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webadm | 投稿日時: 2008-9-29 0:19 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3088 |
節点解析(nodal analysis) 次ぎはこれまで扱ってきた枝電流法を節点解析として一般化する。
著者はいきなり一般化された節点方程式を紹介するだけで半ページも割いていないが、これが実は躓きの種だったりする。実際に元になっている回路を図に描こうとすると無理があることがたちどころにわかる。 実はいろいろ調べると回路網理論の初期の段階からいきなり一般論を説明している参考書は少ない。おそらく海外の教育カリキュラムだと必ずしも回路理論を学ぶ段階で線形代数をマスターしているとは限らないか、むしろ学んでいないということを前提にした教え方がほとんどである。最初から線形代数にこだわった教え方は日本の古い時代の伝統だったらしい。おそらく行列と行列式をニュートンと同じ時代に和算で知られる日本人の関孝和が既に考案していたという誇りからくるのかもしれない。行列と行列式による連立方程式の解法が海外で考案されるずっと前に既に日本人が発見していたが鎖国の時代であったのと和算という特殊な分野であるが故に広く知られるに至らなかったのは残念である。 ここでは著者の一般論に入る前に、現代の回路網理論の教え方で行われているように小規模の回路で考えてみよう。後に学ぶことになるが、現実に扱う回路は集中定数回路であればどれも有限であり、1つか2つの入力と1つか2つの出力端子と共通グランドを持つ程度であり、回路理論のほとんどはそうした回路を有限個連結したものとして扱うことが出来る。なのでいきなり端子がN個ある回路から入る必要はないのである。もちろんすべての有限個の端子を持つ回路が包含されるということを知っておくことは損にはならない。 節点解析は回路の各接点の電圧を一つの共通の節点を基準として定義して、各節点に流れ込む電流と流れ出す電流の総和が0となるキルヒホッフの法則を利用して回路方程式をたてる。これは電子回路で各素子の端子の接続点(節点)の電圧から回路に流れる電流を解析する目的には網目解析よりも適している。実際に有名な電子回路シミュレーターSPICEでは内部で節点解析を行っている。 4つの節点にアドミッタンスが接続された回路で一つの節点を接地し、残りの接点に外部から流れ込む電流をそれぞれI1,I2,I3,節点の電圧をE1,E2,E3とするとキルヒホッフ法則により以下が成り立つ。 I1=Ye*E1+Ya*(E1-E2) I2=Ya*(E2-E1)+Yb*E2+Yc*(E2-E3) I3=Yd*E3+Yc*(E3-E2) これをE1,E2,E3と係数の積の式に整理すると I1=(Ya+Ye)*E1 -Ya*E2 +0*E3 I2=-Ya*E1 +(Ya+Yb+Yc)*E2 -Yc*E3 I3= 0*E1 -Yc*E2 +(Yc+Yd)*E3 従ってこれは行列で表すと (I1,I2,I3)=([Ya+Ye,-Ya,0],[-Ya,Ya+Yb+Yc,-Yc],[0,-Yc,Yc+Yd])*(E1,E2,E3) ということになり、それぞれの行列を I=(I1,I2,I3) Y=([Ya+Ye,-Ya,0],[-Ya,Ya+Yb+Yc,-Yc],[0,-Yc,Yc+Yd]) E=(E1,E2,E3) とおくと I=Y*E と表すことができる。 ここでYiiを節点i以外の節点を接地した時の節点からみたアドミッタンスの総和、Yij(i≠j)を節点iとjとの間を接続するアドミッタンスに(-)符号をつけたものとすると Y11=Ya+Ye Y12=-Ya Y13=0 Y21=-Ya Y22=Ya+Yb+Yc Y23=-Yc Y31=0 Y32=-Yc Y33=Yc+Yd となるため行列Yは以下の様に表すことができる Y=([Y11,Y12,Y13],[Y21,Y22,Y23],[Y31,Y32,Y33]) これは容易に任意の節点を持つ回路に適用可能であり、電圧源や電流源の有無の関わらず方程式を立てることができる。 ここでYiiを自己アドミッタンス、Yij(i≠j)を相互アドミッタンスと呼ぶ。 図の例でも明らかのように節点解析で用いる方程式の数は回路の節点の数より一つすくない。これは一つの節点が接地点になるためである。 節点方程式の数=(節点の数) オペアンプを使用した電子回路の解析にはもっぱらこの節点解析が基本であることは市販の参考書などでは読者の敷居が高くなって売れなくなるため触れられていない。電子回路を学ぼうとする者は節点解析について予め知っていることは至極当然であるという暗黙の了解が業界の掟として存在することは確かである。おそらくそうしたバックグランドを持たずに自分でオペアンプ回路を設計しようと夢みた人のほとんどはこれが躓きとなる。 これから学ぶすべてにおいて線形回路網の理論は重要であり、三相交流回路や電子回路、高周波回路を解析し理解するための土台である。 |
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