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webadm
投稿日時: 2012-8-20 2:22
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3092
Laplace変換の諸性質
Laplace変換を使いこなすには予め諸性質を知っておいた方が躓かずに容易に難局を切り抜けることができることが多い。

大抵のLaplace変換のテキストではLaplace変換と逆変換の公式を提示した後、諸性質を提示している。

Laplace変換のテキストや市販の公式集とかに載っている変換表はこうした諸性質から導かれる。

線型性

Laplace変換と逆変換は一種の線型作用素である。すなわち以下の関係が成り立つ。



逆変換についても同様に



ということになる。

これはLaplace変換の公式と逆変換の公式に代入することで確かめることができる。

これを数学的帰納法によって任意のn個の関数の線型結合に対して拡張すると



ということになる。

著者も言っているように、時間領域で重ね合わせの理が成り立てば、同様にs領域でも重ね合わせの理が成り立つということである。実際にはOhmの法則、Kirchhoffの法則も成り立つ。つまり線型則はどちらの系でも適用されることになる。まあこのことは抵抗演算子についてHeavisideが指摘していたことではあるが、Heaviside自身はその証明は数学者の役目だということにした。

対称性

対称性とはいったいなんだろうという疑問が出てくる。テキストによっては「スケール変更定理」と呼んでいる。

時間領域の関数f(t)があってそのLaplace変換F(s)が存在する場合、τ=t/aと置き換えた場合、f(τ)=f(t/a)のLaplace変換は一体どうなるか? ここでaは任意の正の実数とする。

f(t)に関してLaplace変換が存在するのだから、f(τ)に関してもLaplace変換が存在するのは予想できる。問題はどう変化するかである。

変数変換によってf(τ)のLaplace変換は



ということになる。

また逆も真なりで



となることも容易に確かめることが出来る。

つまり時間軸スケールを拡大縮小するとs平面の写像はそれとは反対にs平面上のスケールが縮小拡大するということになる。


推移定理

定理と付いているが、元々はHeavisideの演算子法でのshifting定理に起源を持つ。

時間軸関数f(t)のLaplace変換がF(s)である場合、f(t-a)と時間軸上に右シフトした関数のLaplace変換はどうなるかというもの。

これも先ほどと同様に変数変換によって



ということになる。すなわち、時間軸上にaだけ右シフトした場合、元のLaplace変換F(s)にe^-saを乗じたものになる。

また逆に時間領域関数f(t)に指数関数e^-atを乗じたもののLaplace変換は



ということになる。すなわちs関数をs平面の実軸上でaだけ左シフトした場合、そのLaplace逆変換は元の時間領域の関数に指数関数e^-at乗じた形になるという対称性を持つ。

時間微分

これはLaplace変換のところで書いてしまたので割愛。

著者が書いているように、電気回路では2階以上の導関数を扱うことは限られているので(その場合でも連立一階微分方程式に書き直すことができる)n階については暗記する必要はない。

時間積分

これも同様にLaplace変換のところで書いてしまったので割愛。

複素微分

著者は書いていないが、時間微分があるなら対称性としてsでの微分があるので書いておく。

時間領域の関数f(t)のLaplace変換がF(s)であるとき、その導関数dF(s)/dsのLaplace逆変換はどうなるかというもの。



ということになる。

これは電気回路というより、もっと高度で複雑な高周波回路やアンテナ理論で利用される。

複素積分

複素微分との対称性により複素積分についても考えられる。

f(t)のLaplace変換がF(s)である場合、その複素積分関数に対応する時間領域関数はどうなるか

複素積分と書いてあるが、実はsから∞の定積分である



ということになる。

複素積分といいつつ、定積分なのはどのテキストも一緒だ。その理由を書かずに上記の結果のみを提示しているか、複素微分については証明しているものの複素積分についてはまったく触れずに華麗にスルーしている(Stanford大学等)かどちらかだ。それにLaplace変換対の表を提示しているサイトが沢山あるが、その中には大分間違いが多い。特に∫e^-st dsの積分範囲が[0,∞]と間違っているものなど鵜呑みは禁物だ。

唯一"ADVANCED ENGINEERING MATHEMATICS(WILEY INTERNAL EDITION)" ERWIN KREYSZIG Jhon Wiley and Sons, Inc. には以下の様に説明されている

引用:

Integral of Transforms
Similarly, if f(t) satisfies the conditions of the existence theorem in Sec. 6.1 and the limit of f(t)/t, as t approaches 0 from the right, exists, then for s > k.
hence
In this way, inetegration of the transform of a function f(t) corresponds to the division of f(t) by t.


当然ながらf(t)に対してそのLaplace変換F(s)が存在し、f(t)/tでtを実軸上の右から原点の0へ近づけていった場合に極限値が存在する場合、s > kについてとあるが、kはLaplace変換の存在十分条件で出てきた指数位であることがSec 6.1に存在定理として書いてある。これで納得できたかもしれない。

先の複素微分と見事な対称性があるので憶えやすい。

初期値定理

あまり使われそうもないが、Laplace変換の性質として知られているもの。

導関数のLapalce変換は既に学んだ通り



であった。ここでLaplace変換したs領域の関数式に時間領域の原始関数の初期値f(0)が現れるのに注目すると、上のLaplace変換で予めsを無限大に極限移行すれば



ということになる。すなわち未知関数のLaplace変換F(s)にsを常時てsを無限大に移行すれば未知関数の初期値f(0)が得られるというもの。まあ未知関数のLaplace変換を先に得る必要があるので、あまり使う機会はないかもしれない。昔の人は計算機が無いので、計算なしに解のだいたいの特長を知るのに必至だったのである。

最終値定理

これは前述の初期値定理よりも適用条件が限定されるので更に今では使われない。

やはり時間領域の導関数のLaplace変換が着眼点になる。今度はsを0に移行すると



ということになる。ただしこの定理はf(t)が最終値を持つ場合に限られる。周期関数のように最終値をもたないで永遠に変化し続ける場合には適用できない。

たたみこみ積分

上巻でFurier変換を学んだときにもたたみこみ積分のFurier変換を学んだ。それと同じ性質がLaplace変換にもある。

時間領域の関数fとgがそれぞれLaplace変換FとGが存在するとすると、そのたたみこみ積分のLaplace変換は



ということになる。すなわちf(t)*g(t)のLaplace変換はそれぞれの関数のLaplace変換の積となる。

対称的にF(s)*G(s)のLaplace逆変換はF(s)とG(s)のたたみこみ積分を



と定義すると。



ということになる。

周期関数

時間領域で関数fが周期Tで繰り返し現れる場合のLaplace変換はどうなるのだろう?

単純に考えれば、繰り返し関数fの最初の一周期分だけ切り出せば、その周期Tだけ時間シフトした関数との重ね合わせと考えられるので、既に学んだ推移定理が使える。

繰り返し関数fの最初の一周期区間[0,T]のLaplace変換は



ということになる。これは通常のLaplace変換のように定義区間[0,∞]ではないことに注意。既知の非周期関数の一部を繰り返すような周期関数の場合には既知の非周期関数のLaplace変換公式がそのまま使えないことに注意。

従って繰り返し関数のLaplace変換はシフト定理と重ね合わせの理で



ということになる。

P.S

数学的に厳密にこれらの性質を証明しようとすると難儀なので、おおざっぱな式の導出にとどめた。大抵の市販の本もその多かれ少なかれ厳密ではない。式を暗記するよりは簡単に導出できる道筋を憶えておくほうが大事だ。そうすると式の意味を正確に理解し記憶違いを無くすことができる。

Laplace変換で関数を一定区間だけ切り出すには依然としてHeavisideの階段関数を一般化した単位ステップ関数が使われる。単位ステップ関数を時間微分するとDiracのδ関数になるが、これは19世紀には無かった超関数なので、必要な時だけにとどめよう。デジタル信号処理のように離散的な関数を扱うような場合には必須になる。

P.S

上の二重積分では縦横無尽に積分順序を変更していることに注意。積分順序の変更は厳密にはFubini-Tonelliの定理が成り立つ場合にのみ可能である。このことは20世紀に入ってから示されたので19世紀ではまだ曖昧だった。
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題名 投稿者 日時
   Laplace変換とその応用 webadm 2012-8-15 1:02
     Laplace変換 webadm 2012-8-16 3:52
     Laplace逆変換 webadm 2012-8-16 4:37
   » Laplace変換の諸性質 webadm 2012-8-20 2:22
     部分分数展開 webadm 2012-8-25 23:18

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