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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2016-1-16 17:45
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
Re: 自分の数学を持つことの勧め
さて前回の議論の後半に入ろう

・一般の斜交基底での内積と外積は直交基底と定義を変える必要があるか?
・一般の斜交基底での反変ベクトル間の外積はやはり反変ベクトルか、また共変ベクトル間の外積はやはり共変ベクトルか?

最初の設問の内積に関しては結論は一部はNoであり、一部はYesだった。つまり、ベクトルの成分を使用しない形式はそのまま一般の座標系でも成り立つが、ベクトルの成分を使用した形式は一般の座標系では異なる計量テンソルを伴う形で修正を受けることになる。

ベクトルの成分を用いなければ



で同じだが、ベクトルの成分を用いた形式は



という具合に、反変、混合、共変の3種類の形式で表されることになる。

また副次的に上の結果から、下に示すように2つのベクトルの間にある計量テンソルは隣接するベクトルに作用すると添え字を上げ下げする機能を持つことが判る。これは上の結果から演繹的に得られる性質のものであり、下の結果だけ単独に見いだしたり検証することは困難である。そのため物理学や微分幾何では頻繁にこの結果が当然のごとく利用されるがその導出については一切触れられていない。



元来内積というのは計量テンソルが先に以下の様に定義された上で、その計量テンソル(二階のテンソル)と2つのベクトル(1階のテンソル)とのテンソル積(4階のテンソル)から二重縮約によって0階のテンソル(内積)を対応させる多重線形写像であった。



正規直交基底では計量テンソルがいずれの場合でも単位行列となるのと双対基底が自然基底と同じと見なされるので反変と共変の区別はなくなり、計量テンソルはどの形式でも単位行列と同一視できるという特種な事情があったわけである。

というのが前回の議論だった。詳しい導出の経緯については前の記事を参照して欲しい。

さてまだ答えが出ていない外積に関して議論することにしよう。

外積についてもベクトルの成分を用いない形式は一般の基底でも変更を受けない。証明は読者の課題としよう(´∀` )

cross product - vector form

ベクトルの成分を用いた形式はどうだろう?

cross product - components form

もろ影響を受けそうな気がする。

どういう形で影響を受けるかは直感では予想すらできない。

以前に外積はエディントンのεを成分とする3階の交代テンソルと2つのベクトルとの二重縮約で出来ていることを明らかにした。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

これを使って、内積の時と同じように計算できそうである。

だが('A`)マンドクセ

しかも既に成分の式には2つのベクトル成分の間にあたかも計量テンソルであるかのようにエディントンのεを成分とする交代テンソルが鎮座している。これは後に擬計量テンソルと呼ばれるものであるが、似て非成るものの代表格である。

とりあえず反変ベクトル成分は基底変換と逆の変換を受けるから

contravariant vector components -- passive transform

(2016/7/14)訂正

contravariant vector components -- passive transform

(2016/7/14)訂正

これを代入すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

どうすんだこっから(;´Д`)

式をそのまま展開すると大変なことになりそうなので、成分別に計算することにしよう。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

なんですかこりは?

変換行列は元々正規直交基底から自然基底への線形変換行列だったから、自然基底の成分を並べたものである。Tijはfiのj成分ということになる。そう考えると、途中で出てくる交代行列は以下の様に以前学んだ交代積で表すことができる。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

ふむこれは正規直交基底の時と同じに見える。唯一違うのは基底が正規直交基底ではない点。

変換行列が恒等変換なら、正規直交基底と同じになるのでここまでは同じ。

とするとここまで以前二次元のベクトル積(有向面積)から三次元に拡張した際と同様に以下も成り立つと仮定すれば



おろ、上が成り立つとすると基底が自然基底ではなく双対基底になるのと成分に自然基底のスカラー三重積が乗じられる形になる。

交代テンソルとの縮約から導出した先の計算と違っている(;´Д`)

上の結果は海外のベクトル解析のテキストにも書かれていたし、「物理のかぎしっぽ」にも記載されているので間違いではなさそう。

どっか計算間違えたくさい...orz

いや食時の後良く考えたら理由が分かった。

最初のアプローチではベクトル積の基底が成分を変換する前の正規直交基底のままだったがそれがまずかった。

後のアプローチのように基底を双対基底に変えるのが正解だった。元のアプローチで同じ結果を得られるかどうか確認するためには、共変ベクトル成分を使えばよいはず。

共変ベクトルの成分は基底と同じ変換を受けるから

contravariant vector components -- passive transform


contravariant vector components -- passive transform

これを代入すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

成分毎に計算すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

やっとできたよ(ノД`)ママン

行列計算はMaximaを使ったけど、最近のバージョンのMaximaは以前より使い勝手が悪くてどうなってますか(--#) おかげで結果が期待したのと違うものが出てくるし。正解の予想が付いているので最初から入力をやり直したけどね。

ということで一般の共変ベクトルのベクトル積は



ということになる。

反変ベクトルの時とは逆に基底のスカラー三重積の逆数が係数となっている。相反系だから確かにそうでないといけない。

このアプローチで反変ベクトルのケースを計算してみるのは読者の課題としよう(´∀` )

手を動かすといろいろ発見があるよね。

さて一般の基底に関するベクトル積の場合、共変ベクトルのベクトル積は共変ベクトルなのだろうかそれとも反変ベクトルなのだろうか?

これは悩ましいところだ。もちろん最初のアプローチの様に変換前の正規直交基底のままにしてしまうと成分が複雑な変換を受けて大幅に修正しないといけなくなる。しかし基底を双対基底にすると、別のベクトル空間になってしまうが基底のスカラー三重積が係数として加わる点を除いては正規直交系の場合と同じ形式になる。正規直交系の場合は基底のスカラー三重積が1だったため表に出てこないだけだったと思えば同じだと言える。

なので本当は一般のベクトル積の形式は2通りあることになる。ひとつは基底を双対基底にして形式は保存するもの、もうひとつは正規直交基底のままで形式は保存されないもの。後者は今回発見したが、ほとんどのテキストでは触れられていないように見える。まあ複雑過ぎるので実用的ではないことは確か。永久に葬られていたものを墓場から掘り起こしてしまった感がある、(‐人‐)ナムナム

さて、残る疑問は、内積の場合には共変、混合、反変の組み合わせがあったが、ベクトル積の場合はどうなんだろう?

大抵のテキストでは、どちらも共変、反変でない限り意味が無いとしてばっさり切り捨ててあるか、まったく触れず完全スルーしている? 本当だろうか?

IQが低いのでそこんところがさっぱり納得いかないんですわ。

正規直交基底の時は反変も共変もないから、同じだったよね。それが一般性を失わない形で一般の基底でも定義できるんじゃないかと思うよね普通。それとも私だけか?また世界中を敵にまわしたか。

では早速計算してみよう

最後に計算した共変ベクトルの外積の式の後半をその前に計算した反変ベクトルの成分を使った表現に置き換えるだけでよい

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

同様に成分毎に計算すると

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

なんじゃこりは(´Д`;)

基底が正規直交基底のままなので、ますますひどいことになっているが、なんか不思議な規則性がある。

2つのベクトルの間に挟まれている2階のテンソルが、対称テンソルでも交代テンソルでもないのが謎だ。

これも同様に変換行列を恒等変換行列に置き換えると標準基底でのベクトル積と等価になるのでちゃんと一般基底の場合に拡張されただけの話で間違っているわけではない。

たぶんEinsteinの省略記法を使えば一行で表すことができると思うけど。それは読者の課題としよう( ´∀`)

みんな一般の基底では反変ベクトルと共変ベクトルのベクトル積は無意味だと言い放ってスルーしているけど、できないわけではないよね。

上の結果で変換行列が恒等変換の場合、ちゃんと正規直交基底の外積の式と等価になることは明らか。なのでこれも立派なベクトル積の成分表現の一般化になるわけだけど、正規直交基底だと複雑過ぎて利用価値がなさそう。

ただこの議論は実は次の議論で避けて通れない。

次に議論しなければならないのが一般のベクトル3重積である、3つのベクトルがすべて反変ベクトルにしても、共変ベクトルにしても、そのうち二つのベクトル積の結果は双対基底になるわけで、途中どうしても双対基底と自然基底のベクトル積が出てくる。

どうすんだごら(`Д´)

もうあれだよね、一般のベクトルではなくて、基底のベクトル積を考えた方がいいかな。

今まで手元で参考にしてきた有名な参考書を改めて読み返してみたところ、一般のベクトル三重積に関してはどれも言い合わせたように完璧スルーしていることが判明。ベクトル三重積も索引で調べると、最初の部分でベクトル代数のおさらいのところで標準基底に関してのみ当たり障りのないように触れたのを最後に、以降は議論されていないことが判った。

それじゃ知らなくてよかったのと同じじゃね(´Д`;)

確かに手元の共立「数学公式改訂増補」には良くまとまったベクトルとテンソルの記載があるが、一般の基底に関する内積に関しては計量テンソルを伴った記載があるが、ベクトル積はおろかベクトル三重積に関しても一般の基底での記載は無い。

これまた世界を敵に回したか。

(悪魔の囁き:先人が皆避けてきた道をお前に通れるわけがない)

ここまで来たからには今更引き返すつもりはないでちゅ。

(悪魔の囁き:賢い先人は皆うまいこと手を抜いてきたんだから、お前も手を抜けば)

やだ、手を動かすのは止めないでちゅ。

食時の後に考えたらまたひとつアイデアがひらめいた。

先ほどの共変ベクトルと反変ベクトルの間のベクトル積の基底がどうなるか謎だったが、計算した結果の式から変換行列の成分が3重積になっていることから、自然基底と双対基底のどちらにも直交する新たな基底ではないかと予想される。

それがどんな形になるのか計算しようとおもったが、('A`)マンドクセ

簡単なアプローチで確かめてみよう



ふむ、一般のベクトル積だけ知りたいんだけど、その前に一般の基底のベクトル三重積を計算しないといけないはめに陥った...orz

どうすんだこっから(´Д`;)

後ろを振り向いても誰も居ないし、前にも歩んだ人はなさそう。検索したけどこれっぽちもヒントになるような記事や図書は発見できず。もう探す時間をかけるだけ無駄なので自分でなんとか突破口を見つけるしかないよね。

斜交基底同士のベクトル積は考えてみるとおもしろいよね。f1,f2のベクトル積はf1,f2の張る平面に垂直な方向を向くけど、それとまたf1かf2とのベクトル積を考えると3重積になるけど、正規直交基底みたいに、同じ基底の組のどれかと平行なわけではないんだよね。ベクトル積では一般に結合則が成り立たないから、f1x(f1xf2)は(f1xf1)xf2とは同値ではない。後者は明らかにゼロベクトルだけど、前者はそうではない。f1x(f1x(f1xf2))というのもゼロベクトルにはならないし、f1x(f1xf2)とf1の張る平面に直交する方向を向く。どうなってますか(´Д`;)

誰もこのことを研究していないのかな?

上のアプローチは入り口は簡単そうに見えるけど、中に入ると急転して複雑で手計算では無理。計算好きなGaussならなんかもっと計算を楽にする方法を考えそうな気もするけど。

もうひとつの簡単そうに見えるアプローチは、計量テンソルを使って、添え字の上げ下げをしてしまうというもの。これも途中までは手計算でできるけど、最終的に計量テンソルの成分を展開しようとすると、頭が爆発する( ̄0 ̄)

いろいろ手元の参考書を読み返すと、この議論とは直接関係ないけど、計量テンソルについて今まで知らなかった事実があることに気付かされた。

太田浩一著の「ナブラのための協奏曲」を読み進めていたら、√gとかいう係数があちこち出てきて、なんだっけこりは?と最初から読み返してみたら、計量テンソルの行列式とヤコビ行列式(Jacobian determinant)の密な関係を表しているらしい。

計量テンソルの行列式の平方根は、これまで良く出てきた自然基底のスカラー三重積と同値だというのだ。今までそれを単に基底変換行列の行列式(determinant)の意味でDとして登場させていたけど、それは計量テンソルの行列式の平方根と等しく、また自然基底を並べた行列は一般の曲面座標系ではヤコビ行列のことだということが判った。自分で発見するまでに至らなかったのが多少悔やまれるけど、その一歩手前まで来ていたので良しとしよう( ´∀`)

これまでの議論はベクトル解析というより、その手前のベクトル代数もしくはテンソル代数の議論に過ぎないので、解析が出てくるとまた別の障壁が待っている。なんとかテンソル代数からシームレスにテンソル解析へ進む道はないものだろうか?この問題についてはまた後日解析の道へ入る時に取り上げよう。

いまはまず代数的な議論の決着をつけるのが先決だ。

そういえば議論の蒸し返しになるが、一旦読者の課題としてあった一般の反変ベクトル成分によるベクトル積の表記に関して答えが得られたのでここに記しておくことにする。

よくよく最初の計算式を睨むと、以下の様に書き換えることができることがようやく判った。

cross product - contraction with eddington's epsilon tensor

ということだった。(2016/4/1 訂正)

正規直交基底の場合と同じように綺麗に記述できるのは反変ベクトル成分のみか、共変ベクトル成分のみを使う場合で、反変ベクトル成分と共変ベクトル成分を組み合わせた場合にはそうはいかないというのは確かなようだ。

手元の 岩堀長慶 著「ベクトル解析」を通勤電車内で最初から読み進めていたら、比較的最初の方から斜交座標系が登場し、その後も正規直交基底だけではなく斜交基底も頻繁に登場していることが判明。ページによっては1ページ内に繰り返し斜交基底という文字が現れて笑ってしまった。そういうテキストは珍しい部類に入る。しかしながら、話がベクトル積に入ったとたんに、斜交基底の斜の字も一切出てこず、ひたすら正規直交基底のみの話に終始して、それまで演習問題で扱うことが多かった斜交基底もベクトル積のところでは一切登場しない。意図的にスルーしているとしか言いようがない。ベクトル積の話が終わるとテンソル代数の議論に入るけど、そこで再び斜交基底が登場するのは完全にベクトル積だけ斜交基底が禁句であるかのような感じを受ける。たぶんそうなのだろう。

テンソル代数やテンソル解析のテキストとしては、手元の 田代嘉宏 著「テンソル解析(復刊)」が個人的には読みやすいと感じている。やっぱりテンソルを理解するにはそれなりにじっくり長くつきあう必要があると思う。

さてどうしようか(´Д`;)

せめて一般のベクトル三重積がどう表されるかだけでもやっておこうかな。

(2016.02.15)
ふう、病み上がりに考え直すと束縛がとれて、いろいろ自由な視点が開けてくる。

先の反変ベクトルのみと共変ベクトルのみのベクトル積の結果から、反変と共変の混合ベクトル積を得る別方法を思いついた。それは計量テンソルを用いて片方のベクトル成分の添え字を上げ下げすればいいわけである。

思いつくのは簡単だが、いざ計算してみるとEinsteinの省略記法では簡潔そうに見えるが、実は複雑だということがわかる。

そもそも計量テンソルが関わってくる時点で、対称テンソルとの縮約が発生するので、全テンソル成分が総出動することになる。結果は基底が正規直交基底ではなくなる点で簡単になるが、計量テンソル成分が加わることでややこしくなる。

計量テンソルによる添え字の上げ下げは



これを一般の共変ベクトルのベクトル積の結果に代入すると



ということになる。Einsteinの省略記法を使ってなんとなくそれらしくなったけど、これ以上の探求は一旦止めにしよう。すくなくとも局所的にでも直交系でない空間は電磁気学では登場しないのでよしとしよう。登場したらその時改めて考えればよい。

少なくともこの時点で何も収穫が無かったわけでもなく、一般座標系の内積の場合は、反変ベクトルと共変ベクトルとの内積は座標系に依らないが、それ以外は座標系によって修正を受ける事。ベクトル積に至っては反変、共変のいずれの組み合わせでも座標系による修正を受けることが避けられないことが判った。前者は仕方ないとしても、後者は大方の予想を裏切る結果である。二つのベクトルは座標系によらないはずだからそのベクトル積も座標系に依らずに決まるべきだと思っていたが、それは正規直交座標系を選んだ時のみで、一般座標系ではそうではなかった。それが擬ベクトルとか、軸性ベクトルとか言う名前でベクトル積が区別されるゆえんである。それが判ったので決して無意味ではなかった。

大抵のテキストはそこが見える場所までは読者を誘導せずに、上手に枝切りをしていると思われる。見えたとてその先にはぺんぺん草も生えていない広大な空間があるだけなので、そっちへゆかせない方が得策というわけである。本当にそうなのだろうか?

例えばベクトルやテンソルというのを物理量として、内積やベクトル積を物理法則と読み替えれば、正規直交座標系で成り立つ物理法則は果たして一般の座標系でも成り立つだろうか?という疑問が生じるのは自然の流れである。答えはここまでの議論の通り、正規直交座標系での物理法則は一般の座標系では修正を受ける。しかしその逆はそうではない。一度一般の座標系でそれらの法則を記述すれば、それは正規直交座標系の以下の特種性によって修正を受けずにそのまま成立する。



いやはや、直交座標系というのはなんと易しいありがたい世界であるというのがここにきて実感する。これだから長い間、Newton力学が長い間正しいと信じられたきたゆえんである。誰も面倒な歪んだ座標系で好きこのんで物理現象を考える人は居なかったわけである。少なくとも20世紀に入るまでは。

本当は直交座標系での議論をちゃんとやるべきだけど、退屈なんだよね、ありがたみが湧かないというか。でも少し直交系をかじってから一般系の事を考えると謎が湧いて出てきて面白い。謎を解き明かして到達した場所から眼下の直交系を見ると雲が晴れ渡ったように良く見通せるようになるというわけ。

さて同じようにベクトルの三重積についても議論しておく必要がある。

これまでの議論では一般の座標系として斜交座標系を取り上げてきたものの、斜交基底を基準となる正規直交基底の線形写像(T)で写されたものとして論じてきた。しかしベクトル積になるとそれはむしろ煩雑で見通しが悪い。斜交基底かその双対基底のどちらかを基準にした方がよさそうである。

ここまでの結果として、反変ベクトル同士のベクトル積は一般の座標系では成分は反変のままだが基底は共変ベクトルのものに変わる、反変ではその逆になる。この天邪鬼なベクトル積の本性は正規直交系でも変わらない。正体は後に判明する擬ベクトル、もしくは軸性ベクトルと呼ぶ、通常のベクトルとは区別すべき存在である。

さてベクトル三重積は、その天邪鬼なベクトルと更に通常のベクトルとのベクトル積を考えることになる。

どうすんだそれ(´Д`;)

(2016/3/25)
実のところ、ベクトル三重積は正規直交座標系でも躓きの石のひとつでもある。

斜交座標系で考えるとややこしいので、ここはひとつ易しい正規直交座標系に立ち戻ってみることにする。

a,b,cの3つのベクトルの三重積を考える。




有名な公式として、以下のものがよく演習問題に取り上げられるが、これでみんな挫折するんだよね。もうね、挫折するのをあざ笑うかのような公式だよね。



これを自分数学的に導いてみることになるわけだが。

まず先に括弧の中を計算してしまおう



従って



公式と違う結果になってしもうた(´Д`;)

Wikipediaにこれの種明かしが書いてあった。

意図的に0を加えるというテクニックを用いるのだった。



なんだ簡単じゃないか( ´∀`)

これはあらかじめ結果を知った上で、どうすればそうなるかを考えて辻褄を合わせる、もって回った手法とも言える。

これとは別にテンソルの言葉でストレートに導く方法がある。それは読者の課題としよう( ´∀`)

さてここからが本題である。

上の公式は成分を伴わない形式なので、座標系に寄らず不変に成り立つと考えられるが、本当にそうだろうか?

公式の右辺はスカラー積を係数とする2つのベクトルの線形結合になっている。スカラー積はスカラーだから座標系によらず不変であるはず、ならばその可能性は高そうである。

(2016/3/28)
このページを編集する際に、数式を確認するために、プレビューにするのだけど、レンダリングに異様に時間がかかる。変だなと思って調べたら、普通にページを繰り返し読む度にmathtexはLatex+dvipngでイメージをレンダリングしている。遅い訳だ。どうやらブラウザー側からcacheをバイパスするようにとの指定がある場合には、新たにレンダリングするようだ。最近のブラウザはそうなのかと思ってIEの最新のを試したら同じだった。余計な話だがそういうことだった、mathtexのレンダリングイメージキャッシュ機能はほとんど有効活用されていないということに。

さて話を本題に戻そう。

斜交座標系でのベクトル積の場合は、ベクトル積の生来の天邪鬼な性格が表に出てきて、2つのベクトルが供に反変でも共変でも、正規直交系のように綺麗にならない。しかも、元のベクトルが供に反変ベクトルの場合、ベクトル積は共変ベクトルになるし、逆も真なり。2つのベクトルが一方が反変で他方が共変だと、計量テンソルが混じって更に面倒なことに。

本来はベクトルは座標系によらず不変な物理量を表しているはずなのだが、同じものとはとても思えない姿になる。

まず、上の式で、b,cを先に計算するので、それらは供に反変ベクトルだとしよう。そうするとその結果は共変ベクトルになるので次に反変ベクトルaとのベクトル積は片方を計量テンソルで添え字の上げ下げをしてやる必要がある。いずれにせよ、反変ベクトルのベクトル三重積は反変ベクトルになるということまでは予想がつく。さてその結果は正規直交系と同じ大きさのベクトルになるのだろうか?

上の公式の右辺を計算しようとすると、やはりac,abのスカラー積は、供に反変ベクトルなので、計量テンソルを間に挟んでどちらかを共変ベクトルにする必要がある。結果はスカラーなので、それをそれぞれc,bの係数として線形結合すればいいので、反変ベクトルの三重積は反変ベクトルということは予想がつく。

ちょっと計算がややこしいがやってみることにしよう。

(2016/3/29)
mathtexで毎回レンダリングがされるようになった原因が判明した。というのも昔の数式に関してはちゃんとキャッシュを使用しているのに最近使用している数式はキャッシュファイルすら作成されていないことが判明。理由はベクトル積の演算記号として使っている\timesが原因だった。mathtexは内部で\timeを現在時刻に変換する機能を備えており、その処理の部分は単に数式の中に\timeが含まれていればキャッシュを使用せずにキャッシュもせずに\time文字列を現在時刻に置換してレンダリングするようになっていたわけである。mathtexの作者はベクトル解析とは無縁のようで、\timesが存在することを知らなかったぽい。本当に\timesではなく\timeを使用した数式だったらどうしようとか、\timesと\timeが混在する数式とか考えると切りが無いので、その処理を条件コンパイルで展開されないようにすることにした。まあ、他にも似たような\todayとか\calendarとかあるけどこれらはたぶん使わないだろうから放置で。これでページ表示が素早くなった。今考えると、\timesが\timeと誤認識するバグがあるのは確かだけど、\timesが現在時刻に誤って変換されるということは起きていない。実際の置き換えはstrreplaceという謎な関数を使用しているが、それはちゃんと\timesと\timeを判別しているようで誤った変換はされていない。ならstrstr(expression,"\\time") != NULLという条件は不要なのではと思うようになった。いやまったく関係ない話である。

(2016/3/30)
さて余談が過ぎたが、本題に戻ろう。何度それを言う。

先に反変ベクトルのベクトル積は共変ベクトルになると書いたが、誤解を招く恐れがあるので付け加える必要がある。そもそもベクトル積は、狭義のベクトルの範疇に入らない。

一見すると同じベクトル空間に存在するように見えて、実は別の空間に存在するのである。それが露見するのは、符号を反転する基底変換を受けた場合である。ベクトル積の成分は元のベクトルの成分の二次形式で表されるので、元のベクトルの成分の符号が反転してもベクトル積の成分は反転しない。元のベクトルが一斉に逆の方向を向いてもそのベクトル積は向きを変えようとしない、天邪鬼な性質が露見するのである。価値観が同じお友達と思っていたのに実際には住む世界が違ったのね、という瞬間があるのと一緒。

ところで天邪鬼なベクトル積の大きさは、座標系に依らず不変だよね?

一般の斜交座標系は正規直交系と違って完備ではないので、ベクトルの大きさを計算するにもその双対ベクトルの成分が必要になる。('A`)マンドクセ

双対ベクトルの成分を得るには、計量テンソルによって縮約する必要がある('A`)マンドクセ

結果を知りたいだけなので、ここまでの一般の斜交座標系でのベクトル積の結果を用いて計算してみよう



なんですかこりは(´Д`;)

これが座標系によらず不変なスカラー量であるかどうか確かめるために、一般の斜交座標系に変換する前の正規直交系でのベクトルを用いて同じ計算をしてみよう。

正規直交系では双対基底も双対ベクトルも自然基底と自然ベクトルとぴったり一致するので、両方を混在して使用しても構わない。



なんと一般斜交座標系に変換する前の場合とでは\primeがあるかないかの違いでしかない。どちらも同じ形式で表されるのは内積ならではの性質。

実際に同じスカラー量なのかどうかを確かめるには、片方の成分をもう片方の成分に置換して同値になるか確かめる必要があるが、それは読者の課題としよう( ´∀`)

こんなしょうもない計算しているのはここだけしかないと思う。

文字数制限に達したので続
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題名 投稿者 日時
   自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-2-3 12:47
     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-3-16 10:45
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         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-15 21:41
           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-21 10:25
             Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-26 21:43
               Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-4-29 20:10
                 Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2015-5-5 5:33
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                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-4 22:15
                     Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-10 22:07
                     » Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-1-16 17:45
                         Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-4-6 12:47
                           Re: 自分の数学を持つことの勧め webadm 2016-7-26 20:20

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