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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2010-5-8 0:56
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3086
伝送行列(F行列)
戦前から線形受動素子のみから成る伝送回路を縦続接続した系を解析するために考案されたのが伝送行列(transmission matrix)もしくは継続行列(chain matrix)と呼ばれるF行列(基本行列:Fundamentarl matrix)。

これまでの表現方法と端子対2の電流の向きが逆である。明らかに端子対1が入力で端子対2が出力ポートに相当することがわかる。



端子対の電圧と電流のペアを不定元とする以下の回路方程式で表される。

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&A E_2+B I_2\\<br />I_1&=&C E_2+D I_2<br />\end{eqnarray}

行列表記では

\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />E_1\\<br />I_1<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />A & B \\<br />C & D<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_2\\<br />I_2<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

F行列の要素A,B,C,Dが四端子定数(four terminal constant)と古くから呼ばれているもの。

入力端子対2を開放するとI2=0となるので4端子対定数は

\begin{eqnarray}<br />A&=&\left.\frac{E_1}{E_2}\right|_{I_2=0}\\<br />C&=&\left.\frac{I_1}{E_2}\right|_{I_2=0}<br />\end{eqnarray}

出力端子対2を短絡するとE2=0となるので残る4端子対定数は

\begin{eqnarray}<br />B&=&\left.\frac{E_1}{I_2}\right|_{E_2=0}\\<br />D&=&\left.\frac{I_1}{I_2}\right|_{E_2=0}<br />\end{eqnarray}

Aを開放電圧減衰率、Bを短絡伝達インピーダンス、Cを開放伝達アドミッタンス、Dを短絡電流減衰率と呼ぶ。

端子対2を短絡して端子対1に電圧源E1'を接続した場合に、端子対2に流れる電流がI2'だったとし、逆に端子対1を短絡し端子対2に電圧源E2'を接続した場合に、端子対1に流れる電流がI1'だとすると、相反回路であれば以下の関係が成り立つ。

\frac{{E_1}^\'}{{I_2}^\'}=\frac{{E_2}^\'}{{I_1}^\'}

従ってE1=E1',I2=I2',E2=0を先の伝送行列表現の式に代入すると

\begin{eqnarray}<br />{E_1}^\'&=&B {I_2}^\'\\<br />{I_1}^\'&=&D {I_2}^\'<br />\end{eqnarray}

従ってE1'/I2'は

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{{E_2}^\'=0}&=&B<br />\end{eqnarray}

一方E2=E2',I2=-I2',I1=-I1',E1=0を先の伝送行列表現の式に代入すると

\begin{eqnarray}<br />0&=&A {E_2}^\'-B {I_2}^\'\\<br />-{I_1}^\'&=&C {E_2}^\'-D {I_2}^\'<br />\end{eqnarray}

第一の式の両辺をBで除したものから、第二の式の両辺をDで除したものを差し引いてI2'を消去するとE2'とI1'の関係式が導かれる

\begin{eqnarray}<br />\frac{1}{D}{I_1}^\'&=&\frac{A}{B}{E_2}^\'-\frac{C}{D}{E_2}^\'\\<br />&=&\left(\frac{A D-B C}{B D}\right){E_2}^\'\\<br />\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{{E_1}^\'=0}&=&\frac{B}{A D - B C}\\<br />\end{eqnarray}

従って相反定理が成り立つためには以下が成り立つ必要がある。

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{{E_2}^\'=0}&=&\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{{E_1}^\'=0}\\<br />B&=&\frac{B}{A D - B C}\\<br />A D- B C&=&1<br />\end{eqnaray}

従ってAD-BCはF行列の行列式そのものなので

\left|F\right|=\left|\begin{array}A & B\\ C & D\end{array}\right|=A D - BC = 1

ということになる。

また対称回路の場合には

先のE1=E1',I2=I2',E2=0の回路方程式よりI2'を消去してE1'/I1'を導くと

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{E_2=0}&=&\left.\frac{B}{D}\right|_{E_2=0}<br />\end{eqnarray}

一方E2=E2',I2=-I2',I1=-I1',E1=0の条件の回路方程式からE2'/I2'を導くと

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{E_1=0}&=&\left.\frac{B}{A}\right|_{E_1=0}<br />\end{eqnarray}

従って対称回路では

\begin{eqnarray}<br />\left.\frac{{E_1}^\'}{{I_1}^\'}\right|_{E_2=0}&=&\left.\frac{{E_2}^\'}{{I_2}^\'}\right|_{E_1=0}\\<br />\left.\frac{B}{D}\right|_{E_2=0}&=&\left.\frac{B}{A}\right|_{E_1=0}\\<br />A&=&D<br />\end{eqnarray}

ということになる。

またF行列と逆の端子対を不定元とした表現をFi行列と呼ぶ。ただしZ行列とY行列や、H行列とG行列の時と違って、端子対の電流の向きがF行列の逆とするためFi行列はF行列の逆行列ではない。



上記の回路のFiパラメータによる回路方程式は

\begin{eqnarray}<br />E_2&=&A_i E_1+B_i I_1\\<br />I_2&=&C_i E_1+D_i I_1<br />\end{eqnarray}

Fi行列表記だと

\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />E_2\\<br />I_2<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />A_i & B_i \\<br />C_i & D_i<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_1\\<br />I_1<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

Fi行列がF行列の逆行列ではないという意味は、F行列の式でI1,I2を逆向き(負号付き)にしたものにF行列の逆行列を乗じて、I1,I2の負号を逆行列の要素側に転じたものであるためである。

Fパラメータの回路方程式をFiパラメータの時とI1,I2を逆向きにすると

\begin{eqnarray}<br />E_1&=&A E_2-B I_2\\<br />-I_1&=&C E_2-D I_2<br />\end{eqnarray}

行列表記では

\begin{eqnarray}<br />\left[\begin{array}<br />E_1\\<br />-I_1<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />A & B \\<br />C & D<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_2\\<br />-I_2<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

両辺にF行列の逆行列

\begin{eqnarray}<br />\left[F\right]^{-1}&=&\frac{1}{\left|F\right|}\left[\begin{array}<br />D & -B \\<br />-C & A<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

を乗じてI1,I2の負号を行列要素側に転じると

\begin{eqnarray}<br />\frac{1}{\left|F\right|}\left[\begin{array}<br />D & -B \\<br />-C & A<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_1\\<br />-I_1<br />\end{array}\right]&=&\left[\begin{array}<br />E_2\\<br />-I_2<br />\end{array}\right]\\<br />\left[\begin{array}<br />E_2\\<br />I_2<br />\end{array}\right]&=&\frac{1}{\left|F\right|}\left[\begin{array}<br />D & B \\<br />C & A<br />\end{array}\right]\left[\begin{array}<br />E_1\\<br />I_1<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

従ってF行列とFi行列の関係は

\begin{eqnarray}<br />\left[F_i\right]&=&\left[\begin{array}<br />A_i & B_i \\<br />C_i & D_i<br />\end{array}\right]=\frac{1}{\left|F\right|}\left[\begin{array}<br />D & B \\<br />C & A<br />\end{array}\right]\ne\left[F\right]^{-1}=\frac{1}{\left|F\right|}\left[\begin{array}<br />D & -B \\<br />-C & A<br />\end{array}\right]<br />\end{eqnarray}

ということになる。

Fi行列も同様に相反回路では

\left|F_i\right|=\left|\begin{array}A_i & B_i\\ C_i & D_i\end{array}\right|=A_i D_i - B_i C_i = 1

が成り立つ。

また対称回路では

\begin{eqnarray}<br />A_i&=&D_i<br />\end{eqnarray}

ということになる。証明は読者の課題としよう(´∀` )

Fi行列が用いられる場面は非常に限定的なので紹介している参考書もすくない。本書でも紹介すらされていない。

これで6種類の組み合わせが全部出そろったことになる。Z,Y,H,G,Fパラメータ間の相互変換表を示しているが、ここまで誤記誤植は見あたらなかったのが、ここに来てチョンボしてHパラメータとFパラメータの相反回路と対称回路の条件が入れ替わってしまっている。こうなると変換表の他の部分にも誤記があるのではないかと疑われるのは致し方がない。

ソフトウェアも一個バグを出しただけで開発者は依頼主から「他にもまだバグが潜んでいるのでは?」と一生涯疑われるのだからたまったものではない。ソフトウェアにバグはつきものドキュメントに誤記誤植はあって当たり前と前もって了解してもらえれば免責される。現実的に誤記誤植やバグを完全になくす責務など最初から負えるはずもない。そうした免責が許されるからソフトウェア開発はどんどん工賃の安い国で行われるようになる。当然バグがあっても依頼主は開発者に責任を問えるはずもない。自動車の制御ソフトだってそういう時代なのだから、日本人的な考えで開発者に無限責任ありと簡単に責任転嫁できない。依頼主にとって都合の悪い致命的なバグが無いか検査するのは今や依頼主側の責任となるのだから。電車の車両事故も安全運転の責務を持つ運転手が無限責任を負い経営者が免責されるというのもおかしい話しである。そうだとすれば運転手の方が経営者よりも報酬が多くなければならない。

ただ昨今のトヨタ叩きによって自動車メーカー各社が一斉にMicrosoftのように製品に重大な欠陥や特定ユーザーの用途に不適合であることが購入後に発見された場合に、製品購入代金以上の賠償責任を負わないという免責事項を購入時の契約書に忍び込ませたとしたら世界経済への影響は計りしれない。

余談が過ぎたようだ。

本書には他にも代表的な二端子対回路網のパラメータが表になって示されている。内容を鵜呑みにする前に誤りが無いか確認するのは読者の責務である、caveat emptor!

P.S

Fパラメータの条件を間違えてI1=0としていたが、I2=0の誤りだった...orz
(2010/05/26)
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