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webadm
投稿日時: 2013-5-6 3:23
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3093
演算子法に関する数学書
演算子法について書かれた数学書は少なく、あっても絶版でかつ出版部数もわずかなため入手困難である。

そんな中で演算子法に関する数学書で現在も入手可能なものがある。

Springer-Verlagの応用数学シリーズの中にある

"Operational Calculus A Theory of Hyperfunctions" K. Yoshida



著者は日本の数学者である吉田耕作。元々は国内で出版された書の英訳で、翻訳そのものも著者自身によるもの。



前書きを読むとHeavisideの精神に良く精通していて基本的にそれを数学的に裏付けし更に拡張したと読み取ることができる。

大部分はMikusinskiの先駆的な業績をなぞるのだが、佐藤の超関数理論(Hyperfunction theory)を駆使してより簡潔にまとめ上げたもののように見える。随所にMikusinskiの著書と比較せよとの記述が見受けられるため、見比べながら読むことを想定しているようだ。しかしMikusinskiの著書も邦訳本はとっくの昔に絶版で出版部数もすくないため入手困難。海外から取り寄せるしかないが、昨年依頼しているが未だに返事が無い。

最期の方に知りたかった電信方程式のいくつか代表的な条件での解が示されている。




前半の数学的な退屈に見える議論はすっとばしてとりあえず結論から先に読んでいくのが良いかもしれない。しかし最終的に簡潔な解の形を導くのにそれらのお膳立てが必要なのを知ることになる。



興味深い結果がこのページあるが、どうしても同じようにはHeavisideの演算子法で導くことができないでいる。電流の解は得られたものの、この本に示されているものとは係数が異なってしまう。

佐藤の超関数理論にしても、Schawaltzの超関数(distribution)理の定式化の方法が解りづらく読みにくいし自分ならもっと簡潔で判りやすい定式化ができると思ったのが発端だそうだ。そのあたりはHeavisideと共通するものがあるように感じる。

巻末には代表的な変換対が示されているが、どちらかというとHeavisideの演算子法とは異なり、意に反してLaplace変換と同じであるが、積分変換を伴わないのでLaplace変換では積分は収束せず扱えない問題も扱える点が大きく異なる。定数1は1/sという具合である。sは微分演算子なのでその逆数は積分演算子になるが、1は何かというと1を係数とするδ関数みたいなもの、積分するとHeavisideの階段関数になる。なので一段演算子の次数が異なっているところがあるので使い勝手はHeavisideのそれと同じなのだが、最終的に変換する際に一段ことなってしまう。そこがまた落とし穴でもある。

もう少し深く読み進めていく予定。
webadm
投稿日時: 2013-5-11 8:39
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3093
Re: 演算子法に関する数学書
なかなか返事が来ないと噂をしていたらなんとやら

海外から発送の連絡があったとのこと。

今日帰宅したら届いていた。

開けてびっくり、黒いハードカバーで少しくたびれていそうなので中古本であることはわかったが、取り出してみると



予想外にがっつりした黒本だった。よもや初版本のvintage品か?

無関係な期待が走る

扉を開けるとそれが依頼通りのMIKUSINSKIの著書であることが判る。



この扉の前にもうひとつ表紙があって、どうやら後のページの前書きを読む歴代で5番目に出版された英訳本のリプリントらしい。それにしては丁寧なハードカバーだ。ペース総数も500ページ近い。




前書きには1950〜1957の間にかけて蓄積した研究成果の応用事例を含めた集大成らしい。こうした仕事は1年でとかで出来るものではない。昔は純粋数学が超重んじられていて、こうした応用に手を染めると数学者を辞めたと数学者の間では囁かれた時代だったので勇気が要る仕事だ。

まっさきに見たかったのは、吉田耕作の本で参照されている、260ページである



つい昨日、この本が届く前に自分でもオリジナルHeavisideの演算子法で解を得ていたので、それと同じ結果がそこにあって嬉しかった。

吉田の解とMikusinskiの演算子法の解とで決定的に違うのは第一項の式に時間遅れ作用がはっきり出現しているか居ないかの違いである。確かにHeavisideの演算子法やMikusinskiの解にはそれらが明示的に現れていない、それが吉田の超関数理論に基づいた演算子法だとどうしても時間遅れ要素が消えずに残るので、最後にそれを変換する必要が出てくる。その点、吉田の演算子法がそれまでの演算子法よりも優れていると言える。

Heaviside演算子法では、印可する電圧がステップ入力だとすると、t>0では送電端は一定の電圧になるはず。なので時間によって変わる要素はないのだが、あるとすれば、もっと拡張して送電端電圧が時間の関数だとすれば、E(t-λ√LC)という関数が含まれることになるだろう。そういうことを言わんとしているのだろうか?

もしくは吉田の解をそのまま解釈すれば、送電端(x=0)では時間の経過とともに、時間tに比例して電圧が増大するとでも。おそらくそうではないだろう、それでは解として誤りである。たぶん表記上の問題あるいは誤記だと思われる。

吉田の演算子法は立式を超関数方程式としている点と重要な証明が簡単にした以外はMikusinskiの演算子法に基づいており変換公式が共通で、Laplace変換対と相似である。しかしLaplace変換が複素空間での積分変換を伴うため、積分が収束しない関数を扱うことができないが、演算子法はその制約はない(無限級数とかの収束問題は依然として残る)。

Heavisideの演算子法とMikusinskiおよび吉田の演算子法は変換公式が異なる点に注意しなければならない。

さて議論はここまでとして、Mikusinski本のレビューに戻ろう。

この本のオリジナルの所有者もやはり電信方程式の解に関心があったらしく、そのページのところに折り目がついたままになっている。



電信方程式の章立ては、吉田本もそれと比較しやすいように同じ順立てでになっている。それで微妙なところでMikusinski本と見比べて欲しいと願ったのかもしれない。

やはり先駆者Mikusinskiだけあって、演算子法の定式化は既に決まっているので、吉田の本の内容もそれに準じている。Mikusinskiはそれらの表記方法についても最初の章で詳しく解説しているため、吉田の本ではそれらは省かれているが、同じ表記を使っている。

吉田耕作とMikusinskiは同時代人で、演算子法や関数解析分野で互いに親交があり、吉田の著書の前書きには友人として名前が載っている。関数解析は、演算子や線型作用素などのように関数に作用して、関数を別の関数に変えるような、ちょうどある関数を関数空間内のある座標点とすると、演算子や線型小夜嘘はそれに作用して、別の座標(関数)に写すと考えると、関数空間内で解析が出来るようになる。それを扱う純粋数学である。ちょっと手にとってその手の本を開いてみたら、まったく書いてあることが理解できなくてがっかりした憶えがある。今なら少し読めるかもしれないけど。



半無限長の一般線路の問題の演算子法の解はMikusinskiの演算子法ではステップ関数がE0/sという表現になるのに対して、オリジナルHeavisideの演算子法では単位ステップ関数が隠れているのでE0のままである点が異なる。

よく見ると吉田耕作の解の導出手順がもってまわったようなやり方だと思ったら、Mikusinskiが省略していた過程を捕捉したものだったことが判明。やぶ蛇で上のページの最後の式に誤植を発見。

自分なら吉田の導出方法よりもっと解りやすく意図的に1を乗じるテクニックで



とするところだが。最初に示した最終解には誤植はないので、そうれはどうでもよい話しである。

この本を手にして驚愕したのは、応用に関する章が豊富だという点。



なんと電気回路理論の微分方程式が出てくるあたりの理論が全部演算子法を使って解説されている。理由としては演算子法を使って立式するハードルが最初にあって、間違いをしやすいので実例を示したということらしい。

ここではMikusinski演算子法の大きな特徴である、たたみこみ積分対応が明確に示されている。

{}付きで示されているのが乗法がたたみこみ積分で定義される可換関数環の関数であることを示している。それらの関数の積は、たたみこみ積分に対応する。

このたたみこみ積分対応がMikusinskiの演算子法を数学的に裏付ける根拠となっている。わかってしまえばそうなって当たり前の話しだが、19世紀にはそれらの研究さえ芽生えていなかった。主に20世紀に入ってからようやく数学者が重い腰をあげたというところ。

電信方程式の章は、The Equation of Telegraphyという訳になっている。



吉田本ではこの後最期に熱伝導方程式の章が出てくるが、Mikusinski本では逆で、前に熱伝導方程式があって、その後で電信方程式が登場する。吉田の本は熱伝導方程式の章を最期に、巻末にちょっとした公式と演算子法の変換対の一覧があるだけ。

Mikusinski本は、電信方程式の後に、それ以外の分野での応用や未解決問題が紹介されている。

この本はかつて邦訳本が出たらしいが、分量的に2分冊となるので、まったく売れず、復刻も絶望的らしい。

かなり工学系や技術者で数学にアレルギーが無い人が読めばかなり面白い内容だと思うのだが、若い日にこの本に出会えなかった不幸を今は恨むしかない。

これから時間のある時に、拾い読みになっても隅々まで目を通したい本である。

それ以外にも演算子法に関する古書が、検索したら海外オークション代行業者のページで発見してしまった。

課題としてあるのが、共立の数学公式(増補版)にあるHeavisideの演算子法の豊富な変換対表が誰の手によってどう導かれたのか知りたいというのがある。Mikisinski本の巻末には豊富な演算子変換対の一覧があるが、それらはHeavisideの演算子法とは似て異なるものなので、それらが出典ではないことは明らか。他に20世紀に出版された本でどっとまとめて集大成したのがあったに違いない。

まだこの手の本を買い集めるかもしれない。新たに入手したら、レビューを載せたいと思う。

P.S

縁あって知ることになった、吉田耕作とMikusinskiの二人の数学者の生前の姿を知りたいとGoogleで画像検索したら、それらしき古い写真がみつかった。

どちらも黒縁で度のきついめがねをかけたよく似た風貌の持ち主であることが判明した。二人が会った時に互いに意気投合したのは想像に難くない。
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