



ということになる。

これは最初にグラフをプロットして予想した結果と一致している。

なんだ演算子法で解けるじゃないか( ´∀`)

Heavisideは何故この方法を思いつかなかったのだろうか。

無損失線路ではR=G=0であるので、上の式は最終的な線路の電圧と電流を成分とするベクトルUに等しくなる。

半無限長の無歪み線路の場合には、更に一歩遡って特性方程式の段階から導く必要がある



これを距離に関して2回積分しベクトルポテンシャルを出現させると



これをUに関して解くと



これに以下の初期条件を与えてベクトルポテンシャルK0,K1を解くと







これを途中解に代入すると



ここでx0を無限大に移行すると第一項が消失し



ということになる。送電端からの距離によって元の波形の振幅が減衰していくことが確かめられた。

さてここから先が問題だ。有限長線路の場合にも解を導けるだろうか。それに受電端の終端条件が異なるケースについても同様である。ついでに線路の自己誘導を考慮していないThomsonのモデルの解を導くことができるだろうか?


最初にRC分布定数回路(Thomsonの海底ケーブルモデル)について考えてみよう。

RC分布定数回路ではL=G=0となるので、これまで導出した式では分母が0になってしまいまずいことになるので、基本に立ち返る必要がある。

基礎方程式の特性方程式に立ち戻ると



ここでL=G=0と置くと



ということになり、電信方程式は以下の様に熱伝導方程式となる



これを距離で2回積分してベクトルポテンシャルK0,K1を出現させると



これをUについて解くと




ということになる。

ここで半無限線路の送信端に電圧Eを印可する初期条件



を与えてベクトルポテンシャルK0,K1に関して解くと



これを途中解に代入すると



これを半無限長線路のためx0を無限大に移行すると



さてここで本格的に演算子qの1/2べき乗が出てきてしまった。

公式集より



という変換対を利用することにする。



ということになる。

erfは誤差関数。

この結果から、線路を流れる電流が送電端からの距離の二乗に比例して減衰していくことをThomsonが指摘し海底ケーブルが役にたたない(受電端に達する前に線路電流が0に限りなく近づいてしまう)理由とした。

電流の式をC=0.12uF/mile, R=1kΩ/mileとしてプロットとしてみると



電圧の式を同じ条件でプロットとしてみると



100mileの地点の時間に対する変化を見ると電流はすぐにピークが現れた後減衰する一方なのに対して、電圧は指数関数的に増加する一方であるという顕著な違いが見られる。

(2013/3/31)
今まで使っていたMaximaのバージョンが古くて誤差関数がプロットできなかった。最新のMaximaをインストールしたところ意図した通りにプロットできるようになった。ようやくPAUL J. NAHINの"Oliver Heaviside"のpage 33の以下のグラフを見比べることができるようになった。



送信端からの距離が遠ければ遠いほど、電流が減衰し変化が緩慢になる。Thomsonはこのため線路の抵抗値を下げるための改良に努力した。

それだけでなくRC分布定数線路モデルでは拡散モデルのため信号が届く時間が距離が離れれば離れるほど遅くなるという電信には都合が悪い性質も示す結果となった。

当時はHeavisideがそこからインスパイアされたのと同様に驚くべき成果だったが、今日的にみると送電端から線路上の全ての点の間は抵抗でつながっているので、どんなに遠くでも送電端に加えられた信号は瞬時に線路上の全ての点に抵抗分圧されて現れるということを意味する(ただし信号のピークが伝わる速度だけは有限)。これは電気信号が有限の速度でしか伝わらないという今日の常識から見るとナンセンスである。あくまでも近似でしかない。

Heavisideが線路の自己誘導成分を考慮した電信方程式を提示したことによって信号が歪み無く一定の速度で受電端に伝わる条件があることが認められたのは電話の時代になってからのことであった。

さて半無限長線路についてはネタが尽きたところで有限長線路に解析に入ることにしよう。

その前に一度半無限長の一般の分布定数線路について解析しておこう。他にもGだけ抜いたものとかLだけ抜いた線路が考えられるが似たようなものなので。

最初に立ち返って



これを距離で2度積分してベクトルポテンシャルK0,K1を出現させると



これをUについて解くと



ということになる。

以下の初期条件を与えてベクトルポテンシャルK0,K1を解くと







これらを元の式に代入してx0を無限大に極限移行すると



いいところまできたけど、ここからが腕の見せ所。

この結果から既に解析済みの半無限長の無損失線路、無歪み線路、RC分布線路の条件(を適用する正しい結果が得られることからこの式自身が一般性を失っていないことが確かめることができる。

どうすんだこっから(´Д`;)

上の式は以下の様に書き換えることができる



(2013/4/1)
電圧の解はまだだけど、電流の解は得た。無歪み線路の条件α=βを適用すると先に解析済みの無歪み線路の解と同じ結果が得られることを確認。

E=1,R=1,G=0,C=1,L=1で電流をプロットすると



(2013/5/5)
解の導出過程に誤りがあったので修正し、再度グラフをプロットしてみたところ、やはりつまらない結果になってしまった。時間の経過とともに電流は減少し、送電端から遠い位置ほど電流も少ないという当たり前の結果である。波は空間上にも時間軸上にも現れない。

(2013/4/6)
電圧の解は一筋縄ではいかない。かなりの手数を踏まないといけなさそう。基本的に級数展開してヒントを得る必要があるのだが、級数理論を使いこなせないと難しい。それと最終的にはBessel関数が出てくるはずなので、Bessel関数についても広く深く理解しておく必要がある。電流の解からら基礎方程式に立ち戻って電圧の解を得るという方法もあるが、これはもって回った方法に思えるのでストレートとは言い難い。

上のグラフの条件だと漏洩損失こそないものの線路損失が大きいために信号が遠くに届きそうもないことが明らか。この問題が露見したのは電信から電話の時代になってからである。Heavisideは電信方程式の解からそのことを予見してその改善策を考案し特許を出願していた。それは線路の自己インダクタンスを増やせば(線路の途中に意図的に大きなインダクタンス、装荷コイルを挿入することで)同じ線路損失でも信号がより遠くまで届くというものである。

実際上のグラフの条件でLだけを2倍にしてプロットしてみると



ぐんと裾のが広がって(信号が遠くまで届く)、信号が伝わる三角形のはんぺんがはっきりと見えてくる。

しかし歴史的にはHeavisideは特許から一銭も収入を得ることはなかった。主張が強すぎて特許の請求範囲を1%も譲ることをしなかったため、特許を回避する方向へ向かわせてしまったからである。

今日当たり前のように同軸ケーブルが作られ信号を忠実により遠くまで伝えるために利用されているが、それを発見したのもHeavisideである。

(2013/5/8)
依然として電圧の解に辿りつけないでいるが、ここにきて諦めもついて、やはり最初に見つけたBessel関数に関する演算子法の変換公式から出発するのがよさそうだと気づいた。共立の数学公式にたまたま古いHeavisideの演算子法が書かれていて変換表も豊富に掲載されているというのがラッキーだった。それらを最初に導いたのが誰かは出典書物が一切書かれていないという昭和初期の日本の国内事情もあってかそれ以上深追いするわけにもいかない。

最初に見つけた変換公式を両辺ともηで微分すると、指数関数の手前にある演算子関数が消える。



電圧の式ではn=0に該当するので代入すると



あとは右辺を変換すればいいだけであるが、こっからが難しい。



ということになる。

実際の電圧の式では時間遅れ要素とかもあって2つの関数の積の積分を距離xで微分するということになる。面倒なのでMaximaで計算したが、何故か第一項が距離の関数になるというのは面白い。

上記の解が本当に元の電信方程式の解であるかどうかを確かめるのは読者の課題としよう( ´∀`)

オリジナルのHeavisideの演算子法で電信方程式が解けるということが判っただけでも収穫である。理論はこのくらいにしていよいよ最期の演習問題にとりかかることにしよう。

P.S

読者の中には電圧の解のグラフがプロットされるものと期待されていた方もいたかもしれないが、残念ながら電流の解と違ってBessel関数を含む積分項がG=0の条件でも残るため、計算結果に虚数が現れ実空間上にはプロットできないのである。このことは電流の解でもG≠0の場合に起きたが、G=0の条件では積分項そのものが消失するので、その条件でプロットしたのだった。積分項の実数値は印可する電圧Eとして±Eの範囲内に収束することは明らかだが、Bessel関数そのものが単純な解析関数ではなく、無限べき級数という特殊な関数であるため積分計算は多大な時間を要するし、t≒x/c近辺で生じる計算誤差による虚数が積分値に加わるので積分値そのものが複素数になってしまう。これらの問題は今日もまだ未解決問題として残る。なので電信方程式の解の定式化は出来ても、その計算は未だに出来ないというのが現状である。Heavisideはどうやって19世紀にこの解をプロットしたかというのが疑問として残るが、どうやら無限べき級数が収束する項数を見極めて計算していたらしい。そうでもないと手計算では多大な時間と計算制度も対数表を使う以上、それほど有効桁数も望めないからそれはそれでよかったのである。この問題の解決も読者の自由課題としよう( ´∀`)

参考までに問題の被積分関数だけを時空間でプロットしてみたものが以下の通り



時空境界線(τ=x)近辺に裂け目が出ているのは、その領域でsqrt(tau^2-x^2)が計算誤差により純虚数になってしまい複素空間に写ってしまってプロットできないため。t=0近辺で大きな値をとるので、積分項そのものを無視するわけにもいかない。

今度は範囲外の(tau - x) < 0 もしくは (tau^2 - x^2 ) < 0の場合には関数値を強制的に0としてみたもの



依然として時空境界線付近に裂け目が現れる。複素数が計算誤差によって現れてしまっている。あとは結果が複素数なら強制的に0とするMaximaの記法があれば回避できるかもしれない。

(2013/5/15)
良く考えたら、プロットされないのは、τ-x<0の範囲で被積分関数値が複素数になるのと、τ=0で不定値になるからだった(´Д`;)
そこは波が伝わっている先端部の条件だけど、そこでは値が不定になるという罠が...コンパクトじゃないのね。

(2013/5/17)
よく考えたら一次のBessel関数は奇関数だった。t-(x/c)=0の場合は被積分関数は0をとると考えてよさそう(分母の式よりも分子の式の方が無限べき級数なのでt^2-(x/c)^2<1の場合早く0に近づく)

被積分関数の面に裂け目ができないようにはできたけど、積分すると状況は変わらず。もしかして積分が計算できないとかなのかな。この電圧分布の計算とプロットは読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

ここしばらく開いていなかったオーム社の「大学課程 電気回路(2)」尾崎 弘著をみたら、Laplace変換を使って最終的に以下のようにまったく同じ結果が得られると書いてあった。絶版になった本の解と同じ結果が得られてもMiksinskyと吉田氏には申し訳ないが少し心許ないので、まだ絶版になってない権威が書いた本と同じ結果だと確認できて安心した。これでゆっくり眠れる。



部分的に違ってみえるのは記号の定義が異なるのと、式中の記号の数を最小化しているためで、実際はまったくの同値である。時間遅れのある単位ステップ関数u(t)を乗じることで解をケース分けして書く必要もないということである。これを見ると無歪み線路条件や無損失線路条件を適用するとそれらの既知の解と同じ結果が得られるので一般性を失っていないことを確かめることができる。完璧だ。
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