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投稿者 | スレッド |
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webadm | 投稿日時: 2009-7-23 20:52 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3093 |
非周期波とFourier積分 ここからはちょっと数学的な内容になる。
フーリエ級数 y(t)=Σan*sin(nωt)+b0+Σbn*cos(nωt) (n=1,∞) においてオイラーの公式より sin(nωt)=(e^j*nωt-e^-j*nωt)/2j cos(nωt)=(e^j*nωt+e^-j*nωt)/2 をそれぞれ代入すると y(t)=Σan*(e^j*nωt-e^-j*nωt)/2j+b0+Σbn*(e^j*nωt+e^-j*nωt)/2 =(1/2)*Σ(bn-j*an)*e^j*nωt+b0+(1/2)*Σ(bn+j*an)*e^-j*nωt (n=1,∞) ここで An=(1/2)*(bn-j*an) (n=1,∞) A0=b0 (n=0) A_n=(1/2)*(bn+j*an) (n=-∞,-1) と置くと y(t)=ΣAn*e^j*nωt+ΣA_n*e^-j*nωt (n=0,∞) ということになる。このままだと一般に教えられているフーリエ級数の複素形式とは異なるのだが フーリエ係数 an=(2/T)∫y(t)*sin(nωt)dt bn=(2/T)∫y(t)*cos(nωt)dt を An=(1/2)*(bn-j*an) A_n=(1/2)*(bn+j*an) に代入すると An=(1/2)*((2/T)∫y(t)*cos(nωt)dt-j*(2/T)∫y(t)*sin(nωt)dt) =(1/T)∫y(t)*(cos(nωt)-j*sin(nωt))dt A_n=(1/2)*((2/T)∫y(t)*cos(nωt)dt+j*(2/T)∫y(t)*sin(nωt)dt) =(1/T)∫y(t)*(cos(nωt)+j*sin(nωt))dt ここで再びオイラーの公式より cos(nωt)+j*sin(nωt)=e^j*nωt cos(nωt)-j*sin(nωt)=e^-j*nωt なので An=(1/T)∫y(t)*e^-j*nωtdt A_n=(1/T)∫y(t)*e^j*nωtdt ということになる。 すなわち An(-n)=A_n(n) という関係にあるので y(t)=ΣAn*e^j*nωt+ΣA_n*e^-j*nωt (n=0,∞) =ΣAn*e^j*nωt (n=-∞,0,∞) と書き直すことができる。 ここまでは前準備で、問題は非周期波に拡張するにはどうするかという話。単純に周期Tを∞に引き延ばせばいいのだが数学的に厳密に証明するのは実はかなり面倒くさい。大抵の先生は自分で見つけたようにさらりと説明して終わるはずだ。どうやって証明するかとか導出するかとかは絶対聞いてはいけない。聞いても「この黒板では書ききれない」とか言われてお終いである。ご多分に漏れず著者も説明を省いて天下り的に以下の式を示すに止まっている。 y(t)=(1/2π)∫F(ω)e^jωtdω (ω=-∞,∞) F(ω)=∫y(t)e^-jωtdt (t=-∞,∞) F(ω)をy(t)のFourier変換もしくはFourier積分と呼ぶ。どうみてもフーリエ係数でTを∞に拡張した式に見えるが、Fourier係数と違うのはωの関数になっていて連続的な値を取るということ。Fourier級数の場合は次数である整数nの関数だったので離散的な数列だった。 F(ω)からy(t)を求めることをFourier逆変換、または逆Fourier積分と呼ぶ。 P.S Fourier変換を扱うほとんどの参考書は、その応用の広さを紹介するのにページ数を割くのが精一杯で、Fourier変換の公式の導出方法については省略しているものが多い。導出の根拠無しにその応用を論ずるのはいささか時代に反しているという感は否めない。 Fourier変換の厳密な導出方法はあるに違いないが、ほとんど根拠の土台となる数学的な下ごしらえの部分が多く、結論的に当たり前みたいな形になってしまうと思われる。それらは必ずしもFourier級数の存在を必要としない。結論があっているかどうか証明できればいいのでFourier級数の式が登場しなくても構わないのである。もともとFourier級数もいきなり級数展開式によってほとんどの関数が近似できるという予測からはじまって、それが成り立つ条件を明らかにすることによって数学的に根拠のあるものとなっているので、同じようなものである。 手元の古い参考書には、それぞれFourier変換の公式の導出方法が考え方だけ紹介されている。もちろん厳密ではないが、という但し書き付きである。共通しているのはFourier級数のΣを∫に書き換える際に様々な数学的なトリックが使われている点である。いくつかは天下り的に書き換えてしまっているものがあり、最後まで狐につままれた感じがしてならない。 ここではすべてを紹介しきれないので、参考までに今まで見た中で最も完結かつ数学に素人でも平易にわかるトリックを使ったものを紹介しよう。 Tの定周期波のFourier級数とそのFourier係数は y(t)=ΣAn*e^j*nωt (n=-∞,0,∞) An=(1/T)∫y(t)*e^-j*nωtdt (t=0,T) で表されることは既に学んだ通り。 ここで最初のトリックとして、関数y(t)が時不変であるとすれば An=(1/T)∫y(t)*e-j*nω0tdt (t=-T/2,T/2) が成り立つ。次ぎのトリックとしてω0=2π/TであるのでT→∞とするとω0→Δωとなるとすると An=(Δω/2π)∫y(t)*e-j*nΔωtdt (t=-∞,∞) これをFourier級数の式に代入すると y(t)=Σ{(Δω/2π)∫y(t)*e^-j*nΔωtdt}*e^j*nωt (n=-∞,0,∞) =(1/2π)ΔωΣ∫y(t)*e^-j*nΔωtdt}*e^jωt (n=-∞,∞) ここで新たに最後のトリックとして nΔω=ω と置くと y(t)=(1/2π)ΣΔω∫y(t)*e^-jωtdt}*e^jωt (n=-∞,∞ ω=-∞,∞) Fourier変換を F(ω)=∫y(t)*e^-jωtdt (t=-∞,∞) とすると、 y(t)=(1/2π)ΣΔωF(ω)*e^jωt (n=-∞,∞ ω=-∞,∞) と書き換えることが出来る。 更にT→∞とすればリーマン和は積分と等しくなるので lim ΔωΣF(ω)*e^jωt=∫F(ω)*e^jωtdω (Δω→0) 従ってFourier逆変換は y(t)=(1/2π)∫F(ω)*e^jωtdω (ω=-∞,∞) となる。 Fourier変換、逆変換の式は導出方法のバリエーションの違いによって、上記以外のものがいくつかある。それらを研究してみると一層理解が深まるかもしれない。 |
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