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webadm | 投稿日時: 2007-12-11 20:30 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
ベクトル記号法 今年の初めから始まってようやく1年で直流回路と正弦波交流回路をマスターしたことになる。長いようで短かった。
しかしがっかりすることに、本格的な電気回路理論はここからがスタートである。 趣味の電子回路や教養としての電気回路理論という意味ではここまでで十分な気もするが、電気回路の動作原理を理解したり自分で意図したものを設計したりするためにはもっと学ばなければならないことが山ほどある。ましてや電子デバイスを駆使した電子回路の動作原理を理解したり設計するには更に勉強すべきことが沢山ある。 そうした近代的な理論を学ぶ土台がやっと出来た程度ということである。 ここまでのことをすっ飛ばしていきなり本格的な近代電気回路理論を学ぼうとしても、前提知識として直流回路で学んだオームの法則やキルヒホッフの法則が必須であるので困難である。ここまで到達した人だけがここから先を学ぶ資格があるとも言える。 もちろんいきなり本格的な理論から初めて基礎的なものは必要に応じて即席で勉強するという方法もあるかもしれないが、順序としては正統ではなく、もぐりと言われてもしかたがないだろう。 やはり先駆者の苦労を追体験しながら、その意義を理解しながら進むのが本道であろう。 さて、本題に入ると次ぎに学ぶのはベクトル記号法というものである。これは今まで三角関数を使用して表して来た正弦波交流電圧や電流、電力をベクトルとして表すことを意味する。 これまでも正弦波交流理論を学ぶ上で、三角関数による式ではなく正弦波交流電圧や電流を、直交座標上で原点を中心に外を向いた角速度で回転するベクトルとして幾何学的に捉えた方が直感的でわかりやすいことを実感してきた。 これはベクトルに関して学生時代に学んで多少の知識が残っていたからなのだが。電気の歴史の中でも同じ事が起きていたのである。 そもそも電気の歴史は静電気から始まり直流電源による直流回路が長く研究されてきて、変革が始まったのは電気事業が始まった年代と一致する。そこではエジソンが今のGE社を設立し直流送電による電力事業を始めた頃である。同時期に当時のウェティングハウス社(現在は東芝の傘下)の交流送電と競争していた。 直流は長く研究され枯れた技術であるのに対して交流は最先端技術であるため研究がこれからというものだった。エジソンは大分交流に関してネガティブキャンペーンをやらかしたみたいで初期の軍配は直流が優勢だったらしい。そのため日本にもたらされた電力事業も最初直流送電であった。最終的には交流が長距離送電で直流よりも圧倒的に有利であることから現在のような交流送電全盛に切り替わってしまった。 電力事業が始まった時代には非常に数多くの名前を挙げたらきりがないぐらいの先駆者が交流に関する研究や発明を同時多発的に世界中で行っていたことから、どの教科書でもいちいち名前を挙げてはいない。強いて最も貢献度が大きかった人の名前は知られているが、必ずしもバックグラウンドが電気畑でなかったり、育ちが良いというわけではないのであまり知られてはいない。 個人的に交流回路に関する先駆的な役割を果たした人で印象深い先人の名前を挙げよと言われれば オリバー・ヘビサイド ニコラ・テスラ スタインメッツ ぐらいかもしれない。もちろん同時期に他にも同じことを考えて発表していた人は沢山居ることを知っているが。 オリバー・ヘビサイドは難聴であったためか学校を中退して独学で勉強し、電信技師になるが上司が経験至上主義だったため恵まれず仕事を辞め自宅に籠もりマックスウェルの方程式の実用化の研究に没頭した。その結果、もともと4元数という当時最先端の数学を使用して記述されていた方程式を今我々が見る平易な形に書き直したことが後に物理学上の貢献として知られるに至っている。 副産物として現在分布定数回路として必ず学ぶ伝送路のモデルとその方程式である電信方程式も彼によるものである。しかし伝送路の過渡応答解析に用いた独自の演算子法(現在のラプラス変換の前身)の数学的な裏付けを示さなかったことにより、評価されなかったという不遇がある。電信方程式はマックスウェルの方程式の応用であり、信号が光や電磁波と同じ速度で進む可能性も示している。ただ電磁気学的な側面ではなく電圧と電流という側面で応用しているので、信号が電圧と電流で伝わるという誤った理解を与える原因ともなっている。 もともとマックスウェルの方程式が4元数という複素数を拡張した数の概念で記述されていたことから難解で扱い難かったため、ヘビサイドは複素数に関する数学の分野も独学する必要があったのは明らか。交流回路が現れる15年も前に今日誰もが学ぶ電圧や電流、インピーダンスのベクトル表記でマクスウェル方程式を今ある形に書き直したのは偉業である。同じことをドイツ人のヘルツも行ったが、その功績をヘビサイドにあっさり譲っている。ヘルツは後に電磁波の存在を実験で実証した功績で有名である。共に今誰もが恩恵を受けている無線通信の理論的な草分けである。今日知られているマクスウェル方程式はマクスウェルがオリジナルに書いたものではないので、マクスウェル-ヘビサイド方程式あるいはマクスウェル-ヘビサイド-ヘルツ方程式と呼ぶ人も居る。 交流の複素数表記で虚数部の元をjで表すが、数学で学ぶのはiでありそれと違っている。これは元々4元数が、i,j,kの3つの虚数元を持っているのであえて区別するようにその2番目を使ったのかもしれない。 ヘビサイドの伝記を今注文しているので、また新たなことがわかるかもしれない。彼が書き直したマックスウェル方程式を元にアインシュタインが特殊相対性理論を構築したことからノーベル物理学賞の候補にもあがった程その物理学や電磁気学上での貢献が認められていたことは忘れるべきではない。 ニコラ・テスラは、SFとかで必ず登場するめまぐるしくランダムに動き回る空中放電を生成する装置、テスラコイルの発明者としてしか知らない人が多いかもしれない。 彼の功績で最も大きいのはウエスティングハウス社で交流送電の実用化に尽力したことだろう。 最初はエジソンのGE社に入ったのだが、直流派のエジソンと確執が生じエジソンの元を去り、競合のウエスティングハウス社で初期の二相交流送電事業の特許を譲渡し、その後の多相交流送電への変遷を後押しすることになった。 ウエスティングハウス社を去った後はどちらかというと孤高の発明家として、マッドサイエンティストの代表格みたいな経歴を歩むことになる。どちらかというとそちらで後生有名になってしまった。晩年の彼の研究テーマや事業はトンデモ科学の類に入るかもしれない。他にもいろいろ考えさせられるエピソードが多いがとてもすべてを紹介しきれない。電気に関してはまだまだ我々が知らない秘められたパワーが隠されていると最後まで信じていた人である。 スタインメッツという人はほとんどなじみがないかもしれない。これから学ぶことになる近代的な交流理論を確立した人である。 ドイツ人であるがスイスに亡命し機械工学を学んで機械製図工としてアメリカに渡った。しかし折しも交流電気研究が盛んな時代に、交流電動機開発に従事しその過程で磁気ヒステリシス現象を発見した。後にGE社の傘下になり現在の交流回路理論を発表し複素数表記による代数式による計算が広く普及するきっかけとなった。 なんと現代の交流回路理論はバックグラウンドが機械工学の人によって構築されたものだったのだ。まあ、いつの世も第一線で活躍する人によって偉大な成果はもたらされるものであることには変わりない。 これから学ぶ理論にはまだ名前を知らない先駆者が考案したものもあると思われる。なにしろ名前がどこにも出てこないのでたぶん知らないで学んで知らないで教えているというのがほとんどなのかもしれない。ちょっと残念ではあるが、同時代で同じことを沢山の人が研究していた時代でもあるので、そのうちの一人しか名前を挙げないというのは逆に問題になるかもしれない。 現代ではインターネットの普及により、同時期に他の人と同じことを研究するというのはなるべく避けることが可能になっている。先を越されて発表されたら今までやってきた事が無になってしまうからね。公表しないで研究していると、誰か他の人もまだやっていないと思って始めて先を越されるというのもよくある話。頻繁に論文を発表して権勢をかけるとかしていないとだめなのかもしれない。 さて前書きはこのくらいにして、ベクトル記号法について勉強しよう。 しかしその前にベクトルと複素数表記の2通りがあるのは何故だという疑問にぶつかる。 数学の参考書を調べるとベクトルと複素数に関してはそれぞれ別個にタイトルがあって中味は良く似たようなことが書いてある。例えばベクトル解析という本があれば、複素解析という本もある始末。 ベクトルとは大きさと方向をもった数の概念である。これは理解できる。今まで正弦波交流理論を学ぶ過程で描いた図もベクトルを意識していたし、それはそれで役にたった。 一方複素数は数学的には後発的な概念で、長らく数学の世界では忌み嫌われていた虚数を持つ数である。虚数とは自乗すると負になる数である。数学的にはあり得ても現実にはあり得ないことから数学界でも長く禁断の領域であったらしい。二次以上の方程式の解法を研究する過程でどうしても負の数の平方根というのが根の中に出てきてしまう。二次以上の方程式の解法を研究していた数学者は密かにこのことを気づいていたが、公にするのははばかられていたらしい。ガウスという人が満を持して周到に準備した理論を公にして今に至るらしい。そのため複素数を図示するのに使われる直交座標をガウス平面と呼ぶ。縦軸が虚数で横軸が実数である。そうすると複素数はその平面上の一点を示すことになるが、原点とその点を結ぶ直線を引くと、それはベクトルと同じである。ベクトルはそれ以前の直交座標系であるユークリッド座標でも扱うことができる。 問題は今まで学んだ三角関数による交流の表記とベクトル表記あるいは複素数表記の関係である。そのことになると、単なるベクトルでは直交座標のどちらかの値が今まで学んだ三角関数による交流の電流や電圧に相当するのかわからなくなる。一方複素数表記では虚数部が電流や電圧に相当するということに決まっている。なので複素数表記が一番数学的にはあっているのかもしれない。電気の歴史上でもやはり混乱がみられ、ベクトルなのか複素数なのかという議論があったらしい。しかし実のところ数学のベクトルと複素数の概念ともしっくりこないので、フェーザー(Phasor)という概念を導入している。これは大きさと傾きをもった複素平面で原点を中心に角速度で回転するベクトルを表す。これが電気回路理論で扱うのに相応しい概念であると推奨されているらしい。それで教科書には必ずフェーザーという言葉が説明されている。が、異論と唱える人も多い。数式を扱う上では数学的に認められていない概念を数式に取り入れるのは面倒だということ。数学的には複素数として扱うのがすっきり行くというもの。最後に虚数部だけとれば現実世界の瞬時値が得られる。 実質的にはフェーザー=複素数表記=ベクトル表記ということになり、特別の断りがなければ数式は皆その表記に従ったものと解釈する。 歴史的な経緯から上記の方式をベクトル記号法と呼ぶらしい。 詳しい定義や理論は後日。 P.S そういえば4元数について始めて知ったのはやはりマンデルブローがIBMのフェロー研究員の時にIBMのベクトル計算機を使って作成した有名な3次元のフラクタル画像「重力場」の計算方法を著書「フラクタル幾何」で説明しているページでした。当時はさっぱりなんのことかわからず、自分で同じようなプログラムを書くことはできませんでした。今でもその著書を持ってますが、太陽表面で良く見られるフレア現象に良く似たその3次元グラフィックスは不思議で現実感があります。今ならできるかも。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-13 13:38 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
Re: ベクトル記号法 いろいろ電気の歴史をひもとくと電気の歴史は静電気、磁気、電磁気に関する物理的な法則の発見に始まり、当初は物理学の一部としてその真理を究明することだったが、一方で電気エネルギーの実用化研究が盛んになるにつれ真の姿を理解することから離れ都合の良いように解釈応用する実学として発展していった経緯がうかがわれる。
そのため我々は結局電磁気の本質を理解することから遠ざかる方向へと向かい、本質的な部分の理解に関しては依然として物理学の分野に委ねるに至っている。 そもそもインダクタンスやキャパシタンスに流れる電流と電圧の関係とかは電磁気学無しには語れないのであるが、法則だけを利用すればその性質は単純なモデルとして取り扱うことができ応用が利く。しかし反面、微少な電磁気や強力な電磁気を扱う分野ではそれ以外では無視できた本質的な要素を無視できなくなるため、依然として物理学や電磁気学、量子力学の理解無しには取り扱うことが困難であるのは変わりない。 共振回路が内部に無尽蔵に大きなエネルギーを蓄えることができるということは電気理論を学ぶことで理解できる。物理学的には物質の存在さえもなんらかの共鳴によってもたらされているというのが予見されている。また質量はその共鳴によって電磁波のように重力波を外へ放射していると予想がつくがそのもはや3次元的な感覚ではおよそ理解できない。 電気の世界はそういった宇宙の真の理解に至る一番端っこなのかもしれない。 そういう意味でいろいろ検索で調べるとトンデモ科学的な人が今も居たりするのに遭遇するのだが、深入りすると本質を見失いかねないので注意が必要である。 電磁気の法則を発見してきた先駆者は偉大だけれどもその法則を統一したマクスウェルも偉大だ。当時ろくな観測手段も無いのに理論だけでその後実験的に証明されるに至る様々な予見を示した点は人類史上の奇跡とも言える。 でも今日マクスウェルの論文や著書をみんな読んで勉強しているかというとそうではない。後生の人がわかり易く扱い易い形で整理したものをありがたく学んでいるに過ぎない。 ベクトルもマクスウェルが記した電磁気学の著書の最初の巻がベクトルの数学的な理論の解説にあてられている程重要な数学的なツールである。当然ながら電磁気学の応用の際にもベクトルという数学的な記号法を使わざるを得ない。 またマクスウェルの方程式を偏微分形式に書き直すと、どうしても二次の偏微分方程式が出てくるので、その解は複素数の範囲に及ぶ。このことから複素数も扱えないとどうしようもなくなる。 そんなこんなでベクトルや複素数を使った表記方法は電気回路が電磁気学の応用に過ぎないという結果から自明ではある。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-13 18:16 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
ベクトル記号法の意味 さて能書きが長くなってしまったのでそろそろ理論的な意味を学ぶことにしよう。
正弦波交流は一定周期で振幅する電圧もしくは電流の正弦波振動とも言える。 電圧や電流を縦軸に重ねてプロットすると、それは正と負それぞれ等しい振幅幅の長さを持った範囲内を時間と共に往復しながらいずれかの値を取る。 同様に半時計方向に回転する磁界の向きを描くと繰り返し円運動する点と原点を結ぶベクトルとして捉えることができる。回転する点のY軸上の座標を時間軸上でプロットすると正弦波曲線を描くことになる。 ここまでは今まで正弦波交流の考え方と同じである。違いは正弦波交流が正弦波形を描くことから三角関数で表したものが、複素数で表すと平面上で円運動として捉えることができる。時間は角度に変換写像されるため周期的に重ね書きされることになる。そうした方が時間軸上に永遠に続く波形を扱うより扱いは簡単そうである。 電圧や電流を三角関数で表記すると、微分や積分の度にsinからcosに変わったりcosからsinに変わったり符号が変わったりして面倒であるのと、加算や減算の際にそのつど三角関数の加法定理とか合成定理を使って面倒で間違え易い数式操作を行わなければならず効率が悪いという欠点があった。 ところが数学的には複素座標系(ガウス平面)で円運動を捉えると以下の単一の指数関数として表すことができるというのをオイラーという人が発見した。 exp(i(ωt+θ))=cos(ωt+θ)+i*sin(ωt+θ) もちろんこの値は複素数であるためにわかには受け入れ難いが、微分や積分をおこなっても係数が前に出てくるだけで指数関数部分は変わらないという便利な性質がある。 d(exp(i(ωt+θ)))/dt=iω*exp(i(ωt+θ)) ∫(exp(i(ωt+θ)))dt=(1/iω)*exp(i(ωt+θ)) これだと三角関数表現の時に苦労していた煩わしい式の操作が微分の場合は角速度を乗じるだけ、積分の場合は角速度で割るだけという変形で済むので超便利である。 今まで面倒で直感的にできなかった式の操作がこれで一気に直感的にできるようになる。こうした興味深い複素関数の性質からヘビサイドは演算子法を思いついたのかもしれない。演算子法では微分は演算子Dを元の関数に掛け、積分はDで元の関数を割るというアイデアである。演算子法もラプラス変換も一端関数を複素数空間に変換して後で戻すというのが共通の原理である。スカラーから一度高次元の複素数へ持っていくと扱いが楽になる、それで後でスカラーに投影すれば微分方程式の解が得られると。Maximaとかはちゃっかり内部でラプラス変換を使用して微分方程式を解いていたりするのが時々へんてこな式を与えると内部エラーでラプラス変換をしようとして書き直された式が表示されるのでそれとわかる。 三角関数を複素指数関数に置き換えたので、従来スカラー値として扱っていたその他の数も複素数表現にする必要がある。 従って今まで学んだインピーダンスとかはスカラー値としてはそのまま有効だが、複素数表現で書き直す必要がある。 今用いている参考書「詳解 電気回路演習(上)」では、指数関数を数学の一般的なeではなくεをなんの前触れもなく用いている。これはそれ以前にeを電圧の瞬時値の記号として用いてきたのでそれとの混同を避けるためである。εは数学の指数関数eと読み替える必要がある。 また電気回路理論では、複素数表記で虚数単位元を数学で一般的なiではなくjを使用している。これは電磁気学では数学の場合と同じiが使われているのに対して区別するためであると思われる。今日でもまだ電気回路と電磁気学は別々であって統一されることもないからであろう。歴史的には電磁気学の方は速くから複素数を扱う必要があったが、現在の電気回路理論が複素数の虚数部をその電圧や電流の瞬時値として扱うのに対して、電磁気学では実数部を瞬時値として扱っているという微妙なニュアンスの違いがある。それ以外は扱いは一緒であるが。電気回路ではiが電流を表す記号に使われているので混同をさけるためにjにしたという説もある。 あと複素数の掛け算や割り算も三角関数の時と比べるとはるかに扱いが楽である。掛け算や割り算は複素平面上でのベクトルの回転座標変換として表される。 これらについての詳細にどのように従来の交流回路の公式がベクトル記号法で簡潔な形に書き直されるかは後日。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-14 17:42 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
Re: ベクトル記号法の意味 ベクトル記法で正弦波交流電圧を表すと
Em*exp(j(ωt+θ))=Em*cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ) という形で虚数部に従来のスカラー表現の電圧成分が含まれた形で複素数に拡張されていることがわかる。実数部はどんな意味があるかというと、単に原点からの向き(偏角もしくは位相)を持たせるために必要ということでしかない。いわば影みたいなものである。 これで大きさと向きを一緒にして一つの数として四則演算が可能になるのはすばらしい。本当に四則演算ができるのかは数学の参考書や線形代数の参考書を学ぶしかない。 よく調べるとベクトルと複素数が数学的に扱いが異なるというのがはっきりする。電気回路では便宜上ベクトル表記とも複素数表記とも言われるけど、実質は複素数表記であってベクトル表記ではない。ややこしいのでフェーザーとかいう言葉でお茶を濁しているのかもしれない。 みんなそうやって体系だてて勉強してきたので今更どうしようもないのかもしれない。ベクトルは3次元空間では便利なので物理学や電磁気学理論では多用されている。電気理論ではとりあえず二次元で十分なので複素数で表現するのが便利。 ベクトルでは二次元のベクトル積が複素数の積とは相容れない定義になっている。ベクトルの内積はスカラー値だし、ベクトルの外積はベクトルになるものの3次元でしか定義されていないという罠がある。 更に以下のように表すともっと簡易に式を記述することができる。 E=Em*exp(j(ωt+θ+φ)) I=Im*exp(j(ωt+θ) こうすることで後は微分や積分は以下の様に簡潔に表すことができる。 dE/dt=jωE dI/dt=jωI ∫Edt=E/jω ∫Idt=I/jω 虚数単位元であるjをかけたり割ったりするのは本当に微分や積分になるのかというのを確認してみよう。 jωE=jω*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =-ω*sin(ωt+θ)+jω*cos(ωt+θ) =(cos(ωt+θ))'+j*(sin(ωt+θ))' ちゃんと微分と一致している。また以下のように捉えることもできる。 dE/dt=(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ))' =(cos(ωt+θ))'+(j*sin(ωt+θ))' =-ω*sin(ωt+θ)+jω*cos(ωt+θ) =jw*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =jwE 同様に積分についても検証してみよう E/jω=(1/jω)*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =(1/jω)*cos(ωt+θ)+(1/ω)*sin(ωt+θ) =-j(1/ω)*cos(ωt+θ)+(1/ω)*sin(ωt+θ) =j*∫sin(ωt+θ)dt+∫cos(ωt+θ)dt =∫(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ))dt =∫Edt また以下のような関係も成り立つ j*exp(j(ωt+θ)=j*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =j*cos(ωt+θ)-sin(ωt+θ) =j*sin(ωt+θ+π/2)+cos(ωt+θ+π/2) =exp(j(ωt+θ+π/2)) jをかけると座標軸を時計方向に回転させることになるので位相がπ/2進めたことと同じになる。 (1/j)*exp(j(ωt+θ))=(1/j)*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =-j*cos(ωt+θ)+sin(ωt+θ) =j*sin(ωt+θ-π/2)+cos(ωt+θ-π/2) =exp(j(ωt+θ-π/2)) jで割ると座標軸を半時計方向に回転させることになるので位相がπ/2遅れることと同じになる。 また以下の関係も成り立つ -exp(j(ωt+θ))=-1*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =j*j*(cos(ωt+θ)+j*sin(ωt+θ)) =j*(cos(ωt+θ+π/2)+j*sin(ωt+θ+π/2)) =cos(ωt+θ+π)+j*sin(ωt+θ+π) 当たり前だが符号を反転すると原点を中心に正反対側に回転する。 ベクトル記号法では以下の表記もある。しかし記号が特殊なので面倒である。 E=|E|exp(j(θ+φ))=|E|∠θ+φ ここではωは省略されている。フェーザー表現では同一の角速度を持つ複数のベクトル(電圧と電流、インピーダンスとリアクタンス)の相対関係を示すのによく使われるのでその場合は角速度は省略しても構わないのである。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-14 19:10 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
Re: ベクトル記号法の意味 本にはベクトル記号法のことを英語でvector symbolic methodと記載されているが、検索してもほとんど出て来ない。
どうやら世間では単にsymblic methodというらしい。日本語に訳せば記号法である。 つまり「ベクトル記号法」というのはもはや死語だったというわけである。 交流理論では交流の足し算とか引き算を行う時には都合の良いベクトル図を描く方法が便利だし、計算する時には複素数が都合が良い。なので臨機応変に使い分ける必要があるというもの。 どうやら検索では複素表記(complex notation)という表現が今一番ポピュラーらしい。 表題を変えるとすれば「フェーザー、ベクトル、複素表記」とするべきところかもしれない。 あとjを虚数単位とする表記はj notationとも呼ばれている。jはiと同じく虚数単位として知られている。やはり元をたどるとi,j,kという感じで2軸の平面でi,jという単位ベクトルを使うので、iは実数軸とするとjが虚数軸の単位ベクトルということに自然となる。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-15 21:27 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
複素数の加減乗除と共役複素数 いきなり微分と積分から入ってしまったが、本の方がそういう順番になっているので致し方がない。ここを踏み外すとこの先に進めないので慎重に。
正弦波交流電圧や電流はフェーザー表記で以下のように表される。これは極座標表現と呼ばれる。 E=|E|exp(j(θ+φ)) =|E|cos(θ+φ)+j|E|sin(θ+φ) |E|cos(θ+φ)=E1 |E|sin(θ+φ)=E2 と置くと E=E1+jE2 と表すこともできる。これは直交座標表現と呼ばれる。 同様に I=|I|exp(j(θ+φ)) =|I|cos(θ+φ)+|I|sin(θ+φ) I1=|I|cos(θ+φ) I2=|I|sin(θ+φ) と置くと I=I1+jI2 と表すことができる。 これらから正弦波交流電圧と電流の加減算は以下のように表すことができる。 A1=|A1|exp(jθ1)=B1+jC1 A2=|A2|exp(jθ2)=B2+jC2 加算は A=A1+A2 =|A1|exp(jθ1)+|A2|exp(jθ2) =B1+jC1+B2+jC2 =(B1+B2)+j(C1+C2) ここで B=B1+B2 C=C1+C2 と置くと A=A1+A2 =|A|exp(jθ) =B+jC |A|=sqrt(B^2+C^2) =sqrt((B1+B2)^2+(C1+C2)^2) =sqrt(C2^2+2*C1*C2+C1^2+B2^2+2*B1*B2+B1^2) B1=|A1|cos(θ1) B2=|A2|cos(θ2) C1=|A1|sin(θ1) C2=|A2|sin(θ2) なので |A|=sqrt((|A2|sin(θ2))^2+2*|A1|sin(θ1)|A2|sin(θ2)+(|A1|sin(θ1))^2+(|A2|cos(θ2))^2+2*|A1|cos(θ1)|A2|cos(θ2)+(|A1|cos(θ1))^2) =sqrt(|A2|^2*sin(θ2)^2+2*|A1|*|A2|*(sin(θ1)sin(θ2)+cos(θ1)cos(θ2))+|A1|^2*sin(θ1)^2+|A2|^2*cos(θ2)^2+|A1|^2*cos(θ1)^2) =sqrt(|A1|^2*(sin(θ1)^2+cos(θ1)^2)+|A2|^2*(sin(θ2)^2+cos(θ2)^2)+2*|A1|*|A2|*cos(θ1-θ2)) =sqrt(|A1|^2+|A2|^2+2*|A1|*|A2|*cos(θ1-θ2)) θ=atan(C/B)=atan((C1+C2)/(B1+B2)) =atan((|A1|sin(θ1)+|A2|sin(θ2))/(|A1|cos(θ1)+|A2|cos(θ2))) と表すことができる。なんだか訳がわからないので幾何学的に見てみると ベクトルや行列の足し算と同じである。 同様に減算も A=A1-A2 =|A1|exp(jθ1)-|A2|exp(jθ2) =B1+jC1-(B2+jC2) =(B1-B2)+j(C1-C2) ここで B=B1-B2 C=C1-C2 と置くと A=A1-A2 =|A|exp(jθ) =B+jC |A|=sqrt(B^2+C^2) =sqrt((B1-B2)^2+(C1-C2)^2) =sqrt(C2^2-2*C1*C2+C1^2+B2^2-2*B1*B2+B1^2) =sqrt(sin(θ2)^2*|A2|^2+cos(θ2)^2*|A2|^2-2*sin(θ1)*sin(θ2)*|A1|*|A2|-2*cos(θ1)*cos(θ2)*|A1|*|A2|+sin(θ1)^2*|A1|^2+cos(θ1)^2*|A1|^2) =sqrt((sin(θ2)^2+cos(θ2)^2)*|A2|^2-2*(sin(θ1)*sin(θ2)+cos(θ1)*cos(θ2))*|A1|*|A2|+(sin(θ1)^2+cos(θ1)^2)*|A1|^2) =sqrt(|A1|^2+|A2|^2-2*|A1|*|A2|*cos(θ1-θ2)) θ=atan((C1-C2)/(B1-B2)) =atan((|A1|sin(θ1)-|A2|sin(θ2))/(|A1|cos(θ1)-|A2|cos(θ2))) となる。これも同様に幾何学的に表すと 先ほどの加算の時の片方を180度回転させたものと加算したのと同じである。これは-1をかけたものが180度位相がずれたものになることからうなずける。 ここまでは簡単。次ぎに乗除を考えてみよう。 A=A1*A2 =|A1|exp(jθ1)*|A2|exp(jθ2) =(B1+jC1)*(B2+jC2) =B1*B2+jB1*C2+jC1*B2-C1*C2 =(B1*B2-C1*C2)+j(B1*C2+C1*B2) ここで B=B1*B2-C1*C2 C=B1*C2+C1*B2 とすれば A=A1*A2 =|A|exp(jθ) =B+jC |A|=sqrt(B^2+C^2)=sqrt((B1*B2-C1*C2)^2+(B1*C2+C1*B2)^2) =sqrt(C1^2*C2^2+B1^2*C2^2+B2^2*C1^2+B1^2*B2^2) =sqrt(B1^2+C1^2)*sqrt(B2^2+C2^2) =|A1|*|A2| θ=atan(C/B)=atan((B1*C2+C1*B2)/(B1*B2-C1*C2)) =atan((cos(θ1)*sin(θ2)*|A1|*|A2|+sin(θ1)*cos(θ2)*|A1|*|A2|)/(cos(θ1)*cos(θ2)*|A1|*|A2|-sin(θ1)*sin(θ2)*|A1|*|A2|)) =atan((cos(θ1)*sin(θ2)+sin(θ1)*cos(θ2))/(cos(θ1)*cos(θ2)-sin(θ1)*sin(θ2))) =atan(sin(θ1+θ2)/cos(θ1+θ2)) =θ1+θ2 となる。 つまり掛け算は平面上で原点を中心に回転移動し絶対値を拡大することを意味する。 残るは除算である。 A=A1/A2 =(|A1|exp(jθ1))/(|A2|exp(jθ2)) =(|A1|/|A2|)*exp(j(θ1-θ2)) =|A|*exp(jθ) ∴ |A|=|A1|/|A2| θ=θ1-θ2 だということはわかる。 B=|A|cos(θ) C=|A|sin(θ) と置けば A=A1/A2 =|A|*exp(jθ) =|A|cos(θ)+j|A|sin(θ) =B+jC なので B=|A|cos(θ) =(|A1|/|A2|)*cos(θ1-θ2) =(|A1|/|A2|)*(cos(θ1)cos(θ2)+sin(θ1)sin(θ2)) =(|A1|/|A2|)*cos(θ1)cos(θ2)+(|A1|/|A2|)*sin(θ1)sin(θ2) =B1*cos(θ2)/|A2|+C1*sin(θ2)/|A2| =(B1*cos(θ2)+C1*sin(θ2))/|A2| ここで分子と分母にそれぞれ|A2|をかけると B=|A2|*(B1*cos(θ2)+C1*sin(θ2))/|A2|^2 =(B1*|A2|cos(θ2)+C1*|A2|*sin(θ2))/|A2|^2 =(B1*B2+C1*C2)/|A2|^2 =(B1*B2+C1*C2)/(B2^2+C2^2) 同様にCも C=|A|sin(θ) =(|A1|/|A2|)*sin(θ1-θ2) =(|A1|/|A2|)*(sin(θ1)cos(θ2)-cos(θ1)sin(θ2)) =(|A1|*sin(θ1)cos(θ2)-|A1|cos(θ1)sin(θ2))/|A2| =(C1*cos(θ2)-B1*sin(θ2))/|A2| 分子と分母に|A2|をそれぞれかけると C=(C1*|A2|*cos(θ2)-B1*|A2|*sin(θ2))/|A2|^2 =(C1*B2-B1*C2)/|A2|^2 =(C1*B2-B1*C2)/(B2^2+C2^2) となる。 割り算は掛け算とちょうど逆方向に回転し絶対値を縮小する操作になる。 共役とは実軸に鏡を立てて反対側に移る像との関係を指す。すなわち虚数部の符号が反転しただけの複素数は共役であると言う。 互いに共役な複素数の和と差を図示すると 共役複素数は上に線を引いて表すがweb上では表しようがない。仕方ないので代わりに下線を引いて表すと A=|A|*exp(-jθ)=B-jC と表すことができる。 図からわかる通り B=(A+A)/2 C=(A-A)/2j ということになり |A|=sqrt(B^2+C^2)=sqrt((B+jC)*(B-jC)) =sqrt(A*A[/u]) という関係が成立する。 共役複素数が何に役にたつかというと、複素数の逆数を考えてみよう 1/[b]A=1/(|A|*exp(jθ)) =(1/|A|)*exp(-jθ) =(|A|*exp(-jθ)/|A|^2) =A/|A|^2 =B-jC/(B^2+C^2) =B/(B^2+C^2)-jC/(B^2+C2^2) と表すことができる。なんだか狐につままれた感じがしないでもない。普通に逆数は 1/A=1/(|A|*exp(jθ)) =exp(-jθ)/|A| =(cos(θ)-jsin(θ))/|A| =(|A|*cos(θ)-j|A|sin(θ))/|A|^2 =(B-jC)/(B^2+C^2) =A/|A|^2 とも導くことができる。 たぶん後々役立つのだろう。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-16 13:14 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
複素インピーダンス インピーダンスについても既に三角関数で電圧と電流を扱っていた時点でベクトル図で表すと直角三角形の関係があることに気づいていたが、これも複素表記した方が扱いやすい。
インピーダンスの定義をベクトル記号法で再定義すると Z=E/I =|E|*exp(j(θ+φ))/(|I|*exp(jθ)) =|Z|*exp(jφ) となる |Z|=|E|/|I| とするのは以前と同じである。 複素インピーダンスの記号形式、フェーザー形式、極座標形式それに直交座標形式はそれぞれ Z=|Z|∠φ=|Z|*exp(jφ)=|Z|*(cos(φ)+j*sin(φ))=R+jX ここで |Z|=sqrt(R^2+X^2) φ=atan(X/R) cos(φ)=R/|Z| sin(φ)=X/|Z| Rは抵抗、Xはリアクタンスでいずれもスカラー値であることは従来通り。 Xが正の場合は電流が電圧より位相が遅れていることを意味し誘導性リアクタンスであることを示す。 逆にXが負の場合は電流が電圧より位相が進んでいるので容量性リアクタンスであることを意味する。 インピーダンスの逆数であるアドミッタンスを記号法で再定義すると Y=1/Z=1/(|Z|*exp(jφ))=exp(-jφ)/|Z| =(R-jX)/(R^2+X^2) =R/(R^2+X^2)-jX/(R^2+X^2) ここで G=R/(R^2+X^2) B=-X/(R^2+X^2) と定義すると Y=G+jB と直交座標形式で表すことができる。 従って |Y|=sqrt(G^2+B^2)=1/|Z| φ=-atan(B/G)=atan(X/R) と定義される。 以前三角関数で定義した各素子のインピーダンスとアドミッタンスは記号法では以下のようになる 抵抗Rの場合、 Z=R Y=1/R=G φ=0 |Z|=R |Y|=1/R インダクタンスLの場合、 Z=jω*L=j*XL Y=1/(jω*L)=-j/(ω*L)=-j/XL φ=π/2 |Z|=ω*L=XL |Y|=1/(ω*L)=1/XL=BL キャパシタンスCの場合、 Z=1/(jω*C)=-j*XC Y=jω*C=j/XC φ=-π/2 |Z|=1/(ω*C)=XC |Y|=ω*C=1/XC=BC ちと符号がややこしいが三角関数の時の定義とスカラー値の定義に関しては変わらない。 インピーダンスやアドミッタンスの直列、並列接は記号法で以下の様に定義される。 複数のインピーダンスを直列に接続した場合の合成インピーダンスは Z=Z1+Z2+...+Zn =ΣZk (k=1〜n) =R1+R2+...+Rn+j*(X1+X2+...+Xn) =ΣRk+ΣXk (k=1〜n) と表される。同様に合成アドミッタンスは Y=1/Z =1/(Z1+Z2+...+Zn) =1/(1/Y1+1/Y2+...+1/Yn) =1/Σ(1/Yk) (k=1〜n) と表される。 複数のインピーダンスを並列に接続した場合のインピーダンスは Z=1/(1/Z1+1/Z2+...+1/Zn) =1/Σ(1/Zk) (k=1〜n) 同様にアドミッタンスは Y=Y1+Y2+...+Yn =ΣYk (k=1〜n) =Σ(Gk+jBk) (k=1〜n) =ΣGk+jΣBk (k=1〜n) と表すことができる。 これを利用して複数の素子から成る場合のインピーダンスとアドミッタンスを後日求めてみることにする。 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-16 14:48 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
基本回路の合成複素インピーダンスとアドミッタンス まず複数の素子を直列に接続した場合の合成複素インピーダンスとアドミッタンスを求めてみよう
最初に抵抗の直列接続 Z=R1+R2 Y=1/(R1+R2) |Z|=sqrt((R1+R2)^2)=R1+R2 φ=0 次ぎにインダクタンスの直列接続 Z=jωL1+jωL2=j(ωL1+ωL2)=jω(L1+L2)=jωL=jXL Y=1/j(ωL1+ωL2)=-j/(ωL1+ωL2)=-j/ω(L1+L2)=-j/ωL=-j/XL |Z|=sqrt((ωL1+ωL2)^2)=ωL1+ωL2=ω(L1+L2)=ωL=XL φ=atan(XL/R)=atan(∞)=π/2 L=L1+L2 XL=ωL 今度はキャパシタンスの直列接続 Z=1/jωC1+1/jωC2=-(j/ω)*(1/C1+1/C2)=-(j/ω)*((C1+C2)/(C1*C2))=-j/ωC=-jXC Y=1/(1/jωC1+1/jωC2)=jω/(1/C1+1/C2)=jω(C1*C2/(C1+C2))=jωC=j/XC |Z|=sqrt((-1/ω)*(C1+C2)/(C1*C2))^2)=sqrt((1/ω^2)*(C1+C2)^2/(C1*C2)^2)=(1/ω)*(C1+C2)/(C1*C2)=1/ωC=XC φ=atan(-XC/R)=atan(-∞)=-π/2 C=(C1*C2)/(C1+C2) XC=1/ωC 次ぎはRL直列回路 Z=R+jωL Y=1/(R+jωL)=R-jωL/(R^2+(ωL)^2)=R-jXL/(R^2+XL^2) |Z|=sqrt(R^2+(ωL)^2)=sqrt(R^2+XL^2) φ=atan(XL/R)=atan(ωL/R) 続いてRC直列回路 Z=R-j(1/ωC)=R-jXC Y=1/(R-j(1/ωC))=(R+j(1/ωC))/((R+j(1/ωC))*(R-j(1/ωC))) =(R+j(1/ωC))/(R^2+(1/ωC)^2) =(R+j(1/ωC))/(((ωC)^2*R^2+1)/(ωC)^2) =((ωC)^2*R+jωC)/((ωC)^2*R^2+1) |Z|=sqrt(R^2+(-1/ωC)^2)=sqrt(R^2+1/(ωC)^2) =sqrt(((ωC)^2*R^2+1)/(ωC)^2) φ=atan(-XC/R)=-atan(1/ωCR) 今度はLC直列回路 Z=j(ωL-1/ωC)=j(XL-XC) Y=1/j(ωL-1/ωC)=-j/(ωL-1/ωC)=-jωC/(ω^2*C*L-1) |Z|=sqrt((ωL-1/ωC)^2)=|ωL-1/ωC|=|XL-XC| φ=atan((ωL-1/ωC)/R)=atan(±∞)=±π/2 最後RLC直列回路 Z=R+j(ωL-1/ωC)=R+j(XL-XC) Y=1/(R+j(ωL-1/ωC))=(R-j(ωL-1/ωC))/((R-j(ωL-1/ωC))*(R+j(ωL-1/ωC))) =(R-j(ωL-1/ωC))/(R^2+(ωL-1/ωC)^2) =(R-j(XL-XC))/(R^2+(XL-XC)^2) |Z|=sqrt(R^2+(ωL-1/ωC)^2)=sqrt(R^2+(XL-XC)^2) φ=atan((ωL-1/ωC)/R)=atan((XL-XC)/R) 並列回路はまた今度 |
webadm | 投稿日時: 2007-12-16 17:15 |
Webmaster ![]() ![]() 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3110 |
Re: 基本回路の合成複素インピーダンスとアドミッタンス 直列回路に続いて並列回路の合成複素インピーダンスとアドミッタンスを求めてみる
並列抵抗回路の場合 Z=1/(G1+G2)=1/(1/R1+1/R2)=R1*R2/(R1+R2) Y=(G1+G2)=(1/R1+1/R2)=(R1+R2)/(R1*R2) |Z|=R1*R2/(R1+R2) φ=0 並列インダクタンス回路の場合 Z=1/(-jBL1-jBL2))=j/(1/ωL1+1/ωL2)=jω(L1*L2/(L1+L2))=jωL=jXL Y=-jBL1-jBL2)=-j(1/ωL1+1/ωL2))=-(j/ω)*((L1+L2)/(L1*L2)) =-j(L1+L2)/(ω(L1*L2)) |Z|=sqrt((ω(L1*L2/(L1+L2)))^2)=ω(L1*L2/(L1+L2)) φ=atan(XL/R)=atan(∞)=π/2 L=L1*L2/(L1+L2) 並列キャパシタンス回路の場合 Z=1/(jBC1+jBC2)=1/(jωC1+jωC2))=-j/ω(C1+C2)=-j/ωC=-jXC Y=jBC1+jBC2=jωC1+jωC2=jω(C1+C2)=jωC=j/XC |Z|=sqrt((-1/ω(C1+C2))^2)=sqrt(1/(ω(C1+C2))^2)=1/ω(C1+C2) φ=atan(-XC/R)=-π/2 C=C1+C2 RL並列回路の場合 Z=1/(G-jBL)=1/(1/R-j/ωL))=1/((ωL-jR)/(ωLR)) =ωLR/(ωL-jR) =ωLR*(ωL+jR)/((ωL+jR)*(ωL-jR)) =(ω^2L^2*R+jωLR^2)/((ωL)^2+R^2) =ω^2L^2*R/((ωL)^2+R^2)+j(ωLR^2/((ωl)^2+R^2)) Y=G-jBL=1/R-j/ωL=(ωL-R)/(ωLR) |Z|=sqrt((ω^2L^2*R/((ωL)^2+R^2))^2+(ωLR^2/((ωL)^2+R^2))^2) =sqrt((ω^4L^4*R^2+ω^2*L^2*R^4)/((ωL)^2+R^2)^2) =sqrt(ω^2*L^2*R^2*(ω^2*L^2+R^2)/((ωL)^2+R^2)^2) =ωLR/sqrt((ωL)^2+R^2) φ=atan((ωLR^2/((ωL)^2+R^2))/(ω^2L^2*R/((ωL)^2+R^2))) =atan(ωLR^2/(ω^2L^2*R)) =atan(R/(ωL)) RC並列回路の場合 Z=1/(G+jBC)=1/(1/R+jωC)=R/(1+jωCR) =(1-jωCR)*R/((1-jωCR)*(1+jωCR)) =(R-jωCR^2)/(1+(ωCR)^2) Y=G+jBC=1/R+jωC |Z|=sqrt((R/(1+(ωCR)^2))^2+(ωCR^2/(1+(ωCR)^2))^2) =sqrt((R^2+(ωCR^2)^2)/(1+(ωCR)^2)^2) =sqrt(R^2*(1+(ωCR)^2)/(1+(ωCR)^2)^2) =R/sqrt(1+(ωCR)^2) φ=atan((-ωCR^2/(1+(ωCR)^2))/(R/(1+(ωCR)^2)) =atan(-ωCR^2/R) =-atan(ωCR) LC並列回路の場合 Z=1/(jBC-jBL)=1/(jωC-j/ωL)=1/j(ωC-1/ωL)=-j/(ωC-1/ωL) =-j/((ω^2LC-1)/ωL) =jωL/(1-ω^2LC) Y=jBC-jBL=jωC-j/ωL=j(ωC-1/ωL) φ=atan((ωL/(1-ω^2LC))/R)=atan(±∞)=±π/2 RLC並列回路の場合 Z=1/(G+j(BC-BL))=1/(1/R+j(ωC-1/ωL)) =(1/R-j(ωC-1/ωL))/((1/R-j(ωC-1/ωL))*(1/R+j(ωC-1/ωL))) =(1/R-j(ωC-1/ωL))/((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2) Y=G+j(BC-BL)=1/R+j(ωC-1/ωL) |Z|=sqrt(((1/R)/((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2))^2+(-(ωC-1/ωL)/((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2))^2) =sqrt(((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2)/((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2)^2) =1/sqrt((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2) =1/sqrt((1/R)^2*(1+R^2*(ωC-1/ωL)^2) =R/sqrt(1+R^2*(ωC-1/ωL)^2) φ=atan((-(ωC-1/ωL)/((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2))/((1/R)/((1/R)^2+(ωC-1/ωL)^2))) =atan(-(ωC-1/ωL)/(1/R)) =atan(R(1/ωL-ωC)) |
webadm | 投稿日時: 2007-12-16 18:27 |
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電力の複素数表示 今度は電力の複素数表示を考えてみる
回路の電圧と電流が E=|E|*exp(jωt) I=|I|*exp(j(ωt+φ)) で表されるとき瞬時電力は p=E*I =|E|*exp(jωt)*|I|*exp(j(ωt+φ)) =|E|*|I|*exp(j(2ωt+φ)) =|E|*|I|*(cos(2ωt+φ)+j*sin(2ωt+φ)) =|E|*|I|*(cos(2ωt)cos(φ)-sin(2ωt)sin(φ)+j(sin(2ωt)cos(φ)+cos(2ωt)sin(φ)) =|E|*|I|*((1-2*sin(ωt)^2)cos(φ)-2*sin(ωt)cos(ωt)*sin(φ)+j(2sin(ωt)cos(ωt)cos(φ)+(1-2*sin(ωt)^2)sin(φ)) これを周期Tで平均すると定数項以外は平均が0となるので P=(1/T)*∫pdt =(1/T)*∫(|E|*|I|*((1-2*sin(ωt)^2)cos(φ)-2*sin(ωt)cos(ωt)*sin(φ)+j(2sin(ωt)cos(ωt)cos(φ)+(1-2*sin(ωt)^2)sin(φ)))dt =|E|*|I|*(cos(φ)+j*sin(φ)) =|E|*|I|*exp(jφ) で表されることになる。ここで Pa=|E|*|I|*cos(φ) が有効電力 Pr=|E|*|I|*sin(φ) が無効電力 となる。 どの参考書でも複素関数の積分を伴う方法ではなく共役複素数を使った以下の簡単な方法で導いている。それは複素関数は積分する区間によっては結果が異なってしまうからである。複素解析という数学でそのあたりを扱うので足をつっこまない方法が教えられているのだろう。 P=E*I =|E|*exp(-jω)*|I|*exp(j(ω+φ)) =|E|*|I|*exp(jφ) =|E|*|I|*(cos(φ)+j*sin(φ)) もしくは P=E*I =|E|*exp(jω)*|I|*exp(-j(ω+φ)) =|E|*|I|*exp(-jφ) =|E|*|I|*(cos(φ)-j*sin(φ)) 従って電力そのものも共役複素数で表される。 sin(φ)の結果が正か負でどちらか一方になるのは確か。 インピーダンスを使って複素電力を定義すると Z=R+jX とした場合 P=E*I=Z*I*I =(R-jX)*|I|^2 従って Pa=R/|I|^2 Pr=-X/|I|^2 と表すことができる。 また R=Pa/|I|^2 X=Pr/|I|^2 である。Rを実効抵抗、Xを実効リアクタンスと呼ぶ。 もしくはRを等価抵抗、Xを等価リアクタンスと呼ぶ。 同様に実効アドミッタンスを Y=G+jB とすると。複素電力の式は P=E*I=E*(Y*E)=Y*|E|^2=(G+jB)*|E|^2 となり有効電力と無効電力は Pa=G*|E|^2 Pr=B*|E|^2 と表すことができる。 従って実効コンダクタンスGと実効サセプタンスBは G=Pa/|E|^2 B=Pr/|E|^2 と表されることになる。 ここまででベクトル記号法の理論は終わり。 あと卒倒しそうになるぐらい膨大な演習問題が待っている(100問以上) でもそれをこなせば上巻の半分近くまでは到達したことになる。 普通学校では上巻を1年かけてやるらしい。まだ半分もいっていない。前半は測定器とかで遊びほろけて演習を中断していたのが響いた格好だ。実質半年もかからないのかもしれない。 ただ通り一遍に講義を受けてもさっぱり頭には残らないのは間違いない。ところどころ勘違いや憶え違いとかもあるし。 ベクトル記号法(フェーザー表記、複素表記)に慣れると高周波とかアナログとかの電子回路で良く出てくる式が読めるようになる。今まではチンプンかんぷんだったのでこれはうれしい。 P.S 何年も前に書いたのを分け合って読み直したら最初の式に時間変数tが抜けていたのに今更気づいた。線形代数を知らない頃に考えたのだが我ながら着眼点は鋭かったと改めて関心。複素ベクトルのスカラー積の表現方法として複素関数積の積分とHermite形式のふたつがあること、またそれらが同値であることを今は理解している。 |
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