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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2016-1-4 22:15
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3086
Re: 自分の数学を持つことの勧め
ベクトル解析やテンソル解析をひもとく書では共変(covariant)や反変(contravariant)というような名前のついた二種類のベクトルやテンソルが最初から登場することに困惑することがある。

それに関連して双対(dual)とか相反(reciprocal)とか聞き慣れない用語が出てくる。

これらは手元の古い数学事典にはいずれも掲載されていない。もっと新しい改版には追加されているかもしれないが。

それらは電磁気学のテキストではほとんど見当たらない。電磁気学で使われるベクトル解析をちゃんと学ぼうとしてベクトル解析の専門書を読むと冒頭から出てくるので困惑するというわけである。

おそらくそれら専門書ではそうした用語を導入した意図が隠されたまま天下り式に定義が与えられるので困惑を招いていると思われる。

それを解消するには自分でそれらの概念を再発見するしかない。

電磁気学で使われるベクトル解析でそれらのへんてこな用語が登場しないのは特種な直交座標系だけを使用しているためである。

これまでの議論でも終始、座標系は直交座標系に限定していたように、電磁気学では直交座標系の方が都合がよい。

直交座標系では互いに直交し合う単位ベクトルの組を基底として使用して任意のベクトルをその線形結合で表す。

基底は互いに直交しているので、特定の基底に関するベクトルの成分を割り出すには、ベクトルとその基底の内積を計算すればよいことになる。







これが一般の斜交基底の場合(線形独立だが互いに直交していることも単位ベクトルである必要もない)にも依然として任意のベクトルをそれらの基底の線形結合で表されるが、成分を直交座標系の様に基底とベクトルの内積で表すことはできない。何故なら基底が必ずしも互いに直交しているわけではないから。







ではどうやって成分を割り出せばよいのだろうか?

それには基底(f1,f2,f3)のうち2つと互いに直交し、残りの1つとの内積が1になるような基底(g1,g2,g3)を作り、それらと元のベクトルとの内積をとれば、元の基底に関する成分を抽出できることに気付く必要がある。







ということになる。

それではもう一つの基底(g1,g2,g3)はどうやって導かれるのだろうか?

上の新旧基底間の内積の定義からそれぞれの基底の成分の関係は



ということになる。

これから、線形代数を用いて新しい基底の成分は元の基底の成分を並べた行列の逆行列を転置したものと同じだという結果が得られることが判る。



この関係は逆も真なりで、一方の基底が判ればもう一方の基底も一意的に決定することになる。この対となる基底を双対基底(dual basis)と言う。

上の結果があっているか計算で確認してみると







ということで確かめることができた。

ところで上で出てきた行列式 D は基底(f1,f2,f3)のスカラー3重積と一致する。



従って新しい基底(g1,g2,g3)は以下の様に表すことができる



分母は基底(f1,f2,f3)で構成される平行6面体の体積で、分子は平行四辺形の面積の次元を持つため、基底(g1,g2,g3)は元の基底(f1,f2,f3)の逆数の次元を持つことになる。

こうしたベクトルを相反系(reciprocal)ベクトルと呼ぶ。

直交基底の場合、相反系は元の直交基底と平行になり大きさも同じだが、次元が元の基底の逆数を持つ点で厳密には同じベクトルではない。

直交基底が単位ベクトルかつ無次元の場合に限り、その双対基底は互いに同一で区別がつかなくなる。つまりそれは極めて特種な世界である。

任意のベクトルはそれぞれの双対基底の線形結合で表すことができるが、それぞれの表し方の間には座標変換に関する成分への影響の受け方が異なる。

続いてその性質について調べることにする。

その前にやっておくべきことがあった、鶏が先か卵が先かの問題はあるが、上の議論では双対基底を(f1,f2,f3),(g1,g2,g3)と異なる記号を用いていたが、双対基底が現れる度に2つの異なる記号を割り当てているとそのうち割り当てる文字が無くなってしまうので、慣例的に同じ文字を割り当て、添え字の位置で二者を区別することにする。

一般の基底は任意の互いに線形独立なベクトルの3つの組を選ぶことができるので、それを自然基底と呼ぶ人も居る。一方その相反系ベクトルは人為的に一意に決まるので、それを双対基底と呼ぶ人も居る。希に先走りして前者を共変基底、後者を反変基底と呼ぶ人が居るがそれは正規直交基底からの基底変換に対応しているので、その成分は基底変換と逆の変換を受けるので反変ベクトル成分となり、逆は共変ベクトル成分とややこしい。また相反系であることから、一方を基底、他方を逆基底と呼ぶ人も居る。これは自分数学的には一番納得が行くかもしれない。

なので双対基底の一方の添え字を下に、他方を上にすることで区別することにする。そうすると大抵のテキストで教えられる双対基底の定義である以下の式が導かれる。



従って、任意のベクトルは双対基底とそれに対する成分の組を使って以下の様に表すことができる



従って一方の基底による任意のベクトルの成分はそれぞれ



という関係があるように意図的に成分の添え字の位置を内積をとる基底に合わせることにする。

さて双対基底によって同じベクトルは2組の異なる成分で表されることになるが、それはどう呼べばいいのだろうか?どちらも同じベクトルを表しているのでだからちょっとこまる。

英国の数学者であるSylvesterが最初にその2つに別名を与える画期的な命名法を編み出した。
基底を別の新しい基底に線形写像で写すと、元の基底で表されたベクトルの成分は新しい基底ではどう写るかというのを考えることにする。

これはちょうど、実世界で言えば、ある対象物の方を向いた位置で、観測者が首を左に振ったら、対象物はどちらの方向へ移動して見えるかというのを考えるのと似ている。誰もが確かめて見ることができるように、首を振った方向とは逆の方向に対象物は移動したように見える。

もうひとつの実世界のおもしろい例は、ロケットの打ち上げ開始から終わりまでの中継録画をじっくり観測するとおかしな点に気付く。それは最初まっすぐ地上から垂直の方向に打ち上げたロケットが残していったロケット雲の軌跡が垂直ではなく、湾曲していて地球に逆戻りしているように見える点である。「打ち上げ成功」とかテロップが流れなければ軌跡だけ見ると打ち上げが失敗してロケットが落下したのと区別が付かない。これも良く考えれば、地球が自転しているので、時間の経過と供に座標系が回転するので、ロケットの見た目の方向も軌跡もそれと逆方向に回転して見えるためである。

それを数式で明らかにすることにする。

基底(e1,e2,e3)をとって、それを(e1',e2',e3')に写す写像を考える。新旧の基底間には以下の関係がある。



これは線形代数的に行列で表すと



ベクトルを成分とするベクトルが気に要らなければ成分に展開して以下の様にすればよい



線形代数的にその逆変換は



この逆行列を以下の様に表すと



従ってそれぞれの基底は



と表される。

従って任意のベクトルの成分は新しい基底でどう変換を受けるかは、元の基底の線形結合で表したベクトルの式に上の変換式を代入すればよいことになる。



総和記号が沢山あってなにがなんだか判らなくなったので、成分毎に分けてみると



従ってベクトルの成分は基底変換とは逆の変換を受けることが判る



従って普通に自然基底を選んでその線形結合としてベクトルを表すとその成分は基底変換と逆の変換を受けることになり、それを反変(contravariant)ベクトルと呼ぶことにする。その成分は反変成分である。

今度はその双対基底の線形結合で表された同じベクトルの成分は上の基底変化によってどう影響を受けるか調べることにする。

先の基底の変換によって双対基底は以下の変換を受けることになる。



つまり基底変換とは逆の変換を受けることになる。



従って双対基底の線形結合で表されたベクトルの成分は基底変換によって



総和記号が一杯でてくるので、Einsteinの省略記法を使えば簡単だが成分毎に分けて考えると





つまり回り回って基底変換と同じ変換を受けることになるので、これを共変(covariant)ベクトルと呼びその成分を共変成分として下付きの添え字で表すことにするわけである。

テキストとか良くまとまった本では紙面を最小限にするために最後の結果だけ示して終わっているが、やはり納得するには自分で計算して確かめてみるのが一番である。直交座標系で考えれば基底変換は常に直交行列になるのでその逆行列は転置行列になりもっと簡明に表すことができるが本質を見失わないように一般の基底で考えるのが良いと思う。

テキストによっては直感的な理解のしやすさから、二次元平面上で任意の基底とその双対基底を図示して任意のベクトルの成分が基底の変換(回転変換)によってどう変わるか示す方法が用いられており、個人的にはその図で初めて相反系の存在に気付いたのは内緒だ。でもそれに気付いたから良しとしないで、自分計算して紙の上で確かめてみると更に理解が深まることも実感した。

基底が互いに直交していても単位ベクトルでなかったり、次元(量)が違えばその双対基底は元の基底とは異なるので最初から両者の存在を頭に置いて考える習慣を付けるのが良いかもしれない。

さて、最初以前の議論で出てきて正射影ベクトルの組を一般基底として考えるつもりだったが、それには別の意図があったのだがそれはまた別の機会にしよう。

P.S
最近では双対と同義語でもっと広い範囲を示す双直交(biorthogonal)という用語があるのを知った。こちらの方が線形空間として、数ベクトル以外にFourier級数とかの直交関数空間も含まれることが判るので今後はそれを用いるべきかもしれない。数学書だと双対空間の片方が数ベクトルで他方が線形写像の集合の全体とか最初からわけがわからない定義で始まるのは、そうした結果を踏まえてのことであって、数学ではより広い範囲に適用可能な概念がより強いチャンピオン概念だから仕方が無い。

P.S
双対基底を考えている間に、それで暗号を作るアイデアを思いついたことを書き忘れていた。本題とは違うので割愛したが、反変ベクトルの成分を暗号化前の正文を文字コードを並べたビット列を整数で表したものとすれば基底は暗号鍵になる。基底には十分大きな素数を割り当てればよい。そうするとベクトルは正文と基底(鍵)が掛け合わされて足し込まれた3つの整数からなる暗号文になる。これを復号するには、元の3つの成分を抽出すればいいので、双対基底と内積をとればいいことになる。つまり暗号化と復号化で異なる鍵が使用されるので、公開鍵方式みたいなものである。確かにこれは暗号化方式と使えるかもしれないが、欠点がある。それは暗号化後の情報量が暗号化前より増えてしまうこと(かけ算と足し算が行われるので)、暗号化と復号化の鍵(基底)は互いに片方が判れば他方が一意的に決まるので両方とも秘密にしないといけないため片方を公開することはできない。また双対基底は互いに逆数なので、整数演算で済ませるには両方を有理数としないといけない。そうすると暗号文がある有理数で割り切れることになるので、暗号文を素因数分解すればその中に基底(鍵)が含まれることを意味し、暗号化の強度が弱くなる。しかし暗号化方式としてはあり得るので、欠点を改良すればいけるかもしれない。と思って双対基底と暗号で検索したら一杯特許が出てきて笑えた(´∀` )
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題名 投稿者 日時
   自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-2-3 12:47
     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-16 10:45
       Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-17 9:57
         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-15 21:41
           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-21 10:25
             Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-26 21:43
               Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-29 20:10
                 Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-5 5:33
                   Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-12 18:15
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-20 9:56
                   Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-11-15 11:47
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-12-19 21:03
                   » Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-4 22:15
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-10 22:07
                       Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-16 17:45
                         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-4-6 12:47
                           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-7-26 20:20

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