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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2014-1-26 1:37
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3089
一般の体積電荷
次も体積電荷の問題だけど、図も描けない一般化された体積電荷に拡張する純粋に理学的な問題。

有限な範囲内の同符号の電荷分布から十分遠方の点に生じる電界は、電荷が一点に集まったとしたときの点電荷から生じる電界によって近似されることを示せ。

というもの。

こういうのは学校で試験に出やすいよね。まずもって問題文の意味が理解できない人は他のもっと答えられそうな問題を先にやったほうがいい。

問題文では電荷分布に関して以下の2つの前提しか与えていない大変緩やかなもの。

・電荷分布は有限な範囲内に制限される
・電荷はすべて同符号である

今までの問題というと具体的に図が描けるような特殊なケースがほとんどだったけど、ここまで条件を緩やかにすると一般性をかなり保てるようになる。言い換えれば抽象的色彩が強まったと言える。

こうした問題に臨むには数理には数理でしか戦えないので、純粋数学のテクニックを駆使する必要がある。

問題文ではそれ以前の問題で典型的だった、σのような分布密度とかいうのも定義されていない。数理的な問題を扱うときに最もやってはいけないのは、書いてないからといって読む側が勝手な定義を追加していってしまうことである。どうしても一般性の高い問題提示の場合には、問題に臨む側としてはもっといろいろ具体的な条件で考察範囲をどんどん絞り込んでいきたいところ。与えられていないからといって書かれていない制限事項を勝手に付け加えるべきではない。

たとえば分布密度に関してはなにも制限が与えられていないので、以前の問題のように電荷密度を一様であると仮定して考えるのはよろしくない。暗黙のうちに分布密度が空間の場所によって変わるという一般的なケースをすべて考察対象から除外してしまうことになる。それで少し具体的に見えてくるものがあるかもしれないが、それはすべての可能性のほんの一握りの特殊な例に過ぎない。

ここでは電荷分布は一定であるとは限らない(そういうふうに条件がつけられていない)のだから、空間座標を変数とするスカラーポテンシャル関数と定義しても一般性は失われない。

次に必要なのは、分布範囲が有限な範囲に限られるというのがかなり自由度が高すぎて積分もできない。しかし有限は範囲に収まるということは、どこからどこまでという境界が存在するということの言い換えであると考えてもよいだろう。それを体積電荷の境界(Boundary)としてBでもよいし体積(Volume)そのものでVと定義しても一般性は失われない。範囲が有限なのだから、電荷が存在する座標に上限と下限がそれぞれ存在しそれは有限(すなわち無限大よりは小さい)ということと同値である。

境界がひとつの閉域だけから成るという勝手に仮定するのも禁物である。範囲は有限だが、それらがみんなつながっていてひとかたまりである必要はまったくない。宇宙空間の様に互いに離ればなれにご近所同士というのもあり得る。範囲が有限だといってもどんどんと遠くに離れれば一点にしか見えなくなる。

まずもって電荷密度ρを3次元直行座標pの関数とし、有限な領域V内だけ電荷が分布しているとすると



と定義することができる。

ρは3次元の座標空間の元pを一次元空間(スカラー)に写す写像であると考えてもよい。

従って領域V内の無限小体積dV中に含まれる無限小電荷量dqは



ということになる。

従って領域V内に分布する総電荷量qは



ということになる。

一般的には領域内の電荷分布密度は一様ではないので、以前の計算問題のように、電荷密度が定数ではないから積分の外に出すことはできない。電荷密度が定数というのはこれの特殊なケースだということになる。

ちょうど電荷密度がσで一定という場合には、密度関数は以下の様に定義されることになる。



そうするとσが積分の外に出せて



ということになる。

これは領域Vの体積と電荷密度定数σの積ということになる。これは特殊なケースということで一端忘れよう。

次に点pにある無限小電荷dqが十分離れた点Pに作る無限小電位は



ということになる。

従って領域V全体に分布する電荷によって点Pに作られる電位は



ということになる。

従って領域Vに分布する電荷が点Pに作り出す電界は



ということになる。

こっからどうすんだこれ(´Д`;)

積分と微分の順序は一般的に交換できないと学校で教わったよね。一度教わるともう怖くて交換とかできないよね。でも何故交換できないかは詳しく教わってないよね(そんな時間なかったし)。

で良く見ると、上の被積分関数の中で分子のρ(p)は点Pの位置には依存せずに定義されているよね。そうすると点Pに依存するのは分母の距離だけ。なのでx,y,zに関する偏微分はξ、η、ζの積分と順序が交換できることに。



ということになる。

厳密に細心の注意を払うと、被積分関数はP=pに特異点があり、そこでは微分ができない。幸いにして、p=(ξ、η、ζ)が走る範囲は点Pから十分離れている領域V内だけなので被積分関数は領域V内で微分可能で連続であるから微分と積分の順序交換しても結果は変わらない。

さてこっからどうすんだ(´Д`;)

頭の中で考えるだけだとはっきりしないのでへたくそな図を添えると



ということになる。

どっか遠くに原点Oがあって、そこからの距離ベクトルPとpを考え、pは体積電荷が分布している領域Vを走るという想定。

点Pの近傍で遠方の体積電荷が与える電界が生じるのは明らかだが、体積電荷の総量が遠方の一点にあると近似できるためには、その一点がどこかに存在しないとならない。

P-pの平均値をとればなんとなく領域Vの中心になりそうだが、電荷分布の中心というのは体積電荷密度ρ関数に依存するので、体積の中心とは一般に一致しない。

座標の原点を点Pに移動してみると





ということになる。

体積電荷密度の偏導関数との畳み込み積分みたいな形式になる。
これは元の座標系で伴っていた特異点の問題が無いだけ易しいがこの問題に関してはその特異点が領域Vの範囲外なのであまりメリットがない。



原点Oから距離ベクトルRの点に領域V全体に分布する電荷の中心が存在すると仮定して、それが点Pから距離ベクトルRだけ離れているとすると、題意は以下の命題を証明することと同意である。



そういうことだったのね( ´∀`)

でもわがんね(´Д`;)

図で見ると点Pと領域Vが十分遠く離れていれば直感的に



なのは判るんだけどね。

直感だけでは証明にならないし。

やっとこさ分厚い微積分の本を調べて立体の重心の求め方を学んだ次第。著者の解答とはだいぶ違うぞ。



どうもどれも筋が悪そうな感じがするよね(´Д`;)

結局最後の図でR→0に極限移行(座標変換)すると良い感じに



点Pに生じる電界は二項展開により



ということになる。分母が|r|の5乗以上になる項は|r|が十分領域Vから離れているとすれば無視できるとして、残る第二の積分項は良くみると重心を求める式の分母に現れてきた積分項を含んでいる。

つまり座標の原点を電荷分布の重心とすれば、第二の積分項は原点と重心が一致するので消滅することになる。

従って



ということになる。

つまり電荷分布の中心に領域V内の電荷総量の点電荷が置かれたものと近似することができることになる。目的は達せられた。

証明に辿りつくための重要なステップが複数あるので途中で諦めかけたが、諦めなくてよかった。

因みに著者の解答の式に誤植があり第二積分項に体積電荷密度関数ρ'が欠如している点を注意しておく。

P.S

この種の一般化問題は古いテキストでは滅多に見かけない。おそらく20世紀に入ってから原子モデルや分子モデルが考え出された際に重要な概念として定着したものと思われる。どちらかというと有機化学や薬学とかでは必修の概念であるため最初の講義で登場させる必要があったと思われる。

問題文で気になるのは、分布している電荷が同符号と断っている点である。現実には正の電荷があればどこかに負の電荷が存在するはずなのだが、そうすると正と負のそれぞれの電荷分布を考えなければならなくなる。一般には正と負の電荷分布の中心は一致しない場合がほとんどで、最初に学んだ電気双極子が現れることになる。つまり歴史的には順序が逆で、分子化学の領域から電気双極子がどうしても現れてしまって、それが定式化されて先に教えられるようになったという感じがする。

分子化学では良く知られているように水(H2O)の分子は正と負の電荷分布が非対称である。なのでマイクロ波で揺さぶってやると高速で振動し熱を持つ。これが電子レンジの原理だったりする。これも電気双極子で考えると納得が行くことになる。その他にも同じように非対称な電荷分布を持つ分子が沢山存在して、その性質を理解するに電磁気学の理解が不可欠である。

P.S

よくよく考えると、座標変換したのは良いけれども元の体積電荷密度関数が新しい座標の関数ρ'(r')とでもしなければいけない気がするがちょっとインチキくさい。最初から電荷分布の重心を座標の原点として体積電荷密度関数もその座標系で定義すれば問題はない。少なくとも問題文では座標系の取りかたとかに関して何も制約を与えていないので最初からそうすればよかったのである。
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題名 投稿者 日時
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