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webadm | 投稿日時: 2013-11-18 5:45 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3089 |
Coulombの法則 言わずと知れたCoulombの法則から
歴史をひもとくと最初にこの理論を論文として発表したのがフランス人のCoulombだったから電荷の単位としてもその名前がついている。 実はいろいろな本を読むと、Coulomb以前に同様の研究を行い同様の結果を得ていたイギリスのCavendishが居たことを知るだろう。彼の死後、遺稿の整理を任されたMaxwellがそれを発見した。その他にもオームの法則にも辿りついていたことが知られている。 Coulombの時代には既にNewtonがPrincipiaで万有引力の法則に言及していたので、電荷力にも似たような逆二乗法則があることが簡単な実験から予想できる。問題はそれを確かめる方法だが、これは現在でも完璧に証明することはできないが、高精度で測定することは可能になっている。 物理学の世界では、理論の完璧な証明というのは難しくて、測定結果が理論の予想とかなりの精度で一致していれば理論は現時点で正しいとされる。物理学では理論は近似でしかないので、完璧に宇宙の仕組みがわかるまでは本当の理論というのは登場しないからである。 CoulombやCavendishの時代には理論を裏付けるに十分な精度で実験結果を測定することが難しいだけに、その裏付けは後の時代に委ねられ、測定技術の進歩によって今日では揺るぎないことになっている。 その他にも電荷の単位がCoulombと名づけられたのも時代的な背景がある。物理学では物理量に独特の単位があり、それぞれに偉人の名前がつけられている。実はこうした単位系は最初からあったのではなく、様々な理論や公式と辻褄が合うように、また不便のないように後付できめられたものである。ある物理量が他の物理法則と無関係に単位をきめることができる場合とそうでない場合がある。 それについてはまた機会を見て学ぶことにしよう。 Newtonの力学が既にあったので、Coulombもそれをなぞる形で電荷によって働く力を測定した。 引力と違うのは、電荷には斥力と引力の2つがある点である。 同じ極性の電荷を持つ同志は斥力が働き、異なる極性の電荷を持つものの間には引力が働く。これが重力と電磁気力が違うものであることを決定的にする。 最初は似たようなものだと予想していたが、だんだんと違う力の仕組みだということが判ってくる。 Coulombの時代は空気中で実験していたが、すぐに空気のまったくない真空中ではどうなのかという疑問が生じる。当時は真空がなんなのか予想がつけられていなかった。ある人はエーテルという媒体が満ちていると考え、ある人はまったく何もないと考えるが、いずれも矛盾がある。 重力が真空中も作用するのと同様に電荷も真空中で作用する。現代では真空中でCoulomb力が測定され、それを基準に他の媒体内での測定と比較される。それは歴然とした違いが見つかる。異なる媒体内では同じ電荷条件でも働く力が違ってくるのだ。 Coulombの実験した当時は大気中だけで実験したので、他の媒体では変わるかもしれずと、ある定数に力が比例するという定式化を行っただけだった。それでも距離の二乗に反比例する実験結果を発表した。 今なら都合の良いデータだけを使った捏造論文になってしまうが、当時はまあそれでも歓迎されたわけである。 Cavendishの実験では誤差も考慮された上で逆二乗法則に言及している。Cavendishの方法を改良して更に精度高く測定したのがMaxwellだった。Maxwellにとってはどうしても逆二乗法則が確たるものでなければならなかったのである。彼の理論体系を堅固なものにするためにも。 さて真空中を含め様々な媒体内で同じような測定を高精度に行えるようになって、やはり媒体によって結果が係数kが違ってくるということが明らかになり。それをどうするかということになった。 ここで単位系との関係が出てくる。またMaxwellが様々な電磁気力の間の関係を数学的に定式化することによって今まで知られている物理量の単位を決める必要があった。そうでないと勝手に決めた単位によって同じ物理量でも値が異なってきてしまうし、関連する公式も異なってきてしまいやっかいである。 この事はこれから現れる公式を鵜呑みにする分には知る必要はないが、どうやって公式が導出されたのか知りたい場合には単位系の歴史に足を踏み入れる必要がある。 Coulomb力Fは距離の逆二乗に比例するので、距離が近づけば近づく程強くなる。例えば原子レベルの距離になると大変強い力が働くことになるのは想像に難くない。なので、電磁気力は強い力と称されている。それに比べると質量を持った物質間に働く引力は大変弱いことになる。例えば原子を構成する量子間の間では量子の質量が小さいので引力も無視出来るほど弱いことになる。 引力と電磁気力の決定的な違いは、引力は途中に何があっても遮ることができないのに対して、電磁気力は簡単に遮ることができる点である。引力は途中に恒星があろうとブラックホールがあろうとその先まで作用するが、電磁気力は電界もしくは磁界が張っている領域内でのみ作用する。電界や磁界が遮られてしまった空間の外には影響を与えない。この性質については後々学ぶことになる。 著者のCoulombの法則の公式として最初に以下のものが出てくる newton[N}は力Fの単位である。この公式では先に挙げた昔の式の係数kが となっていることになる。 著者はまた真空誘電率ε0について以下の様に定義を与えている ここでcは真空中の光が1秒間に進む距離(速度 m/sec)である。 この定義を先のCoulombの法則の公式に代入するとおかしなことに4πが相殺されて消えてしまう。なんなんだこれは。 とするとkは ということになる。 従って、kにQ,Q'の電荷の単位[C]を二回乗じて、かつ電荷間の距離の二乗で割るので、最後はFの単位がNになるという辻褄が合う結果になる。 なので公式を憶える際には単位系を共通のもので統一しないと矛盾が発生したり、物理量を換算し直さないといけなくなる。 電荷の単位にCoulombの名前を採用するにあたって、その定義も同時に与えられる必要がある。 上の式と単位系では、著者が述べたように、1 Coulombの電荷を持った2電荷が1mの距離を置いて離れている場合、互いに1/4πε0 Newtonの力(正なら斥力、負なら引力)が働くことになる。 無論Coulombの時代には電荷の単位など決まっていなかったし、測定方法も無かったので、とにかくCoulombはNewtonの定式化に習って距離の逆二乗則だけを言及したわけである。 当然ながらその後、電磁気学と従来の物理学を理論的に統一する古典物理学の完成へ向けて、重要な単位の決定と単位系の提案がなされるようになった。 何故に直線上で距離を隔てた2つの点電荷の間の関係式に円周率のπが出てくるのかは、単位系のしわ寄せみたいなものである。重要な公式や定数に円周率が含まれるのを良しとしない単位系では演習立はあまり重要ではない定数に円周率がしわ寄せとして押し付けられてしまう。円周率が表に出てきてしまうと公式としては美しくないといぶかる先生達の仕業である。 Newtonの運動方程式では質量だった部分が電荷に置き換え、重力定数だった部分を光の速度の二乗から割り出された定数に置き換えるとCoulombの公式となるように電荷の次元が定められて実験結果と一致するように単位が決定したことになる。 ということでCoulombの法則には光の速度が強く関係していることが判明した。というのも今日の単位系の根拠には光の速度が系によらず一定不変であるというEinsteinの相対性理論がある。長さの単位や基準も1秒間に進む光の距離に基づいている。そう言えば時間も系によって変化するのであった。 光の速度が定まった歴史についても興味深いものがあり、19世紀の欧州で起きたドラマに関しては諸説がある。 さてCoulombの法則についてはこの程度にして。疑問点は後々折りを見て解決していくことにしよう。 実のところ本格的な電磁気学の入り口というのは、次の電界の概念を学ぶことである。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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真空中の電荷分布による静電界 | webadm | 2009-10-21 11:57 |
Re: 静電界I:真空中の静電界 | webadm | 2013-11-18 4:56 |
» Coulombの法則 | webadm | 2013-11-18 5:45 |
電界の強さと電位 | webadm | 2013-11-25 0:14 |
点電荷による電界 | webadm | 2013-12-1 17:04 |
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多重極展開 | webadm | 2014-1-8 0:13 |
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