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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2011-9-18 22:01
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
抵抗減衰器の設計
フィルタの演習問題ももう残りすくなくなってきた。

次は与えられた仕様を満足する抵抗減衰器を設計する問題。

以下の回路で、



(1)電圧減衰比k(=E1/E2)を実現するためのT形抵抗減衰器のR1,R2,R3を求めよ。

(2)RS=RL=Rとなる対称T形抵抗減衰器の場合のR1,R2,R3はどうなるか

というもの。

見通しよく解くために、T形抵抗減衰器の影像インピーダンスをそれぞれRS,RLと置くと影像パラメータを用いて以下の様に等価電圧源回路として見ることにする



すると仕様の電圧減衰比kは



ということになる。すなわちkは抵抗減衰器回路の伝送行列の固有値そのものであることになる。

T字形抵抗減衰器の伝送行列から影像パラメータを求めると



ということになる。このままでは未知数R1,R2,R3が解けないので、影像インピーダンスがそれぞれRS,RLとなる条件を付け加える必要がある。

影像インピーダンスの式は非対称回路なので簡単な開放及び短絡駆動点インピーダンスから導くことにする



これらの関係式をR1,R2,R3に関する連立方程式として解くと

実は簡単には解けない( ´゚д゚`)えーーー

べき項が消去できないためMaximaでは解けないのだ

この問題は以下の非線型連立方程式を解くということにつきる。



もっと簡単な方法が他にありそうだが。

kに関する式だけべき乗してもべき項が消えないので、これを別のアプローチでべき項のない関係式を得るというのはどうだろう。

具体的にはオーソドックスに回路方程式をたててE1/E2=kであるとするもの。これならきっとべき項は現れないはず。

回路方程式をたてるために、入力と出力の電流をそれぞれI1,I2とすると、





これをI1,I2,E1,E2,kに関する連立方程式として解くと



ということになる。

予想通りべき項を含まない式が得られた。

これとRL,RSに関する影像インピーダンスの式からR1,R2,R3を解くと



ということになる。

なんですかこれは(;´Д`)

どうやら違う道に迷い込んで仕舞ったらしい。どこをどう間違えたのだろう。

回路方程式から導いた電圧減衰比の式にはRLの項が含まれているので、これを伝送行列から求めた影像インピーダンスの式を代入してみると



伝送行列から求めたものとはちょっと違う式になってしまう。

袋小路に迷い込んだら前提を疑ってみたほうがよい。

どうやら電圧減衰比の解釈に違いがあるようだ。

伝送行列から求めた影像伝送量は厳密には見かけ上の回路への流入電力と流出電力の比の平本根である。



従って影像伝送量(e^θ)=電圧減衰比(k)となるのは入力と出力の影像インピーダンスが等しい場合(RS=RL)、すなわち対称回路であることが前提となる。

それで回路方程式から導いたk=E1/E2と伝送行列から導いた影像伝送量e^θが違うわけである。

最初の演習問題で紹介したベル研究所の書物には、上記の事が注意点として警告されていたのだが、すっかり忘れてしもた(;´Д`)

ということで出題者はそのことを意図していたのかどうかはわからないが、フィルタ演習問題とすれば、題意の電圧減衰比は影像伝送量の意と解釈すべきであろう。なまじ(E1/E2)とか書いてあるので道を間違ってしまう。

オーディオ回路に例えれば、入力インピーダンスが600Ωのマイク入力を増幅して出力インピーダンス8Ωのスピーカーに出力するときの増幅率は入力電圧と出力電圧の比ではなく、入力電力と出力電力の比の平方根で表すのが正しいというのは容易に理解できるであろう。

まあこれも手を動かさなければ永遠にわからなかっただろう。

というわけで問題は振り出しに戻って、複雑な非線形連立方程式を解くということになる(;´Д`)

まてよ、kをe^θの式で置き換えればいいじゃん(´∀` )



魔法の花火のように次々と係数が消滅して式が簡単になっていく様子を見るのは気持ちがいい(´∀` )

これで著者と同じ結果が得られたことになる。著者のkをe^θに置き換えたようなものである。

従って、RS=RL=Rとすれば対称回路においては



ということになる。

なんだ著者のアプローチよりずっと簡単じゃないか(´∀` )

抵抗減衰器を甘く見たのがよくなかった、上巻の時の抵抗ラダー回路の時みたいに寝込まずに済んだのが幸い。あれからだいぶ進歩したのを感じる。

P.S

影像インピーダンスもわざわざ伝送行列からでなくても、オーソドックスな回路方程式から導出することができる。

出力端にRLを接続したときの入力端から見た駆動点インピーダンスがRSに等しく、逆に入力端をRSで終端した場合に、出力端から見た駆動点インピーダンスがRLと等しくなるので



という関係が成り立つ。これをRL,RSに関する連立方程式としてMaximaで解くと



と解ける。Maximaでは上のRLの式をどうしても意図した通りにrefactoringできないので手で整理する必要があった。

実はMaximaにバグがあるのをこの時に発見。

以下の様にsolveを実行すると、第一変数の解が誤る。

solve([(R2*RL+R1*RL+R2*R3+R1*R3+R1*R2)/(RL+R3+R2)=RS,((R3+R2)*RS+(R2+R1)*R3+R1*R2)/(RS
+R2+R1)=RL],[RS,RL]);



二つ目の解のペアのRSの式はどう考えてもおかしいだろう。

第一変数と第二変数の指定を以下の様に入れ替えると正しい結果が得られる

solve([(R2*RL+R1*RL+R2*R3+R1*R3+R1*R2)/(RL+R3+R2)=RS,((R3+R2)*RS+(R2+R1)*R3+R1*R2)/(RS
+R2+R1)=RL],[RL,RS]);



変数指定を逆にするだけで結果が違うというのもおかしい。

それぞれの結果の最後の解は正しくMaximaで意図した通りrefactoringしてくれる。

元となるRL,RSの関係式の一方を他方に代入して1変数多項式として解けば間違いなく正しい結果が得られることからバグと認定。
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題名 投稿者 日時
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