ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
Main Menu
Tweet
Facebook
Line
:-?
フラット表示 前のトピック | 次のトピック
投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2011-7-18 23:53
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
電力と電圧のdB
次は一般的なdBに関する常識を問う問題。

1[μW]を基準にすると1[W]は何[dB]になるか、また1[μV]を基準にすると1[V]は何[dB]か?

というもの。

よくある引っかけ問題。dBの定義を良く理解している必要がある。

元来はdBは電力比の常用対数値であるので、電圧比を扱う場合にはちょっと注意が必要だ。

\begin{eqnarray}<br />{dB}&=&10 log_{10}\left|\frac{P_1}{P_2}\right|=10 log_{10}\frac{1}{10^{-6}}=10 log_{10}10^{6}\\<br />&=&60[dB]<br />\end{eqnarray}

ということになる。良く高周波回路で出てくるのに1mWを基準にした[dBmW]という単位が登場する。

さて電圧の場合はどうしたものだろうか。

dBのちゃんとした定義を探そうとしたら驚愕の事実が発覚。なんと電気学会編の電気工学ハンドブックやオーム社の電子工学ハンドブックにはdBがまったく載っていなかった。完璧なまでにスルーしているのである。

おそらくオリジナルのベル研究所の論文とか図書をあたれば良いのだろうけど、ベル研究所はとっくの昔に消滅して今では存在しない。ベル研究所から出ていた出版物も大企業の多くがその時点で廃棄している。

通信システム工学ハンドブックにだけはさすがにちょっと載っていた。といってももう注釈欄にたった一行でしか書いてない申し訳程度のもの。

dBはもともと電力比の常用対数であるが、入力と出力のインピーダンスが同一である場合にのみ電圧比や電流比に関して以下が成り立つ

\begin{eqnarray}<br />\alpha_{dB}&=&10 log_{10}\left|\frac{P_1}{P_2}\right|\\<br />&=&10 log_{10}\left|\frac{V_1 I_1}{V_2 I_2}\right|=10 log_{10}\left|\frac{V_1^{2}/\cancel{R}}{V_2^{2}/\cancel{R}}\right|=10 log_{10}\left|\frac{\cancel{G}V_1^{2}}{\cancel{G}V_2^{2}}\right|\\<br />&=&10 log_{10}\left|\frac{V_1^{2}}{V_2^{2}}\right|=10 log_{10}\left|\frac{I_1^{2}}{I_2^{2}}\right|\\<br />&=&20 log_{10}\left|\frac{V_1}{V_2}\right|=20 log_{10}\left|\frac{I_1}{I_2}\right|<br />\end{eqnarray}

これは我流だが、ちゃんとした解説はやはり手元にあるベル研究所がかつて出版していた「Transmission Systems for Communications(Fourth Edition)」の邦訳本「通信システム」の第二章に書かれていた。

それによるとデシベルの定義は既に承知の通り

\begin{eqnarray}<br />D&=&10 log\left(p_1/p_2\right)\,\,[dB]<br />\end{eqnarray}

とあり、logは常用対数でp1,p2は同単位の電力値であることから、デシベルは2つの電力値の振幅比を常用対数を10倍したものということになる。

ここで入力と出力が終端された二端子対回路モデルを考える。



ベル研究所の記述にはちょっと誤解を招く表現がある(邦訳が不適切なのかもしれない)ためそれはちょっと割愛する。入力と出力のインピーダンスZk=Rk+jXkによって消費される電力pkは

\begin{eqnarray}<br />p_k&=&\frac{E_k^2}{2 R_k\left(1+X_k^{2}/R_{k}^{2}\right)}=\frac{1}{2}R_k I_k^{2}<br />\end{eqnarray}

と等しいとある。ところでこの式はどうやって導出したのだろうかという疑問がわく。上の回路でのインピーダンスZkで消費される有効電力は入力と出力がそれぞれインピーダンス整合されているとすれば

\begin{eqnarray}<br />p_k&=&\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2}\left(E_k \overline{I_k}+\overline{E_k}I_k\right)\right)\\<br />&=&\frac{1}{4}\left(\frac{E_k\overline{E_k}}{\overline{Z_k}}+\frac{\overline{E_k}E_k}{Z_k}\right)\\<br />&=&\frac{1}{4}\left(\frac{Z_k\left|E_k\right|^2+\overline{Z_k}\left|E_k\right|^2}{\overline{Z_k}Z_k}\right)\\<br />&=&\frac{1}{4}\left(\frac{2 R_k\left|E_k\right|^2}{R_k^{2}+X_k^{2}}\right)=\frac{1}{2}\left(\frac{R_k\left|E_k\right|^2}{\left|Z_k\right|^2}\right)\\<br />&=&\frac{\left|E_k\right|^2}{2 R_k\left(1+X_k^{2}/R_k^{2}\right)}=\frac{1}{2}R_k\left|I_k\right|^2<br />\end{eqnarray}

ということだった。従って上記の式を元のデシベルの式に適用すると

\begin{eqnarray}<br />D&=&10 log\left(p_1/p_2\right)=10 log\left(\frac{\frac{\left|E_1\right|^2}{2 R_1\left(1+X_1^{2}/R_1^{2}\right)}}{\frac{\left|E_2\right|^2}{2 R_2\left(1+X_2^{2}/R_2^{2}\right)}}\right)\\<br />&=&10 log\left(\frac{\left|E_1\right|^2}{\left|E_2\right|^2}\right)-10 log\left(\frac{R_1}{R_2}\right)-10 log\left(\frac{1+X_1^{2}/R_1^{2}}{1+X_2^{2}/R_2^{2}}\right)\\<br />&=&D_E-D_R-D_X\\<br />D_E&=&20 log\left(\left|\frac{E_1}{E_2}\right|\right)=20 log\left(\left|\frac{V_1}{V_2}\right|\right)\\<br />D_R&=&10 log\left(\frac{R_1}{R_2}\right)\\<br />D_X&=&10 log\left(\frac{1+X_1^{2}/R_1^{2}}{1+X_2^{2}/R_2^{2}}\right)<br />\end{eqnarray}

ということになる。今日多くの書物では書かれていない以下のことが書かれている。

引用:
E1とE2の差がたとえば20dBであるということはいかなる意味であろうか。判断する条件に次ぎの3つの場合があると考えられる。

1,Z1=Z2

この場合、DR=DX=0,D=DE=20dBで、その意味は明らかである。

2.Z1≠Z2、ただし(X1/R1)=(X2/R2)

これはX1=X2=0のときに起こることが多い。DEはdB表示の電圧計で測れるが、指示値よりDRを減じる修正が必要である。

3.(X1/R1)≠(X2/R2)

R1=R2であっても明らかにZ1≠Z2である。一般には条件3のときはDRとDXの両方を考慮の対象としなければならず、これらをDEから減じることによりDが求まる。


条件2および条件3のとき、電圧または電流比をdB単位で表すと、誤解を生じることがある。レベル情報を得たものが、その値が無修正値DEでなくDであることを確認したいときは、上記分類のどのタイプに属するかよく知る必要がある。


まったくもって重要かつ大切な上記の事柄が、現在出版されている電気や電子回路の書籍では割愛されている点に正直驚いた。もはや先人の知恵など骨董無用という判断だろうか。

こうした背景説明を一切はぶいて都合の良い事柄だけを抜き出すと、通信システム工学ハンドブックや今日のどの教科書にも載っている以下の不親切な定義になってしまう。

\begin{eqnarray}<br />dB&=&10 log_{10}\left(P_2/P_1\right)\\<br />dB&=&20 log_{10}\left(V_2/V_1\right)<br />\end{eqnarray}

これじゃまったく先人の考えが伝わってないことは明白である。

まあ、残りの問題に対する答えはZ1=Z2であると前提とすれば

\begin{eqnarray}<br />dB&=&20 log_{10}\left(\frac{1}{10^{-6}}\right)=20 log\left(10^{6}\right)\\<br />&=&120[dB]<br />\end{eqnarray}

ということになる。これも無線測定関係で1μVを基準としたdBμVという単位が存在する。
フラット表示 前のトピック | 次のトピック

題名 投稿者 日時
   フィルタ演習問題 webadm 2011-7-18 22:55
     減衰量αの単位 webadm 2011-7-18 23:12
   » 電力と電圧のdB webadm 2011-7-18 23:53
     電力比、電流比 webadm 2011-7-19 4:48
     RL並列回路 webadm 2011-7-20 9:12
     定K型低域フィルタの設計 webadm 2011-7-25 5:11
     続:定K形低域フィルタの設計 webadm 2011-7-28 4:35
     続々:定K形低域フィルタの設計 webadm 2011-7-28 8:42
     定K形高域フィルタの設計 webadm 2011-7-28 20:30
     続:定K形高域フィルタの設計 webadm 2011-7-29 8:25
     定K形帯域フィルタの設計 webadm 2011-7-29 8:37
     続:定K形帯域フィルタの設計 webadm 2011-7-31 0:28
     対称定K形フィルタ webadm 2011-8-6 9:22
     対称π形高域フィルタ webadm 2011-8-29 2:14
     対称T形帯域フィルタ webadm 2011-8-30 16:35
     3素子フィルタ webadm 2011-8-31 17:17
     続:3素子フィルタ webadm 2011-9-4 22:16
     反定K形フィルタ? webadm 2011-9-10 19:28
     対称格子形回路 webadm 2011-9-12 4:11
     対称T形低域フィルタ webadm 2011-9-17 9:39
     並列誘導M形フィルタ webadm 2011-9-17 19:18
     誘導M形フィルタへの変換 webadm 2011-9-18 0:41
     誘導M形低域フィルタの設計 webadm 2011-9-18 5:37
     続:誘導M形低域フィルタの設計 webadm 2011-9-18 18:57
     続:誘導M形フィルタへの変換 webadm 2011-9-18 21:23
     抵抗減衰器の設計 webadm 2011-9-18 22:01
     続:抵抗減衰器の設計 webadm 2011-9-20 1:09
     続々:抵抗減衰器の設計 webadm 2011-9-20 5:11
     まだまだ:抵抗減衰器の設計 webadm 2011-9-20 6:06
     対称ブリッジT形抵抗減衰器 webadm 2011-9-20 6:18

投稿するにはまず登録を
 
ページ変換(Google Translation)
サイト内検索