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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2010-5-4 2:58
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3086
インピーダンス行列(Z行列)
ちょうど一端子対回路の駆動点インピーダンスを考えた際に、任意の受動素子と電源から成る回路網内の任意のn個の素子の両端を端子対とするn端子対回路のひとつの端子対を除いてすべてを短絡したものが一端子対回路だったと同様に、二つの端子対を除いてすべてを短絡したものが二端子対回路とみなすことができる。

その場合に、2つの端子対の電圧と電流、E1,E2,I1,I2の間には以下の関係が成り立つことになる。

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />Z_{11} & Z_{12}\\<br />Z_{21} & Z_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]

ここで係数行列がインピーダンス行列もしくはZ行列とよばれ、行列の各要素はインピーダンスパラメータと呼ぶ。

それぞれのインピーダンスパラメータは以下の意味を持つ。

端子対1を開放するとI1=0となるため、先の関係式に代入すると

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />Z_{11} & Z_{12}\\<br />Z_{21} & Z_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />0 \\<br />I_2<br />\end{array}\right]

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&\left.Z_{12}I_2\right|_{I_1=0}\\<br />E_2&=&\left.Z_{22}I_2\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

従ってインピーダンスパラメータは

\begin{eqnarray}<br />Z_{12}&=&\left.\frac{E_1}{I_2}\right|_{I_1=0}\\<br />Z_{22}&=&\left.\frac{E_2}{I_2}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

Z12を開放伝達インピーダンス、Z22を開放駆動点インピーダンスと呼ぶ。

同様に端子対2を開放した場合

\left[\begin{array}<br />E_1 \\<br />E_2<br />\end{array}\right]=\left[\begin{array}<br />Z_{11} & Z_{12}\\<br />Z_{21} & Z_{22}<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />I_1 \\<br />0<br />\end{array}\right]

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&\left.Z_{11}I_1\right|_{I_2=0}\\<br />E_2&=&\left.Z_{21}I_1\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

従ってインピーダンスパラメータは

\begin{eqnarray}<br />Z_{11}&=&\left.\frac{E_1}{I_1}\right|_{I_2=0}\\<br />Z_{21}&=&\left.\frac{E_2}{I_1}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

Z11を開放駆動点インピーダンス、Z21を開放伝達インピーダンスと呼ぶ。

だいぶ前に、上巻の「回路網解析と基本諸定理」で受動素子(L,C,R,M)のみからなる線形回路網では一般的にインピーダンスマトリックスが対称行列となるため相反定理が成り立つことを学んだ。

二端子対回路にも同じことが言える。ここでは上巻の時とは逆に相反定理が成り立つ場合、インピーダンスマトリックスが対称行列であることを確認してみよう。

相反定理が成り立つ時には下記の関係式が成り立つことになる。

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{E_1}{I_2}\right|_{I_1=0}&=&\left.\frac{E_2}{I_1}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

これは先に定義した開放伝達インピーダンスそのものであるので、置き換えると

\begin{eqnarray}<br />Z_{12}&=&Z_{21}<br />\end{eqnarray}

ということになる。

従って一般的な二端子対回路ではインピーダンスマトリックスは対称行列となるため、独立なインピーダンスパラメータは3つということになる。

一方今度は以下の関係が成り立つ二端子対回路は対称回路であると言う。

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{E_1}{I_1}\right|_{I_2=0}&=&\left.\frac{E_2}{I_2}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

これは先に定義した開放駆動点インピーダンスそのものであるので、

\begin{eqnarray}<br />Z_{11}&=&Z_{22}<br />\end{eqnarray}

ということになる。

二端子対回路をインピーダンス行列表現は複数の回路の各端子対を直列接続する場合に都合がよい。

P.S

後半の内容は既に学んでいたことなので、最初なんの疑問もなく書いてしまったのだが、ふと疑問が沸いた。どの参考書にも受動素子のみから成る線形回路網では一般的に相反定理が成り立つとだけ書いてあるが、ひょっとして相反定理が成り立たない例外があるから一般にと断っているのではないだろうかと。そう考えたら眠れなくなってしまった。参考書に書いてあるのを丸飲みしていただけで、実はよくわかっていなかったのである。

実際のところ、普通に思いつく範囲の受動素子のみから成る回路は相反定理が成り立つ可逆回路なわけである。マイクロ波送受信機に必ず使用されるサーキュレータが受動素子のみから成る非可逆回路である。サーキュレータは厳密には三端子対回路であるが、ひとつの端子対を終端すればアイソレータという一方向伝送の二端子対回路となる。原理は電磁気学理論の知識を必要とし電気回路理論の範疇を越えてしまうので触れないようにしているようだ。

ユニークな受動素子のみから成る非可逆回路を発明すれば特許になるかもしれない。実際検索すると特許がたくさん出てくる。

それと、二端子対回路は昔は四端子回路と呼ばれていた時代があったことを古書を色々調べると明らかになる。二端子対回路(Two Terminal Pair Network)なる用語と、これから学ぶ様々な表現は戦後になってフィルタ回路、真空管やトランジスタ電子回路、それにマイクロ波回路の研究が盛んに行われた70年代初頭にGuilleminとその弟子達によって現在の回路網理論の形に体系化されたようである("A century of electrical engineering and computer science at MIT, 1882-1982" MIT Pressより)

一方でそれ以前はどうだったかというと、主に集中定数型のフィルター理論の導入が目的だったようで、リアクタンス回路を前提としたものが古い本では顕著に見られる。戦前のドイツの理論電気学の本ではマイクロ波を扱うために分布定数回路を含めた形に拡張するところで終わっているものがある。この辺がまたしても戦争の傷跡を感じさせる部分でもある。レーダー技術に代表されるマイクロ波技術の研究に力を入れた米国が戦勝国となり、それに遅れたドイツや日本は敗戦国となった。未だに戦争勃発の兆候が見られると軍事力=技術力みたいな形でようやく技術振興が叫ばれるのは悲しいことである。

ドイツ仕込みの四端子回路の本は戦前戦後の日本の古書にもそっくりそのまま出てきている。特徴的なのは、二端子対の電圧の極性が現在のそれと異なっている点とインピーダンス行列、アドミッタンス行列それに四端子定数の3つの表記のみで戦後になって提案されたそれ以外の表記は出てこない点にある。I1が流入方向、I2が流出方向だとすると、外部の電圧源E1,E2は互いに逆極性になる。



またドイツの参考書ではインピーダンスパラメータが偏微分方程式になっていることに気づく。なるほど、一方入力変数を0固定として他方で偏微分すればよいわけで。

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&Z_{11}I_1+Z_{12}I_2\\<br />E_2&=&Z_{21}I_1+Z_{22}I_2<br />\end{eqnarray}

それぞれI1=0とI2=0としたケースでI2とI1で偏微分するとインピーダンスパラメータは

\begin{eqnarray}<br />Z_{11}&=&\left.\frac{\partial{E_1}}{\partial{I_1}}\right|_{I_2=0}\\<br />Z_{12}&=&\left.\frac{\partial{E_1}}{\partial{I_2}}\right|_{I_1=0}\\<br />Z_{21}&=&\left.\frac{\partial{E_2}}{\partial{I_1}}\right|_{I_2=0}\\<br />Z_{22}&=&\left.\frac{\partial{E_2}}{\partial{I_2}}\right|_{I_1=0}<br />\end{eqnarray}

ということになる。なんだ簡単じゃないか(´∀` )

本書の記述はどちらかというと古い伝統に基づいているものの現代知られている表現方法を一通り紹介している、次に学ぶフィルタ理論への準備という意味合いが強い。また高周波やマイクロ波回路で必須のSパラメータ表現は分布定数回路でも出てこない。これらはマイクロ波の専門の講義で扱うことになるからであろう。
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題名 投稿者 日時
   二端子対回路 webadm 2010-5-4 1:49
   » インピーダンス行列(Z行列) webadm 2010-5-4 2:58
     アドミッタンス行列(Y行列) webadm 2010-5-7 10:21
     ハイブリッド行列(H行列) webadm 2010-5-7 10:56
     伝送行列(F行列) webadm 2010-5-8 0:56
     二端子対回路の接続 webadm 2010-5-9 11:00
     影像パラメータ webadm 2010-5-10 12:46
     反復パラメータ webadm 2010-5-14 12:08
     理想変成器 webadm 2010-5-16 3:48
     理想ジャイレータ webadm 2010-5-16 5:27
     2等分定理 webadm 2010-5-17 12:55
     伝達イミッタンス webadm 2010-5-19 17:08

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