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webadm | 投稿日時: 2011-11-6 6:17 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
鎖交磁束不変の理 次もRL直列回路なんだろうけど2つ並列になっているからそうとも言えない。
図の回路が定常状態にあるものとする。いまt=0でスイッチを開くとき流れる電流を求めよ。 というもの。 ううむこれは今までのように一筋縄ではいかないかも。 既にわかっている条件としては、定常状態での電流である。問題は駆動電源が取り去れれた後にそれらの電流がどう変化するかという点。 物理的にはインダクタンスに流れる電流は不連続的には変化しない。しかしスイッチが開くとL1とL2が互いに電流の流れを阻止するような形で閉回路が構成される。すると電流が今まで通りの値から連続的に変化しようとしてもそうはいかないことになる。 どうすんだこれ(;´Д`) ひとつのアイデアとしては、定常状態でL1,L2に蓄えられているエネルギー量がわかれば、それが開放されてR1,R2で消費されるエネルギーと等しいという関係から積分方程式をたてることができる。それを微分すれば微分方程式になる。なんだそれ(;´Д`) もうひとつは連立微分方程式をたてて解くというもの。重ね合わせでL1,L2どちらか一方しかない場合を考えてどちらも成り立つような解を求める。そのなの習ってないぞ。 これまではLに流れる電流は急激には変化しないと言ってはばからなかったが、どうやらこのケースは例外のようだ。スイッチを開いた直後に残った閉回路に流れる電流はどこで計っても同じになるはずである。とするとL1とL2に流れる電流はスイッチを開く前と不連続となる。 やっぱどうすんだこれ(;´Д`) 手元の電気学会「過渡回路解析」の"8.4 波形の連続性について"を読むと最後にこの問題の回路にあてはまる興味深い示唆が書かれている。 引用:
という理由でほとんどの本ではややこしいことに時間とページを費やしたくないのでこの例外的なケースを華麗にスルーしているわけである。 インダクタンスの磁束とキャパシタの電荷は(インダクタンスの電流とキャパシタの電圧は)不連続には変化しないとだけ習っていると、このケースで矛盾を突きつけられることになる。 手元の尾崎弘「大学課程 電気回路(2)(第3版)」の"3.8 初期値の決定、その他解法に対する注意"に"[1]鎖交磁束不変の理とコイルを含む回路の初期値決定"として以下のことが述べられている 引用:
その後にも重ね合わせの理を使った解法や、これまで何度か出てきた断続部の有る回路を補償定理を使って解く方法が示されている。 鎖交磁束不変の理(principal of constant flux linkages)についてはValkenburgの「Network Analysis」の最初の方のインダクタンスパラメータが最初に登場するところで歴史的経緯を交えて説明されているが、回路系では磁束の総和が不変である意味ということに関してはその後も触れられていない。演習問題にもこの特殊なケースに該当するものが無いことから割愛されていることは明らか。 Valkenburgの「Neetwork Analysis」よりずいぶん後に書かれた(参考文献としてValkenburgの著書が載っている)R.E.SCOTT「Linear Circuit Part1/Time-Domain Analysis」は分厚い本だが、磁束に関しては最初と後の方で二カ所しかない。後の方では一般的なFaradayの法則である磁束の変化と起電力は比例するという関係を述べているにすぎない。磁束の総量については触れていない。 ということで著者の解にもこのあたりは詳しく解説されているので、著者とは違う方法で解くことにしよう。 寝ながら考えたら朝方答えができた(´∀` ) スイッチが開いた直後は以下の関係が成り立つ 従ってuに関する同次微分方程式の一般解は ということになる。ここまでは誰でも一緒。 さて問題は未定係数Kを割り出すための初期条件をどうやって決定するか。 ここで今までのインダクタンスが一つだけの回路の問題を振り返ると、どうやって電源が取り去られた後のインダクタンスに発生する電圧の初期値を決定していたかを思い出そう。 これまではインダクタンスがひとつしか閉回路上に無ければ、それ自身に流れていた電流と不連続が生じないように電流を流そうとする電圧が発生するとしていた。実はこれは答えは同じでも厳密には正しくはないというのが今回判明した。 厳密には、閉回路内のインダクタンスには閉回路内の磁束の総和に不連続が生じないように電流を流そうとする電圧が発生するというのが正しい。この定義によって以前の問題の結果が変わることはない。この現象(自己誘導)を発見したのがHenryでインダクタンスパラメータの単位のHはそこから来ている。 閉回路内にインダクタンスがひとつだけのケースでは、以前にそのインダクタンスが生成していた磁束が電源が取り去さることによって失われることになるので、その磁束に不連続が生じないように電流を長そうとする電圧が瞬時的に発生することになる。 閉回路内にインダクタンスが複数ある場合には、その総量が失われるので、その総和の変化に比例した電圧がインダクタンス全体の和として発生することになる。 と考えればよかったのである。 従って初期条件としてt=+0で閉回路内のL1,L2の磁束の総和が保たれるだけの電流を流そうとする電圧がL1とL2の合計で発生するすればよい。 そこで閉回路内の磁束の総和φ-0はL1とL2の磁束をφ1,φ2とすると、それ以前t=-0に流れていた電流が互いに逆方向なのでその差となる ということになる。t=+0で閉回路を流れる電流をi+0とするとそれによって生じる磁束の総和φ+0は上記と等しいとおくとL1とL2に発生する電圧の総和u+0は ということになる。だいぶ持って余ったやり方だがこれで初期条件が決定したのでuの特別解は ということになる。従って電流iは ということになる。 ちゃんとできたじゃないか(´∀` ) P.S 以前からインダクタンスは弾み車みたいなものと比喩してきたが、このケースをそれで比喩することは出来ない。よく磁束を力学のモーメント(質量と速度の積)と類比させて説明している本を見かけるが、それは単一のインダクタンスに関してであって、このケースのようにある瞬間に2つの別々の向きに励磁されていたコイルが逆向きに接続された閉回路を構成する場合に、力学上でどう比喩すべきか悩んでしまう。互いに逆向きに回転する大きさ(インダクタンス)と(回転速度)の違う弾み車がある瞬間に共通の軸で回ることになったというのとは違う。ちょうど同じ乾電池を2個同じ向きに、1個を逆向きに直列接続した場合に全体では一個分にしか見えないというのも電気の不思議さを物語っている。鎖交磁束不変の理もこれと同じことである。 更に厳密に考えると回路が変化した時点で各素子の両端での電界が急変するのでなんらかのエネルギーが自由空間に放射される(無視できる量かもしれないが、スイッチを開いた瞬間にラジオにノイズが受信されると思われる)。電気回路理論の講義ではそのことは無視しスルーするしかない。 電気の歴史の中では力学との類似な現象が発見されるについれ力学と同じであれば理論的に統一できるという期待が半ばあった。しかしながらそれは別ものであることが次第に明らかになってきた。電気と磁気の性質は座標系によらないが、ニュートン力学は座標権によってその修正されなければならないことも判明した。統一されれば美しいが、現実はそうはうまくいかない。更に新しい視点から見れば、電磁気も力学も重力も、なんだみな同じじゃないか(´∀` )ということになる日もやってくるかもしれない。 |
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題名 | 投稿者 | 日時 |
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過渡現象演習問題 | webadm | 2011-11-1 17:19 |
RL直列回路 | webadm | 2011-11-1 17:32 |
続:RL直列回路 | webadm | 2011-11-3 5:24 |
続々:RL直列回路 | webadm | 2011-11-3 6:23 |
まだまだ:RL直列回路 | webadm | 2011-11-3 8:44 |
もうひとつの:RL直列回路 | webadm | 2011-11-3 15:53 |
またまた:RL直列回路 | webadm | 2011-11-3 16:32 |
断続部の有るRL直列回路 | webadm | 2011-11-4 1:09 |
続:断続部の有るRL直列回路 | webadm | 2011-11-4 2:29 |
RL並列回路 | webadm | 2011-11-4 7:48 |
続々:断続部の有るRL直列回路 | webadm | 2011-11-5 10:47 |
まだまだ:断続部の有るRL直列回路 | webadm | 2011-11-5 20:42 |
もうひとつの:断続部の有るRL直列回路 | webadm | 2011-11-6 1:32 |
またしても:RL直列回路 | webadm | 2011-11-6 2:44 |
» 鎖交磁束不変の理 | webadm | 2011-11-6 6:17 |
続:鎖交磁束不変の理 | webadm | 2011-11-8 5:08 |
続々:鎖交磁束不変の理 | webadm | 2011-11-8 7:42 |
またひとつの:RL直列回路 | webadm | 2011-11-10 7:26 |
RL直並列回路 | webadm | 2011-12-29 5:39 |
相互誘導回路 | webadm | 2012-1-11 8:53 |
続:相互誘導回路 | webadm | 2012-1-11 10:52 |
続々:相互誘導回路 | webadm | 2012-1-14 21:44 |
まだまだ:相互誘導回路 | webadm | 2012-1-22 3:04 |
RC直列回路 | webadm | 2012-1-22 23:50 |
続:RC直列回路 | webadm | 2012-1-23 1:37 |
続々:RC直列回路 | webadm | 2012-1-23 4:15 |
まだまだ:RC直列回路 | webadm | 2012-1-24 9:31 |
もうひとつの:RC直列回路 | webadm | 2012-1-27 7:27 |
またまた:RC直列回路 | webadm | 2012-1-29 0:18 |
電荷量不変の理 | webadm | 2012-1-29 0:45 |
続:電荷量不変の理 | webadm | 2012-2-4 9:41 |
断続部のあるRC直列回路 | webadm | 2012-2-7 6:22 |
続:断続部のあるRC直列回路 | webadm | 2012-2-10 9:18 |
続々:断続部のあるRC直列回路 | webadm | 2012-2-12 20:06 |
まだまだ:断続部のあるRC直列回路 | webadm | 2012-2-12 23:06 |
もうひとつの:断続部のあるRC直列回路 | webadm | 2012-2-14 7:38 |
RC並列回路 | webadm | 2012-2-14 8:48 |
続:RC並列回路 | webadm | 2012-4-5 10:59 |
LC直列回路 | webadm | 2012-4-10 8:07 |
続:LC直列回路 | webadm | 2012-4-11 15:26 |
続々:LC直列回路 | webadm | 2012-4-14 6:36 |
まだまだ:LC直列回路 | webadm | 2012-4-14 17:43 |
LC並列回路 | webadm | 2012-4-15 0:24 |
断続部のあるLC並列回路 | webadm | 2012-4-16 3:54 |
続:断続部のあるLC並列回路 | webadm | 2012-4-17 9:05 |
断続部のあるブリッジ回路 | webadm | 2012-5-5 18:09 |
RLC直列回路 | webadm | 2012-5-5 23:12 |
続:RLC直列回路 | webadm | 2012-5-6 19:26 |
続々:RLC直列回路 | webadm | 2012-5-6 19:53 |
まだまた:RLC直列回路 | webadm | 2012-5-6 21:41 |
RLC直並列回路 | webadm | 2012-5-7 2:09 |
続:RLC直並列回路 | webadm | 2012-5-8 8:31 |
続々:RLC直並列回路 | webadm | 2012-5-12 18:14 |
RL直列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-13 1:37 |
続:RL直列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-13 22:24 |
続々:RL直列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-13 23:03 |
RC直列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-14 8:11 |
LC直列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-19 19:10 |
RLC直列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-23 4:47 |
RL直並列回路(交流入力) | webadm | 2012-5-28 23:28 |
相互誘導回路 | webadm | 2012-8-3 7:14 |
続:相互誘導回路 | webadm | 2012-8-4 23:52 |
続々:相互誘導回路 | webadm | 2012-8-5 2:55 |
線型性 | webadm | 2012-8-6 21:08 |
非線型素子回路 | webadm | 2012-8-8 7:41 |
微分回路 | webadm | 2012-8-8 9:30 |
積分回路 | webadm | 2012-8-11 20:51 |
パルス回路 | webadm | 2012-8-11 22:35 |
交流ブリッジ回路 | webadm | 2012-8-11 23:00 |
最後のRL直列回路 | webadm | 2012-8-12 3:28 |
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