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webadm | 投稿日時: 2008-9-30 23:12 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3088 |
テブナンの定理(Thevenin's theorem) 有名で有用な回路網理論の定理だが、いくつか購入した参考書でまともに説明しているのは少なかった。中には完全に代数記号に誤植があり、文面の少なさもあって何がいいたいのかさっぱりわからないという有様。
有名過ぎて説明するまでもないという意識が執筆者の頭にあるのが邪魔をしたのかもしれない。これは躓きの石となる。 もともとの発端は線形回路網の任意の端子間に負荷を接続した場合に負荷に流れる電流をどうやって計算するかという問題である。 テブナンの定理に関してはこれまで学んだ重ね合わせの理や相反定理のように簡明かつ具体的な代数的証明方法を探しても見あたらない。またテブナンが示したオリジナルの証明方法が用いられているものも皆無である。大抵はどう使うかという視点でしか説明されていない。 原点に立ち戻ってテブナンがどうこの問題を解いたか追体験してみよう。 テブナンが解いた問題を図で描くとこんな感じ。n個の電圧源E1,...,Enを持つ任意の線形回路網の任意の端子A,A'間にインピーダンスZを持つワイヤーABA'を接続した場合にワイヤーに流れる電流を求めよというもの。ワイヤーを接続しない状態でA,A'の電位はV,V'、Z0を電圧源をすべて0とした場合のAA'間の内部インピーダンスをZ0とした場合、 i=(V-V')/(Z0+Z) で計算できるというのが答えである。これが一般にテブナンの定理として紹介されているが、どうやって導くかが問題。 テブナンは重ね合わせの理を応用して解いている。 図の様に負荷と直列に元の端子AA'間の電圧(V-V')と同じ電圧の電圧源を接続した場合、電流は流れないためia=0であることは自明である。 また今度は回路網の電圧源をすべて取り除いた状態で端子AA'間に元の端子電圧(V-V')と逆方向の電圧源を接続した場合の電流をibとすると、この2つの回路を重ね合わせることによって、追加した電圧源は相殺され接続された負荷に流れる電流は重ね合わせの理によってi=ia+ibということになる。 従って i=ia+ib=(V-V')/(Z0+Z) E0=V-V' i=E0/(Z0+Z) ということになる。 これより任意の線形回路の端子間は解放時の電圧を電圧源として内部インピーダンスZ0を持った等価電圧源として扱うことができる。 これを使うには内部インピーダンスZ0と開放時の端子間電圧を予め計算しておかないといけないのではあるがそれは通常の回路網解析で可能であるので、端子に何か負荷をつないだ時に回路網を拡張して計算し直す必要はないので計算手段が手計算しかない場合に有用ではある。 なんだか簡単なようで狐につままれた気がしないでもない。 テブナンは電信技師で新人の教育担当をしていた26歳の時にこの定理を発見して発表したが、実はテブナンが生まれる4年前にヘルムホルツという人が既に違う分野で同じ定理を発表していたのをマイヤーという人が明らかにした。30年も経て新しい発見とされているのが興味深い。 ヘルムホルツのそれは今日テブナンの定理の説明によく用いられている最も単純な説明である。 まさにこれはあちこちの参考書に載っているテブナンの定理の説明そのものである。 テブナンが生きたのは電信の時代なので直流回路を前提としていた。なのでオリジナルの説明も線形回路網ではあるが抵抗と直流電源のみである。後に日本で交流電気の時代になってから鳳という人が交流回路で同じ定理を証明したらしい。 文献*1によると今日テブナンの定理やノートンの定理と同じ定理として知られる等価電圧源や等価電流源の理論はマイヤーという人が20世紀初頭に整理して発表したもの。それ以降この定理が良く知られるようになったらしい。 他の定理に関しては厳密な線形代数による証明が見受けられるが、ことテブナンの定理に関しては証明のストラテジは説明されているが具体的に代数的な証明は見あたらない。実際に考えてみると結構面倒である、本当はあまりに自明過ぎて証明を示すまでもないのかもしれないけど。 暇さえあれば線形代数でテブナンの定理が一般化された線形回路網で成り立つことを証明する方法を考え中。 どうやらテブナンの定理を証明せよという問題が国家公務員1級試験には出るらしい。正解はいろいろありそうだけど、証明方法は習ってないよという人は落ちる。 *1 Don H. Johnson, "Origins of the Equivalent Circuit Concept" |
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